経験けいけん)” の例文
旧字:經驗
まだ、乞食こじきというものを経験けいけんしたことのないかれは、どこへいって、どうしてらぬ人々ひとびとからぜにをもらったらいいだろうかとおもいました。
石をのせた車 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もちろん、たった一人、大道ぐらしをつづけてゆくことの危険きけんなことはよくわかっていた。それはさんざん、つらい経験けいけんもしている。
一八九五年まで先生をしていましたが、それからまもなくヨーロッパを旅行して、その時の経験けいけんから「イェルサレム」という名高い小説を書きました。
祖母おばあさんもなく、かあさんもなく、だれってかせるもののないような家庭かていで、まれてはじめて袖子そでこ経験けいけんするようなことが、おもいがけないときにやってた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
らしたうまというものは、それはモー不思議ふしぎなほど可愛かわいくなるもので、ことによると経験けいけんのないおかたには、その真実ほんとうあじわいはおわかりにならぬかもれません。
鞍馬くらまのおくをりてから、きょうまでいくたびも生死のさかいをえてきたが、ほんものの刀をとって、てき刃交はまぜするのは竹童きょうがはじめての経験けいけんである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
に入れば当宿の主人かへきたる、主人は当地の深山しんざん跋渉ばつしやう経験けいけんありとの故を以て、んで一行と共にせんことをだんず、主人答へて曰く、水源を溯源さくげんして利根岳にのぼ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
海岸線かいがんせんまはりの急行列車きふかうれつしや古間木こまきへ(えきへは十和田わだ繁昌はんじやうのために今年ことしから急行きふかうがはじめて停車ていしやするのださうで。)——いたとき旅行たび経験けいけんすくな内気うちきものゝあはれさは
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
窃盗せっとう嫌疑けんぎけて、身体検査しんたいけんさまでされ、半裸体はんらたい姿すがたちながら、職務しょくむ忠実ちゅうじつすぎる男の自由じゆうにされる——これがはずかしくないだろうか? しかし、これも経験けいけんなのだ。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
実際の人生にいかなる誘惑ゆうわくのあるものか、みずから知らぬ経験けいけんを具体的に他人から聞きただすも一つの法であろうし、またみずか退しりぞいて想像して、おのれがかくのごとき場合におちいったならば
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
もし、このままにして置いたら、たいていの人は忘れるであろう。そうして前代日本人の、いろいろの苦心と経験けいけんとが、わからなくなるであろう。それでは困るから歴史れきしは学ぶのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
吉之丞は安南人やマレー人の水主かこのすることを見ていたが、むかしの御朱印船で水主どもを追いまわした経験けいけんから推して、グッタリと長くなっている連中も、案外、弱っていないことを看破かんぱした。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
かれまち沢山たくさん病家びょうか顧主とくいっている。で、かれ自分じぶん心窃こころひそか院長いんちょうよりはるか実際じっさいにおいて、経験けいけんんでいるものとみとめていた。なんとなれば院長いんちょうにはまち顧主とくい病家びょうかなどはすこしもいのであるから。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
(だが経験けいけん中国ちうごく民衆みんしうをしへた!)
かれは、そののち、いろいろの経験けいけんをし、また苦労くろうをしました。たまたま、この公園こうえんにきて百合ゆりはなて、むかしのことをおもしたのです。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしはかれがわたしたちに対してひじょうにやさしい心持ちになっていることを見ることができた。わたしはかれに鉱山こうざんでの経験けいけんをくわしく語った。
いずれにしてもこの一わたくしにとりてまことに意外いがいな、またまことに意義いぎのあるとうと経験けいけんでございました。
右一行中小西技師は躰量たいりやう二十三貫の大躯たいくなれ共つねに県下巡回じゆんくわいめ山野の跋渉ばつせうれ、余のごときはと山間のさんにしてくわふるに博物採集はくぶつさいしうめ深山幽谷を跋渉はつせうするの経験けいけん
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
だが——ゆうべ陣馬じんばはらで、おそろしい経験けいけんをなめているものは
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けっして、それはゆめではなかったのです。この小鳥ことりだけは、おそらく終生しゅうせい自分じぶん経験けいけんしたことをおもしてわすれなかったでありましょう。
小さな金色の翼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いつも大洋のまん中でかげ一つ見えないとき、わたしはやはりこの無人むじんの土地で感じたとおりの言いようもない悲しみを、また経験けいけんしたことがあった。
そのころわたくしは、もう幾度いくたび経験けいけんがありますので、さほどにもおもいませんでしたが、はじめて人間にんげん臨終りんじゅう出会であっときは、なんとまァ変怪へんなものかしらんとおどろいてしまいました。
森下深井両君のごときは地理掛としてもつとも其道に専門の人と云ふべきなり、林区署の諸君またしかり、大塚君は前年名佐技師にしたがふて利根山間をさぐりし経験けいけんあり、長髯口辺をひ背に熊皮くまかわよこたへ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
都会とかい生活せいかつ経験けいけんのない河骨こうほねは、どうして、このむすめたちのことをましょう。むすめたちがると、河骨こうほねは、自分じぶん不幸ふこうをなげいたのでした。
ガラス窓の河骨 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれはその経験けいけんとちえで、のちに困難こんなんにおちいった場合、わたしたちのひじょうな力になったのであった。
しかし、この経験けいけんによって、うお子供こどもは、りこうになりました。もうけっして、うかつにはねられないことをりました。
魚と白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうだ、老人ろうじんの言ったことはほんとうであった。とうと経験けいけんから出た訓言くんげん(教訓)であった。でもその訓言よりももっと力強い一つの考えしか、わたしはそのとき持っていなかった。
かんがえると、あなたがたの一生いっしょうほどいろいろと経験けいけんなさるものはありますまい。わたしたちは、永久えいきゅうに、このままでうごくことさえできないのであります。
雪くる前の高原の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
親方は用心深い、経験けいけんんだ人であるから、その朝わたしが起き出すまえに道中の食料しょくりょうつつんでおいた。パンが一本とチーズのかけであった。わたしたちはみんな食物を見て満足まんぞくした。
博士はかせは、へやへはいってきた小田おださんに、こんどの旅行りょこう北国ほっこくや、いろいろ経験けいけんしたことを、くわしくはなしました。
うずめられた鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぼくたち、わかいうちに、いろいろ経験けいけんするのもいいかもしれない。」と、高橋たかはしは、かたをそびやかして、こたえました。
世の中へ出る子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
「どこにも、あんなずるいやつがいるんだな。」と、年雄としおおもいました。かれは、半日はんにち散歩さんぽで、おもいがけない、いろいろのことを経験けいけんしたのであります。
丘の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
てられて、くるしみを経験けいけんしたねこは、そのときのおそろしさと、たよりなさと、空腹くうふくのつらさと、かなしさとをいつまでもわすれることができなかった。
小ねこはなにを知ったか (新字新仮名) / 小川未明(著)
こしひくくて、愛想あいそうがよく、ここへむまでには、いろいろの経験けいけんゆうしたであろうとおもわれる主人しゅじんは、わらって
らんの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
むしろ、たまには、これくらいのくるしい経験けいけんをするほうがくすりだとよろこぶようにさえいきいきとしていました。
台風の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから、ともだちは、自分じぶん養鶏ようけいによって経験けいけんをした、いろいろなことをかたって金持かねもちにかせましたので、金持かねもちは、自慢じまんしたのがずかしくなりました。
金持ちと鶏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人ふたり少年しょうねんは、これまで、女中じょちゅうなどに、こんな注意ちゅういがましいことをいわれた、経験けいけんをもっていませんでした。
おさくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この年老としとったさるは、この近傍きんぼうやまや、もりにすむ、獣物けものや、とりたちから尊敬そんけいされていました。それは、このやま生活せいかつたいして、おおくの経験けいけんっていたためです。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もっときけばなんでもおしえてくれるのであったが、まつは、みずからは経験けいけんのないことで、ただわたどりのするはなしをきいて、なかひろいということをさとるだけです。
曠野 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「にがい経験けいけんを、いつまでもわすれぬことです。そして、世界せかいじゅうが、平和へいわのためにほねをおり、ちからわせて、わがままや、傲慢心ごうまんしんをおさえなければなりません。」
夢のような昼と晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)
きた当座とうざは、自転車じてんしゃるけいこを付近ふきんにいって、することにしました。また、電話でんわをかけることをならいました。まだ田舎いなかにいて、経験けいけんがなかったからです。
空晴れて (新字新仮名) / 小川未明(著)
あおいろふくしたに、半生はんせい経験けいけんなやみと生活せいかつえてきたからだが、けて、あせばんでいました。
まったく経験けいけんのない、そして、どうするかもらないせい一は、すぐに返事へんじができなかったのです。
芽は伸びる (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるいは、戦地せんちにあって、それを経験けいけんしたとも、かぎらないとおもったからです。おじさんは、しばらく、なにかかんがえているようなようすだったが、やがて、かおげると
たましいは生きている (新字新仮名) / 小川未明(著)
小鳥ことりは、こんなにくらくなった、よるそらをかつてんだ経験けいけんをもっていませんでした。れるに、はやくから、安全あんぜんふかもりなかりて、えだまってねむりについたものです。
小さな金色の翼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もうながあいだやまきて、いろいろの経験けいけんをして、このあたりの山中さんちゅうなら、どんなみちっていれば、どこへいけば、なにがあるということから、またいろいろのばあいにたいして
道の上で見た話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうきくと、たとえ、経験けいけんのとぼしいぼくでも、そして、またふかいことはわからぬけれど、そうした社会しゃかい平和へいわで、しんみよいところであるということだけは、さとれるのでした。
兄の声 (新字新仮名) / 小川未明(著)
みんな人間にんげんというものは一経験けいけんしたこともとしをたつにつれて、だんだんとわすれてしまうものです。そして、もう一度いちどそれをりたいとおもってもおもすことができないのであります。
幾年もたった後 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さすがにおとうさんは、自分じぶん子供こども時分じぶんいぬや、ねこや、小鳥ことりや、そうした動物どうぶつがすきだったばかりでなく、ったことの経験けいけんがあるので、あたまからいけないとは、いわれませんでした。
青い石とメダル (新字新仮名) / 小川未明(著)
だれか一人ひとりわかいもののなかにいなければならなかったのは、ちょうど、人間にんげん社会しゃかいばかりでなく、獣物けものあつまりのなかでも、経験けいけんんだ、年寄としよりがいて、野原のはらから、野原のはらへ、やまから
なつかしまれた人 (新字新仮名) / 小川未明(著)