左樣さう)” の例文
新字:左様
かんがへてりやあ生身なまみをぐつ/\煮着につけたのだ、尾頭をかしらのあるものの死骸しがいだとおもふと、氣味きみわるくツてべられねえツて、左樣さういふんだ。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
結構けつこうらしい、ことばかりおもひます、左樣さういふことおもふにつけて現在げんざいありさまがいやいやで、うかして此中このなかをのがれたい、此絆このきづなちたい
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
太助とは、山の神のほこらのあるところへ餅を供へにも行つたことが有ります。都會の子供などと違ひ、玩具も左樣さう自由に手に入りません。
左樣さうか」とつたが、冗談じようだんでもなかつたとえて、べつわらひもしなかつた。細君さいくんきんまるにならない樣子やうす
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
左樣さうでせう、確かに左樣だらうと思つた、サ、何卒どうぞお二階にお上り下さい、實は東京からあなたをたづねていらした方があるのです、と言ふ。
熊野奈智山 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
おれが人殺しなどとは能も/\云をつたな是迄恩を掛しが却つて仇と成たかと云をお文は打消うちけしオヤマア夫は何程なんぼ口が在と云ても左樣さう自由ちやうはうなことを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
もつと左樣さうするまへ老人らうじん小聲こゞゑ一寸ちよつ相談さうだんがあつたらしく、金貸かねかしらしい老人らうじんは『勿論もちろんのこと』とひたげな樣子やうすくびかたせてたのであつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ちかやうでも海上かいじやうの三容易ようゐでない、無限むげん大海原おほうなばらたゞよつてつたあひだこそ、しまさへ見出みいだせば、たゞちにたすかるやうかんがへてつたが、仲々なか/\左樣さうかぬ。
我々われ/\隱居いんきよするにははやいです。ハヽヽ左樣さうでせうドクトル、隱居いんきよするのには。』郵便局長いうびんきよくちやうふ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
童子の美質のものの如きは左樣さうでは無い。純氣未だ毀れざるものは、晝間は極少々ばかり極めて適度に血が上昇して居る。即ち腦の方は少々餘計に血が上つて居る。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
待ちましたと云ふ諸事左樣さう來て貰ひたしさすがは下諏訪の龜屋なりとたゝ土産みやげにとて贈られたる名物氷餅こほりもちを旅荷物のうちへ入れてうまどほであツたと馬士まごにも挨拶してこゝ
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
左樣さうか、そんな病氣なら、少し炭を持つて來て呉れ、湯を沸すから。」と又淋しく笑ひました。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「サア、それは自分でも疑つたのです。けれども如何どう左樣さうとは考へられません。」
貝殻追放:016 女人崇拝 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
左樣さうさね」ともう梶棒を握り上げて突立つて居る車夫は
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
たしか左樣さうつてりまするけれどいますこしもうらことをいたしません、なるほど此話このはなしをかしてくださらぬが旦那樣だんなさま價値しんしやう
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
左樣さうだ、今頃いまごろ彌六やろく親仁おやぢがいつものとほりいかだながしてて、あの、ふねそばいでとほりすがりに、父上ちやんこゑをかけてくれる時分じぶん
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
とうさんが石垣いしがきそばとほたびに、蛇苺へびいちご左樣さうつてはとうさんをさそひました。蛇苺はびいちごどくだとひます。それをとうさんもいてつてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「そりやわたしもついなかつたの。けれども、屹度きつとあの相談さうだんよ。いまにいさんがかへつてたらいて御覽ごらんなさい。屹度きつと左樣さうよ」
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たれでも左樣さうだが、戰爭いくさ首途かどでとか、旅行たび首途かどですこしでもへんことがあれば、多少たせうけずにはられぬのである。
老叟はわらつて『左樣さうはるゝならそれでもよし、イザおいとまましよう、おほきにお邪魔じやま御座ござつた』と客間きやくまを出たので雲飛うんぴよろこもんまでおくり出て、内にかへつて見るといしが無い。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
念じこらへてナニサ左樣さうでもないのサと平氣をつくろひ輕井澤にりて鶴屋といふに着き風呂の先陣へ名乘て勇ましく風呂へ行きしが直ちにはまたぎて湯にいられず少しく顏をしはめたり
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
左樣さういふ過失や蹉躓に幸にして陷らぬとしても、一氣疾く盡きて、餘氣死せんと欲するやうになつて終ふから、書を讀んで居たのなら書を讀んで居ることも出來ず、字を寫して居たのなら
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
そして簡單に京都大阪奈良と答へてゐると、急に途中を遮つて、高野山に登つたらうと言ふ。まことに息を逸ませてゐる。私はもう素直に返事するのが不快になつた。で、左樣さうだ、と言つた。
熊野奈智山 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
左樣さうか。僕は親しくつきあつて居るやうに聞いたものだから……」
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
左樣さうで御座いませうねえ。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
れは其樣そんものもらひたくない、おまへそのうんといふはつまらぬところかうといふのではないか、一昨日をとゝひ自家うち半次はんじさんが左樣さうつてたに
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
自分は確に左樣さうだと思つた。それにしても今頃何の必要があつて、隣りのへや大根卸だいこおろしを拵えてゐるのだか想像が付かない。
変な音 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「それも左樣さうか。おい、かんでもい、かないで、大人おとなしくしてるとな、母樣おつかさんれにるんぢや。」
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なに左樣さうでない、このじう泥土どろと、松脂まつやにとで、毛皮けがわてつのやうにかためてるのだから、小銃せうじう彈丸たまぐらいでは容易ようゐつらぬこと出來できないのさ。』とわたくしなぐさめた。
左樣さう言へば、四五日前に私はめづらしい蜜蜂が斯の町中の軒先へ飛んで來たのを見かけました。
若し左樣さうで有つたならば、それは聽者にも談者にも、着手の處といふことが強く印記されて居なかつた爲として、省みなければならないので、教其の物に就て是非をす可きではないのであらう。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
それでも既う諦めてゐるので從順に左樣さうだよと答へて店先へ腰を下した。
熊野奈智山 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
『でなくても左樣さうえますね』
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
つけて向ふの村へ何處どこでも行きます廣さは十三里と云ますが左樣さうはございません狐が渡るといふのも昔の話でハイ鯉やふな鰻は大層捕れますダガ十月から彼岸時分まで氷で漁は出來ませんナニサ兎は少し取れますがけだもの何處どこ此處こゝも開けたので一疋も居なくなりましたハイ遊廓なんテ見られたもんでは
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
わたし一人子ひとりご同胞きやうだいなしだからおとゝにもいもとにもつたこと一度いちどいとふ、左樣さうかなあ、それでは矢張やつぱりなんでもいのだらう
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
宗助そうすけ障子しやうじてゝ座敷ざしきかへつて、つくゑまへすわつた。座敷ざしきとはひながらきやくとほすから左樣さうづけるまでで、じつ書齋しよさいとか居間ゐまとかはう穩當をんたうである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
左樣さうなんかねえ、年紀としせゐもあらう、ひとツは氣分きぶんだね、おまへさん、そんなにいやがるものを無理むりべさせないはういよ、心持こゝろもちわるくすりや身體からだのたしにもなんにもならないわねえ。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
斯樣こんな宿ぢや解らないサ。」とK君は笑つた。「料理屋へでも行つて飮食のみくひして見なけりや——僕はよく左樣さう思ふよ、其土地土地の色は彼樣あゝいふ場所へ行つて見ると、一番よく出てる。」
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
うき世を切り髮の今日この頃、我が身にかゝる浮雲さへ大方は拂ひつくして、心の月のたかく澄むやうにと願ひながら、さて左樣さうもならぬもの
花ごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「斯うして天城を越すやうなことは、一生のうちに左樣さう幾度も有るまいね。」
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
けれども、其頃自分の神經をあの位刺激した音の原因に就ては別に聞く氣も起らなかつた。で、あゝ左樣さうかと云つたなり朱泥の鉢を拭いてゐた。すると女が突然少し改まつた調子でんな事を云つた。
変な音 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まへさん何時いつ左樣さうつたね、うんときになるとれに糸織いとおり着物きものをこしらへてれるつて、本當ほんたう調製こしらへてれるかえと眞面目まじめだつてへば
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「僕の生涯には暗い影が近づいて來たやうな氣がするね、何となく斯う暗い可畏おそろしい影が——君は其樣そんなことを思ひませんか。尤も、僕には兄が死んでる。だから餘計に左樣さう思ふのかも知れない。」
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
左樣さうないてくれてはこまる、おたみどのもおなじやうになんことぞ、もうはれぬとふでもなきに心細こヽろぼそこといひたまふな、そのさまなにびらるヽことはなし
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
らへて郡長ぐんちやうせがれづらが些少いさゝかおんはなにかけての無理難題むりなんだいやりかへしてりたけれど女子をなご左樣さうもならずやなぎにうけるを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いといつてくださるおひとるもなし、浮氣うはきのやうに思召おぼしめしましようが其日そのひおくりでござんすといふ、いや左樣さうはさぬ相手あいてのないことはあるまい
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それは伯母さま兄さまのおそばにいつまでも暮らさるゝ物ならば夫れに上こす喜びはなけれど、左樣さうあられぬが世のならひと聞けば、これも詮なきこと
花ごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
左樣さうであらう、校内かうないいちひとだとおまへつねめたではないか、其人そのひとであるからけつしておまへうらんでぬ、其樣そんことはあるはずがない、いきどほりは世間せけんたいしてなので
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今日けふなほりまする、なほつて兄樣にいさんのおはかま仕立したてげまする、おめしふてげまする、それはかたじけなはやなほつてふてれとへば、左樣さうしましたらば植村樣うゑむらさまんでくださるか
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此通このとほ謝罪あやまりますほどに、うぞゆるあそばして、いつものやう打解うちとけたかほせてくだされ、御嫌機ごきげんなほしてくだされとぶるに、さては左樣さうかとすこれて、れならば其樣そのやう
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)