ゆふ)” の例文
氷はいづこにありや、この者いかなればかくさかさまに立つや、何によりてたゞしばしのまに日はゆふより朝に移れる 一〇三—一〇五
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
一時間ほどして船が再び棧橋さんばしに着いた時、函館はこだての町はしらじらとした暮靄ぼあいの中に包まれてゐたが、それはゆふべの港の活躍の時であつた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
つねなんともおもはぬ島田しまだがめ今日けふばかりはづかしいとゆふぐれのかゞみまへなみだくむもあるべし、きくのおりきとても惡魔あくまうまがはりにはあるまじ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
大なるは七八けん、種々のかたちをなし大小ひとしからず、川のひろき所とせまき処とにしたがふ。あしたさけはじめてゆふべにながれをはる。
おくられ今日の第一番客なりさてゆふ申刻なゝつ頃よりして立代たちかはり入代り語りそめをなす淨瑠璃じやうるり數々かず/\門弟は今日をはれと見臺に向ひて大汗おほあせ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ゆふつかた娘の風の心地に、いと寒しと云へば、たかどのへ往きてふすまかづきて寝よと云ひしかど、一人往かむはさうざうし、誰にまれ共に往きてよと云ふ。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
おもへば四年よとせの昔なりけり、南翠氏なんすゐしとも学海先生がくかいせんせい別荘べつさうをおとづれ、朝よりゆふまでなにくれとかたらひたることありけり、其時そのとき先生せんせいしめさる。
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
たれか宇宙ちうに迷はぬものやあらむ。あしたの雨ゆふべの風いづれ心をなやめぬものやあるべき。わびしく舞へるゆふべの蝶よひとりなるはいましのみかは。
北村透谷詩集 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
西にしそらはいま、みどろなぬまのやうに、まつゆふやけにたゞれてゐた。K夫人ふじんつて西窓にしまどのカーテンをいた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
たとへばわれ/\の時代じだいには、ゆふづくならば、ほんとうに夕方ゆふがたのおつきさまがてゐるとかんじるだけで滿足まんぞくするのに、このひとうたでは、むかし習慣しゆうかんしたがつて
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
さりとて用人ようにん若御新姐わかごしんぞ、さして深窓しんさうのとふではないから、隨分ずゐぶん臺所口だいどころぐち庭前にはさきでは、あさに、ゆふに、したがひのつまの、なまめかしいのさへ、ちら/\られる。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はるかすみたなびきうらがなしこのゆふかげにうぐひすくも 〔巻十九・四二九〇〕 大伴家持
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
あしたの紅顏こうがんゆふべに白骨はつこつとなる、ほんとだ、まつたくだ、南無阿彌陀佛と言ひたくならあな。
佃のわたし (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
ゆふ待たず我が眼くらきに聴きほくる早慶戦もラヂオに止みぬ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しづかにねむゆふまぐれ、ややきし落葉樹おちばぎ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
あさおもひ、またゆふおもふべし。』
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
おもてにしばしゆふづく日
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ゆふべの鐘をしたひて
まよわし (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
あさゆふとの雙手もろでもて
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
ゆふざれた
おさんだいしよさま (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
わがやどりて影をうつせる身のうづもるゝ處にてははやゆふなり、この身ナポリにあり、ブランディツィオより移されき 二五—二七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ゆふおはりての宵々よひ/\いゑいでては御寺參おんてらまい殊勝しゆしように、觀音くわんをんさまには合掌がつしようを申て、戀人こひびとのゆくすゑまもたまへと、おこゝろざしのほどいつまでもえねばいが。
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
聞て然らばいづれへ參りしや其行先ゆくさきを御存じなるか重四郎され今晩こんばん元栗橋もとくりばし燒場隱亡やきばをんばう彌十の處に於て長半が出來ると云によりゆふ申刻頃なゝつごろから行べしと拙者それがし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
本町橋ほんまちばし東詰で、西町奉行堀に分れて入城した東町奉行跡部は、火が大手近くえて来たので、ゆふ七つ時に又坂本以下の与力同心を率ゐて火事場に出馬した。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ゆふされば小倉をぐらやま鹿しか今夜こよひかず寝宿いねにけらしも 〔巻八・一五一一〕 舒明天皇
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
これはさすがに、井戸端ゐどばたで、のりけるわけにはかない、さりとて用人ようにん若御新造わかごしんぞ、さして深窓しんさうのとふではないから、隨分ずゐぶん臺所だいどころに、庭前ていぜんではあさに、ゆふに、したがひのつまなまめかしいのさへ
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ほのめしの枕詞まくらことばなるゆふづくといふ言葉ことばを、まづゑたのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
藤といへば早やも夏場所ゆふこめて鉄傘てつさんゆらぎラヂオとよもす
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ゆふくれなゐのあからみに、黄金こがねきししたふらむ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
ゆふげわたる鐘の音に
北村透谷詩集 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
千鳥鳴くなりゆふまぐれ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ゆふほし波間なみましづ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
むせびきのこゑきこえめて斷續だんぞく言葉ことばそのことともきゝわきがたく、なかばかかげしのきばのすだれかぜおとするゆふぐれさびし。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それこの者未だ最後のゆふをみず、されどおろかにしてこれにちかづき、たゞいと短き時を殘せり 五八—六〇
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
見定め出立致さん夫迄は遊び暮すべしとてなほにぎしくぞ居續ける其日はゆふ申刻なゝつ時分じぶんにて瀬川がひるの客も歸り何か用の有りとて内證ないしようへ行きしに右の一札を女房に讀聞よみきかせ居たるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
泊瀬河はつせがはゆふわた我妹子わぎもこいへかなどに近づきにけり 〔巻九・一七七五〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
予定通にすると、けふは天満組を巡見して、最後に東照宮とうせうぐう附近の与力町よりきまちに出て、ゆふ七つどきには天満橋筋長柄町ながらまちを東にる北側の、迎方むかへかた東組与力朝岡助之丞あさをかすけのじようが屋敷で休息するのであつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
五月ごがつあめつてゐるゆふぐれのことです。どこからともなく、あやめのいたはなのかをりがしてます。それが、かをりがするといふほどでなく、なんとなくかんじられるといふ程度ていどにほつてるのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
みづひかり白砂はくしやにたよつて、くちゆふべの宿やどいたのである。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あはれなるくるわの裏のかきつばたゆふさり覗く目もあるらむか
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
燕も巣に入るゆふとなりて
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
つみのない横町よこてうの三五らうなり、おもふさまにたゝかれてられてその二三にち立居たちゐくるしく、ゆふぐれごと父親ちゝおや空車からぐるまを五十けん茶屋ちやゝのきまではこふにさへ、三こううかしたか
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
東京よりにしをさなごゆふごとにわれをむかへてこゑをぐるも
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
立襖たてぶすまもみぢにあかるゆふを籠らふふかき日ざしなりける
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
昨日きのふぞ、ゆふに、あかつきに
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
革緒かわを雪駄せつたおとのみはすれど、馬鹿ばかばやしの中間なかまにはらざりき、夜宮よみやことなくぎて今日けふにちゆふぐれ、ふでやがみせ寄合よりあひしは十二にん、一にんかけたる美登利みどり夕化粧ゆふげしやうながさに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
八千ぐさのあさゆふなに咲きにほふ富士見が原に吾は来にけり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
立襖たてぶすまもみぢにあかるゆふを籠らふふかき日ざしなりける
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うたがひはかる柳闇花明りうあんくわめいさとゆふべ、うかるヽきのりやとれど品行方正ひんかうはうせい受合人うけあいてをうければことはいよいよ闇黒くらやみになりぬ、さりながらあやしきは退院たいヽんがけに何時いつ立寄たちよれのいゑ
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ゆふ早き庫裏くりのはひりは日たむろと築地ついぢめぐらしてあか中門ちゆうもん
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)