階段かいだん)” の例文
おかみさんは、ちょうど階段かいだんの上に立っていて、いまなかにはいろうとしているところでした。おかみさんは漁師の手をとって
ウィスキーのびんをさげて、ひっかえしてきたとき、階段かいだんの下にしかれているマットに、ひと所、黒いしみができているのが目についた。
神慮しんりょをおそれぬばちあたり、土足どそく、はだかの皎刀こうとうを引っさげたまま、酒気しゅきにまかせてバラバラッと八神殿しんでん階段かいだんをのぼりかけた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あわてて顔をあげた私の眼に、大きな建築の入口の階段かいだんらしいところを急ぎ足におりてゆく着物を着た男のうしろ姿が映った。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
みことは、それをもすかさず、階段かいだんの下に追いつめて、手早く背中せなかをひっつかみ、ずぶりとおしりをお突きしになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
ゴウ、ゴウ、と、ひびきをたて、電車でんしゃがホームへはいると、まもなく、どやどやと階段かいだんりて、人々ひとびとさきあらそって、改札口かいさつぐちからそとてきました。
夕焼けがうすれて (新字新仮名) / 小川未明(著)
スモーランドは、屋根やねにエゾマツのえている高い家のようなものです。この家の前には広い階段かいだんがあって、それには三つの段々がついています。
「ガロフォリというのは、ルミ、おまえに話した親方だよ。ここが住まいだ」階段かいだんを上がりながら親方はこう言った。
王女はなきじゃくりながら、高いとう階段かいだんをころがるように走りおりて、お父さまの王様の部屋にとびこみました。
巨男の話 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
そのはまるで半狂乱はんきょうらん頭髪かみみだして階段かいだんもとしまろび、一しょう懸命けんめいなが祈願きがんするのでした。——
燈光とうくわうはパツとえる、船長せんちやうおどろいてかわ拍子へうしあし踏滑ふみすべらして、船橋せんけう階段かいだんを二三だん眞逆まつさかさまちた。
おかあさんはまた入り口の階段かいだんを上ってみますと、はえしげった草の中に桃金嬢てんにんかと白薔薇との花輪が置いてありましたが、花よめの持つのにしては大き過ぎて見えました。
しかしこのみつつの階段かいだんは、あらゆる人類じんるいかならずこの順序じゆんじよでもつて通過つうかするものではありません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
すぐきあたりの大きな室は、たしか階段かいだん室らしく、む稲光りが見せたのでした。
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
わたしたちは、蝙蝠傘かうもりがさを、階段かいだんあづけて、——如何いか梅雨時つゆどぎとはいへ……本來ほんらい小舟こぶねでぬれても、あめのなゝめなるべき土地柄とちがらたいして、かうばんごと、繻子張しゆすばり持出もちだしたのでは
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
侍従長は御殿じゅうの階段かいだんを上ったりりたり、廊下ろうか広間ひろまのこらずかけぬけました。でもたれにあってきいても、さよなきどりのはなしなんか、きいたというものはありません。
それでも其處そこにはもう幾度いくたびふねがつけられたとえて足趾あしあとらしいのが階段かいだんのやうにかたちづけられてある。勘次かんじ河楊かはやなぎえだけて他人ひと足趾あしあとんだ。えだがざら/\とかれござれてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
町立病院ちやうりつびやうゐんにはうち牛蒡ごばう蕁草いらぐさ野麻のあさなどのむらがしげつてるあたりに、さゝやかなる別室べつしつの一むねがある。屋根やねのブリキいたびて、烟突えんとつなかばこはれ、玄關げんくわん階段かいだん紛堊しつくひがれて、ちて、雜草ざつさうさへのび/\と。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
先生は磯吉の手をとって、いっしょに階段かいだんをあがろうとした。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
さあ この入口から階段かいだんを下りませう
するとベッドは、まるで六とうの馬にでもひかれているように、敷居しきいをこえ、階段かいだんをのぼったりおりたりして、ごろごろとうごきつづけました。
やがて時計とけいが、十一時半じはんになろうとしたときです。ゴウ、ゴウといってあらたに電車でんしゃがつくと、まもなく人々ひとびとが、ばらばらと階段かいだんりてきました。
夕焼けがうすれて (新字新仮名) / 小川未明(著)
ホールは気がるにひきうけ、じぶんの部屋へやからいいつかったびんをとりだし、穴蔵あなぐらへゆく階段かいだんをかけおりようとした。
そこには凱歌がいかをあげた忍剣にんけん小文治こぶんじ民部みんぶ咲耶子さくやこなどが、あらためて、伊那丸を宮の階段かいだんに腰かけさせ、無事をよろこんでほッと一息ついていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とう階段かいだんも、あまりひどくきしむので、だれもきみわるがって、のぼらなくなりました。そこである年、村人たちは、教会をたてなおそうという、相談そうだんをしました。
丘の銅像 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
大体だいたい日本にほん言葉ことばが、肉眼にくがんえないものをことごとかみってしまうから、はなはだまぎらわしいのでございます。かみという一なかにはんでもない階段かいだんがあるのでございます。
黒ネズミたちが一階にいくのに使っていたかべの中の通路を、すぐに発見したのです。しかし、このせまい急な階段かいだんをよじのぼるまえに、またもやあたりに気をくばりました。
しろくびすげました、階段かいだんすべりる、と、あとから、ころ/\ところげて附着くツつく。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その階段かいだんあついどろがこちこちにもって、ややもするとすべって足を取られそうになった。まちといい、家といい、はしごだんといい、いよいよわたしを安心させる性質せいしつのものではなかった。
わたくし二人ふたり案内あんないしたがつて、鐵門てつもんくゞつたが、はじめ十ばかりのあひだかゞめてあゆほどで、ひろくなつたとおもふと、まへには、いわきざんでまうけられたけわしい階段かいだんがある、その階段かいだんつくすと
この高句麗時代こうくりじだい古墳こふん平壤へいじよう附近ふきんのほか朝鮮ちようせんきた支那しなとの國境こつきようにもありまして、そこには將軍塚しようぐんづかなどといふのついてゐる、いしつくつたエヂプトの階段かいだんぴらみっとのようなおほきなはかがあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
町立病院ちょうりつびょういんにわうち牛蒡ごぼう蕁草いらぐさ野麻のあさなどのむらがしげってるあたりに、ささやかなる別室べっしつの一むねがある。屋根やねのブリキいたびて、烟突えんとつなかばこわれ、玄関げんかん階段かいだん紛堊しっくいがれて、ちて、雑草ざっそうさえのびのびと。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
階段かいだんからつきおとしてさ、おかげでうちのひとは、かたっぽうの足をおっちまったんだよ。あんなろくでなしは、さっさとうちからつれてっとくれ。
伊那丸いなまるはしずかに、階段かいだんからおりて、梅雪入道ばいせつにゅうどうの手をとり、宮の板縁いたえんへ迎えあげて、礼儀ただしてこういった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くらとうなかは、つめたい、しめった空気くうきがみなぎっていました。また階段かいだんには、ひとほねだか、獣物けものほねだかわからぬようなものが、らばっていたりしました。
黒い塔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
怪物かいぶつと戦う博士はくしは、倒されたり起きあがったりしながら、二階の廊下ろうかから階段かいだんのおどり場へのがれてきた。怪物のガウンが宙を飛んできて、博士におそいかかって倒した。
この大きな石の建物たてものは、かべ天井てんじょうがたいへんあついので、内がわには、ただ厚い壁だけがあるようなありさまです。階段かいだん廊下ろうかもせまくて、部屋へやはほんのわずかしかありません。
無論むろんこれもと生神様いきがみさまからは、沢山たくさん御分霊ごぶんれい……つまり御子様おこさまがおうまれになり、その御分霊ごぶんれいからさらまた御分霊ごぶんれいうまれ、神界しんかいから霊界れいかい霊界れいかいから幽界ゆうかいへと順々じゅんじゅん階段かいだんがついてります。
かように人類じんるいいしからどう、あるひは青銅せいどうをへて、ぎにてつをもつて刃物はものをつくる時代じだいとなりました。このみつつの時代じだい考古學者こうこがくしやは、文化ぶんか三時代さんじだい、あるひは文化ぶんかみつつの階段かいだんづけるのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
松吉のうしろの階段かいだんをのぼって、二階へ上がってしまいました。
いぼ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
その塔には、階段かいだんもなければ、入り口もありません。ただ、ずっと高いところに小窓こまどがひとつあるきりでした。
かのじょは、それを大事だいじそうにもって、階段かいだんくだそとました。つめたいかぜに、セルロイドのかざぐるまは、さらさらと、かわいたおとをたてて、まわるのでありました。
かざぐるま (新字新仮名) / 小川未明(著)
でも、王子は、きょうは計略けいりゃくをめぐらして、階段かいだんじゅうにチャンというべたべたするくすりをぬらせておきました。
正吉しょうきちは、しろ百合ゆりはなと、あかいカーネーションのはなもとめました。かれは、えき階段かいだんのぼりながら
世の中へ出る子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
おかみさんはおもいかごをかかえて、階段かいだんを三つあがって、仕立屋さんのところへきました。そして、いわれるままに、ジャムのつぼをのこらずあけてみせました。
そのなかに、かたをそびやかして、むねり、元気げんきあるきつきで、階段かいだんりるとまっすぐに改札口かいさつぐちかってきたのは、達夫たつおでありました。おかあさんはるとはしりました。
夕焼けがうすれて (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから、ヨハネスはお城じゅうの階段かいだんをのぼったりおりたりして、わかい王さまを案内してまわりました。そして、たからものも、りっぱなへやも、ひとつのこらず見せました。
おじいさんは、神前しんぜん階段かいだんからこました。そして、いのちたすけてくだされたかみさまにかって、わせておがんでから、みちほうへ、ゆきなかおよぐようにしてていきました。
夜の進軍らっぱ (新字新仮名) / 小川未明(著)
だけど、あそこのひびきあなのむかいがわの階段かいだんの上に、だれだか立っていましたよ。
二人ふたりは、階段かいだんりて、はなしながら校門こうもんそとたのでありました。
赤土へくる子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)