やが)” の例文
吾々三人馬車に乗りやがて其ビヽエン街に達しますと藻西太郎は丁度夕飯を初める所で妻と共に店の次の間で席につこうとて居ました
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
あゝ、おさだ迄かと思うとペタ/\と臀餅しりもちいて、ただ夢のような心持で、呆然ぼんやりとして四辺を見まわし、やがて気が付いたと見えて
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
働き恐れ入り奉つる何卒彼方あれへ入らせらるゝ樣にとふすまを明れば上段に錦のしとねを敷前には簾を垂て天一坊が座を設たりやがて赤川大膳を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しづく餘波あまりつるにかゝりて、たますだれなびくがごとく、やがてぞ大木たいぼく樹上きのぼつて、こずゑねやさぐしが、つる齊眉かしづ美女たをやめくもなかなるちぎりむすびぬ。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
今日けふごと浪路なみぢおだやかに、やがあひとも※去くわこ平安へいあんいはひつゝ芙蓉ふようみねあふこと出來できるやうにと只管ひたすらてんいのるのほかはないのである。
大谷川がもう恐ろしく發達して大きな河原になつてゐるのを越して、車はひた走りに大桑といふを過ぎると、やがて稀有なる好景に出會した。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
山崎の宝寺に日頃よしみのある僧を頼って行ったが、寺から伏見へ訴え出たので、やがて検使が立ち、主人秀次と同じ七月の十五日に腹を切った。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そのまるい帽子の影はやが木隠こがくれて見えなくなつたが、ミハイロは背後うしろで手を組むで、まだ立つてゐる。何処へ行処ゆきどころもない。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
眺めしがやがて道人の前へ一揖いついふして失禮ながら其の革提かばんは東京で何程ぐらゐ致しますと問かけしが其の樣子アヽ欲しやこれを
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
やがて一人の男が鉄砲三四挺一所にかついでやって来たが、其跡からどやどや人の跫音して、男女づれが大勢やって来た。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
ト云ッて顔をしかめたが、お勢はさらに気が附かぬ様子。しばらく黙然として何か考えていたが、やがてまた思出し笑をして
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
自分がなり善なりと信ずるに於ては、それを実行するに寸刻の猶予もしない——こういうことを思って、やがてはこれを主義ともするようになった。
ソクラテス (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
さりとは気ままの仰せに有難うぞんじますと言ひしは覚えで、やがては車の上に小石川こいしかははまだかまだかともどかしがりぬ。
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此日は之れ当年第一の夏漁、やがて見る村童頻々として来往し、人々一尾を携へざるなく、家々鮮肉を味はざるなし。
客居偶録 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
仏蘭西フランス全体に一時人口の減少する事実があるにしても其れが永久に続くとは断ぜられず、ことに人口の減少がやがて国家の萎靡ゐびを招く原因だとは思はれ無い。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
唱歌終りて葉石の答礼あり、それより酒宴は開かれ、各〻おのおの歓を尽して帰路につきたるは、やが点燈頃ひともしごろなりき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
やがてお客達は銘々用意して来た合財袋を開けて手拭とシヤボンを取出した。合財袋の裏にはゴムが取り付けてあつて濡手拭を入れても大丈夫のやうに出来てる。
坊つちやん「遺蹟めぐり」 (新字旧仮名) / 岡本一平(著)
その時私は鉄砲洲てっぽうずすまって居て、鉄砲洲から小石川までやがて二里もありましょう、毎朝早く起きて行く。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
って行く。あしが地になずんで、うごきするごとに痛さはこらえきれないほど。うんうんという唸声うめきごえ、それがやがて泣声になるけれど、それにもめげずにって行く。やッと這付はいつく。
やが嫁入よめいり行列は、沈々ちんちん黙々もくもくとして黒い人影は菜の花の中を、物の半町はんちょうも進んだころおい、今まで晴れていた四月の紫空むらさきぞらにわかに曇って、日があきらかに射していながら絹糸のような細い雨が
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
やがてそれがハラハラと四方に飛散するさまは、あたかも線香花火のきえるようであった、雨はしのつかねてなぐる如きドシャ降り、刻限は午前二時だ、僕ならずとも誰でもあまり感心かんしんはしまい。
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
不用意に露宿するような憂目うきめも見ず、麓にちかい木立道を提灯ちょうちんの明りにみちびかれ、やがて親切なある農家の広い縁がわに腰を掛け、星を隠して巨人のように屹立している真暗な武甲山を仰ぎながら
武甲山に登る (新字新仮名) / 河井酔茗(著)
やがてロイドレ街にたっすれば町の入口に馬車を待せ、幾度か彼の嚊煙草にてしいて顔色を落着けつゝ、二十三番と記したる館を尋ねて
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
やが船尾せんびかたると、此處こゝ人影ひとかげまれで、すで洗淨せんじようをはつて、幾分いくぶん水氣すゐきびて甲板かんぱんうへには、つきひかり一段いちだん冴渡さへわたつてる。
女郎屋から馬を引張って参る者はありますが、馬を繋ぐのは珍しい事で、やがて案内を云い入れますと主人あるじの半五郎は直ぐ様それへ出て参り
見付手當てあたり次第に掻浚かきさらもとし道より出行けりお菊は盜賊たうぞくの立去るを見てやがて家内を起せしかば利兵衞りへゑ始め走來りて庭にお竹が殺され居るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さつあをつた面影おもかげと、ちらりとしろ爪尖つまさきばかりののこつたときで——けものやがえたとおもふと、むねうつしたかげ波立なみだち、かみ宿やどしたみづうごいた……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
問ひて餘の字を付加へらるゝ時はスハヤと足をさすりたり又まだといふやが其處そこならんと思ふて問ふとき付加へられて力を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
さりとはまゝのおほせに有難ありがたうぞんじますとひしはおぼえで、やがてはくるまうへ小石川こいしかははまだかまだかともどかしがりぬ。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
大きくなって舟に乗せると、不思議そうに山を見水を見て居たが、やがもみじのような手に水をすくってはこぼし掬ってはこぼして、少しも恐れる様子がない。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
源太はゑみを含みながら、さあ十兵衞此所へ来て呉れ、関ふことは無い大胡坐おほあぐらで楽に居て呉れ、とおづ/\し居るを無理に坐にゑ、やがて膳部も具備そなはりし後
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
機関車は矢張ぶう/\小言こごとを言つてゐる……其中に先刻さつきの連中が酒の瓶や紙包みをげて飯屋を出て来て、機関方きくわんがたが機関車へ這上はひあがると……やがて汽車は動き出した。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
自分は雷ヶ浦の力で木偶でくの如く取扱はれ最後に頭を小常陸君の右肩へトント打突けられた。頭は暫く肉の中に埋まりやがて弾ね返される時呼吸いきをすつかり切らした。
相撲の稽古 (新字旧仮名) / 岡本一平(著)
中島なかじまの鉄の吊橋を渡つて再びツウルの街の方へ引返すと、みちやがてカテドラルの古塔の前へ出た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
この二人ににんことに典獄より預けられて、読み書き算盤そろばんの技は更なり、人の道ということをも、説き聞かせて、及ぶ限りの世話をなすほどに、やがて両女がここに来れる仔細しさいを知りぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
て見たり起きて見たり、立て見たり坐ッて見たりして、今か今かと文三が一刻千秋の思いをしてくびを延ばして待構えていると、やが格子戸こうしどの開く音がして、縁側に優しい声がして
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
国手は手を血塗ちみどろにしてあしの処で暫く何かやッていたが、やが此方こちらを向いて
目科も立留りてしば彼方此方かなたこなたを眺め居たるがやがて目指せる家を見出せし如く突々つか/\歩去あゆみさるにぞ藻西の家に入る事かと思いの外
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
召て其方ひそかに彼が旅宿のへんへ參り密々明日の出立の時間じかんを聞合せ參るべしと申付らる近習はやがて上本陣の邊りへ立越便宜びんぎ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
馬は良し乗人のりては上手でぽん/\乗切のっきってやがて小原山の中央なかほどへ参りますと、湯殿山ゆどのさん深彫ふかぼりのした供養塔が有ります、大先達だいせんだつ喜樂院きらくいんの建てました物で
買ふうちやがて名代の蕎麥を持ちいだす信濃路一体に輪嶋塗わじまぬり沈金彫ちんきんぼりの膳椀多しこれ能登よりの行商ありて賣り行くならん大きなる黒椀に蕎麥を山と盛りつゆ
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
やがあめまつたれるとともに、今度こんど赫々かく/\たる太陽たいようは、ごと吾等われらうへてらしてた。印度洋インドやうちう雨後うご光線くわうせんはまた格別かくべつで、わたくしころされるかとおもつた。
つきのはじめにあきてば、あさ朝顏あさがほつゆはあれど、るゝともなき薄煙うすけむりのきめぐるもひでりかげほのほやまくろそびえて、やがあつさにくづるゝにも、熱砂ねつさみなぎつて大路おほぢはしる。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
物言ものいへばやがあらそひの糸口いとくち引出ひきいだし、いてうらんでれ/\のなかに、さりともくからぬ夫婦めをとおりふしのこなしわすれがたく、貴郎あなたうなされ、あなされとへば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
百川ひやくせん海に入るごとく瞬くひまに金銭の驚かるゝほど集りけるが、それより世才にけたるものの世話人となり用人なり、万事万端執り行ふてやがて立派に成就しけるとは
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ミハイロは一円貰つて、礼を言つて、また砂を盛つた無蓋車に乗ると、やがて汽車は出た。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
あらがうべきすべもなくて、言わるるままに持ち合せの衣類取り出し、あるほどの者を巻きつくれば、身はごろごろと芋虫いもむしの如くになりて、やがて巡査にともなわれ行く途上みちの歩みの息苦しかりしよ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
やがて浮世のひまが明いて、かたみに遺る新聞の数行すぎょうに、我軍死傷少なく、負傷者何名、志願兵イワーノフ戦死。いや、名前も出まいて。ただ一名戦死とばかりか。兵一名! 嗟矣ああの犬のようなものだな。
やがて棹を返そうとすると、舟の中に白いものが落ちて居る。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
好まざれど唯故郷に帰る嬉さにて其言葉に従いしなりやがつれられて長崎に来り見れば其弟の金起と云えるは初め妾が長崎の廓にて勤めせしころ馴染を
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)