すみや)” の例文
私は聡明と沈着とを備えられた婦人たちが、この普通選挙運動について、各自の意見と態度とをすみやかに一定して頂きたいと思います。
婦人も参政権を要求す (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
御夢想ごむさうくすりぢやに……なん病疾やまひすみやかになほるで、ひないな……ちやうど、來合きあはせたは、あなたさまみちびきぢや……あだにはおもはれますな。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
異にせんとしている。人のまさに死なんとするやその云うところよしと云う。このに及んで申すことあらば、いざすみやかに申すがよい
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
また嘴を粟の真中に落す。また微な音がする。その音が面白い。静かに聴いていると、丸くてこまやかで、しかも非常にすみやかである。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
蟠「あゝ返しますとも、ほかならぬ文治郎殿がおいでになったことだから、あいと二つ返事で返さなければならぬ、すみやかにお返し申します」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かねて双方の間に約束いたしおきたることは、もし当山に万一の事ありし時は、すみやかに私がまかり出て、精々せいぜい御助力いたすべく——
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
大日本帝國だいにつぽんていこく海軍大佐櫻木重雄かいぐんたいささくらぎしげを本島ほんとう發見はつけんす、いま大日本帝國だいにつぽんていこく占領地せんりようちなり、おくれてこのしま上陸じやうりくするものは、すみやかにはたいて立去たちさ
掛て振舞ふるまひでも致すやうにたく夫に付金の五六十兩も持參で御出成いでなさるならすみやかに御相談が出來ますと云ひながら目顏めがほで夫れと知らするてい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
どんな印章でもすみやかに応じます、住所バン、蔵書バン、何でも御註文に預りたいといふ手紙を出したところ五六個ほど註文申込があつたが
老残 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
さてまた正しきは人の持前とは申せども、人は至ってさときものゆえ、正しからぬ事に感ずるもまたすみやかなり。能々よくよく心得べきことならずや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
この日の午後台湾軍司令官と、水越台中州知事とは埔里で会見、事件のすみやかなる終結を目ざして協議するところがあった。
霧の蕃社 (新字新仮名) / 中村地平(著)
勘次かんじ萬能まんのうをぶつりとんではぐつとおほきなつちかたまり引返ひきかへす。おつぎはやうやちひさなかたまりおこす。勘次かんじすみやかに運動うんどうしてずん/\とさきすゝむ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
バクテリヤは次から次と分裂ぶんれつ死滅しめつしまるですみやかに速かに変化してるのです。それを殺すと云ったところで馬を殺すというようのとは大分ちがいます。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
無論むろんわからないわ』とあいちやんはきはめてすみやかにこたへて、『けど、それはまつたくそんなにながあひだおなとしでゐるからだわ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
しかしその狐も船に近づかず、遠くから探るような様子をしたのちに、氷を超えてすみやかに逃げ去ってしまった。
「大名の屋敷に非人が立入られないならば、非人の小屋に大名の立入るのも不都合では御座らぬか、お互いにきずのつかぬうちに、すみやかに御立去りを願いい」
若しこの世界にてかなふものならば、我は如何なるものといへども必ず君のためにすみやかに調へむ、と。哲人しばらくして漸やくものうげに答ふらく、我にたゞ一の願あり。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
この書面しょめんあさはや親御樣おやごさまわたしてくれいとまうされ、すみやかに此處こゝ立去たちさらずばころしてしまふぞとおどされました。
晏子あんし(五〇)戄然くわくぜんとして衣冠いくわん(五一)をさめ、しやしていはく、『えい不仁ふじんいへども、やくまぬかれしむ。なんつをもとむるのすみやかなるや』と。石父せきほいはく、『しからず。 ...
私はそこを歩く度にいつも人事の変遷のすみやかなのと時代の推移の急なのとを感ぜずにはいられなかった。
日本橋附近 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
おそれおおくも、皇軍の高度機械化を一日もすみやかに達成するため、特に地下戦車の設計製作の重責じゅうせきをお前がになっているのである。お前は、それを忘れてはならぬ。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
国民の耳目じもく一に露西亜ロシヤ問題に傾きて、只管ひたすら開戦のすみやかならんことにのみ熱中する一月の中旬、社会の半面をかへりみれば下層劣等の種族として度外視されたる労働者が
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
電光朝露でんこうちょうろよりも、なおすみやかなものだと思いませんか……後生がないという人は、一日の間に昼夜がないというのと同じことです、死は暫くの眠りでございます……
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
翌日、李陵りりょう韓延年かんえんねんすみやかにくだれと疾呼しっこしつつ、胡軍の最精鋭は、黄白のを目ざして襲いかかった。その勢いに漢軍は、しだいに平地から西方の山地へと押されて行く。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
当初はじめ貴様に棄てられた為に、かう云ふ堕落をした貫一ならば、貴様の悔悟と共に俺もすみやかに心をあらためて、人たるの道に負ふところのこの罪をつぐなはなけりや成らん訳だ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しかし今しばらく、ゴドウィン氏の平等主義が実現したと仮定し、そしてかくも完全な社会形態の下においていかにすみやかに困難が生ずると予期し得るかを考えてみよう。
こちらの世界せかい引移ひきうつってからのわたくしどものだい一の修行しゅぎょうは、るべくはやみにく地上ちじょう執着しゅうちゃくからはなれ、るべくすみやかにやくにもたぬ現世げんせ記憶きおくからとおざかることでございます。
もちろん、一歩も二歩も間隙のある恋愛であったにしろ、お互に理解し合った愛情を堅く信じていた美沢が、かようにすみやかに自分の手から離れるとは思っていなかった。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
其年暦を計るにおよそ百年に余れり。もしは此者このものにてもあらんかと也。久太夫すみやかに命を助け山に追ひ返しけるに、その走ること甚だ早し。其後又之を見る者無しといへり。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
しばらくして黄金丸は、鷲郎に打向ひて、今日朱目がもとにて聞きし事ども委敷くわしく語り、「かかる良計ある上は、すみやかに彼の聴水を、おびいだしてとらえんず」ト、いへば鷲郎もうち点頭うなず
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
「帝国陸軍の最も重要な秘密書類が、×国間謀の手に入った。貴官はすみやかにその書類を奪回せよ。これが本官の命令である。なおくわしい事情は情報課長から説明するじゃろう」
計略二重戦:少年密偵 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
また早くより読み書きの道を学ぶに上達すこぶるすみやかにして二人の兄をさえ凌駕りょうがしたりき
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ともかくも弱きものが強きものにしがみつく事は、やむをえないけれども、あらゆるものをすみやかに卒業して、自分自身の力によって泳ぎ得るものが近代の技法を感得するものだろう。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
しばらく宥恕ゆうじょいたし候につき、すみやかに姦徒かんとの罪状を糺明きゅうめいし、厳刑を加うべし。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
かくのごときの信仰治療法は無益なり、しかれども我信ぜざるを得ざれば信ずるなり、見よ下等動物の傷痍きずいやすにおいて自然法のすみやかにして実功多きを、清浄なる空気にまさる強壮剤のあるなく
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
あるいは「釜中ふちゅうの鯉魚」と答え、あるいは「あみとお金鱗きんりん」と答えはするが、ついに鯉魚あるを知らず、おのれに身あるを知らず、眼前に大衆あるを知らずして、問いに対する答えのすみやかなること
鯉魚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「うむ。その神尾喬之助は何処いずくにおると申すのか。すみやかに言えッ!」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
地震ぢしん其根源そのこんげん場所ばしよおいては緩急かんきゆう各種かくしゆ地震波ぢしんぱ發生はつせいするものであつて、これがあひともなつて四方八方しほうはつぽうひろがつてくのであるが、此際このさいきゆう振動しんどうをなす波動はどうみちすがら其勢力そのせいりよくもつとすみやかに減殺げんさいされるから
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
そして遅疑した跡をお貞が認め得ぬ程すみやかに、「ええ」と答えた。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
秋になってからは肥立ちもすみやかであった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
C別の声 飛行隊はすみやかに出動せよ。
づる大黒傘だいこくがさうへゆきつもるといふもなきばかりすみやかに立歸たちかへりて出入でいり車宿くるまやど名殘なごりなく出拂ではらひて挽子ひきこ一人ひとりをりませねばおどくさまながらと女房にようばう口上こうじやうそのまゝのかへごとらばなにとせんおたくにおあんじはあるまじきに明早朝みやうさうてう御歸館ごきくわんとなされよなど親切しんせつめられるれど左樣さうもならず
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
川上の恢復かいふくすみやかであった。とはいえ、川上は健康を恢復すれば、またも行方ゆくえ定めぬ波にまかせて、海の旅に出ると言ってきかなかった。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
まだ/\残り居ります訳で、御安心下すって何卒どうかあなた様の御盃おさかずきを頂戴致して、けがれたる臓腑を洗い清めましてすみやかに立退たちのきまする心底で
一日いちにちすみやかに日本につぽんかへりたいのは山々やま/\だが、前後ぜんご事情じじやうさつすると、いま此人このひとむかつて、其樣そん我儘わがまゝはれぬのである。
しか熊手くまでつめすみやかに木陰こかげつちあとつける運動うんどうさへ一は一みじかきざんでやうふゆ季節きせつあまりにつめたく彼等かれらこゝろめてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
知りながら夫となしに梅をすみやかに離縁りえんに及び其上叔母へ金子迄をつかはしたるを阿容々々おめ/\と二人ながら引取親子たがひに妻と致し其上にも厭足あきたらず傳吉を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
故に商売の正路に拠らずしてすみやかに利潤を得んと欲し、あるいは外国と争端を起し、時勢止むべからざるを以て本国より力を尽しその争論を助くるに至る。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
前論士も又その意味で云われたようである。但しただすみやかにかの西方の覚者に帰せよと、これは仏教の中に於て色々諍論そうろんのある処である。今はこれを避ける。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それに一念が籠もっているのでその上達のすみやかさ、半年余り経った頃にはかなり太い生の立ち木を股から斜めに幹をかけてサックリ木刀で割ることが出来た。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)