線香せんかう)” の例文
しな塔婆たふばまへにそれから其處そこら一ぱい卵塔らんたふまへ線香せんかうすこしづゝ手向たむけて、けてほつかりとあかつた提灯ちやうちんげてもどつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それから最初さいしよのうちは、めてはるのは難儀なんぎだから線香せんかうてゝ、それで時間じかんはかつて、すこづゝやすんだらからうとやう注意ちゆういもしてれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
昼寐ひるね夜具やぐきながら墓地ぼちはう見下みおろすと、いつも落葉おちばうづもれたまゝ打棄うちすてゝあるふるびたはか今日けふ奇麗きれい掃除さうぢされて、はな線香せんかうそなへられてゐる。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
宴會客えんくわいきやくから第一だいいち故障こしやうた、藝者げいしやこゑかないさきに線香せんかうれたのである。女中ぢよちうなかまが異議いぎをだして、番頭ばんとううでをこまぬき、かみさんが分別ふんべつした。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それからあなたの俗名ぞくみやうつき華魁おいらんと書いて毎日線香せんかうげてりますが夢のやうでございます。
まへには此横穴このよこあなまへまで、參詣人さんけいにんせたのであるが、それでは線香せんかうくすべたり、賽錢さいせん投付なげつけたりするので、横穴よこあな原形げんけい毀損きそんするおそれがために、博士はかせ取調上とりしらべじやう必用ひつようから、先日せんじつ警察けいさつ交渉かうしよう
まして他人たにんれにかかこつべき、つきの十日にはゝさまが御墓おんはかまゐりを谷中やなかてらたのしみて、しきみ線香せんかう夫〻それ/\そなものもまだおはらぬに、はゝさまはゝさまわたし引取ひきとつてくだされと石塔せきたういだきつきて遠慮ゑんりよなき熱涙ねつるい
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お氣の毒でならないが、あの騷ぎの中で俵屋へお線香せんかう
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
今朝けさ平素ふだんよりもはげしくにほひわたる線香せんかうけむりかぜになびいて部屋へやなかまでながんでくるやうにもおもはれた。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
位牌ゐはいぬし戒名かいみやうつてゐた。けれども俗名ぞくみやう兩親ふたおやといへどもらなかつた。宗助そうすけ最初さいしよそれをちや箪笥たんすうへせて、役所やくしよからかへるとえず線香せんかういた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
... がらん/\とけてくのは、號外がうぐわいではなささうだが、なんだい。」ばあさんが「あれは、ナアモ、藝妓衆げいこしゆ線香せんかうらせでナアモ。」そろ/\風俗ふうぞく視察しさつにおよんで
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すゝつた佛壇ぶつだん菜種油なたねあぶらあかりはとほくにからでもひかつてるやうにぽつちりとかすかにえた。おふくろのよりも白木しらきまゝのおしな位牌ゐはいこゝろからの線香せんかうけぶりなびいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
みなさんはお通夜つやのおかたか、おや/\物騒ぶつさうだな、通夜つやばうさんがさけ酔倒ゑひたふれてる、炮砥はうろく線香せんかうをどつさりして、一本花ぽんばな枕団子まくらだんご旧弊きうへいだね、これから思ふと地獄ぢごくはう余程よつぽどひらけた。とふお話で。
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
消化こなれないかた團子だんごとゞこうつてゐるやう不安ふあんむねいだいて、わがへやかへつてた。さうしてまた線香せんかういてはりした。其癖そのくせ夕方ゆふがたまですわつゞけられなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
廊下らうか二曲ふたまがり、またなかばにして、椽続えんつゞきの広間ひろまに、線香せんかうけむりなかに、しろだんたかきづかれてた。そでそでかさねたのは、二側ふたかは居余ゐあまる、いづれもこゑなき紳士しんし淑女しゆくぢよであつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うしてあひだはる彼岸ひがん日南ひなた垣根かきねには耳菜草みゝなぐさその雜草ざつさういきほひよくだして桑畑くはばたけ畦間うねまにはふゆしたなづな線香せんかうやうたうもたげて、さき粉米こごめはなあつめた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いしもまだあたらしいはかまへつて、線香せんかうたばそなへてゐる。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
その尾花をばな嫁菜よめな水引草みづひきさう雁來紅ばげいとうをそのまゝ、一結ひとむすびして、處々ところ/″\にその屋根やねいた店小屋みせごやに、おきなも、うばも、ふとればわかむすめも、あちこちに線香せんかうつてゐた。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そででかくすやうにしたときなべ饂飩うどんは、しかし、線香せんかうちてたまつた、はひのやうであつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つかもりえのきに、線香せんかうけむりあはち、こけいしやしろには燈心とうしんくらともれ、かねさらこだまして、おいたるはうづくまり、をさなきたちはつどふ、やまかひなるさかひ地藏ぢざうのわきには、をんなまへいて
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ればいけのふちなるつちを、五六すんはなれてきりなかに、唱名しやうみやうこゑりんおと深川木場ふかがはきばのおりうあねかどまぎれはない。しかおもて一脈いちみやく線香せんかうにほひに、學士がくしはハツとわれかへつた。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
じゆんゆづつて、子爵夫人ししやくふじんをさきに、次々つき/″\に、——そのなかでいつちあとに線香せんかう手向たむけたが、手向たむけながらほとんゆきむろかとおもふ、しかかをりたかき、花輪はなわの、白薔薇しろばら白百合しろゆり大輪おほりん花弁はなびら透間すきま
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)