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子爵夫人
道のゆく
手には、
藁屋が
小さく、ゆる/\
畝る
路に
顕はれた
背戸に、
牡丹を
植ゑたのが、あの
時の、
子爵夫人のやうに
遥に
覗いて
見えた。
園が、
人を
分けて
廊下を
茶室らしい
其処へ
通された
時、すぐ
其の
子爵夫人の、
束髪に
輝く
金剛石とゝもに、
白き
牡丹の
如き
半帕の、
目を
蔽ふて
俯向いて
居るのを
視た。
順を
譲つて、
子爵夫人をさきに、
次々に、——
園は
其の
中でいつちあとに
線香を
手向けたが、
手向けながら
殆ど
雪の
室かと
思ふ、
然も
香の
高き、
花輪の、
白薔薇、
白百合の
大輪の
花弁の
透間に