死人しにん)” の例文
すると、幸門の上のろうへ上る、幅の廣い、之も丹を塗つた梯子はしごが眼についた。うへなら、人がゐたにしても、どうせ死人しにんばかりである。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ところが、死人しにんは耳がきこえません。うんともすんともいわず、ぼろ着物はもえほうだいです。若者わかものはぷんぷんはらをたてて、いいました。
例の喫茶店さえ、どこに死人しにんがあったかというようなにぎやかさで、陽気な若い男の笑い声が高く大きく街路へまで響いていました。
三角形の恐怖 (新字新仮名) / 海野十三(著)
傳「旦那もう過去ったから構わねえが、此の人が死人しびとと知らずに帯につかまって出ると、死人しにんが出たので到頭ぼくが割れて縛られてきました」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
改められけるに死人しにんの宿所は幸手宿と云ふ事しれければ早速さつそく其所へ人を遣はし尋ねられける所三五郎としれしにより三五郎の女房を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ねこ死人しにんえてわたるとけるといつてねこ防禦ばうぎよであつた。せてけばねこわたらないとしんぜられてるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
死人しにんのような目で空をにらむように人の顔を見ています。おお、気味が悪い。あれは人間ではございませんぜ。旦那様だんなさま、おおこりなすってはいけません。
また此時このとき死人しにん首府しゆふ總人口そうじんこう三分さんぶんめたこともしるされてあるから、地震ぢしん餘程よほど激烈げきれつであつたことも想像そう/″\される。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
むずかしい病気びょうきをなおしたりおにをおいはらったり、ときには、死人しにんをよみがえらしたりするほど、ふしぎな力をそなえていられるというひょうばんでした。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
その時お寺で素麪そうめんが煮てあったんです。それから、「これは不味まずい物ですけれど」ってその梵妻だいこくが持って来たんです。そうしてそれをその死人しにんの前へ出した。
□本居士 (新字新仮名) / 本田親二(著)
山田にては土葬どそうするもの少く、多くは荼毘するゆえ、今も死人しにんあれば此竈を使つかうなり。村はずれの薬師堂の前にて、いわなの大なるをいて宿やどの婢にわらわる。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
したが、マンチュアへはあらためて書送かきおくり、ロミオがおやるまでは、ひめ庵室あんじつにかくまっておかう。不便ふびんや、きたむくろとなって、死人しにんはかなかうもれてゐやる!
けれども鶴だって乃公おれに喰わせなければ死人しにんも同じ事だと答えたような塩梅式あんばいしきで、何時いつひやかして面白がって居る中に、るとき長与専斎ながよせんさいれかと相談して
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
死人しにんのやうなかほをしてぼくかへつてたのをて、宿やどもの如何どんなにおどろいたらう。其驚そのおどろきよりもぼくおどろいたのは此日このひきぬたが、午後ごゝまた實家じつかかへつたとのことである。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
女は死人しにんのような顔色かおいろになって、口をいたままで聞いている。男の言う事が分らない。分らせたくない。冷やかな、恐しいある物がのどを締めつけているようである。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
勿論もちろん死人しにんに口無しで、誰にうされたのか判らないが、祖父さんはひとからうらみを受けるような記憶おぼえも無し、又普通の追剥おいはぎならばんな残酷な殺し方をする筈がない。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それから保名やすなだらけになった手足てあしと、ぼろぼろにけた着物きものと、それになによりも死人しにんのようにあおざめたかおると、おもわずあっとさけびごえをたてました。保名やすなどくそうに
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
一時間いちぢかんのち、代助は大きな黒いいた。其は、しばらくのあひだ一つところとゞまつて全くうごかなかつた。あしてゐた時の姿勢を少しもくづさずに、丸で死人しにんのそれの様であつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
またなんとか可恐おそろししまでね、ひとぬ、と家屬かぞくのものが、くび大事だいじしまつて、他人たにんくびきながらつて、死人しにんくび繼合つぎあはせて、それうづめると習慣ならはしがあつて、工面くめんのいゝのは
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ニールスは、牝牛めうしが話しつづけるのを、もう聞いてはいませんでした。牛小屋の戸をあけて、中庭なかにわをよこぎり、さっきまではあんなにこわがっていた、死人しにんのいる部屋へやにはいっていきました。
其側そのそば小使こづかひや、看護婦かんごふくつ煉瓦れんぐわゆか音高おとたか踏鳴ふみならして往來わうらいし、病院服びやうゐんふくてゐるせた患者等くわんじやらとほつたり、死人しにんかつす、不潔物ふけつぶつれたうつはをもつてとほる。子供こどもさけぶ、通風とほりかぜはする。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
一千二百五十人いつせんにひやくごじゆうにん死人しにん二千四百五十人にせんしひやくごじゆうにん負傷者ふしようしやしたほかに、ふね流失りゆうしつ三千六百八十隻さんぜんろつぴやくはちじつせきいへながれたり、こはれたりしたのが七十二萬九千六百餘棟しちじゆうにまんくせんろつぴやくよむね田畑たはたあらされたこと七十八萬五千餘町しちじゆうはちまんごせんよちようのぼ
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
このとき、場内係じょうないがかりの、自由画じゆうがわか先生せんせいもやってきて、先生せんせいは二びっくりしました。死人しにんあたまがはげて、ひげのあるまるかおは、秀吉ひできちのいつもかく、おけのかおそっくりだったからでした。
天女とお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
死人しにんかんなかに、なにかの理由りゆうれなかつたものとかんがへられます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
波風なみかぜまれて死人しにんのようになつて磯端いそばたたふれてゐました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
死人しにんの顔のように青い月があった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「よくも死人しにんをまねたり」と
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
きている死人しにん
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ニーナも、死人しにんのように、青ざめた顔をしている。彼女は、大きな眼をあいて、不安げに、しきりに、あたりを見まわしている。
人造人間の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
下人には、勿論、何故老婆が死人しにんの髮の毛をくかわからなかつた。從つて、合理的がふりてきには、それを善惡の何れにかたづけてよいか知らなかつた。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それから、お妃さまはあのへやにむすめをつれていって、とびらをあけて、かんなくずと、死人しにんのためのまくらまでもはいっている十二のおかんを見せました。
家來筋といはるゝや死人しにんに口なし所詮しよせんこゝにてかく云とも理非りひわからずあけなば是非ぜひにも駿州すんしうまで同道なし善惡ぜんあく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此時このときリスボンには津浪つなみ襲來しゆうらいし、こゝだけの死人しにんでも六萬人ろくまんにんのぼつた。震原しんげん大西洋底たいせいようていにあつたものであらう。津浪つなみきたアメリカの東海岸ひがしかいがんおいても氣附きづかれた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ヂュリ おゝ、如何どうせうぞ! こゝろめがいまはしい取越苦勞とりこしぐらうをさせをる。したにゐやしゃるのを此處こゝからると、どうやらはかそこ死人しにんのやう。せゐらねども、おまへかほあをゆる。
するとれから其の響けで永禪和尚がげたので、逃げる時、藤屋の女房じゃアまアと眞達を連れて逃げたのだが、眞達を途中で切殺して逃げたので、ところが眞達は死人しにんに口なしで罪を負うて仕舞い
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そのそば小使こづかいや、看護婦かんごふくつ煉瓦れんがゆか音高おとたか踏鳴ふみならして往来おうらいし、病院服びょういんふくているせた患者等かんじゃらとおったり、死人しにんかつす、不潔物ふけつぶつれたうつわをもってとおる。子供こどもさけぶ、通風とおりかぜはする。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
すぐはあ死人しにん衣物きものから始末しまつしてかゝつたつちんですから
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
市郎は死人しにんの口を開けて見た。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
キャーッと魂切たまぎる悲鳴が起った。死人しにんの胸のようなドームの壁体へきたいがユラユラと振動してウワンウワンウワンと奇怪な唸り音がそれに応じたようであった。
空中墳墓 (新字新仮名) / 海野十三(著)
殊に門の上の空が、夕燒ゆふやけであかくなるときには、それが胡麻ごまをまいたやうにはつきり見えた。からすは、勿論、門の上にある死人しにんの肉を、啄みに來るのである。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そいつらは死人しにんほねを九つと、されこうべをふたつもってきて、かねをかけて、九柱戯きゅうちゅうぎ(ボーリングににたあそび)をはじめました。若者もやってみたくなって
明暦大火めいれきたいかさい濱町河岸はまちようがし本願寺境内ほんがんじけいだいおいて、また關東大地震かんとうだいぢしん東京大火災とうきようだいかさいさい本所ほんじよ被服廠跡ひふくしようあとおいて、旋風せんぷうのために、死人しにん集團しゆうだん出來できたことはよくられた悲慘事ひさんじであつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
なし然樣さやうならば申あげます此脇差このわきざしは一昨々年の七月廿八日の夜の事成しが死人しにんに火を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
……死人しにんどのよ、死人しにんめられて、其處そこやれ。
王さまは、ほんとうに、十二のおかんまでもこしらえさせました。そのなかには、すでにかんなくずもつめてあって、ひとつひとつに、死人しにんのための小さなまくらまでもいれてありました。
わづか三十分間さんじつぷんかん同方向どうほうこうつゞいた火山灰かざんばひが、やま北東ほくとうにあるオッタヤーノのまち九十糎くじゆうせんちめーとるつもり、おほくの屋根やねいて二百二十人にひやくにじゆうにん死人しにんしようじたことによつても、うなづかれるであらう。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
一頭の恐竜でも、ぞおーッとするところへ、このふしぎな洞窟を発見し、その中に四頭もの恐竜が一つところへ集っているのを見たのだから、一同が死人しにんのように青ざめたのもむりはなかろう。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大男たちはかんゆかにおろしました。若者わかものはそのそばへいって、ふたをとってみました。すると、なかにはひとりの死人しにんがねていました。顔にさわってみますと、まるでこおりのようにつめたいのです。