トップ
>
懷中
>
ふところ
ふりがな文庫
“
懷中
(
ふところ
)” の例文
新字:
懐中
「へツ、そのたしなみ、生憎、
懷中
(
ふところ
)
に三日と逗留したことはありませんよ、空つぽになると、紙入ほど邪魔なものはありやしません」
銭形平次捕物控:278 苫三七の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
湯治
(
たうぢ
)
を
幾日
(
いくにち
)
、
往復
(
わうふく
)
の
旅錢
(
りよせん
)
と、
切詰
(
きりつ
)
めた
懷中
(
ふところ
)
だし、あひ
成
(
な
)
りませう
事
(
こと
)
ならば、
其
(
そ
)
の
日
(
ひ
)
のうちに
修善寺
(
しゆぜんじ
)
まで
引返
(
ひきかへ
)
して、
一旅籠
(
ひとはたご
)
かすりたい。
雨ふり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
こんな時にも
懷中
(
ふところ
)
にはちやんと、緞子の煙管筒を收めて、ずんど形の煙管を取り出したものだが、どうかすると煙管を忘れて來て
ごりがん
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
見てからといふものは私の
羞耻
(
はにかみ
)
に滿ちた幼い心臟は
紅玉
(
ルビイ
)
入の小さな時計でも
懷中
(
ふところ
)
に
匿
(
かく
)
してゐるやうに何時となく幽かに顫へ初めた。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
往返
(
わうへん
)
し旅人の
懷中
(
ふところ
)
を
狙
(
ねら
)
ふ
護摩
(
ごま
)
の
灰
(
はひ
)
の頭なり因て半四郎が所持の金に目を
懸
(
かけ
)
樣々
(
さま/″\
)
にして終に道連となりしかば
此夜
(
このよ
)
何卒
(
なにとぞ
)
して半四郎の
胴卷
(
どうまき
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
▼ もっと見る
さあ
其事
(
そのこと
)
で
御座
(
ござ
)
んすとて、
睡
(
ねふ
)
り
覺
(
さ
)
めたる
懷中
(
ふところ
)
の
町
(
まち
)
がくすりくすりと
嘩泣
(
むづか
)
るを、おゝ
好
(
い
)
い
子
(
こ
)
好
(
い
)
い
子
(
こ
)
と、ゆすぶつて
言葉
(
ことば
)
絶
(
た
)
えぬ。
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
まるつきり
懷中
(
ふところ
)
の空つぽの時でも、何處といふあて無しにうろついて居るやくざで、其の日其の日をもて餘し切つて居た。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
然
(
しか
)
るに、
中途
(
ちうと
)
で
消
(
き
)
えて
居
(
ゐ
)
た
大瀧氏
(
おほたきし
)
が
現
(
あら
)
はれて、
懷中
(
ふところ
)
から
磨製石斧
(
ませいせきふ
)
の
完全
(
くわんぜん
)
に
近
(
ちか
)
きを
取出
(
とりいだ
)
し、
坪井博士
(
つぼゐはかせ
)
の
前
(
まへ
)
に
出
(
だ
)
して。
探検実記 地中の秘密:20 大森貝塚の発掘
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
今迄自分の立つて居る石橋に土下座して、
懷中
(
ふところ
)
の赤兒に乳を飮ませて居た筈の女乞食が、此時
卒
(
には
)
かに立ち上つた。
葬列
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
何がなしにその草雙紙が欲しく成つて、何度も/\其前を往つたり來たりして、
終
(
しまひ
)
に混雜に紛れて一册
懷中
(
ふところ
)
に入れた少年がある——斯の少年が、自分だ。
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
大泥醉
(
おほへべれけ
)
の
粹背肌
(
いなせはだ
)
、弓手を拳で
懷中
(
ふところ
)
に蓄へ、右手を延ばして輪を畫くと、手頸をぐいと上げて少し反身のかたち。
二十三夜
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
(棒にかけたる眼かづらを外して
懷中
(
ふところ
)
へおし込む。)仕方がねえ、濕れろ、濕れろ。お
日和
(
ひより
)
、お日和。
箕輪の心中
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
五日ほどして、私は「
行春
(
ゆくはる
)
の
名殘
(
なごり
)
」と題した自叙傳とも云ふべき一篇を
懷中
(
ふところ
)
にして、若し此れを發表するならば私の死後明治の文壇は如何なる驚嘆の聲を發するであらう。
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
「どつちにしても主婦さんは、
懷中
(
ふところ
)
が温かくて
生活
(
くらし
)
に不自由しないんだから幸福ですわね。」
水不足
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
それでも
醫者
(
いしや
)
への
謝儀
(
しやぎ
)
や
其
(
そ
)
の
他
(
た
)
で
彼自身
(
かれじしん
)
の
懷中
(
ふところ
)
はげつそりと
減
(
へ
)
つて
畢
(
しま
)
つた。さうして
小作米
(
こさくまい
)
を
賣
(
う
)
つた
苦
(
くる
)
しい
懷
(
ふところ
)
からそれでも
彼
(
かれ
)
は
自分
(
じぶん
)
の
居
(
ゐ
)
ない
間
(
あひだ
)
の
手當
(
てあて
)
に五十
錢
(
せん
)
を
託
(
たく
)
して
行
(
い
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「彼女は急ぎ
水瓶
(
みづがめ
)
を手に取り下ろし、それを彼に飮ましめた。」すると、彼は、
懷中
(
ふところ
)
から
玉手箱
(
たまてばこ
)
を一つ取り出して、それを開け、立派な腕環や耳環を見せた。彼女は驚愕と稱讃の
身振
(
みぶり
)
をする。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
相手の
懷中
(
ふところ
)
に十手があるとも知らずに、言ひ度いだけのことをツケツケと言つてのけるといつた何んとなく途方もないところがあります。
銭形平次捕物控:175 子守唄
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
遂て遣はすシテ其
遺書
(
かきおき
)
を
持參
(
ぢさん
)
致居るかと問るゝに
御意
(
ぎよい
)
の如く
持參
(
ぢさん
)
仕つりしと吉兵衞は
懷中
(
ふところ
)
より取出して
指出
(
さしいだ
)
しければ越前守殿是を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
其の千代松のところへ病院の母から、是非竹丸を連れて來て呉れといふ手紙があつたさうで、千代松は其の手紙を
懷中
(
ふところ
)
にして竹丸の家へ來た。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
夫
(
そ
)
れと
知
(
し
)
らねば
車
(
くるま
)
は
其
(
その
)
まヽ
玄關
(
げんくわん
)
にいそぐを、
敏
(
さとし
)
何
(
なに
)
ものとも
知
(
し
)
らず
遽
(
あわたヽ
)
しく
拾
(
ひろ
)
ひて、
懷中
(
ふところ
)
におし
入
(
い
)
れしまヽ
跡
(
あと
)
も
見
(
み
)
ずに
歸
(
かへ
)
りぬ。
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
と、
聲
(
こゑ
)
も
出
(
で
)
ないまで、
舌
(
した
)
も
乾
(
かわ
)
いたか、
息
(
いき
)
せはしく、
男
(
をとこ
)
は
慌
(
あわたゞ
)
しく、
懷中
(
ふところ
)
へ
手
(
て
)
を
突込
(
つゝこ
)
んだが、
顏
(
かほ
)
の
色
(
いろ
)
は
血
(
ち
)
が
褪
(
あ
)
せて
颯
(
さつ
)
と
變
(
かは
)
つた。
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
小稻
(
こいな
)
といふ處を通つた時、海から舟で通ふ
洞
(
ほらあな
)
があつた。こゝへ見物に來た男が、細君だけ置いて、五百圓
懷中
(
ふところ
)
に入れたまゝ舟から落ちたといふ。是は往きに聞いた話だ。
伊豆の旅
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
そんな時に足をやすめる場所は、關東
煮
(
だき
)
がおきまりだつた。
懷中
(
ふところ
)
の都合もあり、カフヱは虫が好かないので、自然と大鍋の前に立つて、蛸の足を噛りながら、こつぷ酒をひつかける事になる。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
燈火の赤い色が其のまゝ反映するかと思ふ
滑
(
なめらか
)
な陶器の水入には、何時さしたのか、紫色した西洋の草花がもう萎れてゐた。私は片肱ついて、片手を
懷中
(
ふところ
)
にして、ぼんやり絶えざる雨の音を聽いた。
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
殺したことも
却
(
かへ
)
つて彼等三人に
疑
(
うたが
)
ひが
懸
(
かゝ
)
る道理だと三五郎の
計略
(
けいりやく
)
にて
已
(
すで
)
に火葬を頼んだ其時に
若
(
もし
)
もと
己
(
おれ
)
は不
承知
(
しようち
)
を言たら
汝
(
おの
)
れが
懷中
(
ふところ
)
から金を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
さう言ひながら音次郎は、
懷中
(
ふところ
)
提灯を取出すと、火打鎌を器用に鳴らして、二人の袖を風除けに、どうやら
灯
(
あかり
)
を入れました。
銭形平次捕物控:218 心中崩れ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
道臣は盃を下に置き、千代松は眼鏡も帳面も算盤も一所に
懷中
(
ふところ
)
へ
捻
(
ね
)
ぢ込んで、京子の枕元へと急いだ。お駒は立つたり坐つたり、ただ
周章
(
あわ
)
ててゐた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
袂
(
たもと
)
にも、
懷中
(
ふところ
)
にも、
懷紙
(
くわいし
)
の
中
(
なか
)
にも
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
て、
眞
(
しん
)
に
成
(
な
)
つて、
眞顏
(
まがほ
)
で、
目
(
め
)
を
据
(
す
)
ゑて
嗅
(
か
)
ぐのが
油
(
あぶら
)
を
舐
(
な
)
めるやうで
凄
(
すご
)
かつたと
言
(
い
)
ふ……
友
(
とも
)
だちは
皆
(
みな
)
知
(
し
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
番茶話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
今
(
いま
)
はと
決心
(
けつしん
)
の
臍
(
ほぞ
)
固
(
かた
)
まりけんツト
立上
(
たちあが
)
りしが
又
(
また
)
懷中
(
ふところ
)
に
手
(
て
)
をさし
入
(
い
)
れて
一思案
(
ひとしあん
)
アヽ
困
(
こま
)
つたと
我知
(
われし
)
らず
歎息
(
たんそく
)
の
詞
(
ことば
)
唇
(
くちびる
)
をもれて
其儘
(
そのまゝ
)
に
身
(
み
)
はもとの
通
(
とほ
)
り
舌打
(
したうち
)
の
音
(
おと
)
續
(
つゞ
)
けて
聞
(
きこ
)
えぬ
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「ナニ僕が出しとくよ。」とK君は
懷中
(
ふところ
)
から紙入を出しながら答へた。
伊豆の旅
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
その隙を狙つて扉を開けた上、花嫁の
懷中
(
ふところ
)
から守り刀を奪ひ取つて胸へ二度も突き立てるなんて器用な事は出來さうもないぜ
銭形平次捕物控:200 死骸の花嫁
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
何分
(
なにぶん
)
男
(
をとこ
)
づくであつて
見
(
み
)
れば、
差當
(
さしあた
)
り
懷中
(
ふところ
)
都合
(
つがふ
)
が
惡
(
わる
)
いから、
日
(
ひ
)
を
延
(
の
)
ばしてくれろとも
言
(
い
)
へなからうではないか。
一席話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
手
(
て
)
にとりつ
淺
(
あさ
)
からぬお
心
(
こゝろ
)
辱
(
かたじ
)
けなしとて三
郎
(
らう
)
喜
(
よろ
)
こびしと
傳
(
つ
)
たへ
給
(
たま
)
へ
外
(
ほか
)
ならぬ
人
(
ひと
)
の
取次
(
とりつぎ
)
こと
更
(
さら
)
に
嬉
(
うれ
)
しければ
此文
(
このふみ
)
は
賜
(
たま
)
はりて
歸宅
(
きたく
)
すべしとて
懷中
(
ふところ
)
に
押
(
おし
)
いれつゝ
又
(
また
)
こそと
坐
(
ざ
)
を
五月雨
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「この人は何を持つてゐやはるんやなア、ほところ(懷中)
膨
(
ふく
)
らかして。」と、お駒は竹丸の附け紐を
解
(
ほど
)
きながら言つて、
懷中
(
ふところ
)
を押さへてゐる兩手を引き退けると
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
お京は身を揉んで、極り惡さうに、男の
懷中
(
ふところ
)
に顏を埋めます。夜風の匂ふのは、娘の體温に薫蒸された、掛香らしい匂ひ。
銭形平次捕物控:218 心中崩れ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
袂
(
たもと
)
へ
辷
(
すべ
)
つて
宙
(
ちう
)
に
留
(
と
)
まつた、
大切
(
たいせつ
)
な
路銀
(
ろぎん
)
を、ト
懷中
(
ふところ
)
へ
御直
(
おんなほ
)
り
候
(
さふら
)
へと
据直
(
すゑなほ
)
して、
前褄
(
まへづま
)
をぐい、と
緊
(
し
)
めた。
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
歸
(
かへ
)
れ、
何處
(
どこ
)
へでも
歸
(
かへ
)
れ、
此家
(
このや
)
に
恥
(
はぢ
)
は
見
(
み
)
するなとて
父
(
ちゝ
)
は
奧深
(
おくふか
)
く
這入
(
はい
)
りて、
金
(
かね
)
は
石之助
(
いしのすけ
)
が
懷中
(
ふところ
)
に
入
(
い
)
りぬ。
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
三日も
流連
(
ゐつゞけ
)
したので、日取りの狂ひは後の道中で取り返すから、下向の迎ひを平井明神の境内に待ち惚けさせる心配はないが、苦勞なのは、めい/\の
懷中
(
ふところ
)
であつた。
石川五右衛門の生立
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
伊太松は
懷中
(
ふところ
)
を探つて手紙一枚に、
覺束
(
おぼつか
)
ない假名文字で書いた手紙を取出し、
皺
(
しわ
)
を伸ばして平次に見せるのです。
銭形平次捕物控:230 艶妻伝
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
甚樣
(
じんさま
)
私
(
わた
)
しの
部屋
(
へや
)
へもお
出
(
いで
)
なされ、
玉突
(
たまつき
)
して
遊
(
あそ
)
びますほどに、と
面白
(
おもしろ
)
げに
誘
(
さそ
)
ひて
座
(
ざ
)
を
立
(
た
)
つ
姉君
(
あねきみ
)
、
早
(
はや
)
く
去
(
い
)
ねがしにはたはたと
障子
(
しやうじ
)
を
立
(
た
)
てヽ、
姉樣
(
ねえさま
)
これ、と
懷中
(
ふところ
)
より
半
(
なか
)
ば
見
(
み
)
せ
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
……
其
(
そ
)
の
憂慮
(
きづかひ
)
さに、——
懷中
(
ふところ
)
で、
確乎
(
しつかり
)
手
(
て
)
を
掛
(
か
)
けて
居
(
ゐ
)
ただけに、
御覽
(
ごらん
)
なさい。
何
(
なに
)
かに
氣
(
き
)
が
紛
(
まぎ
)
れて、ふと
心
(
こゝろ
)
をとられた
一寸
(
ちよいと
)
一分
(
いつぷん
)
の
間
(
ま
)
に、うつかり
遺失
(
おと
)
したぢやありませんか。
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
懷中
(
ふところ
)
から
楇
(
つみ
)
を取り出して、
路傍
(
みちばた
)
の缺け瓦に
尖端
(
さき
)
の錆を磨りおとした文吾は、白く光る針のやうな鋭さに見入りながら、これで煑賣屋の婆の眼をば、飛び込んでたゞ一突きと、氣が狂うたやうに
石川五右衛門の生立
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
平次は
豫
(
かね
)
て
懷中
(
ふところ
)
に用意してゐる四文錢を勘定して、丑松少年の
掌
(
て
)
の上にチユウチユウタコカイと突いて見せます。
銭形平次捕物控:310 闇に飛ぶ箭
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
田舍
(
ゐなか
)
に
居
(
を
)
りし
時
(
とき
)
は
先生
(
せんせい
)
なりし
故
(
ゆゑ
)
、
其和歌
(
そのわか
)
を
姉樣
(
ねえさま
)
にお
目
(
め
)
にかけて
驚
(
おどろ
)
かし
給
(
たま
)
へ、
夫
(
それ
)
こそ
必
(
かな
)
らず
若樣
(
わかさま
)
の
勝
(
かち
)
に
成
(
な
)
るべしと
言
(
い
)
へば、
早
(
はや
)
く
其歌
(
そのうた
)
を
詠
(
よ
)
めとせがむに
懷中
(
ふところ
)
より
彼
(
か
)
の
綴
(
と
)
ぢ
文
(
ぶみ
)
を
出
(
いだ
)
し
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
と
云
(
い
)
ふ
瞳
(
ひとみ
)
が、
疊
(
たゝ
)
みかけた
良人
(
をつと
)
の
禮服
(
れいふく
)
の
紋
(
もん
)
を
離
(
はな
)
れて、
元二
(
げんじ
)
が
懷中
(
ふところ
)
の
本
(
ほん
)
に
移
(
うつ
)
つたのであつた。
二た面
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
八五郎は小粒を
懷中
(
ふところ
)
に押し込んで、下谷に向ひました。それから日が暮れるまで、平次は所在もなく暮しました。
銭形平次捕物控:311 鬼女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
胸毛に埋もれし祖父の
懷中
(
ふところ
)
より外に世のあたゝかさを身に知らねば、春風氷をとく小田のくろに里の童が遊びにも洩れて、我れから木がくれのひねれ物に強情いよいよつのれば
暗夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「
常
(
つね
)
さん、
今
(
いま
)
君
(
きみ
)
が
蔀
(
しとみ
)
を
開
(
あ
)
けて、
何
(
なに
)
かが
覗
(
のぞ
)
いたつて、
僕
(
ぼく
)
は
潛込
(
もぐりこ
)
む
懷中
(
ふところ
)
がないんだもの……」
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
神田明神下の平次の家も、この二三日は御用が暇な上
懷中
(
ふところ
)
までが
霜枯
(
しもが
)
れで、外へ出て見る張合もありません。
銭形平次捕物控:262 綾の鼓
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
夫れどころでは無いとて
鬱
(
ふさ
)
ぐに、何だ何だ喧嘩かと喰べかけの饀ぱんを
懷中
(
ふところ
)
に捻ぢ込んで、相手は誰れだ、龍華寺か長吉か、何處で始まつた
廓内
(
なか
)
か鳥居前か、お祭りの時とは違ふぜ
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
懷
部首:⼼
19画
中
常用漢字
小1
部首:⼁
4画
“懷中”で始まる語句
懷中物
懷中電燈
懷中鏡
懷中時計
懷中紙
懷中提灯