“必(かな)” の例文
観念は、いつでも、又必(かな)らず文字の形で表現なし得るかのように思われるけれども、人間は万能の神ではなく優秀な機械ですらない。
文字と速力と文学 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
『汝(おまえ)にもいろいろ世話(せわ)になりました……。』心(こころ)の中(なか)でそう思(おも)った丈(だけ)でしたが、それは必(かな)らず馬(うま)にも通(つう)じたことであろうと考(かんが)えられます。
殺人罪(さつじんざい)は必(かな)らずしも或見ゆべき原因によりて成立つものにあらざるなり、必(かな)らずしも酬報(しゆうほう)の理論(りろん)若(もし)くは勸善懲惡(くわんぜんてふあく)の算法(さんほう)より割出(わりだ)し得(う)るものにあらざるなり
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
実に学問の独立に由(よ)るものなれば、その国を独立せしめんと欲せば、必(かな)らず先(ま)ずその民を独立せしめざるを得ず(大喝采)、その民を独立せしめんと欲せば
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)
是非(ぜひ)吾助(ごすけ)も拜見(はいけん)が仕(し)たければ、此頃(このごろ)に姉樣(ねえさま)にお願(ねが)ひなされ、お書(か)き捨(す)てを頂(いたゞ)きて給(たま)はれ、必(かな)らず、屹度(きつと)と返事(へんじ)の通路(つうろ)を此處(こヽ)にをしへ、一日(いちにち)を待(ま)ち二日(ふつか)を待(ま)ち
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
B 僕(ぼく)の友人(いうじん)には、旅行中(りよかうちう)、毎日(まいにち)必(かな)らず三度(ど)、留守番(るすばん)の細君(さいくん)に葉書(はがき)を出(だ)す人(ひと)があるよ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
拵(こし)らへるには毎日々々時を違(たが)へず其所を回(まは)れば今何やが來たから最(もう)何時成んと家々にて其商人を當(あて)にするやうになり然(さ)すれば商ひも必(かな)らず殖(ふえ)るものゆゑ御前(おまへ)も町内は申に及ばず裏々(うら/\)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
王曰く、彼衆(おお)く、我寡(すくな)し、然(しか)れども彼新(あらた)に集まる、其心未(いま)だ一ならず、之を撃たば必(かな)らず破れんと。精兵八千を率い、甲(こう)を捲(ま)き道を倍して進み、遂(つい)に戦って克(か)ち、忠と瑱とを獲(え)て之を斬る。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
喧嘩好(けんくわず)きの少年(せうねん)、おまけに何時(いつ)も級(くらす)の一番(ばん)を占(し)めて居(ゐ)て、試驗(しけん)の時(とき)は必(かな)らず最優等(さいゝうとう)の成績(せいせき)を得(う)る處(ところ)から教員(けうゐん)は自分(じぶん)の高慢(かうまん)が癪(しやく)に觸(さは)り、生徒(せいと)は自分(じぶん)の壓制(あつせい)が癪(しやく)に觸(さは)り、自分(じぶん)にはどうしても人氣(にんき)が薄(うす)い。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ただし、いかにすぐれた人霊(じんれい)が御本体(ごほんたい)でありましても、その控(ひか)えとしては、必(かな)らず有力(ゆうりょく)な竜神様(りゅうじんさま)がお附(つ)き遊(あそ)ばして居(お)られますようで……。
必(かな)らず深(ふか)き子細(しさい)ありて尋常(なみ)ならぬ思(おも)ひを振袖(ふりそで)に包(つヽ)む人(ひと)なるべし、扨(さて)もゆかしや其(その)ぬば玉(たま)の夜半(よは)の夢(ゆめ)。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
居士(コジ)は、人命犯(じんめいはん)には必(かな)らず萬已むを得ざる原因ある事(こと)を言(い)ひ、財主(ざいしゆ)の老婆(ろうば)が、貪慾(どんよく)を憤(いきど)ふるのみの一事(いちじ)にして忽(たちま)ち殺意(さつい)を生(せう)ずるは殺人犯の原因としては甚だ淺薄なりと言(い)ひ
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
其の道衍(どうえん)と識(し)るに及びたるは、道衍が嵩山寺(すうざんじ)に在りし時にあり。袁珙(えんこう)道衍が相をつく/″\と観(み)て、是(こ)れ何ぞ異僧なるや、目は三角あり、形は病虎(びょうこ)の如し。性必(かな)らず殺を嗜(たしな)まん。劉秉忠(りゅうへいちゅう)の流(りゅう)なりと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
申(もう)すまでもなく、生(うま)れる人間(にんげん)には必(かな)らず一人(ひとり)の守護霊(しゅごれい)が附(つ)けられますが、これも皆(みな)上(うえ)の神界(しんかい)からのお指図(さしず)で決(き)められるように承(うけたまわ)って居(お)ります。
母(かあ)さまが何處(どこ)へ行(ゆ)くにしろ坊(ばう)は必(かな)らず置(お)いては行(ゆ)かない、私(わたし)の物(もの)だ私(わたし)のだとて頬(ほゝ)を吸(す)ひますと何(なん)とも言(い)はれぬ解(と)けるやうな笑顏(ゑがほ)をして、莞爾々々(にこ/\)とします樣子(やうす)の可愛(かあい)い事(こと)
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
田舍(ゐなか)に居(を)りし時(とき)は先生(せんせい)なりし故(ゆゑ)、其和歌(そのわか)を姉樣(ねえさま)にお目(め)にかけて驚(おどろ)かし給(たま)へ、夫(それ)こそ必(かな)らず若樣(わかさま)の勝(かち)に成(な)るべしと言(い)へば、早(はや)く其歌(そのうた)を詠(よ)めとせがむに懷中(ふところ)より彼(か)の綴(と)ぢ文(ぶみ)を出(いだ)し
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
十六日は必(かな)らず待(まち)まする來(き)て下(くだ)されと言(い)ひしをも何(なに)も忘(わす)れて、今(いま)まで思(おも)ひ出(だ)しもせざりし結城(ゆふき)の朝(とも)之助(すけ)に不圖(ふと)出合(であひ)て、あれと驚(おどろ)きし顏(かほ)つきの例(れい)に似合(にあは)ぬ狼狽(あわて)かたがをかしきとて
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
遁(の)がれたしのと突(つ)きつめた御心(おこゝろ)に必(かな)らずお成(な)り遊(あそ)ばすなと宥(なだ)める身(み)さへ眼(め)はうるみぬ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
晝前(ひるまへ)のうちに必(かな)らず必(かな)らず支度(したく)はして置(おき)まするとて、首尾(しゆび)よく受合(うけあ)ひてお峰(みな)は歸(かへ)りぬ。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一人は必(かな)らず手傳(てつだ)はすると言(い)ふて下(くだ)され、さてさて御苦勞(ごくらう)と蝋燭代(ろうそくだい)などを遣(や)りて、やれ忙(いそ)がしや誰(た)れぞ暇(ひま)な身躰(からだ)を片身(かたみ)かりたき物(もの)、お峯(みね)小松菜(こまつな)はゆでゝ置(お)いたか、數(かず)の子(こ)は洗(あら)つたか
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
表(おもて)の鹽物(しほもの)やが野郎(やらう)と一處(しよ)に、蜆(しゞみ)を買(か)ひ出(だ)しては足(あし)の及(およ)ぶだけ擔(かつ)ぎ廻(まわ)り、野郎(やらう)が八錢(せん)うれば十錢(せん)の商(あきなひ)ひは必(かな)らずある、一つは天道(てんたう)さまが奴(やつこ)の孝行(かう/\)を見徹(みとほ)してか、兎(と)なり角(かく)なり藥代(くすりだい)は三が働(はたら)き
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私(わたし)は何(ど)んな愁(つ)らき事(こと)ありとも必(かな)らず辛抱(しんぼう)しとげて一人前(にんまへ)の男(をとこ)になり、父(とゝ)さんをもお前(まへ)をも今(いま)に樂(らく)をばお爲(さ)せ申(まをし)ます、何(ど)うぞ夫(そ)れまで何(なん)なりと堅氣(かたぎ)の事(こと)をして一人(ひとり)で世渡(よわた)りをして居(ゐ)て下(くだ)され
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
種々(いろ/\)の事(こと)を思(おも)ふたと思(おぼ)し召(め)せ、學校(がくかう)にては物(もの)も言(い)ひましたろ、顏(かほ)も見(み)ましたろ、夫(そ)れだけでは面白(おもしろ)う無(な)うて心(こゝろ)いられのするに、日曜(にちよう)の時(とき)は其家(そのや)の前(まへ)の川(かは)へ必(かな)らず釣(つり)をしに行(ゆ)きましたさうな
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さればとて香爐峯(かうろほう)の雪(ゆき)に簾(みす)をまくの才女(さいぢよ)めきたる行(おこな)ひはいさゝかも無(な)く深窓(しんそう)の春(はる)深(ふか)くこもりて針仕事(はりしごと)に女性(によしやう)の本分(ほんぶん)を盡(つく)す心懸(こゝろが)け誠(まこと)に殊勝(しゆしよう)なりき、家(いへ)に居(ゐ)て孝順(かうじゆん)なるは出(いで)て必(かな)らず貞節(ていせつ)なりとか
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
又(また)逢(あ)ふ場所(ばしよ)は某(それ)の辻(つじ)某(それ)の處(ところ)に待給(まちたま)へ必(かな)らずよと契(ちぎ)りて別(わか)れし其夜(そのよ)のこと誰(た)れ知(し)るべきならねば心安(こゝろやす)けれど心安(こゝろやす)からぬは松澤(まつざは)が今(いま)の境涯(きやうがい)あらましは察(さつ)しても居(ゐ)たものゝそれ程(ほど)までとは思(おも)ひも寄(よ)らざりしが其御難儀(そのごなんぎ)も誰(たれ)がせし業(わざ)ならず勿躰(もつたい)なけれど我(わ)が親(おや)うらみなり聞(き)かれぬまでも諫(いさ)めて見(み)んか否(いな)父(ちゝ)は
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)