周囲しゅうい)” の例文
旧字:周圍
この湖の周囲しゅういには、土浦つちうら石岡いしおか潮来いたこ江戸崎えどざきなどという町々のほかに、たくさんの百姓村ひゃくしょうむらが、一里おき二里おきにならんでいます。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
こうした周囲しゅうい空気くうきは、ぼくをして、偶然ぐうぜんにもこころふかかんじたいっさいをける機会きかいをば、永久えいきゅうにうしなわしてしまったのでした。
だれにも話さなかったこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、いいのこして、そこを立とうとすると、なんだろう? 周囲しゅういやみ——樹木じゅもくささ燈籠とうろうのかげに、チカチカとうごく数多あまた閃光せんこう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうして岡田のかよっている石造の会社の周囲しゅういを好い加減に歩き廻った。同じ流れか、違う流れか、水のおもてが二三度目にはいった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
であるからわれわれは、近い左右前後さゆうぜんごはいつでもあいまいであるけれど、遠い前後とひろ周囲しゅういには、やや脈絡みゃくらく統一とういつがある。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
そしてこの周囲しゅういの事物がみな無常な無価値なもので、それをなげうって死ぬるのは、なんでもないと思って見ようとしたが、どうもそれは出来なかった。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
いま、わたしのぐるりをいているものは、気味の悪いものばかりであったが、わたしはいっしょうけんめい好奇こうきのの目を見張みはって新しい周囲しゅういを見回した。
淡路島の周囲しゅういを、おりおり、怪しげな汽船が周遊しゅうゆうしているということ、それについで、ときどき、深夜しんや淡路島の上空に、竹トンボのような音がきこえるということ、さら
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
手振てぶりまでまじえての土平どへいうたは、つきひかりえるにつれて、いよいよ益々ますます面白おもしろく、子供こどもばかりか、ぐるりと周囲しゅういかきつくった大方おおかたは、とおりがかりの、大人おとな見物けんぶつで一ぱいであった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それからかぞえてももうずいぶんの星霜つきひつもったであろう。一たん神木しんぼくとなってからは、勿体もったいなくもこのとおみき周囲しゅうい注連縄しめなわりまわされ、誰一人たれひとりさえれようとせぬ。
彼が自分を取りもどして、自分の周囲しゅういを見まわすことが出来たのは、広い座敷の真ん中に坐らされて、先生のような態度をしたお民から、さんざん説教をされている時であった。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
直径ちょっけいやく七十センチだから周囲しゅういは70cm×3.14=219.8cmというわけだ。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
鎮守ちんじゅの八幡宮の茅葺かやぶきの古い社殿は街道から見えるところにあった。華表とりいのかたわらには社殿修繕の寄付金の姓名とたかとが古く新しく並べて書いてある。周囲しゅういけやきの大木にはもう新芽がきざし始めた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
彼は周囲しゅうい朋友ともだちのようにはなやかな世界がなかった。
牡蠣船 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
モーターの、うなるおとがきこえました。たくさんの職工しょっこうが、はたらいていました。てつてつおとが、周囲しゅういひびきかえっていました。
僕が大きくなるまで (新字新仮名) / 小川未明(著)
せずして、かれの周囲しゅういを、一同のものがドッと取りまいた、ただそのようすを、さびしそうにながめていたのは、坂東巡礼ばんどうじゅんれいのおときであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
花前になると、それが反対はんたいになって、近い左右前後さゆうぜんごはいつでも明瞭めいりょうであって、遠い前後や広い周囲しゅういはまるでくらやみである。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
かすみうらといえば、みなさんはごぞんじでしょうね。茨城県いばらきけんの南の方にある、周囲しゅうい百四十四キロほどのみずうみで、日本第二の広さをもったものであります。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
この静かな夏の朝の空気の中にひとりですわっているのが、なんとも云われない程好い心持ちである。体の周囲しゅういは如何にも平和で、柔かで、永遠なように思われる。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
東叡山とうえいざん寛永寺かんえいじ山裾やますそに、周囲しゅういいけることは、開府以来かいふいらい江戸えどがもつほこりの一つであったが、わけてもかりおとずれをつまでの、はすはな池面いけおも初秋しょしゅう風情ふぜい
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
マタンは、じぶんの周囲しゅういを、そっと見まわしました。
名なし指物語 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ねこは、さもむかしのことをおもしたように、周囲しゅういをぐるりと、ねつのためにふらふらするあしつきで、からだをすりつけながらまわりました。
木の上と下の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
柵の周囲しゅうい群集ぐんしゅういはらうと、そこのひろい城戸きどが八文字もんじにあいて、御岳山道みたけさんどうの正面のみちが、試合場からズッとゆきぬけに口をあいたかたちになる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし中央ちゅうおうまくの前に立っている団長だんちょうはもちろん、ファットマンの周囲しゅういに立っている四、五人の道具方も、それが新吉であることはゆめにも知りませんでした。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
きょうの午後には女がまたいつものように転寝うたたねをしたので、男はそっと抜け出して、森の中を散歩した。夏の午後の、むっとするような静さが周囲しゅういを取り巻いている。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
そのように花前は、絶対ぜったいにほかに交渉こうしょうしえないけれど、周囲しゅういはしだいにその変人へんじんをのみこみ、変人になれて、石塊せっかい綿わたにつつんだごとく、無交渉むこうしょうなりに交渉こうしょうができている。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
じっとたたみうえ見詰みつめているおせんは、たじろぐように周囲しゅうい見廻みまわした。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ちょうどれかかって夕焼ゆうやけのあかくもしずかないけみずうえうつっていました。いけ周囲しゅういにはうつくしいはなが、しろむらさきいていました。
空色の着物をきた子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
糟谷かすやは三十になったばかり、若手わかて高等官こうとうかんとして、周囲しゅういから多大ただい希望きぼうせられていた。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
彼女かのじょが、手術しゅじゅつけることを覚悟かくごしたとったときに、彼女かのじょあんじた周囲しゅういひとたちは、それは、よく決心けっしんしたといって、よろこんだのでした。
世の中のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
糟谷かすやが自分の周囲しゅうい寂寥せきりょうに心づいたときはもはやおそかった。糟谷ははるかに時代の推移すいいからのこされておった。場長じょうちょう位置いちのぞむなどじつに思いもよらぬことと思われてきた。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
そして、周囲しゅういうものは、あの可憐かれんないわつばめでなくて、人間にんげんうつくしい男女だんじょらでした。きくのはあらしのうたでなく、ピアノの奏楽そうがくでした。
しんぱくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しろうちには、はなみだれました。みつばちは太陽たいようのぼまえから、はな周囲しゅういあつまって、はねらしてうたっていました。
お姫さまと乞食の女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
石山いしやま周囲しゅういで、こんなことをいっていると、また、ゴーッ、ゴーッと、トロッコが、かぜってはしってくるおとがしました。
白い雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
周囲しゅうい常磐木ときわぎに、つよりつけた太陽たいようひかりも、このしぼみかかった、あわれなはなうえにはたよりなげにらしたのです。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おにいさん、上手じょうずれるようになったのね。」と、おんなや、おとこらは、かれ周囲しゅういあつまってきていいました。
空晴れて (新字新仮名) / 小川未明(著)
さけあぶらのにおいが、周囲しゅういかべや、器物きぶつにしみついていて、よごれたガラスまどから光線こうせんにぶうえに、たばこのけむりで、いつも空気くうきがどんよりとしていました。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるときはそのはないたそのなかで、楽器がっきらしました。小鳥ことりは、その周囲しゅうい木々きぎあつまってきました。
笑わない娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
老工夫ろうこうふは、まだぼんやりとして、電燈でんとう中心ちゅうしんに、周囲しゅうい光景こうけいをながめていました。すべてが、じっとして、うごかない。ただ、うごいているものは、みずながればかりでした。
いままであそびにをとられていた子供こどもらは、まるくしてそのじいさんの周囲しゅういあつまって、片方かたほうはこうえてたいろいろの小旗こばたや、不思議ふしぎ人形にんぎょうなどに見入みいったのです。
空色の着物をきた子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このとき、あちらにっている電燈でんとうても、おなじような光景こうけいでありました。そして、はねしろが、周囲しゅうい空間くうかんを、ひかったちりのまかれたようにっているのでした。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
であるのに、たえず、すぎの若木わかぎは、周囲しゅういくさや、や、むしなどを冷笑わらっていたのです。
雪くる前の高原の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おじいさん、お薬屋くすりやさんをつれてきた。」と、いうこえがきこえたのでした。そのいえ周囲しゅういは、ももはやしになっていました。鶏小舎とりごやがあって、にわとりがのどかなこえでないていました。
薬売りの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかしいけそこには、かわずのまだらない、いろいろなうおや、またおそろしいむしなどがんでいました。ひとり、みずなかばかりでなく、いけ周囲しゅういには、もりがあり、やぶなどがありました。
太陽とかわず (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから、子細しさい周囲しゅういをしらべてみますと、そのいえは、になっていました。
窓の下を通った男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
長屋ながやじゅうのものが、総出そうでとなって、このどく老職人ろうしょくにん周囲しゅういあつまりました。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
屋根やねには、さびたブリキいたせ、周囲しゅういは、やぶれたいたてかけてありました。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
としとったかしのは、周囲しゅういにあったいろいろのが、いつしかしものためにいろづいたのをました。また、あしもとのくさが、れてゆくのをながめました。しかしこれは、毎年まいねんのことでありました。
大きなかしの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)