見張みは)” の例文
「わたしはここに見張みはっているから、はやくこのことを呂宋兵衛るそんべえさまに知らせてきておくれ。こんな役目やくめはおまえさんにかぎるのだから」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしこれもまた、長吉ちやうきちには近所の店先みせさき人目ひとめこと/″\く自分ばかりを見張みはつてるやうに思はれて、とても五分と長く立つてゐる事はできない。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「こんなとき電話でんわがあるとな。」「もうえませう。——こゝにいらつしやい。……わたしつて見張みはつてます。」家内かないはまたそとつた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
配下はいかのほとんど全員ぜんいん手配てはいめいじておいて、はじめはしかし、島本守しまもとまもるには見張みはりだけをつけ、事件現場じけんげんば金魚鉢きんぎょばち調しらべた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
それからはぼくにうちで留守番るすばんさせて、このスープの見張みはりを言いつけた。毎朝出て行くまえに肉と野菜やさいをなべに入れて、ふたにじょうをかってしまう。
ついにむこは、うちひとたちが心配しんぱいをして、見張みはりをしていたにもかかわらず、いつのまにか、うちからして、おなかわげてんでしまいました。
海ぼたる (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたくし今更いまさらながら生死せいしさかいえて、すこしもかわっていない良人おっと姿すがた驚嘆きょうたん見張みはらずにはいられませんでした。
こういうとかれは、目にもとまらない早さでペロリとたいらげた、一同はかれのすばやい食べ方に目を見張みはった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
平次は裏口に見張みはつて聲を掛けます。不意に、何にか飛出しさうな氣がして、全く油斷のならない情勢でした。
地上ちじやうにあつて、この蒼白あをじろ苦患くげん取巻とりまかれてゐるわがは、いまこの無垢むくつてゐるしゆ幼児をさなごくび吸取すひとつてやらうと、こゝまで見張みはつてたのである。
端艇たんてい右舷うげん左舷さげんオールにぎめたる水兵等すいへいらも、吾等われら兩人りようにんかほて、一齊いつせいおどろき不審いぶかりまなこ見張みはつた。
おくさんは黒未勝くろみかちな、若々わか/\しいひとみを夢見ゆめみるやうに見張みはりながら、れやかにつぶやいた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
警官隊は、小人数の見張みはりの者をのこして、あとはみんな、ふもとの町へ引きあげていった。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
縱令よし、それがまつたたまごかへ邪魔じやまをしないにせよ』とつてはとは、『それにしても、わたし晝夜ちうやへび見張みはらなければならない!さうへば、わたしはこの三週間しうかんちツともひつじかげないが!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
枝折戸しおりどそとに、外道げどうつらのようなかおをして、ずんぐりってっていた藤吉とうきちは、駕籠かごなかからこぼれたおせんのすそみだれに、いましもきょろりと、団栗どんぐりまなこを見張みはったところだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
りつなぐさめつ一方かたへこゝろかせんとつと一方かたへ見張みはりをげんにしてほそひも一筋ひとすぢ小刀こがたな一挺いつてふたかれさせるなよるべつしてをつけよと氣配きくば眼配めくば大方おほかたならねば召使めしつかひのものこゝろかぜおと
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
百人ちかくの試験官の見張みはり監督していても、ただ水を打ったように静寂せいじゃくを極めて、廊下ろうかの板をふむ巡視の靴音くつおとさえも聞こえないほど静かで、ほとんど人なきがごときさまであるところの玄関に
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
そこで、八幡太郎はちまんたろうにおいいつけになって、御所ごしょ警固けいごをさせることになりました。義家よしいえおおせをうけると、すぐよろい直垂ひたたれかためて、弓矢ゆみやをもって御所ごしょのおにわのまん中にって見張みはりをしていました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
気力次第にわり、両眼自ら見えずなりたれば我今これまでと思いて、自らまなこじなばあるいはこれかぎりなるべし、力の続かんまではと心励まし、がみをなし、一生懸命吹雪に向いて見張みはりしため
おいらの見張みはりは
本部の段々で (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
夜はつめたいいその岩かげに組んだ小屋にねる。だが、そのあいださえ、羅刹らせつのような手下は、交代こうたい見張みはっているのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから、幾月いくつきがなかったのであります。やぐらにのぼって見張みはりをしていた家来けらいが、あわててりてきて
春の日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ましてわたしがはじめて屋根裏やねうら部屋へやで会ったとき、スープなべの見張みはりをして、えず気のどくないたむ頭を両手でおさえていた化け物のような子ではなかった。
たれ見張みはつてでもないと、危険けんのんだからつて、ちよい/\なはいてはなしてつたことが幾度いくたびもあつた。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
富士男とモコウが出発したのち、万一をおもんばかったゴルドンは、年長組のガーネット、サービス、バクスターとはかって、河を見張みはりすることにした、意見は一致した。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
入口いりぐちには注連縄しめなわってあるので、悪魔あくま外道げどうたぐい絶対ぜったいはいることはできぬ。またたとえ何事なにごとおこっても、かみまなこはいつも見張みはっているから、すこしも不安ふあんかんずるにはおよばぬ……。
「ほほう」帆村は眼を見張みはった。「それは何時頃です」
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
『えい、きみも?。』とかれ見張みはつて。
見張みはりだぞ
本部の段々で (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
そのまゝ座敷牢ざしきらうえん障子しやうじ開閉あけたてにも乳母うば見張みはりのはなれずしてや勘藏かんざう注意ちゆうい周到しうたうつばさあらばらぬこととりならぬ何方いづくぬけでんすきもなしあはれ刄物はものひとれたやところかはれどおなみちおくれはせじのむすめ目色めいろてとる運平うんぺい氣遣きづかはしさ錦野にしきのとの縁談えんだんいまいまはこびしなかこのことられなばみな畫餠ぐわべいなるべしつゝまるゝだけは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ぬしは、いまくるか、いまくるかと、物蔭ものかげかくれて、見張みはっていますと、太郎たろうは、たか竹馬たけうまってあとからおおぜいの子供こどもれてやってきました。
竹馬の太郎 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いま、わたしのぐるりをいているものは、気味の悪いものばかりであったが、わたしはいっしょうけんめい好奇こうきのの目を見張みはって新しい周囲しゅういを見回した。
「またその日はうわさを聞きおよんで、あまたの領民りょうみんがあつまるにちがいない。甲賀組こうがぐみ伊賀組いがぐみの者、残りなくりだして、あやしい者の見張みはりにはなちおくように」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おもってわたくしはここに懺悔ざんげしますが、四辺あたりかみさんたち見張みはっていないと感付かんづいたときに、わたくしこころきゅうにむらむらとあらぬ方向ほうこうきづられてったことは事実じじつでございます。
権七ごんしちぢやない! 小天狗こてんぐが、天守てんしゆから見張みはりにたな。』
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
兵曹へいそうおどろいて見張みは
ふねみなとくと、はやく、その商人しょうにんから、このあおいしおうとおもって見張みはっているひとまでありました。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしはうっかり見張みはりをゆるめていたので、かれらはぬけ出したのであった。ほえながらかれらは前へとび出した。わたしはかれらが親方にとびかかるのを見た。
わたくしが、見張みはりをしてあげましょう。」と、毎日まいにち泉水せんすいのほとりであそんでいるにわとりがいいました。にわとりは、すばしこかったから、けっして、ねこにとらえられるようなことはありませんでした。
こいのぼりと鶏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
するとあの二人は巡査じゅんさ見張みはりをしているからと言っていたもの
交叉点こうさてんのところへかかると、まだ、あおあか信号燈しんごうとうがまにあわぬとみえて、ばたんばたんと、ゴーストップの機械きかいをまわして、見張みはりの巡査じゅんさがピリッピリッと、そのたびにふえらしていました。
はととりんご (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのあいだおんな子供こどもたちは、ひだりみぎ見張みはっていました。
白い雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)