“小天狗”の読み方と例文
読み方割合
こてんぐ100.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
勝った銭と、勝ち鶏の獅子丸とを、胸にかかえこんだ小冠者の影が、まるで翼のはえた小天狗こてんぐのように、清盛の体をかすめて、一目散に、かなたへけ去ってゆくのが見えた。
「おめえはせても枯れても岸沢蝶太夫だぞ、そうだろう、常磐津綱太夫の弟子では、小天狗こてんぐといわれた、いまの綱太夫なんか、へっ、おれの履物を直したもんだ、ほんとだぜ」
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「恐れるな。小天狗こてんぐめ、」とさも悔しげに口の内につぶやいて、洋杖ステッキをちょいとついて、小刻こきざみに二ツ三ツつちの上をつついたが、ものうげに帽の前を俯向うつむけて、射る日をさえぎり、さみしそうに、一人で歩き出した。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)