れい)” の例文
旧字:
「ありがとう。」と、れいをいって、自分じぶんってきたものをして、二人ふたりは、ならんではなしながら、お菓子かしや、果物くだものべたのでした。
生きぬく力 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おかみさんはれいをいい、テーブルかけをひろげて、食事しょくじのしたくをととのえ、げるように部屋へやをでていった。台所だいどころへもどりながら
糟谷かすや次男じなん芳輔よしすけじょれい親子おやこ四人の家族かぞくであるが、その四人の生活が、いまの糟谷かすやはたらきでは、なかなかほねがおれるのであった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
といって、何遍なんべん何遍なんべん藤太とうだにおれいをいいました。そしてたくさんごちそうをして、おんなたちにうたうたわせたりまいわせたりしました。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「さあ、おいでったら。おまえがあたしの耳にハチを入れてくれたおれいを、いましてあげるよ!」と、グルリリアはさけびました。
したしげにせて、かほ差覗さしのぞいて、いそ/\していふと、白痴ばかはふら/\と両手りやうてをついて、ぜんまいがれたやうにがつくり一れい
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そうして出版社しゅっぱんしゃにまかせておいたのでは、そのいいなりのおれいしかもらえないことがわかりましたので、自分じぶん出版社しゅっぱんしゃをつくりました。
こいつはわたしいそこないだ。が、ともかく、おれいのつもりで、いいものをつてきましたよ。旦那だんな金魚きんぎょきだそうですね。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
それを、たった一人の農夫に対して、三顧さんこれいを尽すなど、実に、愚の至りというべきだ。孔明を招くには、一条の麻縄があれば足りる。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これともうすもひとえ御指導役ごしどうやくのおじいさまのお骨折ほねおりわたくしからもあつくおれい申上もうしあげます。こののちとも何分なにぶんよろしうおたのもうしまする……。
老人は、だまってれいかえしました。何かいたいようでしたが黙ってにわかにむこうをき、今まで私の来た方の荒地あれちにとぼとぼ歩き出しました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ハバトフはそのあいだ何故なにゆえもくしたまま、さッさと六号室ごうしつ這入はいってったが、ニキタはれいとお雑具がらくたつかうえから起上おきあがって、彼等かれられいをする。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
えゝ成程なるほどそれぢやア先刻さつきまへさんところへお赤飯せきはんげたれいなすつたのかね。甚「ヘイく知つてますね、横着者わうちやくもの。 ...
八百屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
わしは、むすめをわらわせたものに、むすめをやると約束やくそくしてあるのだ。おまえは、幸運こううんのおれいかみさまにもうすがよい。
折目高おりめだかなる武家ぶけ挨拶あいさつ」と云う様な切口上で挨拶をするのが癖である。今日も朝方あさがた蓄音器招待のれいに、季節には珍らしいたけのこ二本持て来てくれた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そのかわりおれいは二まではずもうし、羽織はおりもおまえ進呈しんていすると、これこのとおりお羽織はおりまでくだすったんじゃござんせんか。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
蜀漢しょくかん劉備りゅうび諸葛孔明しょかつこうめい草廬そうろを三たびう。これを三れいと言うてナ。しん、もと布衣ほい……作阿弥殿、御名作をお残しになるよう、祈っておりますぞ。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
おれがききとれていたら、じいさんはにこにこしながら、三つながきょくをきかしてくれました。おれは、おれいに、とんぼがえりを七へん、つづけざまにやってせました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
思いがけない喜びであり、きゅうにはれいのことばも出てこなかったのだ。それをごまかしでもするように、さっきから、やっぱりだまっている娘の大石先生に気がつくと
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
加藤清正公かとうきよまさこう朝鮮征伐ちようせんせいばつにいらしたときわたくし先祖せんぞ道案内みちあんないをしたので、そのおれい清正公きよまさこう紋所もんどころをこうして身体からだへつけてくだすつて代々だい/\まあこうして宝物ほうもつにしてゐるやうなわけですよ
もうものを言うこともできなかったので、かすかにわたしは首をうなずかせて、おれいを言った。よし、わたしがものを言えたとしても、父親が口をきかせるひまをあたえなかった。
されば先生は常にはかまをも着せず、一書生いちしょせい風体ふうたいなるにかかわらず、予が家の婢僕等ひぼくら尊敬そんけいして、呼ぶに先生を以てし、門番もんばん、先生を見ればにわかに衣をまといてその裸体らたいおおいてれいせり。
うだい。此間このあひだ色々いろ/\難有う。其一寸ちよつとれいかうと思つて、まだかない」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
れいに、なにかよいものをおあげしたいが、たびのことで、なにもなくお気のどくです。けれどこれからあと六日の滞在たいざいちゅう、毎夜来て、こよいの物語を聞かしてくだされば、ありがたいことです。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
抽斎は『れい』の「清明在躬せいめいみにあれば志気如神しきしんのごとし」の句と、『素問そもん』の上古天真論じょうこてんしんろんの「恬惔虚無てんたんとしてきょむならば真気従之しんきこれにしたがう精神内守せいしんうちにまもれば病安従来やまいいずくんぞしたがいきたらん」の句とをしょうして、修養して心身の康寧こうねいを致すことが出来るものと信じていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
いかにもはぢたるさまにてれいをのべて立さりけるとぞ。
「おれい、今帰ったよ」
「そんなに、おれいをいわれるとこまります。わたしは、良心りょうしんが、不正ふせいゆるさないために、たたかいましたばかりです。」と、若者わかものこたえました。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
竹童は遠退とおの跫音あしおとへいくどもれいをいったが、両手りょうてで顔をおさえているので、それがどんなふうの人であったか、見送ることができなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのほんをおれいをとってかしたり、それをうつしたいといえば、うつすためのおれいをとるというわけで、そのおれい山本家やまもとけ収入しゅうにゅうになります。
それでぼうさんも、かけによらないこれはいいうちとまり合わせたと、すっかり安心あんしんして、くりかえしくりかえしおばあさんにおれいをいっていました。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
福の子は鬼のおかあさんに、こまっているところをたすけてもらったおれいをくりかえしいって、地獄じごくをたちさりました。
あああ、八年の間、夜ひるないでめんどうを見てやってそのおれいがこれか。ああなさけない、もう世の中はみだれてしまった。ああもうおしまいだ。
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
が、そのうち妊娠にんしんということが次第しだいわかってたので、夫婦ふうふよろこびはとおりでなく、三崎みさきあいだは、よく二人ふたりちておれいにまいりました。
「いまさら、ぐずぐず言うな。透明人間とうめいにんげんのわしが、おまえをえらんだんだ。おれのためにはたらいてくれ。そうすればおれいはたっぷりやるよ。わかったな」
しかしわたしは、ことばでおれいを言うよりも、おこないでお礼をしたいほうなのです。それで、オヤユビさん、いまそのごおんがえしができると思います。
ういふお慈悲なさけぶか旦那様だんなさまがおありなさるから、八百膳やほぜん料理れうり無宿者やどなしくだされるのだ、おれいまうしていたゞけよ、おぜんいたゞくことは、きさま生涯しやうがい出来できないぞ。
あんずるに、くるまつて、作品さくひんれいするのであらう。厚志かうしあへて、輿こし駕籠かごやぶがさとをえらばぬ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「馬鹿野郎! 七輪じゃアねえ。五とくだ。じんれいしん、これを五徳といってナ」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
先達せんだつては難有ありがとう」とれいべた。三四郎には此御礼の意味があきらかにわかつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はずかしいこたァありゃァしない。めるおやは、世間せけんにはくさほどあるけれど、どれもこれも、これよがしの自慢じまんたらたら。それとちがってあたしのは、おまえにかせるおれいじゃないか。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
紹介しょうかいする。其尾について、彼は両手りょうてをついて鄭重ていちょうにお辞儀じぎをする。皆が一人〻〻ひとりひとり来ては挨拶する。石山氏の注意で、樽代たるだい壱円仲間入のシルシまでに包んだので、皆がかわる/″\みやげのれいを云う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それから五にん盗人ぬすびとは、おれいをいって村役人むらやくにんいえました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
旦那だんなにも、おれいいてえとおもいましてね
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
かあさんが、くずさんのおうちをきいておいてくださったので、きよは、おれいにいくのに、そうさがしてあるかなくともよかったのです。
雪の降った日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
くすり主人しゅじんも、これにはこまったとみえて、ひらあやまりにあやまり、さけを五しょうに、にわとりとさかななどをおれいとしてだしました。
網代笠あじろがさをかぶった三人の僧形は、黙々もくもくとして、そのれいをうけ、やがてあんないにしたがって、菊亭殿きくていどのの奥へ、スーッと姿すがたをかくしてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どんなおれいでもしてげたいところだけれど、途中とちゅうでどうすることもできないから、ほんのおしるしにさしげます。」
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そして、小人たちにおれいをいって、ひとりひとりに握手あくしゅをしました。それから、まま母にのぞみのものをもっていってあげようと、走ってかえりました。
まして当人とうにんはよほど有難ありがたかったらしく、早速さっそくさまざまのお供物くもつたずさえておれいにまいったばかりでなく、その終生しゅうせいわたくしもと参拝さんぱいかさないのでした。