づゝ)” の例文
そのつもりで余は、この文章を時々少しづゝ斯うして書いてゐるのだが、何処に如何、月日の区切りを付けることも出来ないのだ。
西瓜喰ふ人 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
望蜀生ぼうしよくせいとは、夢中むちうつて、それを採集さいしふした。其數そのすうじつに二ひやく七十六ほん。それを四大布呂敷おほふろしきつゝみ、二づゝけてことにした。
その鰹船かつをぶねひとづゝこの器械きかいそなけるやうになつたら、莫大ばくだい利益りえきだつてふんで、此頃このごろ夢中むちゆうになつて其方そのはうばつかりにかゝつてゐるやうですよ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「去年申上候塙書之事はなはしよのこと大事之事也。ねがはくは御帰城之便に二三巻づゝ四五人へ御託し被下候慥に届可申候。必々奉願上候。」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
しるして、一車いつしや税銀ぜいぎんいつげつ八匁はちもんめづゝなりとせてある。勿論もちろん金澤かなざは福井ふくゐなどでは、俵藤太たはらとうだも、頼光らいくわう瀧夜叉姫たきやしやひめも、まだこともなかつたらう。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その上、その中から月々十円づゝ実家へ送金しなければならなかつた。だから入社してからも僕は成瀬家に寄食してゐた。
世に出る前後 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
假令たとひせさせないまでもこやしてくことをしないはたけつち茄子なす干稻ひねびてそれで處々ところ/″\ひとづゝはなつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それに受持以外に課外二時間づゝと來ては、他目よそめには勞力にともなはない報酬、否、報酬に伴はない勞力とも見えやうが、自分は露聊つゆいさゝかこれに不平は抱いて居ない。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
滿谷と柚木ゆのきが当分ロウランスのアトリエへ通ふ事になつて昨日きのふその同学生との顔繋ぎの式があつた。新入生が一にん三十フランづゝ酒代さかだいを出して饗応するのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
第一貴処あなた、困る事には此役に立たない商業学校の卒業生が学校を出れば一廉ひとかどな商業家になつた気でゐる、高等商業学校を初めとして全国に商業学校が各府県に一つづゝある
青年実業家 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
かくて當日このひは、二十ちかすゝんでれたので、よる鐵車てつしやをばいち大樹だいじゆ下蔭したかげとゞめて、終夜しうや篝火かゞりびき、二人ふたりづゝ交代こうたいねむつもりであつたが、いかさけ猛獸まうじうこゑさまたげられて
七八人づゝ組みになつて蕭条と戻り来る遊女の群を充血した眼で見守つてゐるのであつた。
それからその時計と植木鉢との間には、きつと支那人の人形が一つづゝ立つてゐる。ふくらんだ腹の真ん中に穴があつて、それを覗いて見ると、中には懐中時計の表面が見えてゐる。
十三時 (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
はじめのうち心後きおくれしてだまつてますと、二ひき動物どうぶつがそのそば近寄ちかよつてました、みぎひだりに一ぴきづゝくちとを開けるだけおほきくいて、でも、あいちやんは元氣げんきしてはなつゞけました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
御米およね廣島ひろしま福岡ふくをか東京とうきやうのこひとづゝ記憶きおくそこに、うごかしがたい運命うんめいおごそかな支配しはいみとめて、そのおごそかな支配しはいもとつ、幾月日いくつきひ自分じぶん
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「僕達一同は、夫々一人づゝのロビンソン・クルウソウになつて、こいつは何とか思案を回らさなければならないぞ……?」
川を遡りて (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
岡は柴田勘兵衛、石川彦兵衛に百目筒めづゝを一ちやうづゝ、脇勝太郎、米倉倬次郎よねくらたくじらうに三十目筒一挺宛を持たせて中川方へつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
歸りはお吉の辭するもかず、二人で桶を一つづゝ輕々と持つて勝手口まで運んだが、背後うしろからお吉が
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
いよ/\辞職と決したのでこの十七日に氏の御名残おなごり狂言がコメデイ・フランセエズ座で催され、氏の得意おはこの物を一幕ひとまくづゝ出し、ムネ・シユリイ其他そのたの名優が一座するはずである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「はい」と一どう時儀じぎをした。各自かくじぜんすみへ一つづゝわたされた茶呑茶碗ちやのみぢやわんさけがれようとしたとき
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
をんな一人ひとり、これは背向うしろむきで、三人さんにんがかり、ひとすくつて、ぐい、とせて、くる/\とあんをつけて、一寸ちよいとゆびめて、ひとづゝすつとくしへさすのを、煙草たばこみながらじつた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そこで用意ようゐとゝなふと、吾等われらに/\一個いつこづゝ爆裂彈ばくれつだんたづさへて立上たちあがつた。かね用意ようゐとりにくを、十きんばかり鐵檻てつおりあひだから投出なげだすと、しよくゑたる猛獸まうじうは、眞黒まつくろになつてそのうへあつまる。
学問の進歩が極点に達した時なら知らず、何も彼も多くは疑問として存してほんの理窟の言現いひあらはし方を少しづゝ違へた位で総て研究に属してゐる今日では学者と無学者とは相去る事幾何いくばくも無い。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
あいちやんは當惑たうわくして、らず/\衣嚢ポケツト片手かたてれ、乾菓子ひぐわしはこ取出とりだし、(さいは鹹水しほみづ其中そのなか浸込しみこんでませんでした)褒美はうびとして周圍しうゐのものにのこらずれをわたしてやりました。丁度ちやうど一個ひとつ一片ひとかけづゝ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
それから最初さいしよのうちは、めてはるのは難儀なんぎだから線香せんかうてゝ、それで時間じかんはかつて、すこづゝやすんだらからうとやう注意ちゆういもしてれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
食糧品屋の番頭が、主人に内緒で呉れたんだよ——皆馬車の上に立ちあがつて一杯づゝの興奮剤を飲んで、ともかく一刻も早くマメイドに引きあげよう。
馬車の歌 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
乍恐おそれながら御西山君樣御代御側向おんそばむき御召抱お島之御方のおんかた被申候まうされそろを妻に被下置くだしおかれ厚き奉蒙御重恩候而ごぢゆうおんをかうむりたてまつりそろて、年々御米百俵づゝ三季に享保年中迄頂戴仕來冥加至極難有仕合きやうはうねんちゆうまでちやうだいつかまつりきたりみやうがしごくありがたきしあはせ奉存候ぞんじたてまつりそろ
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
四人の画家連は写生の為に林中にとゞまり、小林近江等は瀑布と植物園とへ廻り、僕と三浦等は市内を一週して先に帰船した。馬車料は一台三円案内者へは一人二十銭づゝを与へた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
茶は一斤半として九十錢、新聞は郵税を入れて五十錢、それを差引いた殘餘の一圓と外に炭、石油も學校のを勝手に使ひ、家賃は出さぬと來てるから、校長はどうしても月五圓づゝとくをして居る。
葉書 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
二名にめい水兵すいへい仲間なかま一群ひとむれ追廻おひまはされて、憘々きゝさけびながら逃廻にげまわつた。それは「命拾いのちひろひのおいわひ」に、拳骨げんこつひとづゝ振舞ふるまはれるので『これたまらぬ』と次第しだいだ。勿論もちろん戯謔じやうだんだが隨分ずいぶん迷惑めいわくことだ。
「俺は、慣れたい。毎朝のこれで少しづゝ回復するだらう、彼処に寄らないで済む日を待つてゐるんだ、俺だつて!」
F村での春 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
「先生、将棋はうです」抔と持ち掛けた。夕方ゆふがたにはにはに水をつた。二人ふたり跣足はだしになつて、手桶を一杯づゝつて、無分別に其所等そこいららしてあるいた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
尚々私も追々と老耄、手もすこしづゝかなはぬやうになり候故、本文代筆に候。真平御免可被下候。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
たゞ、それが生理的に反射してたびに、椅子のうへで、少しづゝ身体からだの位置をへなければならなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これだけでは守備が不足なので、幕府は外様とざまの大名に役知やくち一万石づゝつて加番かばんに取つてゐる。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
板目紙をふだの形にたつて、茶色の薬袋紙で裏打ちをした。それを二三枚づゝ、耽念に塩煎餠をあぶるやうに遠火で乾した。それに、若い女が凝つた筆法で筆を揮ふのが常習ならはしだつた。
昔の歌留多 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
自分のへやはもと特等として二間ふたまつゞきに作られたのを病院の都合で一つづゝに分けたものだから、火鉢などの置いてある副室の方は、普通の壁が隣の境になつてゐるが
変な音 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
同心支配は三人あるが、これは自分が出ることにし、小頭こがしらの与力二人には平与力ひらよりき蒲生熊次郎がまふくまじらう、本多為助ためすけを当て、同心三十人は自分と同役岡との組から十五人づゝすことにした。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「それ位ひならば、せめて毎朝、此方のだけは一度づゝ時間を合せて置けば好いのに!」
村のストア派 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
「本当にかゝつたのは、つい此間このあひだですけれども、其前そのまへからすこづゝいていただいてゐたんです」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
どちらも二つづゝのものを一つ/″\に引き離しては考へられなかつたのである。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「僕が飾りつけたスターの写真を毎日一度づゝ見に来る村長だからね。」
円卓子での話 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
幸徳秋水のいへまへうしろに巡査が二三人づゝ昼夜張番はりばんをしてゐる。一時は天幕てんとを張つて、其なかからねらつてゐた。秋水が外出すると、巡査があとを付ける。万一見失ひでもしやうものなら非常な事件になる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「そして、用事と自分の勉強とを半分づゝしても好いでせう。」
F村での春 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
ラオコーンが務まれば毎日金貨が一袋づゝ儲かるわよ。
山彦の街 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)