)” の例文
それから、おじいさんは、それは、またさむがりでありました。けれど、こうしたむずかしやのおじいさんでも、子供こどもきでした。
ものぐさじじいの来世 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それでも夏はそれほどひどくは気にならないけれど冬羽織着物、下着、半衿とあんまりちがう色をつかうのは千世子はいて居なかった。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
このはなし但馬守たじまのかみが、與力よりきからいて、一そう玄竹げんちくきになつたのであつた。それからもうひとつ、玄竹げんちく但馬守たじまのかみよろこばせた逸話いつわがある。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「あんな怖らしい顏つきしてゐやはつて、若い女の事書いたり、戀したとかいたとかいふやうな事、ようまあ書けたもんやなあ。」
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
もつともさういへばさかりころでもらあつてからは仕事しごと上手じやうずるとしちやみつしらやうだつけが、きぢやねえ鹽梅あんべえだつけのさな
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ところこのアルゼリヤこくうちでブリダアといふ市府まちひとわけても怠惰なまけることがき、道樂だうらくをしておくることが好きといふ次第である。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
食物たべものききらいをいう、というよりは、あれもいや、これもいや、のべつに「いや、いや」とばかり、一雄はいいつづけていました。
祖母 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ローズ・ブノワさんは動物どうぶつきで、動物どうぶつの方でもローズ・ブノワさんがきです。だからこそとりけもののいうことがわかるのです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
「きみたちは、どこの子なの。あんたは、どこの子なの。」と、すっかりもうきになって、にこにこしながら、少年はたずねる。
そこもとうさんのきなところで、うちひと手桶てをけをかついでたり、みづんだりするそばつて、それを見のをたのしおもひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
三四郎は礼を云つて、一つべた。ひげのある人はきと見えて、無暗むやみべた。三四郎にもつとべろと云ふ。三四郎は又一つべた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
食物のきらひと云ふ事は一家族の中にさへ有る事故、異りたる國民、異りたる人種じんしゆの間に於ては猶更なほさら甚しき懸隔けんかくを見るものなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
わたしはもう二度とこの世の中で、いちばんきだった人に会うことができないのだ。こう思うとわたしは息苦しいように感じた。
ロミオ あれは自分じぶん饒舌しゃべるのをくことのきなをとこ一月ひとつきかゝってもやりれぬやうなことを、一分間ぶんかん饒舌しゃべてようといふをとこぢゃ。
『あなたがたなかにも、人間にんげんきなものときらいなもの、また性質せいしつのさびしいものと陽気ようきなものと、いろいろ相違そういがあるでしょうね?』
そこでこんどはしばらくこの仲間なかま屋敷へも帰らねえから、兄貴あにきはここで冬を越すとも、まためて京都へ立つなりときにしてくれ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わざわざ遠廻りしてまで他所よその風呂へ行くといった様に、いきおい、それはきのことではあるけれど、噂で持ちきっていたものである。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わたしいまゐるところ日本にほんいえでございます。わたし日本にほんうちきでございます。日本にほん西洋家屋せいようかおくはお粗末そまつかへつかんじがわるうございます。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
僕を一番いていた弟が銃口の前で僕の名を呼んで、救けを求めたことまでわかっていて、どうしても、ほんとうとしか思えないのです。
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
もしってみずなかったら、どこにでもおまえさんのきなところにらしてあげよう。あのへんは、みな、わしの土地とちだから。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
こいつはわたしいそこないだ。が、ともかく、おれいのつもりで、いいものをつてきましたよ。旦那だんな金魚きんぎょきだそうですね。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
きつと、おぢさんの子供こどもやおぢさんをいてくれる子供こどもたちとおなじやうに、よろこんでんでくれ、よろこんでうたつてくれるにちがひない。
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
そのうへ個人こじんには特殊とくしゆ性癖せいへきがあつて、所謂いはゆるきらひがあり、かふこのところおつきらところであり、所謂いはゆるたでむしきである。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
でもクリストフは、知らず知らずに彼をいてるのだった。第一に、思うままになるおとなしい玩具がんぐとして、彼がきだった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
ところがじっさいにおいてはかれをくものはイルコック、ウエップ、グロースの三人だけで、その他の少年はドノバンをこのまなかった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
あるいは鶏の柔い肉をき自由に切っても構いません。別に玉葱たまねぎを三つか四つ入れて塩胡椒で味をつけて弱い火でおよそ一時間ほど煮ます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
男らしいきっぱりとしたところはあるが、体格の大きい、肩の怒った、眼の鋭い、頬骨の出たところなど、女にかれるような点はなかった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
知らせる位なら、園絵はかれが妻じゃ。いたのかれたのという新妻じゃ。まず、弟よりも妻へしらせそうなものではないか
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「顏だつて一種獨特よ。頬がこけてやつれてるけど、私はきなの。丈夫になつて元氣が出て來れば、きつと嫌味いやみのない顏になると思ふわ。」
「ああ! どうぞ勘弁かんべんしてください!」とおとここたえた。「このんでいたしたわけではございません。まったくせっぱつまって余儀よぎなくいたしましたのです。 ...
そぎやんこつ云ふた奴のつらば見たか。わしや、辛棒ていふこたあ、大好でやあすかん。そんかわり、人がなんと云ふたてちや、いたこたあ、すツたい。
牛山ホテル(五場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
あんずるに、團子だんご附燒つけやきもつ美味うまいとしてある。鹽煎餅しほせんべい以來このかた江戸兒えどつこあまあまいのをかぬ。が、なにかくさう、わたし團子だんごあんはう得意とくいとする。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
虚霊きょれい」を吹かず「虚空こくう」を吹かず、好んで「鈴慕」を吹きたがるところから見れば、それは何か手ざわりがよくて、虫がくといったような
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
仮名床かなどこ伝吉でんきちやつァ、ふだん浜村屋はまむらやきだのはちあたまだのと、口幅くちはばッてえことをいってやがるくせに、なんてざまなんだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
まへ彼処あつちなくなつたのは、だれきなひとができて、一しよになつたからだとおもつてゐたんだ。こんなところかせぎにてゐるとはらなかつたヨ。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
わたしはあのたまちやんをせてあげたいわ、しおまへたまちやんをたつた一でもやうものなら屹度きつとねこきになつてよ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「ただの香物こうのものでも、こうして煮ると皆がくけえ、これは煮茎じゃのうて煮ずきじゃ」などと言って面白がっていた。
私の父 (新字新仮名) / 堺利彦(著)
きらいぢやありません、きですからおそれてゐるのです、たゝくにしのびません、そしてうことは懲々こり/\してゐるんです」
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
……ひッ、けだものどもめ、なんともきもがつぶれたか。……これ六平や、そなたは路考ろこうに生写し、いたらしいの総浚い。陸尺などにはもったいない。
さいわいに赤児は、やぎ乳をいた。みんなはほっと一ト安堵をした。生れてからずッと腹をコワしていた赤児は、やっとすこしばかり腹の方がなおりかかった。
童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
矢筒やつゝなどの品物しなものすこのこつてゐるだけでありまして、ごくむかし日本人につぽんじんはけっして上手じようずであつたとか、きであつたとはいふことが出來できないのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
張作霖ちやうさくりんはず、如何いか支那人しなじん麻雀マアジヤンくかといふことはいろいろはなしくが、おどろくことは彼等かれらも三不眠不休ふみんふきうたゝかひつづけて平氣へいきだといふことだ。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
をとこをんな法師はふしわらは容貌かほよきがきぞとは色好いろごのみのことなりけん杉原すぎはららうばるゝひとおもざしきよらかに擧止優雅けにくからずたがても美男びなんぞとゆればこそは
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かれはそのきゃくがきらいだった。廊下ろうかでばったり顔をあわせるようなことがあっても、わざとよこをむいて、むしかないことをあからさまにしめしたりした。
平家のはかのそばにあるあみだでらぼうさんが、それをきいて、たいへん同情どうじょうをし、またじぶんはびわもきだったので、この法師をお寺へひきとり、くらしには
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
修道女たちは医者が来るのをあまりきません。医者という者は少しも信仰のないものですから。医者は面紗かおぎぬをはずしたり、時とすると他の所までめくります。
「しかしもう、これから凧屋たこやはだめだ。おまえなんかも、なにかいいきなことを考えた方がいいよ。」
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
「おい今日は俺がおごるよ。」と庄吉は其日お茶の時にそっと惣吉に云った。「何でもきな物を云えよ。」
少年の死 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
新吉さんにはんな処へでも世帯しょたいを持たせて、自分のいた女房を持たせ、それには沢山のことも出来ませんが、病気がなおれば世帯を持つだけは手伝いをする積り
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これに反し酒の好きな者は医師がいかにその害を説くも、百薬のちょうなりと頑張がんばって聴かぬものが多い。心のきらいと物の善悪を混同こんどうする者は実際を見るめいうしなう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)