)” の例文
二日ふつか眞夜中まよなか——せめて、たゞくるばかりをと、一時ひととき千秋せんしうおもひつ——三日みつか午前三時ごぜんさんじなかばならんとするときであつた。……
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
よる大分だいぶんけてゐた。「遼陽城頭れうやうじやうとうけて‥‥」と、さつきまで先登せんとうの一大隊だいたいはうきこえてゐた軍歌ぐんかこゑももう途絶とだえてしまつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そこで彼は敵打かたきうち一行いっこうが熊本の城下を離れた、とうとう一封の書を家に遺して、彼等のあとを慕うべく、双親ふたおやにも告げず家出をした。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
昨夜ゆうべもすがらしづかねぶりて、今朝けされよりいちはなけにさまし、かほあらかみでつけて着物きものもみづからりしを取出とりいだ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
外では春のの沈黙が二人を包んだ。暗い並木を通る時マリイは立ち留まって、男の手を握って云った。「わけを話して下さいな。」
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
そのばんつきは、あかるかったのです。そして、地虫じむしは、さながら、はるおもわせるようにあわれっぽい調子ちょうしで、うたをうたっていました。
冬のちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)
夜気やき沈々たる書斎のうち薬烟やくえんみなぎり渡りてけしのさらにも深け渡りしが如き心地、何となく我身ながらも涙ぐまるるやうにてよし。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
彼女が死んでから半月計りというものは、学校の方も休んで了って——それが彼の職業だった——の目も寝ずに泣き悲しんでいた。
恐ろしき錯誤 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
家がそんな摸様もやうになつてゐて、そこへ重立おもだつた門人共の寄り合つて、けるまで還らぬことが、此頃次第に度重たびかさなつて来てゐる。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
しかるに形躯けいく変幻へんげんし、そう依附いふし、てんくもり雨湿うるおうの、月落ちしん横たわるのあしたうつばりうそぶいて声あり。其のしつうかがえどもることなし。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
って向側に点ぜられる灯火のきらめきも、ただ眼に少しばかりのおもむきを添えるだけで、涼味という感じにはまるでならなかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
らねえでどうするもんか。しげさん、おめえのあかしの仕事しごとは、ぜにのたまるかせぎじゃなくッて、色気いろけのたまるたのしみじゃねえか」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
夕月夜ゆふづくよといふのは夕月ゆふづきといふことでなく、月夜つきよつきのことです。で、夕月ゆふづきころといふと、新月しんげつ時分じぶんといふことになります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
るときれは私の大失策、或る私が二階に寝て居たら、下から女の声で福澤さん/\と呼ぶ。私は夕方酒をのんで今寝たばかり。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ミハイル、アウエリヤヌイチは一人ひとりして元気げんきよく、あさからばんまでまちあそあるき、旧友きゅうゆうたずまわり、宿やどには数度すうどかえらぬがあったくらい
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
うしたときにはまたみょう不思議ふしぎ現象ことかさなるものとえまして、わたくし姿すがたがそのみぎ漁師りょうしつま夢枕ゆめまくらったのだそうでございます。
けれども、まだ宿屋やどやが見つかりません。それで王子は、今夜はどこでをあかしたものだろうかと、とほうにくれてしまいました。
私の身体の不浄は、せめてもの幸いといってよろしく、若しそうでなかったならば……と考えて、私はあの一睡も致しませんでした。
秘密の相似 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
ひとりでみちをあるきながら、海蔵かいぞうさんはおもいました。——こりゃ、ひとにたよっていちゃだめだ、じぶんのちからでしなけりゃ、と。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
良人をつとを置いて一人この人等の傍へ寝に帰らうとは、立つ前のの悲しい思ひの中でも決して決して鏡子は思はなかつたのであつた。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
人の哀れを面白げなる高笑たかわらひに、是れはとばかり、早速さそくのいらへもせず、ツとおのが部屋に走り歸りて、終日ひねもすもすがら泣き明かしぬ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
の明けぬ内に帰り、是より雨のも風の夜も毎晩来ては夜の明けぬ内に帰る事十三日より十九日まで七日なのかの間重なりましたから
二月きさらぎ初旬はじめふと引きこみし風邪かぜの、ひとたびはおこたりしを、ある夜しゅうとめの胴着を仕上ぐるとて急ぐままにふかししより再びひき返して
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
フランセエズ座の名優某は匿名のもとに「カイアヹエ氏の十三日のの行為は神聖なるモリエエルの家(国立劇場)をけがしたものだ」
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
夜更よなか目敏めざとい母親の跫音あしおとが、夫婦の寝室ねまの外の縁側に聞えたり、未明ひきあけに板戸を引あけている、いらいらしい声が聞えたりした。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
は暗く霧は重く、ちょうどはてのない沼のようでところどころに光る燈火がりんの燃えるように怪しい光を放ちて明滅していた。
まぼろし (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そのうちもなく日がれて、よるになりました。けるにしたがって、もりの中はいよいよものすごい、さびしい景色けしきになりました。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「いま鳴いておりましょう、あれはうぐいすです。欧羅巴でも、チロルあたりまで行きませんと、このごろは、なかなかきかれません」
西林図 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
むまつのなく鹿しかたてがみなくいぬにやんいてじやれずねこはワンとえてまもらず、しかれどもおのづかむまなり鹿しかなりいぬなりねこなるをさまたけず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
そのは主人のおゆるしがでましたので、気ままに、柔らかい草のあるところばかりを選んで、足にまかせて歩るき廻りました。
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
勘次かんじうす蒲團ふとんへくるまつてうちからえてたあしあたゝまらなかつた。うと/\と熟睡じゆくすゐすることも出來できないで輾轉ごろ/\してながやうやあかした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
警察署にての訊問じんもん果てしのち、大阪に護送せらるることとなり、の八、九時頃にやありけん、珠数繋ずずつなぎにて警察の門を出でたり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
先生せんせいはもうなくなられていたわけですが、先生せんせいのおくさまと、なつかしいおも出話でばなしをしているうちに、もふけて十ごろになりました。
多分はこの三つの島でも、今はものの意味に取られているだろうが、私の考えたところでは、右の二種の忌言葉は起こりが一つだった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
野良犬のごとく江戸のちまたになの夢をむすんだお艶を、諏訪栄三郎になりかわって、豪侠泰軒がちから強く守っていた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
王栄老は七の間待つてみたが、風は少しも衰へなかつた。すると八日目の朝、髯の白い宿屋の主人がひよつくり座敷に入つて来た。
去年の一月末のくもつたに、わたしはよんどころない義理で下町のある貸席へ顔を出すことになつた。そこにある社中の俳句会が開かれたのである。
赤い杭 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
あそこにアイスフォオゲルのいえがある。どこかあのへんで、北極探険者アンドレエの骨がさらされている。あそこで地極ちきょくが人をおどしている。
冬の王 (新字新仮名) / ハンス・ランド(著)
でも、があけないうちに……よし子さんが目をさまさないうちに、帰らなければならないので、ちっとでもぐずぐずしてはいられません。
金のくびかざり (新字新仮名) / 小野浩(著)
そののこと……。ルルはひとりおき上りまして、泣き疲れてスヤスヤねむっている妹の頬にソッと接吻をして、うちを出ました。
ルルとミミ (新字新仮名) / 夢野久作とだけん(著)
があけました。宿屋の人が起きてみると、風も吹かなかったのに、どうしたものか庭には柘榴ざくろが一ばいに落ちておりました。
椰子蟹 (新字新仮名) / 宮原晃一郎(著)
「おしょさん、今年のお浴衣そろいは、大層いっておはなしですから、芝居で、お浴衣ゆかた見物でございますから、ひとつどうぞ、御見物を——」
「そこでさり水を汲んではいかん、この井戸は、化物屋敷の井戸で、いわくのある井戸と知って汲むのか、知らずに汲むのか」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのは月が無かった。未荘は暗黒の中に包まれてはなはだしんとしていた。しんとしていて羲皇ぎこうの頃のような太平であった。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
かくせざればうちしみつきてふみへしたる処そのまゝ岩のごとくになるゆゑ也。晒場さらしばには一てんちりもあらせざれば、白砂しろすな塩浜しほばまのごとし。
「ところが僕の方は、君、」と、ノズドゥリョフが言うには、「っぴて、話をするのも胸糞の悪い、いやな夢を見たんだよ。 ...
乳母 もしえ、この指輪ゆびわひいさまから、わしに貴下こなたげませいとうて。さ、はやう、いそがしゃれ、いかけたによって。
ふたたび法師野ほうしのにあたって聞ゆる法螺ほら——。すでにはまったく明けはなれて、紫金紅流しきんこうりゅうの朝雲が、裾野すそのの空を縦横じゅうおうにいろどっていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
明治開化かいか爆笑王ばくしょうおうステテコの円遊えんゆうも、かゝる雪のかれの言の葉を以てせば「御膳上等」なる宇治にお茶漬ちゃづけサク/\とかつこみし事ならむか。
滝野川貧寒 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
いつの間にやらけ過ぎてしまった、戸外とのもは怖ろしい静寂の中に、時々こがらしが雨戸の外を過ぎて行くのに気が付きまして
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)