滝野川貧寒たきのがわひんかん
私は半生をつうじての貧困の生活を、昭和初世の滝野川と杉並馬橋とでおくつた。場末の洋食店に女給をしてゐた、醜貌の上に無教養至極だつた女との腐れ縁の生活が絶えようとしてはまた続き、常に順環小数のやうな別れ話の繰返しに漸く私の生活は精神物質共に日 …