おも)” の例文
この金貨きんかは、西にしくに金貨きんかだ。この金貨きんかは、ひがしくに金貨きんかだ。この銀貨ぎんかは、おもい。しかしこちらの銀貨ぎんかのほうは、もっと目方めかたがある。
汽船の中の父と子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
女房かみさんは、よわつちやつた。可恐おそろしくおもいんです。が、たれないといふのはくやしいてんで、それにされるやうにして、またひよろ/\。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
法師はれいのとおり、寝間ねまの前の、えんがわにいると、昨夜さくやのとおり、おもい足音が裏門うらもんからはいって来て、法師をつれていきました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
此処でもドーヴィル市長を始め賭博場のおもな役員、世界の諸国から賭博に来た金持男達まで殆どイベットに籠絡ろうらくされて居る、と云う。
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
梅子はもとより初から断えず口を動かしていた。その努力のおもなるものは、無論自分の前にいる令嬢の遠慮と沈黙を打ち崩すにあった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かくて海辺かいへんにとどまること一月ひとつき、一月の間に言葉かわすほどの人りしは片手にて数うるにも足らず。そのおもなる一人は宿の主人あるじなり。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それすこぎて、ポカ/\するかぜが、髯面ひげつらころとなると、もうおもく、あたまがボーツとして、ひた気焔きえんあがらなくなつてしまふ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
その原因を仔細に分類して話さば色々の説明も為し得ようけれども、そのおもなるものは民族的国家の勃興に伴う自然の結果である。
文明史上の一新紀元 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
男——おもすぎます。しかし、それを軽くするのには、第一に、病人を健康なからだにしなければなりません。方法はそれ一つです。
クロニック・モノロゲ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
かかる事情は研究者に多く便宜を与うるものであり、したがって予をして主題として実隆を選択せしめたおもなる理由の一つになるのだ。
第二期における国語の音韻の変遷のおもなるものについて述べたが、これによれば国語の音韻は、奈良朝において八十七音を区別したが
国語音韻の変遷 (新字新仮名) / 橋本進吉(著)
「ハーカー君」と、検屍官はおもおもしく、しかもおだやかに言った。「あなたは近ごろどこの精神病院を抜け出して来たのですか」
部屋の眞ん中に葛籠つゞらが引出してあつて、紙片が一枚、その上へ何やらおもりに載せて、二本燈心の行燈が淋しく照して居るのでした。
「なんの、ばかばかしい。なんとか名を付けておもしでも取ろうとするのは駕籠屋の癖だ」と、外記は直ぐに思い直して笑った。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
けられぬなれば恩愛おんあいおもきにかれて、くるまにはりけれど、かゝるとき氣樂きらく良人おつと心根こゝろねにくゝ、今日けふあたり沖釣おきづりでもものをと
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これおも東西線とうざいせん南北線なんぼくせんとに竝列へいれつしてゐるが、中央ちゆうおう交叉點こうさてんあた場所ばしよ現在げんざい活火口かつかこうたる中岳なかだけたか千六百四十米せんろつぴやくしじゆうめーとる)がある。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
道満どうまん晴明せいめい右左みぎひだりわかれてせきにつきますと、やがて役人やくにんが四五にんかかって、おもそうに大きな長持ながもちかついでて、そこへすえました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ロミオ (炬火持に對ひ)おれ炬火たいまつれい。おれにはとてかれた眞似まね出來できぬ。あんまおもいによって、いっあかるいものをたう。
それはこの邸には大砲というものがあるし、また主人の能登守は無双の鉄砲上手であるということが、怖れのおもなる理由であるらしい。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
背伸せのびをして、三じゃく戸棚とだなおくさぐっていた春重はるしげは、やみなかからおもこえでこういいながら、もう一、ごとりとねずみのようにおとてた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
心なき里人も世に痛はしく思ひて、色々の物など送りてなぐさむるうち、かの上﨟はおもひおもりてや、みつきて程もず返らぬ人となりぬ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
またいかに他人が自分をうとんじても、我はあくまでも自らおもんじて、所信をつらぬくという、みずからいさぎよしとするところがなければならぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
彼の家の下なる浅い横長の谷は、畑がおもで、田は少しであるが、此入江から本田圃に出ると、長江の流るゝ様に田が田に連なって居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「上から押しっけられ、持ちおもりがして、どうにも呼吸いきが切れてしかたがない、義理も外聞も云ってはおられん、早う転ばしてくだされ」
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「一斗五升あります。おもりがするんでね、すこし風邪は引いてますし、買っておくんなさるなら、願ったり叶ったりです。」
買出し (新字新仮名) / 永井荷風(著)
こう思って糟谷かすやはまたつまや子の寝姿ねすがたを見やった。なにかおもいものでしっかりおさえていられるようにつまや子どもは寝入ねいっている。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
勅撰集ちよくせんしゆう第一番だいゝちばん古今集こきんしゆうはるのはじめにあるものといへば、そのうちでも第一番だいゝちばんうたといふことになるから、自然しぜんひとは、それをおもます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
祖母おばあさんのかぎ金網かなあみつてあるおもくらけるかぎで、ひも板片いたきれをつけたかぎで、いろ/\なはこはひつた器物うつはくらから取出とりだかぎでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そのくちばしは頭のわりには大きすぎて、そのおもみのために頭がさがっているので、いかにもかなしそうな、心配そうなようすに見えます。
御不予ごふよおもらせられた御容子なるによって、急ぎ登営あるべしと、三家を初め、諸公がたへも、老中から御急使が廻ったばかりのところ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
隱亡をんばう彌十に頼み燒棄やきすてさせ候段不屆に付存命ぞんめい致しをり候はゞおもき御仕置しおきにもおほせ付らるべきところ鈴ヶ森に於て殺害せつがい致されしにより其つみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
寒月君の演説の冒頭「罪人を絞罪の刑に処するということはおもにアングロサクソン民族間に行われた方法でありまして、……」
夫人はなくなる四日ほど前の晩、夜遅く帰って谷村に叱られたが、その晩から、高熱を出してだんだんおもって行って死んだのだそうである。
謎の咬傷 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
殊に「女は不正なるべし、ただし処女に限る」とか、「不良病ますますおもる」とかいうあたり、冗談かも知れぬが舌を捲かざるを得ない。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
駕「左様そうでげすか、オヤ/\/\成程居ない、気のせえおもてえと思ったと見える、成程何方どなたも入らっしゃいません、左様さようなら」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
延期派の英法学者では元田肇もとだはじめ君、岡山兼吉けんきち君、大谷木備一郎きびいちろう君等の法学院派、その他関直彦なおひこ君、末松謙澄けんちょう君等が発議者のおもなる者であった。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
己がおもさの力をもて、これらの事は何ぞやといふことばをばわが口より押出したり、またこれと共に我は大いなる喜びのひらめくを見き 八二—八四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
振分ふりわけにして、比較的ひかくてきかるさうなのをかついでると、おもいのおもくないのと、おはなしにならぬ。肩骨かたぼねはメリ/\ひゞくのである。
つぎあさしなはまだ隙間すきまからうすあかりのしたばかりにめた。まくらもたげてたがあたましんがしく/\といたむやうでいつになくおもかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「なんとあなたがいおうとも、わたしはここにのこる決心です。わたしは信義しんぎを第一におもんじるよう教育されてきたのです」
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
また履物はきもの黒塗くろぬりりのくつみたいなものですが、それはかわなんぞでんだものらしく、そうおもそうにはえませんでした……。
その氷におもりをつけておけば、可なりの動力となる。また逆に氷そのものをおもりとして、溶けるに従って重さがへるのを利用することもできる。
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
何か大きいおもいものが、遠くの空からばったりかぶさったように思われましたのです。それでも何気なくもうされますには
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
おもいがけないやまいが急におもって、それとなく人々が別れを告げにあつまるとき、その人も病院を訪れたというが、武子さんはわなかったのだった。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
野菜の多い夏がおもです。茄子、胡瓜きゅうりの割漬、あの紫色と緑色とのすがすがしさ。それに新生薑しんしょうがを添えたのが出ると、お膳の上に涼風が立ちます。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
東京へ上り今ではおもに横浜と東京の間を行通ゆきかよいして居ると云いますそれに其気象は支那人に似合ぬ立腹易はらだちやすくて折々人と喧嘩を
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
画面のおもなる線はここに至って決定する。そして今や全体の顔貌がんぼう模糊もこたるあけぼのから浮き出す。すべてが明確になる、色彩の調和も形貌の輪郭も。
唯円 急ぎ御上洛ごじょうらくあそばすよう稲田いなだへ使いを立てておいた。もう御到着あそばすはずになっている。もうおもなお弟子でしたちには皆通知してあるのだ。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
区役所と教会堂とにおけるコゼットは、燦然さんぜんとして人の心を奪った。彼女の身じたくは、ニコレットの手伝いでおもにトゥーサンがやったのである。
ところがれは、町奉行まちぶぎやうといふおも役目やくめうけたまはつて、おほくの人々ひと/″\生殺與奪せいさつよだつけんを、ほそたなそこにぎるやうになるとたちまち一てんして、れの思想しさう
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)