とう)” の例文
上流社会の貴夫人達の主催にかゝる、その日の演奏会の純益は、東京にいる亡命ぼうめいの露人達の窮状を救うために、とうぜられる筈だった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
勘次かんじころからおしなのいふなりにるのであつた。二人ふたりとほくはけないので、隣村となりむら知合しりあひとうじた。兩方りやうはう姻戚みよりさわした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
これへ、秋月寂心の兵数千も味方にさんじ、日和見ひよりみだった深堀、龍造寺、相良さがら、杉、富光とみみつなどの小武族も、ぞくぞく陣へとうじて来る。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一行はじめて団結だんけつ猛然もうぜん奮進にけつす又足を水中にとうずれば水勢ます/\きうとなり、両岸の岩壁いよ/\けんとなり、之に従つて河幅はすこぶちぢま
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
みづかとうじ、みづかくわり、みづか其破片そのはへんをツギあはせて、しかうへ研究けんきうみづからもし、きたつて研究けんきうする材料ざいれうにもきやうするにあらざれば——駄目だめだ。
正吉しょうきちは、選挙せんきょに一ぴょうとうじてから、社会人しゃかいじんになれたという、つよ自覚じかくをもつと同時どうじに、自然しぜん観察かんさつから、また仕事しごとのうえにもだいなる自信じしんました。
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
某は心中ふか立腹りつぷくして、ほかの事にかこつけて雲飛を中傷ちゆうしやうつひとらへてごくとうじたそして人を以てひそか雲飛うんぴつまに、じつは石がほしいばかりといふ内意ないゝつたへさした。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
女房にようばうは、おどろきかなしみ、哀歎あいたんのあまり、嬰兒あかごうでひとつきしめたまゝ、みづとうじたとふ。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
このスエーデンの博物館はくぶつかんつくつたひとは、最初さいしよからおほくの金錢きんせんとうじて着手ちやくしゆしたのではなく、すこしづゝあつめてなが年月としつきあひだ一人ひとりちからでもつて完成かんせいさせたことをおもふときは
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
此處こゝからもつと便宜べんぎなる、またもつとちか貿易港ぼうえきかう矢張やはり印度國インドこくコロンボのみなとで、海上かいじやう大約おほよそ千二百マイル、それより橄欖島かんらんたうまでは千五百マイルじやく、されば、本艦ほんかん明後晩めうごばんコロンボにいかりとう
で僧侶のごときも、そういう着実なる考えを持って居る人の手下に付く者が大変に多く、そしてシャーターというようなとう人気の仕事をする人に対しては非常に悪感情を懐いて居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ころして霊魂たましいをころしものどもをおそるな、霊魂たましいとをゲヘナにてほろぼものをおそれよ。われ平和へいわとうぜんためにきたれりとおもうな、平和へいわにあらず、かえってつるぎとうぜんためきたれり。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そこで吾輩も殆んど筆をとうぜざるを得なくなった。刀折れ、矢きた形だね。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
……だがそのはじめて、彼女かのぢよ戀人こひびとはげしい熱情ねつじやうとうじたのだつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
月照船頭に立ち、和歌を朗吟して南洲に示す、南洲首肯しゆかうする所あるものゝ如し、遂に相ようして海にとうず。次郎等水聲起るを聞いて、倉皇さうくわうとして之を救ふ。月照既に死して、南洲はよみがへることを得たり。
自然しぜん法則はふそく依然いぜんとしてもとまゝです、人々ひと/″\猶且やはり今日こんにちごとみ、い、するのでせう、甚麼立派どんなりつぱ生活せいくわつあかつきあらはれたとしても、畢竟つまり人間にんげん棺桶くわんをけ打込うちこまれて、あななかとうじられてしまふのです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
果たして、それからまもなく、赤松円心の一勢は、朝廷へも届け出ず、ただ一書を六波羅の高氏へとうじたのみで、憤然、京をひきはらって国元へ帰ってしまった。
迅速じんそくかつ壯快さうくわい變化へんくわ目前もくぜんせる彼等かれら惡戲好いたづらずきこゝろをどれほど誘導そゝつたかれない。かれ落葉おちばつかんではかまどくちとうじてぼうぼうとえあがるほのほかざした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
渠等かれら無頼ぶらいなる幾度いくたびこの擧動きよどう繰返くりかへすにはゞかものならねど、ひとそのふが隨意まゝ若干じやくかん物品ものとうじて、その惡戲あくぎえんぜざらむことをしやするをて、蛇食へびくひげい暫時ざんじ休憩きうけいつぶやきぬ。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
嘆息たんそくともながめてると、さら奇怪きくわいなるは、その端艇たんていとうじたる一群いちぐんひと、それは一等船客いつとうせんきやくでもなく、二等船客にとうせんきやくでもなく、じつこのふね最後さいごまで踏止ふみとゞまはづ水夫すいふ火夫くわふ舵手かぢとり機關手きくわんしゆ
夜半やはん眼覚め、防寒ばうかんの為炉中にたきぎとうぜんとすれば、月光清輝幽谷中にわたり、両岸の森中しんちうには高調凄音群猿のさけぶをく、して水源未知の利根をれば、水流すゐりう混々こん/\、河幅猶ほひろく水量甚おほ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
あななかとうじられてしまうのです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
新田義貞が鎌倉攻めのさいに稲村ヶ崎で剣を龍神へむかってとうじたという、いわゆる“龍神伝説”は、その地形条件などからも、つとに否定されているが、これによると
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれ内職ないしよくつたぶた近頃ちかごろんだので他人たにんねらひはせぬかと懸念けねんしつゝあつたのである。おつぎは何處どこでもかまはぬと土手どてしのけてひとつ/\に蜀黍もろこしちからかぎみづとうじた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一聲ひとこゑたからかに題目だいもくとなへもへず、法華僧ほつけそうをどらしてうみとうぜり。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
即ち鍋上にあな穿うがてる布片きれひ、内にれて之を沼中にとうじたるなり、「どろくき」としやうする魚十余尾をたり、形どぜうに非ず「くき」にも非ず、一種の奇魚きぎよなり、衆争うて之をあぶしよくすれど
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
それは、東軍の一将、奥州白河の結城光広ゆうきみつひろの子、親光の一軍で、さきごろから狐河きつねがわの辺で敵の赤松勢と対峙していたが、俄に旗を巻いて、宮方へとうじてしまったものである。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
味方は敵の中にる。かねがね教書を以て、心をかよわせていた九州諸族も、我に百難の中も行く意気あるを目で見ねば、なかなかきたとうじまい。一じょう、ここは九州のわけめ、いや天下のわかれ目だ。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)