)” の例文
旧字:
けだし聞く、大禹たいうかなえて、神姦鬼秘しんかんきひ、その形を逃るるを得るなく、温嶠おんきょうさいを燃して、水府竜宮、ともにその状を現わすを得たりと。
牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
いまわが呉は、孫将軍が、父兄の業をうけて、ここに三代、地は六郡の衆を兼ね、兵は精にし、ろう豊山ほうざんあかがねとなし、海を煮て塩となす。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大和魂やまとだましいかためた製作品である。実業家もらぬ、新聞屋も入らぬ、芸妓げいしゃも入らぬ、余のごとき書物とにらめくらをしているものは無論入らぬ。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
寂然じやくねんとして端坐してゐる如来像によらいざう、それはもう昔の単なる如来像ではなかつた。ある時ある人の手でられたブロンズの仏像では猶更なほさらなかつた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
一段高い廊下の端、隣座敷の空室あきまの前に、唐銅からかねさびの見ゆる、魔神の像のごとく突立つったった、よろいかと見ゆる厚外套、ステッキをついて、靴のまま。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
また紋次郎君もんじろうくんとこのおばあさんのはなしによると、このかねひとが、三河みかわくにのごんごろうという鐘師かねしだったので、そうばれるようになったんだそうだ。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
花菖蒲はなしょうぶ及び蝿取撫子はえとりなでしこ、これは二、三日前、家の者が堀切ほりきりへ往て取つて帰つたもので、今は床の間の花活はないけに活けられて居る。花活は秀真ほつまたのである。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
これはその時うちならしの模様に、八葉はちよう蓮華れんげはさんで二羽の孔雀くじゃくつけてあったのを、その唐人たちが眺めながら、「捨身惜花思しゃしんしゃっかし」と云う一人の声の下から
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
白い十字架じゅうじかがたって、それはもうこおった北極の雲でたといったらいいか、すきっとした金いろの円光をいただいて、しずかに永久に立っているのでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かけ屋佐平次の唯一の伴侶とも、利口者として飼主よりも名の高い、甚右衛門はこうしのような土佐犬であった。
「いいえ、痛む分は、かけで、修繕して使うとりますけど、どうしても、まだ、一つ足らんもんで……」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
それから書卓の抽出ひきだしを開け、象牙ぞうげの柄に青貝のり込んでいる、女持ちの小形なピストルを取り出した。
ウォーソン夫人の黒猫 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
不思議なことにお秀の姿を見ると花田は山椒の葉を毟る手を止めて、そのまゝ固められたかのように立竦たちすくんでしまいました。花田は若い女殊にお秀は苦手です。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それで、わたしはりっぱな身なりをしているのでさ。造幣所長ぞうへいじょちょうはわたしのために、金貨きんかてくれました それから婦人たちは、わたしの男ぶりをほめてくれました。
灯篭を運び去ったのは幕府の大筒をる原料にするのだと豪語したと言うし、銅の屋根を剥ぎ去ったのは、尊王方の軍費に資するのだ、と台詞せりふを残して逃げたと言うが
増上寺物語 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
各部隊の護って行く二門ずつの大砲には皆御隠居の筆の跡がてある。「発而皆中節はっしてみなせつにあたる源斉昭書みなもとのなりあきしょ
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
不思議な記憶の花模様を全身にりつけてくると人は鬼狐きこの如くこの感覚一点に繋がれて、又昨日の魚を思ひ、ねぎらひ、たわみ、迷うて、再び河海を遊弋ゆうよくするやうになる。
魚美人 (新字旧仮名) / 佐藤惣之助(著)
悪貨をて逼迫した金融を緩和しようと言う議はありましたが、もう少し根本的に考えて、米価を引下ひきさげようとか、差し当り何十万の窮民を救おうとか言う議は無かったのです。
黄金を浴びる女 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
それは約二十年ほどまえの安永初年、金価の暴騰を抑える目的で出したものであった。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しん始皇しこうの世に、銅を通貨にるようになったまでは、中国の至宝は宝貝であり、その中でも二種のシプレア・モネタと称するに光る子安貝こやすがいは、一切の利慾願望の中心であった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
例えば宇和島うわじま藩、五島ごとう藩、佐賀さが藩、水戸みと藩などの人々が来て、あるい出島でじま和蘭オランダ屋敷にいって見たいとか、或は大砲をるから図を見せてれとか、そんな世話をするのが山本家の仕事で
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
おうさまはくなられたきさき供養くようのために、おおきなかねることになされました。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この鯱をるに慶長大判を千九百四十枚潰しました。鱗一枚でも一身上ひとしんしょうですから、金助が悪心を起したのも無理はありません。名古屋の人は今日でも金に詰まるとこの鯱のことを考えます。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
一つには平常いつも同じような身分の出というところからごくごく両家が心安くし合い、また一つには若崎が多くは常に中村の原型によってこれをることをする芸術上の兄弟分きょうだいぶんのような関係から
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
じっさい、爪先立って見れば西北にあるもっと遠くもっと青い山脈の峯のいくつか——天の鋳造所でられた真っさおな貨幣——を、それから村の一部をも瞥見することができるのであった。
鉄銭をり、貿易を禁じ、港湾を鎖し、関門を設けて往来を遮り、世界のほかさらに一の新世界を作り、天地のうちさらに一の新天地を開き、かのゲルマン帝国をして近世のスパルタたらしめ
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
菊燈台に南蛮蝋燭を立てならべ、灯の下で本を読んでいると、邸裏の木の間から、にび色の小狩衣に、悪魔でもんの面を出した南蛮頬をつけた男が忍びだしてきて、夜霧のようにぼーっと池の汀に立つ。
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
という大将が兵を率いて晋安しんあんに攻め向うことになりました。呉は新しくらせた剣を持っていまして、それが甚だよく切れるのです。彼は出陣の節に、その剣をたずさえて梨山の廟に参詣しました。
にたる巨鐘おほがね無窮むきゆうのその声をぞ
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「いといませぬ。さまざま人は申しまする。この私を、古い平家の女人にょにんや平安の女性にょしょうに比して、鎌倉の世がて生んだ鎌倉型の女子じゃなぞとも」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
詩人しじんこれでは、鍛冶屋かじや職人しよくにん宛如さながらだ。が、そにる、る、りつゝあるはなんであらう。没薬もつやくたんしゆかうぎよく砂金さきんるゐではない。蝦蟇がまあぶらでもない。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
盾の真中まんなかが五寸ばかりの円を描いて浮き上る。これには怖ろしき夜叉やしゃの顔が隙間すきまもなくいだされている。その顔はとこしえに天と地と中間にある人とをのろう。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もう四五年以前になつた、やはり或冬曇りの午後、わたしは或友だちのアトリエに、——見すぼらしいもののストオヴの前に彼やそのモデルと話してゐた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
左千夫さちお来り秀真ほつま来りふもと来る。左千夫は大きなる古釜を携へ来りて茶をもてなさんといふ。釜のふたは近頃秀真のたる者にしてつまみの車形は左千夫の意匠なり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そなたはあくまで木石の味方をされるゆえ、わたしは何処までも人情の味方をせずばなるまい。そなたと永劫離れぬ双生像にられるなら、娘もさぞかし本望ほんもうでござろう。
阿難と呪術師の娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ん、そういえば、あのごんごろがね深谷ふかだにのあたりでつくられたのだ。いまでもあのあたりに鐘鋳谷かねいりだにというのこっているちいさいたにがあるが、そこで、たということだ。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
そのしまたいらないただきに、立派りっぱもさめるような、白い十字架じゅうじかがたって、それはもう、こおった北極ほっきょくの雲でたといったらいいか、すきっとした金いろの円光をいただいて
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
けだし聞く、大禹鼎だいうかなえて、神姦鬼秘しんかんきひその形を逃るるを得るなく、温嶠犀おんきょうさいねんして、水府竜宮すいふりゅうぐうともその状を現すを得たりと。れ幽明の異趣、すなわ詭怪きかい多端たたんこれえば人に利あらず。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
僕等は直接に芸術の中に居るのだから、へい落書らくがきなどに身を入れて見ることは無いよ。なるほど火の芸術と君は云うが、最後のるという一段だけが君の方は多いネ。ご覧に入れるには割が悪い。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
渓間たにまに築いた炉は、一ヶ月足らずの苦心で成就し、何者とも知れぬ武士や人足の運び込んだ地金の銅と鉄は、毎日毎日熔かされ、られ、鍛えられて、次第に井上流五貫目筒が出来上って行きます。
江戸の火術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
いしも、てつも、かしてしまうためにつよがたかれました。かねるものは、おうさまの命令めいれいしたがって、仕事しごと苦心くしんをしました。そして、おおきな、おもい、あおみをふくんだかねができあがったのでありました。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
吾が師平象山は経術深粋なり、もっとも心を時務にとどむ。十年前、藩侯執政たりしとき、外寇の議論をたてまつり、船匠せんしょう礮工ほうこう・舟師・技士を海外にやとい、艦を造りほう、水戦を操し礮陣を習わんことを論ず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
唐獅子からじし青磁せいじる、口ばかりなる香炉こうろを、どっかとえた尺余の卓は、木理はだ光沢つやあるあぶらを吹いて、茶を紫に、紫を黒に渡る、胡麻ごまこまやかな紫檀したんである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「やよ、左右の大臣。納言、参議を始め、文武百官、六弁八史の叙目は、到底、一日には任じきれぬ。したが、かんじんな内印ないいん外印げいん玉璽ぎょくじは、てあるのか」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
梵鐘ぼんしょうをもって大砲をたのも、危急の際にはやむをえないことかもしれない。しかし泰平の時代に好んで、愛すべき過去の美術品を破壊する必要がどこにあろう。
松江印象記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かりに、もし、これことことことが、極度きよくど到着たうちやくしたとき結晶体けつしやうたいが、衣絵きぬゑさんの姿すがたるべき魔術まじゆつであつても、けて煮爛にたゞらかしてなんとする! ……
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一、この頃東京美術学校で三間ほどの大きさの鳶をたさうな、これは記念の碑として仙台に建てるのであるさうながこれ位な大きなフキ物は珍しいと言ふ事である。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
先ごろ、熊野新宮へ御寄進の大釜おおがま一口に、大檀那おおだんな鎌倉ノ執権しっけん北条高時と、御銘ぎょめいらせたものを運ばせたとか伺っていた。それの帰りの一と組だろう、このやから
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
藤尾はなめらかなほおに波を打たして、にやりと笑った。藤尾は詩を解する女である。駄菓子の鉄砲玉は黒砂糖を丸めて造る。砲兵工廠ほうへいこうしょうの鉄砲玉は鉛をかしてる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ならかつら山毛欅ぶなかしつき大木たいぼく大樹たいじゆよはひ幾干いくばくなるをれないのが、蘚苔せんたい蘿蔦らてうを、烏金しやくどうに、青銅せいどうに、錬鉄れんてつに、きざんでけ、まとうて、左右さいうも、前後ぜんごも、もりやまつゝみ、やまいはたゝ
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)