ばか)” の例文
十一文づゝ二年半餘はんあまりもとゞこふらば大抵たいてい三十文ばかりの引負ひきおひとなるべし。閏月しゆんげつすなはちこの三十文の引負ひきおひを一月にまとめてはらふことゝるべし。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
どうしてあゝして飾つてばかり置かれやう、おまけに人がお金を出したとて、どうして手離すことが出来るだらうと思案いたしました。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
長さものみならざるむねに、一重の梅や八重桜、桃はまだしも、菊の花、薄荷はっかの花のも及ばぬまでこまかきを浮き彫にしてにおばか
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
身にまと何樣どのやうなる出世もなるはずを娘に別れ孫を失ひ寄邊よるべなぎさ捨小舟すてこぶねのかゝる島さへなきぞとわつばかりに泣沈なきしづめり寶澤は默然もくねんと此長物語を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ドクトルは其後そのあとにらめてゐたが、匆卒ゆきなりブローミウム加里カリびんるよりはやく、發矢はつしばか其處そこなげつける、びん微塵みぢん粉碎ふんさいしてしまふ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
と云って泣いている騒ぎを、長屋の者が聞付け、一同心配していると、國藏も引越したばかり故驚きましたが、此の騒ぎを見て帰って来て
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「仕事の手をゆるめて怠ける算段ばかてけツかる、たげえに話ヨ為て、ズラかる相談でも為て見ろ、明日ア天日が拝め無えと思え」
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
あの頃の御奉行様の御裁きと申すものは、どれもがほんとうにてきぱきとして、胸のすくようなものばかりでございました。
殺された天一坊 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
こんな恰好で神宮を出でたつと道路のわきに、年の頃二十ばかりの若者が羽織を着、膝を付けて、信長に声を掛けられるのを待って居る様子である。
桶狭間合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
どの街も屋根と云ふ屋根から黄色の長い旗がお祭の為になびいて居る。黄色ばかりでなく黄色に赤や黒や緑を配した旗である。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
屠手として是処に使役つかはれて居る壮丁わかものは十人ばかり、いづれまがひの無い新平民——殊に卑賤いやしい手合と見えて、特色のある皮膚の色が明白あり/\と目につく。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
御運とは申せ、力無き事とは申せ、御行末おんゆくすえの痛はしさを思へば、眼もれ、心も消えなむばかりと、涙を流して申し候。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかしながら線香の匂は、あながち彼の幻覚ばかりではなかった。隣りではう親戚の者が集って仏の仕末をしていた。
秘められたる挿話 (新字新仮名) / 松本泰(著)
其外そのほかの百姓家しやうやとてもかぞえるばかり、ものあきないへじゆんじて幾軒いくけんもない寂寞せきばくたる溪間たにま! この溪間たにま雨雲あまぐもとざされてものこと/″\ひかりうしなふたとき光景くわうけい想像さう/″\たまへ。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
わたしは自分から荒々しく切り出した。わたしのどこに悪い処があつたかと! ところが娘も婆やも部屋のすみで、互に引つ附きあはんばかりにしてゐるのだ。
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
彼は斎藤氏と初対面の時から——といっても十日ばかり以前のことだが——何かしら、二人の間に前世の約束とでも云った風の引懸りがある様な気がしていた。
二癈人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
勘次かんじはおしながどうにか始末しまつをしていた麥藁俵むぎわらだはらけて仕上しあげたばかりの藁俵わらだはらこめはかんだ。こめにはあかつぶもあつたがあらすこまじつててそれがつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
磨製石斧 磨製石斧とは細長ほそながくして其端そのはしを付けたる石器の稱へなり。大小不定だいせうふていなれど長さ五六寸ばかりをつねとす。刄は殆と悉皆一端のみにりと云つて可なり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
さとしおさなきより植木うゑきのあつかひをきて、小器用こぎようはさみ使つかへば、竹箒たけばヽきにぎつて庭男にはをとこぐらゐなんでもなきこと、たゞ素性すじやうられじとばかり、まこと只今たヾいま山出やまだしにて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
されば此由太閤相国聞食きこしめし、あるまじき事の振舞かな(中略)とて、愈〻御憤り深く思召しければ、様々に頼りて、御様おんさま変へ、命ばかりをと申させ給へども、御許なきとぞ聞えし
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
なお来月の会にはかならず御出待入まちいり候。きのふも婦人方よたりばかりにて御うはさいたし候。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
御緩ごゆつくさまで、』と左側ひだりがはの、たゝみ五十畳ごじふでふばかりの、だゞつぴろ帳場ちやうば、……真中まんなかおほきつた、自在留じざいとめの、ト尾鰭をひれねたこひかげから、でつぷりふとつたあかがほして亭主ていしゆふ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
文久錢ぶんきうせんともふべきおあしんだのです、恰度てうどわたくし其節そのせつ其塲そのばりましたが、なに心得こゝろゑませんからたゞあわてるばかり、なに振舞ふるまいのあツたときですから、大勢たいぜいひとりましたが、いづれもあをくなり
先生は夫ればかりでなく、実に多才多能で何れの事にでも興味を有たないものはなく、各種の学者から軍人、商売人、政治家、婦人、農民、子供に至る迄先生が話相手にせないものはない。
先生は夫ればかりでなく、実に多才多能で何れの事にでも興味を有たないものはなく、各種の学者から軍人、商売人、政治家、婦人、農民、子供に至る迄先生が話相手にせないものはない。
半月ばかりしてから巫女がその家に来たので、アマは、仙人が来た仙人が来たと喜び叫び、うちの主人もお前さんに逢いたいと言って待っているから早く内にお入りなさいと言って迎え入れ
食ふです。芝居の御大将ばかりで無く、釣は総て優悠迫らず有りたいです。此処にさへ御気が付けば、忽ち卒業です。どうです、一度往ツて見ませんか。僕は此の四日に往くですが…………。
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
西印度諸島等の事、大抵予が三四年前親く見し所に合り、氏、秘魯國に往しは明治八年十二月にて、六週間ばかり留りし内奇事有り。平田某次郎と云ふ人、七十餘歳と見え、其甥三十餘と見えたり。
秘魯国に漂著せる日本人 (旧字旧仮名) / 南方熊楠(著)
いはく学問の勧め、曰く文明論概略、曰く民間経済論、曰く時事小言、福沢君の著述が如何いかばかり世間を動かしたるよ。吾人の郷里に在るや、かつて君の世界国尽しを読んで始めて世界の大勢を知りたりき。
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
枕べの寒さばかりに新年の年ほぎ縄を掛けてほぐかも
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
兵隊ごっこ男の子ばかりです
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
げんへば、貴方あなた生活せいくわつふものをないのです、れをまつたらんのです。さうして實際じつさいことたゞ理論りろんうへからばかしてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
とじろりっと横眼でお梅と顔を見合わしたばかり、ぎっくり胸にこたえて、流石さすがの悪党永禪和尚も、これは飛んだ所へ泊ったと思いました。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
又江戸に出て来たからとて怖い敵もなければ何でもないとばかおもって居た所が、サア今度欧羅巴ヨーロッパからかえって来たその上はなか/\うでない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それにつれなきは方様かたさま其後そののち何の便たよりもなく、手紙出そうにも当所あてどころ分らず、まさかに親子おいづるかけて順礼にも出られねばう事は夢にばか
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ホラ大変!、母も武も驚ろいたことといつたら、ねるやら、るやら、もがくやらで、四百もある魚のことですから、舟もゆるばかりでした。
鼻で鱒を釣つた話(実事) (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
たし屋敷方やしきがた普請ふしんばかりにても二千兩まうけありしとなりしかれども彼の加賀屋長兵衞かがやちやうべゑより借請かりうけし二百兩の事はちう八が算盤そろばん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其れが為め翁と政府との間に紛紜ごた/″\が起つて居るのを某某ぼうぼうの名士等が調停にはひつたと云ふ新聞記事が十日ばかり前に出た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
此時のわが驚き、いかばかりなりけむ。の馬十が末期に叫びし言の葉を眼の前に思ひ知りて、白日の下、寒毛竦立かんまうしようりつし、心気打ち絶えなむばかりなりしか。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
今初いまはじめたばかりです。』とうち浮木うきがグイとしづんだからあはすと、餌釣ゑづりとしては、中々なか/\おほきいのがあがつた。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
一丁ばかり向うから、線路の土手に沿って、雑草の中を見え隠れに、なるほど又毛色の違う奴が歩いて来る。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「無論ないさ。H通りからK町一帯は住宅地で、旅館は海岸にあるばかりさ。それからどうしたね。」
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
さとしわれながらあきれるばかり、天晴あつぱ未來みらい文學者ぶんがくしや此樣このやうのことにて如何どうなるものぞと、しかりつけるあとよりこヽろふらふらとるに、是非ぜひもなし是上このうへはと下宿げしゆく世帶しよたい一切いつさいたヽみて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
前清光緒二十九年のこと、江蘇に望平橋ぼうへいきょうと称する一鎮があった。東西二支里ばかりの街であったが、相当に繁昌し、ことに鎮の北市では博奕が一年中開かれていて出入する者昼夜絶えなかった。
兎角とかくするうちに盛政の軍はときの声を挙げて押し寄せた。瀬兵衛もとより武功の士だから、僅か三尺ばかりの土手を楯に取って、不破彦三等先手の軍勢が躍り込まんとするのを防ぎ戦い、遂いに撃退した。
賤ヶ岳合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
賞牌三つばかり受用す。
秘魯国に漂著せる日本人 (旧字旧仮名) / 南方熊楠(著)
死んだ父様ばかりでねえ、叔父様もわしちいさい時から多助々々と云って可愛がっておくんなんした御恩は死んでも忘れやせんでハア
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
右の通り私はただ漢学が不信仰で、漢学に重きを置かぬばかりでない、一歩を進めて所謂いわゆる腐儒の腐説を一掃してろうと若い時から心掛けました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
取てたのまれしとて罪の處は同じ事だぞと申さるゝに多兵衞は彌々いよ/\閉口へいこうなし實に恐れ入ました金子をべつに取てたのまれたと申ではなく少々せう/\ばかりの酒代さかだい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と保雄は怒鳴どなつた。二番目の抽出ひきだしからは二人の男の子の着類きるゐが出て来た。皆洗ひ晒しの木綿物の単衣ひとへばかりであつた。
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)