くら)” の例文
新字:
祖母おばあさんのかぎ金網かなあみつてあるおもくらけるかぎで、ひも板片いたきれをつけたかぎで、いろ/\なはこはひつた器物うつはくらから取出とりだかぎでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ことながあひだ野田のだ身上しんしやうつて近所きんじよくら親方おやかたをしてるのが郷里きやうりちかくからたので自然しぜん知合しりあひであつたが、それが卯平うへい引退いんたいすゝめた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ならんだぜんは、土地とち由緒ゆゐしよと、奧行おくゆきをものがたる。突張つツぱるとはづれさうなたなから飛出とびだした道具だうぐでない。くらからあらはれたうつはらしい。御馳走ごちそうは——
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ちゝ正月しやうぐわつになると、屹度きつとこの屏風びやうぶ薄暗うすぐらくらなかからして、玄關げんくわん仕切しきりにてて、其前そのまへ紫檀したんかく名刺入めいしいれいて、年賀ねんがけたものである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今度こんどは石をにしきつゝんでくらをさ容易よういにはそとに出さず、時々出してたのしむ時は先づかうたいしつきよめるほどにして居た。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
おもことに一せん融通ゆうづうかなふまじく、いはゞたからくら番人ばんにんにておはるべきの、らぬつままでとは彌〻いよ/\重荷おもになり、うき義理ぎりといふしがらみのなくば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
はき是れどうしても泥棒どろぼうと云ふ看板かんばんを掛て居る樣なものだサア此方へ來いと直樣坂本の自身番へ引上しに出役岡村七兵衞馬籠まごめくら十郎の兩人ひかへ居る前へ久兵衞を引きすゑまづ雜物ざふもつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
子供たちが東京の學校に來ないうちは子供部屋とくらがはりにつかつてゐた。
北京の生活 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
折角の名案を、そのまゝおくらにするより、兎も角やつて見るつもりでせう。平次は默つてそれを見送りました。それよりも、『六十三の今日』が、頭の中にコビリ付いて離れなかつたのです。
天皇、ここに阿知の直を、始めてくらつかさ二二けたまひ、また粮地たどころ二三を賜ひき。またこの御世に、若櫻部わかさくらべの臣等に、若櫻部といふ名を賜ひ、また比賣陀ひめだの君等に、比賣陀の君といふかばねを賜ひき。
祖母おばあさんがおよめにときふる長持ながもちから、お前達まへたち祖父おぢいさんのあつめた澤山たくさん本箱ほんばこまで、そのくらの二かいにしまつてりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
くら傭人やとひにんためかゝへてある醫者いしやもらつても、老病らうびやうだからくすりんでところで、さう效驗きゝめえるのではないがそれでも
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
松村まつむら小松こまつかこつて、松賀町まつかちやう淨瑠璃じやうるりをうならうといふ、くらくらとはならんだり、なか白鼠しろねずみ黒鼠くろねずみたはら背負しよつてちよろ/\したのが、みなはひになつたか。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
主人しゆじん早速さつそくけて、ぱち/\とらして、召使めしつかひんだが、くらなか仕舞しまつてあるのをしてやうめいじた。さうして宗助そうすけはういて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
くらもちぬしにかへ長途ちやうと重荷おもにひとにゆづりて、れは此東京このとうけうを十ねんも二十ねんいますこしもはなれがたきおもひ、そは何故なにゆえひとのあらばりぬけ立派りつぱひわけの口上こうじようもあらんなれど
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お清はいそ/\とくらへ案内すると
其夏の事なりし師匠ししやう感應院のともして和歌山の城下なる藥種屋市右衞門やくしゆやいちゑもん方へ參りけるに感應院はおくにて祈祷の内寶澤はみせに來り番頭ばんとう若者もみな心安こゝろやすければ種々さま/″\はなしなどして居たりしかるに此日は藥種屋にて土藏の蟲干むしぼしなりければ寶澤もくら二階にかいへ上りて見物せしがつひに見もなれざる品を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
くらなかから大事だいじさうにしてたと所作しよさくはへてかんがへると、自分じぶんつてゐたときよりはたしかに十ばい以上いじやうたつといしなやうながめられただけであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なにも、油堀あぶらぼりだつて、そこにづらりとならんだくらが——なかには破壁やれかべくさえたのもまじつて——油藏あぶらぐらともかぎるまいが、めう油壺あぶらつぼ油瓶あぶらがめでもんであるやうで、一倍いちばい陰氣いんき
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれときとしては主人しゆじんのうつかりしてくらから餘計よけいこめはかして、そつとかくしていてよる自分じぶんいへつてることがあつた。それもわづか二しようか三じようぎない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
祖母おばあさんはあのかぎようむと、くらまへ石段いしだんりて、かきあひだとほりましたが、そこにとうさんがよくあそんでたのです。味噌藏みそぐら階上うへには住居すまゐ出來できた二かいがありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
良人をつと小松原東二郎こまつばらとうじらう西洋小間物せいやうこまものみせばかりに、ありあまる身代しんだいくらなかかして、さりとは當世たうせい算用さんようらぬひとよしをとこに、戀女房こひにようばうのおりつばしこさおくおもて平手ひらてんで
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
潮田家のくらを破つて取出した金だ。
聞人きくひとなげに遠慮ゑんりよなき高聲たかごゑふく相槌あひづちれい調子てうしに、もう一トはたらきやつてけよう、やすさんは下廻したまはりをたのみます、わたしはも一此處こゝいて、今度こんどはおくらだとて、雜巾ぞうきんがけしつ/\とはじめれば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
差覗さしのぞのききずりの垣根越かきねごしくら廂合ひあはひまで、けばみな花壇くわだんがあつて、なかにはわすれたやうな、植棄うゑすてたかとおもふ、なんよくのないのさへえて、いつくしくしづかなは、派手はで大樣おほやうなる紅白こうはく
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くらとは友の見てしかど
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)