)” の例文
「私と錢形の親分とで相談をして、昨夜中味を入れへて置いたのだ。十六年間この黒い箱の中に入つてゐたのは此方の二た品だよ」
わたくしおもうには、これだけのぜにつかうのなら、かたをさええれば、ここに二つの模範的もはんてき病院びょういん維持いじすることが出来できるとおもいます。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それをおおかみにやってしまうのはまったくしいことでありました。けれど、かれ自分じぶんいのちにはえられないからとおもいました。
おおかみと人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
達磨だるまはそれぎり話題わだいのぼらなかつたが、これがいとくちになつて、三にんめしまで無邪氣むじやき長閑のどかはなしをつゞけた。仕舞しまひ小六ころくへて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
この手紙を開きよみていわく、これを持ち行かばなんじの身に大なるわざわいあるべし。書きえて取らすべしとて更に別の手紙を与えたり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
俊寛 (※の中をのぞきこむ。何かいいかけて躊躇ちゅうちょす。やがて思いきりたるごとく)この魚をわしの硫黄いおうえてくれまいか。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
さらばかくの如き姿にて行かざらんには、必ずお気に入るまじと確信し、ことさらに長き黒髪を切り捨て、男の着る着物にえたりという。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
それを金にえるためと、そして私の新しい世界を求めるため、今夜私は日本を去ろうとしている。多分永遠に日本には帰って来ないだろう。
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あなたは、本棚の中で、書物が自分で位置をえ、ドオデが一冊、ゾラの上へじ登ったりなにかするのにお気づきですか。
更に言ひへなば、いづくも落葉だらけになりていとむさくろしきに、この禅寺は松ばかり植ゑつらねて他の木をも交ぜねば
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
左足を基にして向きをえるなり、爪先を下に向けた右足を、横のほうへぴんと跳ね上げたと思うと、腰をふるわせながら歩み去るのである……
(あゝ、意気地いくぢはございませんねえ。足駄あしだでは無理むりでございませう、これとお穿へなさいまし、あれさ、ちやんといふことをくんですよ。)
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うかがいまして私は何よりよろこばしく思います。氷水の害はお医者に聞いておりましたがさて何をもって氷水にえようという事を
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
頻りと、位置をえる。まったく動かないでいる相手に対して、絶えず誘いをかけ、また自分からうかがうことを怠らない。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
破戒無慚はかいむざんもあそこまで行くと、徹底していて面白いなあ」また八左衛門微笑したが、ふとその眼をわせた時、忠弥の眼とぶつかってしまった。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
れの徳義とくぎは——「かくすよりあらはるゝはなし」——へれば——「外見ぐわいけんかざるな、いく體裁ていさいばかりつくろつても駄目だめだ、かはづぱりかはづさ」
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
自然薯でも、田螺たにしでも、どじょうでも、終始他人ひとの山林田畑からとって来ては金にえ、めしに換え、酒に換える。門松すらって売ると云う評判がある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そこでそっとものえるじゅつ使つかって、お三方さんぽうの中の品物しなもの素早すばやえてしまいました。そしてすましたかおをしながら
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そこでヤマトタケルの命が河からまずお上りになつて、イヅモタケルが解いておいた大刀をお佩きになつて、「大刀をえよう」と仰せられました。
おつたは汗沁あせじみた手拭てぬぐひしきりにごし/\として首筋くびすぢのあたりから一たい幾度いくたびとなくぬぐつて手水盥てうづだらひみづへた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わり星移り、人情はしだいに薄く、義気も落花の時節となりたるは、世人の常に言うところにて相違もあらず。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
しかし蟹は猿とのあいだに、一通の証書も取りわしていない。よしまたそれは不問ふもんに附しても、握り飯と柿と交換したと云い、熟柿とは特にことわっていない。
猿蟹合戦 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
現代の裁判制度は東京地図の煩雑なるが如く大岡越前守おおおかえちぜんのかみ眼力がんりきは江戸絵図の如し。更にゆれば東京地図は幾何学の如く江戸絵図は模様のようである。
クリスト教信者諸氏、処をえて次の如き命題を諸氏は許容するか、仏教国に生れてクリスト教を信ずる所以はどうしてもクリスト教が深遠だからであると。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ありがとうござりますそのお言葉をうかがいました嬉しさは両眼を失うたぐらいにはえられませぬお師匠様や私を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それにえあたしゃそこらにてた、れた草鞋わらじもおんなじような、水茶屋みずぢゃや茶汲ちゃくむすめ百夜ももよみちかよったとて、おまえって、昔話むかしばなしもかなうまい。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
が、もうひとつは氣質きしつ相違そうゐによるものだらう。へると、支那人しなじん技法ぎはふ巧拙かうせつ別問題べつもんだいとして、可成かな自由じいうびと麻雀マージヤンあそたのしむからではあるまいか?
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
かくしてとき火山かざん火熱かねつ原因げんいんあるひ言葉ことばへていへば、火山かざんから流出りゆうしゆつする鎔岩ようがん前身ぜんしんたる岩漿がんしよう地下ちか貯藏ちよぞうせられてゐる場所ばしよは、けつしてふかいものではなく
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
もちろん、子貢の質問の意味は良くわかっているが、あくまで現実主義者、日常生活中心主義者たる孔子は、この優れた弟子の関心の方向をえようとしたのである。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
まことに簡単至極かんたんしごくな花ではあるが、これに引きえその白色四へんほうはたいせつな役目をつとめている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
天心が權衡けんこうを保つ刹那せつなより、彼も此も半球をへかの帶を離れつゝ權衡を破るにいたる程の間 四—六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
へてれとらさぬ用心ようじんむかし氣質かたぎいつこくを立通たてとほさする遠慮ゑんりよ心痛しんつうおいたはしやみぎひだり御苦勞ごくらうばかりならばおよめさまなり舅御しうとごなり御孝行ごかうかう御遠慮ごゑんりよらぬはず
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
脱いだ袴を疊んで、桃色メリンスの袴下を、同じ地の、大きく菊模樣を染めた腹合せの平生帶ふだんおびへると、智惠子は窓の前の机に坐つて、襟を正して新約全書バイブルを開いた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
五、各事件を通じて、動産の可能なるものは、あらかじめすべて現金にえられていること。
浴槽の花嫁 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
阪東諸国の守や介は新らしい人〻にへられたが、斯様かういふ時になると新任者は勝手に不案内で、前任者は責任の解けたことであるから、いづれにしても不便不利であつて
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
老朽ろうきゅうし、車体検査の度に喧しく云われていたが、修繕代が廻らぬため修繕を延し延しして居ったのを、阿部の好意に依って、タイヤもえ、傷んでいる所はすっかり修理して
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
おそらく兩方りやうほうならん。交換こうくわんの方法コロボックル先づ何品かをたづさきたりアイヌの小家のり口又はまどまへに進み此所にてアイヌの方より出す相當そうとうしなと引きへにせしものなりとぞ。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
市日には遠近ゑんきんの村々より男女をいはず所持しよぢのちゞみに名所などころしるしたる紙簽かみふだをつけて市場に持より、そのしな買人かひてに見せて売買うりかひ直段ねだんさだまれば鑑符きつてをわたし、その日市はてゝかねふ。
幕府にてしもせき償金しょうきんの一部分を払うに際し、かねてたくわうるところの文銭ぶんせん(一文銅銭)二十何万円を売りきんえんとするに、文銭は銅質どうしつ善良ぜんりょうなるを以てその実価じっかの高きにかかわらず
それから其家そこではわざわざ室をえて床から何から皆別々にしてしまった。一時の便宜を得たような訳ですけれども、そんなことばかり言って人をあざむいて行くと大変困った事が生ずる。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
わづかの茶代ちやだいらるゝものならず、此園このゑんはそもいかにしてだれが開きしぞ。
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
「いや、そうはならぬ。命ならいかにもちょう。家の重宝は命にもえられぬ」と蜂谷は言った。「誓言を反古ほごにする犬侍いぬざむらいめ」と甚五郎がののしると、蜂谷は怒って刀をこうとした。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
添書そえがきも有って先祖の遺言が此の皿に附いてるから、何うも致し方がない、切りたくはないけれども御遺言にはえられんから、止むを得ず指を切る、指を切ったって命にさわる訳もない
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ますます自分のことでも作りえて、うがってあるように思えたからである。
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
野心ともいえないほどの野心——もう一ついいゆれば、葉子の記憶に親切な男として、勇悍ゆうかんな男として、美貌びぼうな男として残りたいというほどな野心——に絶望の断定を与える事によって
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
本所ほんじょうの方から出て来るおたきという若い夜鷹は、ふた晩ほど其の女にすれ違ったが、なんとも云えない一種の物すごさを感じて、その以来は自分のかせぎ場所をえる事にしたというのである。
半七捕物帳:43 柳原堤の女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
田中君の帽子から汽車へ乗りえた蝗のことを考えると、僕は——子供のような気軽な心になっている僕は、可笑おかしさが心からこみ上げて来て、その可笑しさで口のまわりがもぐもぐ動いて来る。
蝗の大旅行 (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
いひへてると自分じぶんこゝろがわかつていたゞくように、説明せつめいをし、おねがひをし、おびをするもので、根本こんぽん精神せいしんにおいては、このとほり、わたしどもは服從ふくじゆうまをしてをります、といふちかひの意味いみになります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
小銭は無論大分たまっていたので、私はこころよえてやった。
わがころも金にへつつあるかなき香料つつむ白藤の花
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)