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憚
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はゞか
ふりがな文庫
“
憚
(
はゞか
)” の例文
然れども我劇にて行はるゝ舞蹈は、断じて劇的のものにあらずと言ふを
憚
(
はゞか
)
らず。之を美術の他の部門に分つ上は一種の特技なるべし。
劇詩の前途如何
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
「お安い御用だ、親分、——その押入の中にある
柳行李
(
やなぎがうり
)
と風呂敷があつしの世帶。
憚
(
はゞか
)
り乍ら錦の小袖も、絹の
褌
(
ふんどし
)
もあるわけぢやねえ」
銭形平次捕物控:076 竹光の殺人
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
此
(
こ
)
のおなじ
火事
(
くわじ
)
に、
靈岸島
(
れいがんじま
)
は、かたりぐさにするのも
痛々
(
いた/\
)
しく
憚
(
はゞか
)
られるが、あはれ、
今度
(
こんど
)
の
被服廠
(
ひふくしやう
)
あとで、
男女
(
だんぢよ
)
の
死體
(
したい
)
が
伏重
(
ふしかさ
)
なつた。
間引菜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「
其
(
その
)
代
(
かは
)
り
小六
(
ころく
)
さん、
憚
(
はゞか
)
り
樣
(
さま
)
。
座敷
(
ざしき
)
の
戸
(
と
)
を
閉
(
た
)
てて、
洋燈
(
ランプ
)
を
點
(
つ
)
けて
頂戴
(
ちやうだい
)
。
今
(
いま
)
私
(
わたし
)
も
清
(
きよ
)
も
手
(
て
)
が
放
(
はな
)
せない
所
(
ところ
)
だから」と
依頼
(
たの
)
んだ。
小六
(
ころく
)
は
簡單
(
かんたん
)
に
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
只今も申しまする通り夜分になれば伯父の目さえ
除
(
よ
)
ければ
憚
(
はゞか
)
るものはないんでげすから、お若さんも伊之助も
好事
(
いゝこと
)
にして引きいれる
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
後
(
あと
)
では
寧
(
むし
)
ろ
悔
(
く
)
いるまでも
羞恥
(
はぢ
)
と
恐怖
(
おそれ
)
とそれから
勘次
(
かんじ
)
を
憚
(
はゞか
)
ることから
由
(
よ
)
つて
來
(
きた
)
る
抑制
(
よくせい
)
の
念
(
ねん
)
とが
慌
(
あわ
)
てゝ
其
(
そ
)
の
手
(
て
)
を
振
(
ふ
)
り
挘
(
もき
)
らせるのであつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
夜叉王 あつぱれとの御賞美は
憚
(
はゞか
)
りながらおめがね違ひ、それは夜叉王が一生の不出來。よう
御覽
(
ごらう
)
じませ。面は死んでをりまする。
修禅寺物語
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
憚
(
はゞか
)
りながらあたし程のものを恋人に持とうと云うのには、もっと/\忍耐が必要ですよ、と、女はそう云っているのかも知れない。………
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
殺したなどとは
無法
(
むはふ
)
な
云掛
(
いひかけ
)
然樣の覺えは更になし實に汝ぢは
見下果
(
みさげはて
)
たる奴なり
公儀
(
おかみ
)
の前をも
憚
(
はゞか
)
らず有事
無事
(
ないこと
)
を
饒舌
(
しやべ
)
り立
己
(
おの
)
がことを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
さうして薄倖の千登世と圭一郎とが互ひに身の上を打明けた時、二人は一刻も猶豫して居られず忽ち東京に世を
憚
(
はゞか
)
らねばならぬ仲となつた。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
わが逍遙子の意に違ふをも
憚
(
はゞか
)
らで、穿鑿の評を避け、文字の上に
見
(
あらは
)
れたる論の評を作すものは、かゝる危險をおそるゝこと甚しければなり。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
父は大きな溜息を吐いた後に、一寸思案にくれた様な面持で、
態
(
わざ
)
と私から眼を避け、四辺を
憚
(
はゞか
)
るやうに見𢌞しながら言つた。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
ロレ ロミオよ、
出
(
で
)
てござれ、
出
(
で
)
てござれよ、こりゃ
人目
(
ひとめ
)
を
怕
(
おそ
)
れ
憚
(
はゞか
)
る
男
(
をとこ
)
。あゝ、
卿
(
そなた
)
は
憂苦勞
(
うきくらう
)
に
見込
(
みこ
)
まれて、
不幸
(
ふしあはせ
)
と
縁組
(
えんぐみ
)
をお
爲
(
し
)
やったのぢゃわ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
(十六世紀の伊太利詩人タツソオと前七世紀の
希臘
(
ギリシア
)
女詩人サツフオオとの傳は今煩を
憚
(
はゞか
)
りて悉く註せず。)看客は皆泣けり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
家中の人は眼を見合はすのさへ
憚
(
はゞか
)
るやうになつた。お互ひの眼の中に
疼
(
うづ
)
いてゐる不安をお互ひに見たくなかつたのである。
父の死
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
世間を
憚
(
はゞか
)
るやうにまだ日の暮れぬ
先
(
さき
)
から
雨戸
(
あまど
)
を
閉
(
し
)
めた
戸外
(
おもて
)
には、夜と共に
突然
(
とつぜん
)
強い風が吹き出したと見えて、
家中
(
いへぢゆう
)
の
雨戸
(
あまど
)
ががた/\鳴り出した。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
蒙
(
こうむ
)
りましょう、
憚
(
はゞか
)
りながら私しは其様な馬鹿でも無ければ嘘つきでも
有
(
あり
)
ません自分の言う事くらいは心得て
居
(
おり
)
ますから
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
〔評〕南洲人に
接
(
せつ
)
して、
妄
(
みだり
)
に
語
(
ご
)
を
交
(
まじ
)
へず、人之を
憚
(
はゞか
)
る。然れども其の人を知るに及んでは、則ち心を
傾
(
かたむ
)
けて之を
援
(
たす
)
く。其人に非ざれば則ち
終身
(
しゆうしん
)
言
(
い
)
はず。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
然し確証の無いことを深刻に論ずるのは感心出来無いことだ、
憚
(
はゞか
)
るべきことだ、田原藤太を
強
(
し
)
ひて、
何方
(
どちら
)
へ
賭
(
か
)
けようかと考へた
博奕
(
ばくち
)
打
(
うち
)
にするには当らない。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
偶
(
ふ
)
と耳を立てると、妹夫婦が何か言争つて居る。声を
憚
(
はゞか
)
つては居るが、室が浅いから手に取るやうに聞える。
茗荷畠
(新字旧仮名)
/
真山青果
(著)
恐れず
憚
(
はゞか
)
らずかつ悦ばしき聲をもて思ひを響かし願ひをひゞかせよ、わが答ははや定まりぬ。 六七—六九
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
今は誰を
憚
(
はゞか
)
るでも無い身。
乾燥
(
はしや
)
いだ空気を自由に呼吸して、自分のあやしい運命を悲しんだり、生涯の変転に驚いたりして、無限の感慨に沈み
乍
(
なが
)
ら歩いて行つた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
此
(
こ
)
れにも入るべし、
彼
(
か
)
れにも加はるべし、推移するに
憚
(
はゞか
)
らざるが故に、さてなん人々今を
聖代
(
せいだい
)
と称す。
青眼白頭
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
「どうも
憚
(
はゞか
)
りさまでございます。」と、おくみは蚊帳の中へ這入つて、まはりの裾をひろげて廻つた。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
もしか
今後
(
これから
)
下級吏員の女房を呼ぶのに「かみさん」と言ふ事に
極
(
き
)
めれば、手内職も
誰
(
だれ
)
憚
(
はゞか
)
らず出来ようといふもので、従つて市吏員の生活も屹度楽になるといふのだ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
明日が過ぎたら心からお前をわらつてやらうが、それまでは
憚
(
はゞか
)
りませう。私の獲物は
不確
(
ふたしか
)
なのだから。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
君! 手足や胴体を
具
(
そな
)
えた人間には
兎角
(
とかく
)
偽りが多いが心臓は文字通り赤裸々だから、
誰
(
たれ
)
憚
(
はゞか
)
らぬ搏ち方をするにちがいない、結婚を目の前に控えた君たちの心臓を思って
恋愛曲線
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
植村樣
(
うゑむらさま
)
に
遇
(
あ
)
はして
下
(
くだ
)
さるか、むゝ
遇
(
あ
)
はして
遣
(
や
)
る、
呼
(
よ
)
んでも
來
(
く
)
る、はやく
癒
(
なほ
)
つて
御兩親
(
ごりやうしん
)
に
安心
(
あんしん
)
させて
呉
(
く
)
れ、
宜
(
よ
)
いかと
言
(
い
)
へば、あゝ
明日
(
あした
)
は
癒
(
なほ
)
りますると
憚
(
はゞか
)
りもなく
言
(
い
)
ひけり。
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
『
若
(
も
)
し
誰
(
だれ
)
でも
其
(
そ
)
の
説明
(
せつめい
)
の
出來
(
でき
)
たものに』と
愛
(
あい
)
ちやんが
云
(
い
)
ひました、(
此所
(
こゝ
)
少時
(
しばらく
)
の
間
(
あひだ
)
に
大變
(
たいへん
)
大
(
おほ
)
きくなつたので、
誰
(
た
)
れ
憚
(
はゞか
)
る
所
(
ところ
)
もなく
大膽
(
だいたん
)
に
喙
(
くち
)
を
容
(
い
)
れて)、
私
(
わたし
)
は十
錢
(
せん
)
與
(
あ
)
げてよ。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
今更
(
いまさら
)
これを
改
(
あらた
)
めて
苗字
(
めうじ
)
を
先
(
さき
)
にし
名
(
な
)
を
後
(
のち
)
にするにも
及
(
およ
)
ばない。
餘計
(
よけい
)
な
事
(
こと
)
であるといふ
人
(
ひと
)
もあるが、わが
輩
(
はい
)
はさうは
思
(
おも
)
はない。
過
(
あやま
)
ちて
改
(
あらた
)
むるに
憚
(
はゞか
)
るなかれとは
先哲
(
せんてつ
)
の
名訓
(
めいくん
)
である。
誤まれる姓名の逆列
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
第十二章「利己心は優強者の
憚
(
はゞか
)
るところなき特色」、第十三章「優強者政治の必要」、第十四章「優強威力者の幻影は現實なるべき表象主義」といふ樣な項目を擧げて見た。
泡鳴五部作:05 憑き物
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
好
(
す
)
きこそ
物
(
もの
)
の
上手
(
じやうず
)
とやらで、
自分
(
じぶん
)
も
他
(
た
)
の
學課
(
がくゝわ
)
の
中
(
うち
)
畫
(
ゑ
)
では
同級生
(
どうきふせい
)
の
中
(
うち
)
自分
(
じぶん
)
に
及
(
およ
)
ぶものがない。
畫
(
ゑ
)
と
數學
(
すうがく
)
となら、
憚
(
はゞか
)
りながら
誰
(
たれ
)
でも
來
(
こ
)
いなんて、
自分
(
じぶん
)
も
大
(
おほい
)
に
得意
(
とくい
)
がつて
居
(
ゐ
)
たのである。
画の悲み
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
西八條の御宴より歸り
途
(
みち
)
なる
侍
(
さむらひ
)
の
一群二群
(
ひとむれふたむれ
)
、舞の評など樂げに
誰
(
たれ
)
憚
(
はゞか
)
らず罵り合ひて、果は高笑ひして打ち興ずるを、件の侍は折々耳
側
(
そばだ
)
て、時に
冷
(
ひや
)
やかに
打笑
(
うちゑ
)
む
樣
(
さま
)
、仔細ありげなり。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
また
曩日
(
いつか
)
の樣に、今夜何處かに
酒宴
(
さかもり
)
でもあるのかと考へて、お定は
愼
(
つつま
)
しやかに
水潦
(
みづたまり
)
を避けながら、大工の家へ行つた。お八重は
欣々
(
いそ/\
)
と迎へたが、何か
四邊
(
あたり
)
を
憚
(
はゞか
)
る樣子で、
密
(
そつ
)
と裏口へ
伴
(
つ
)
れて出た。
天鵞絨
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
そして、上流にある城下町の藩主が参勤の途上この河を利用して下る時、天領との間に何か紛争の糸口のつくのを
憚
(
はゞか
)
つて、河原町の傍を通る間は舟に幕をはり、乗組の者は傍見をして下つたと云ふ。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
皆な此の
財産
(
しんだい
)
の御蔭だあネ、
面
(
かほ
)
の
艶
(
つや
)
よりも今は
黄金
(
おかね
)
の光ですよ、
憚
(
はゞか
)
りながら此の財産は
何某様
(
どなたさま
)
の御力だと思ふんだ、——其の恩も思はんで、身分の程も知らなんで、少しばかりの容姿を鼻に掛けて
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
あの
娘
(
あま
)
つ
子
(
つ
)
が引取つて行つたけれど、村では誰も構ひ手が無し、遠い親類筋のものは少しはあるが、皆な村を
憚
(
はゞか
)
つて、世話を
為
(
し
)
ようと言ふものが無えので、
娘
(
あま
)
つ
子
(
つ
)
非常に困つて居たといふ事です……。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
寝がへりを打つのさへ
憚
(
はゞか
)
られるやうな静かさになつた。
An Incident
(新字旧仮名)
/
有島武郎
(著)
彼處
(
あすこ
)
を
通拔
(
とほりぬ
)
けねばならないと
思
(
おも
)
ふと、
今度
(
こんど
)
は
寒氣
(
さむけ
)
がした。
我
(
われ
)
ながら、
自分
(
じぶん
)
を
怪
(
あやし
)
むほどであるから、
恐
(
おそ
)
ろしく
犬
(
いぬ
)
を
憚
(
はゞか
)
つたものである。
星あかり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「下女のお粂は本郷一番の
金棒曳
(
かなぼうひき
)
ですよ。親分ぢや、
憚
(
はゞか
)
り乍らあの女の口を開けられねえが、あつしなら、どんな事でも話します」
銭形平次捕物控:202 隠し念仏
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
福沢翁には吾人、「純然たる時代の
驕児
(
けうじ
)
」なる名称を呈するを
憚
(
はゞか
)
らず。彼は旧世界に生れながら、徹頭徹尾、旧世界を
抛
(
な
)
げたる人なり。
明治文学管見:(日本文学史骨)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
夜の中に通り
拔
(
ぬ
)
け
流石
(
さすが
)
晝中は人目を
憚
(
はゞか
)
り
密
(
ひそ
)
かに彼の盜み取し二百兩の金にて
宿場
(
しゆくば
)
の
飯盛
(
めしもり
)
女を揚げて日を暮し夜に入るを待て其處を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「ウーイ、余り御酒を過したので御前をも
憚
(
はゞか
)
らず、とろ/\と
睡
(
ねむ
)
って大きに失礼いたした、おや、お
燈火
(
あかり
)
が消えましたな、御近習お燈火を」
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
宗助
(
そうすけ
)
は
固
(
もと
)
よりさうだと
答
(
こた
)
へなければならない
或物
(
あるもの
)
を
頭
(
あたま
)
の
中
(
なか
)
に
有
(
も
)
つてゐた。けれども
御米
(
およね
)
を
憚
(
はゞか
)
つて、それ
程
(
ほど
)
明白地
(
あからさま
)
な
自白
(
じはく
)
を
敢
(
あへ
)
てし
得
(
え
)
なかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
したが、
憚
(
はゞか
)
りながら、当時敵味方乱軍の
最中
(
さなか
)
でござりまして、わたくしの外には誰一人もそれを知っている者はござりませぬ
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「どうしてつちつたつて、
俺
(
お
)
らがにや
分
(
わか
)
んねえよ」おつぎは
恨
(
うら
)
めし
相
(
さう
)
に
然
(
しか
)
しながら
周圍
(
しうゐ
)
に
憚
(
はゞか
)
る
樣
(
やう
)
にして
小聲
(
こごゑ
)
でいつた。
袂
(
たもと
)
は
顏
(
かほ
)
を
掩
(
おほ
)
うた
儘
(
まゝ
)
である。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
我は
期
(
ご
)
する所あるに非ずして、ポルタ、ピアの傍に立ち、目を
四井街
(
クワトロ、フオンタネ
)
の方に注ぎつ。されど我は猶心に
憚
(
はゞか
)
りて、尼寺の門に到ることを果さゞりき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
忠之は憎みつゝも
憚
(
はゞか
)
つてをり、其周圍の人達は憚りつゝも敬つてをつた利章が、どうして主君を無實の罪に陷いれようとするか、
誰
(
たれ
)
にも判斷が附かぬのである。
栗山大膳
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
もう斯うなつたら誰に
憚
(
はゞか
)
ることもない。天下の旗本青山播磨を
婿
(
むこ
)
にきめましたと、母のまへで立派に云へ。
番町皿屋敷
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「
遊
(
あそ
)
んでツてよ。」と
周囲
(
しうゐ
)
の
人込
(
ひとごみ
)
を
憚
(
はゞか
)
り、
道子
(
みちこ
)
は
男
(
をとこ
)
の
腕
(
うで
)
をシヤツの
袖
(
そで
)
と一しよに
引張
(
ひつぱ
)
り、
欄干
(
らんかん
)
から
車道
(
しやだう
)
の
稍
(
やゝ
)
薄暗
(
うすぐら
)
い
方
(
はう
)
へと
歩
(
あゆ
)
みながら、すつかり
甘
(
あま
)
えた
調子
(
てうし
)
になり
吾妻橋
(新字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
憚
漢検1級
部首:⼼
15画
“憚”を含む語句
忌憚
乍憚
人憚
誰憚
憚様
不憚
口憚
御忌憚
憚樣
畏憚
行憚
過而勿憚改