巡査じゆんさ)” の例文
「こんなことでおまへ世間せけんさわがしくてやうがないのでね、わたしところでも本當ほんたうこまつてしまふんだよ」内儀かみさんは巡査じゆんさ一寸ちよつとてさうして
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いぬはまたなめた。其舌そのした鹽梅あんばいといつたらない、いやにべろ/\してすこぶるをかしいので、見物けんぶつ一齊いつせいわらつた。巡査じゆんさ苦笑にがわらひをして
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
や、巡査じゆんさ徐々そろ/\まどそばとほつてつた、あやしいぞ、やゝ、またたれ二人ふたりうちまへ立留たちとゞまつてゐる、何故なぜだまつてゐるのだらうか?
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
O君はつゑ小脇こわきにしたまま、或大きい別荘の裏のコンクリイトの塀に立ち小便をしてゐた。そこへ近眼鏡きんがんきやうか何かかけた巡査じゆんさ一人ひとり通りかかつた。
O君の新秋 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
此時このとき二人ふたり巡査じゆんさ新聞しんぶんんでた。關羽巡査くわんうじゆんさ眼鏡めがねをかけて、人車じんしやのぼりだからゴロゴロと徐行じよかうしてた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
動物園のおぢさん「あるときしろ夏服なつふく巡査じゆんさが、けんなんかでこのとらをおどかしたことがありました。それからといふものしろふく巡査じゆんさるとおこります」
なんかと突倒つきたふして、なはから外へ飛出とびだ巡査じゆんさつままれるくらゐの事がございますが、西京さいきやうは誠にやさしい
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
うむ、そんなら貴樣きさまがこないだ途中とちうで、南京米なんきんまいをぬきつたのを巡査じゆんさげるがいいかとふんです
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
長吉ちやうきちはいつも巡査じゆんさ立番たちばんしてゐる左手の石橋いしばしから淡島あはしまさまのはうまでがずつと見透みとほされる四辻よつゝじまで歩いて来て、とほりがゝりの人々が立止たちどまつてながめるまゝに、自分もなんといふ事なく
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
さいはひの巡査おまわりさまにうちまでいたゞかば我々われ/\安心あんしん此通このとほりの子細しさい御座ござりますゆゑすぢをあら/\をりからの巡査じゆんさかたれば、職掌しよくしようがらいざおくらんとらるゝに、いゑ/\おくつてくださらずともかへります
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
人相にんさうわる望生ぼうせい。それが浴衣ゆかたがけに草鞋わらじ脚半きやはんかま萬鍬まんぐわつてる。東京とうきやうだとつたり、また品川しながはだともこたへる。あやしむのは道理だうりだ。それがまたいしるといふのだから、一そう巡査じゆんさあやしんで。
巡査じゆんさなりき。
霜夜 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
蜀黍粒もろこしつぶおつこつてあんすぞ、さうすつと此處ここけたのまた何處どこへかつてつちやつたな」被害者ひがいしやはいつた。巡査じゆんさ首肯うなづいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
なかには巡査じゆんさまじつたが、ほりむかふのたか石垣いしがきうへに、もりえだつたてい雪枝ゆきえ姿すがたを、ちひさなとりつて、くもく、とながめたであらう。……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あめ次第しだいつよくなつたので外面そと模樣もやう陰鬱いんうつになるばかり、車内うち退屈たいくつすばかり眞鶴まなづる巡査じゆんさがとう/\
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
軒下のきした縄張なはばりがいたしてございますうち拝観人はいくわんにんみなたつはいしますので、京都きやうと東京とうきやうちがつて人気にんきは誠におだやかでございまして、巡査じゆんさのいふ事をく守り、中々なか/\なはの外へは出ません。
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
巡査じゆんさや、憲兵けんぺいひでもするとわざ平氣へいきよそほふとして、微笑びせうしてたり、口笛くちぶえいてたりする。如何いかなるばんでもかれ拘引こういんされるのをかまへてゐぬときとてはい。れがため終夜よつぴてねむられぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
なにとかしけん横町よこてうかどにて巡査じゆんさをばふりはなして一目散もくさんげぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
巡査じゆんさはいよ/\あやしみながら。
以前いぜんから勘次かんじあきになれば掛稻かけいねぬすむとかいふ蔭口かげぐちかれて巡査じゆんさ手帖ててふにもつてるのだといふやうなことがいはれてたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
迷兒まひごかなしさが充滿いつぱいなので、そんなことにはがつきやしないんだらう、巡査じゆんさにすかされて、いちやあ母樣おつかさんてくれないのとばかりおもんだので
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
巡査じゆんさいつぷく點火つけてマツチを義母おつかさんかへすと義母おつかさん生眞面目きまじめかほをして、それをうけ取つて自身じしん煙草たばこいはじめた。べつ海洋かいやう絶景ぜつけいながめやうともせられない。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
たゞ軒下のきしたゆきかよふ夜行やこう巡査じゆんさ靴音くつおとのみたかかりき。
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
巡査じゆんさ唖然あぜんとして。
無理むりこらへてうしろを振返ふりかへつてようといふ元氣げんきもないが、むず/\するのでかんがへるやうに、小首こくびをふつて、うながところあるごとく、はれぼつたいで、巡査じゆんさ見上みあげた。
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
船蟲ふなむしむらがつて往來わうらいけまはるのも、工場こうぢやう煙突えんとつけむりはるかにえるのも、洲崎すさきかよくるまおとがかたまつてひゞくのも、二日ふつかおき三日みつかきに思出おもひだしたやうに巡査じゆんさはひるのも
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
で、宿やど了見れうけんばかりで電報でんぱうつた、とえて其処そこ出逢であつた一群いちぐんうちには、おうら親類しんるゐ二人ふたりまざつた、……なかない巡査じゆんさなどは、おな目的もくてきで、べつ方面はうめんむかつてるらしい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おれ見着みつけてつてかへる、死骸しがいるのをつてれ。』とにらみつけて廊下らうか蹴立けたてゝた——帳場ちやうば多人数たにんず寄合よりあつて、草鞋穿わらぢばき巡査じゆんさ一人ひとりかまちこしけてたが、矢張やつぱりこといてらしい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)