大概たいがい)” の例文
読方よみかただって、何だ、大概たいがい大学朱熹章句だいがくしゅきしょうくくんだから、とうと御経おきょう勿体もったいないが、この山には薬の草が多いから、気の所為せいか知らん。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「錢形の親分、お聽きだらう。この男は大層威張つてゐるが、大概たいがいこんな野郎は臭いに極つたものだ。遠慮なく洗ひ出して見てくれ」
そなたには神様かみさまうかがうこともちゃんとおしえてあるから、大概たいがいこと自分じぶんちかららねばならぬぞ……。』そうわれるのでございます。
十四、五になる大概たいがいいえむすめがそうであるように、袖子そでこもその年頃としごろになってみたら、人形にんぎょうのことなぞは次第しだいわすれたようになった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「まあ、大概たいがいのことはわかつてゐるつもりですが、貴女あなたがはからなら、大久保おほくぼ生活せいくわつがいつそくはしくわかつてゐるはずぢやないですか。」
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
俊男の頭の中には今、自分が病身の爲に家庭に於ける種々さま/″\なる出來事を思出した。思出すとそれ大概たいがい自分の病身といふに基因きゐんしてゐる。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
いったい米国の諸大学は通常卒業式は一年一回で(シカゴ大学のごとく四回ある処もあるけれども)、して大概たいがい七月の初旬に行われる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
大概たいがいのことでは一かうさわがぬやうなかれ容子ようすほかからではさうらしくもえるのであつた。も一つは服裝ふくさうけつしてくずさぬことであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
この旗さえ見たらこの群集の意味も大概たいがい分るだろうと思って一番近いのを注意して読むと木村六之助君の凱旋がいせんを祝す連雀町れんじゃくちょう有志者とあった。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大概たいがいの者なら一百打つとうーんと云って死んで仕舞うから五十打つと気付けを飲まして、又あとを五十打つが、亥太郎は少しも痛がらんから
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
引き上げは大概たいがい十時頃だった。それから私は湯島まで十二、三町をテクテクと歩いて帰るのであるが、家に着くのはほぼ十一時すぎだった。
あの牌音パイおとくといふ力強ちからづよ魅力みりよくがある。だからこそ、麻雀マアジヤンすこあそびをおぼえると、大概たいがいひとが一熱病的ねつびやうてきになつてしまふ。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
老人らうじん大島仁藏おほしまじんざう若者わかもの池上權藏いけがみごんざうであるといふことをへば、諸君しよくんは、すで大概たいがい想像さうざうはつくだらうとおもひます。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
裏山伝いに西南へ抜け、大島、安塚、三ノ郷、……ここまでうまく落ち延びさえすれば、大概たいがい大丈夫ということになった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私は日本製のものは嫌いで見ないから一向いっこう知らないが、帝国館や電気館あるいはキネマ倶楽部などの外国物専門の館へは、大概たいがい欠かさず見に行く。
活動写真 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
何等なんらの膨脹力もなく、男のように根深い力の坐った生活力も、大概たいがいは落着のないものだったり、だから、犯罪の動機が
碑の背面に食人之ひとのしょくを食者はむものは死人之事ひとのことにしすの九字を大書して榎本武揚えのもとたけあきと記し、公衆の観に任してはばかるところなきを見れば、その心事の大概たいがいうかがいるにるべし。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ことに驚いたのは、彼の女の肉体や頭髪や軽羅けいらすべてにちりばめて居る金銀宝玉きんぎんほうぎょくが、近くで見ると大概たいがい真鍮しんちゅうか、ブリキだか、ガラス玉で出来て居る。………
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ヂュリ なみだ創口きずぐちあらはしゃるがよい、そのなみだころにはロミオの追放つゐはうくやわしなみだ大概たいがいつけう。そのつなひろうてたも。
瓦屋根かはらやねの高くそびえてるのは古寺ふるでらであつた。古寺ふるでら大概たいがい荒れ果てゝ、やぶれたへいから裏手うらて乱塔場らんたふばがすつかり見える。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
……そういってくれれば大概たいがいわかるよ、それでも分らないようだったら、熱海あたみに居たお粂さんからだといっておくれ
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このたい日本につぽん諸高山しよこうざんでは大概たいがいやまいたゞきにちかいところにあらはれてゐて、たかさは八九千尺はちくせんじやくから一萬尺いちまんじやくおよんでゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
第三十四 カビヤサンドイッチ このカビヤと申すのは丁鮫ちょうざめの子を鑵詰にしたのが上等ですがそれは滅多めったにありませんで大概たいがい魯西亜ロシヤ産のますの子を使います。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
天下の助五郎がこう言ったが最後、大概たいがいの掛合いは勝ちになる。始めから棄身なんだから暴力団取締の法律なんか助五郎老の金儲けにはすこしも影響しない。
助五郎余罪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
好きなところは吉原で、きらいなところはお役所だといつも口癖くちぐせのようにいっていたから察しても、大概たいがいその心持は、わかり過ぎるほどわかっている筈だった。
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
よってその関係かんけい大概たいがいしるして序文にう。明治二十四年十月十六日、木村旧軍艦奉行ぶぎょうの従僕福沢諭吉 しるす
五千万という大民族は大概たいがい孔子さんの門人である。孔子さんの感化を受けて、口を開くと仁義をいう。
東亜の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
本堂の上り段に舞台ぶたいを作りかけ、左に花道あり、左右の桟敷さじき竹牀簀たけすのこ薦張こもばりなり。土間にはこもしきむしろをならぶ。たびの芝居大概たいがいはかくの如しと市川白猿がはなしにもきゝぬ。
能狂言を見たり物の本でも見た人は大概たいがい知ってますがね、その清姫の帯というのはこの土地の人に限る、近頃おいでなすったお前さんに、それがわからないのは無理はない
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
くだもの、菓子、茶など不消化にてもうまく候。朝飯は喰はず昼飯はうまく候。夕飯は熱が低ければうまく、熱が高くても大概たいがい喰ひ申候。容態荒増あらまし如此かくのごとくに候。(四月二十日)
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
大層甲斐々々かい/″\しい老人で室の掃除などは大概たいがいにんで仕て仕舞い私には手を掛させぬ程でした
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
大概たいがい洞察みぬかれし樣子にて扨てはあやしき事なりその女をころし又昌次郎梅等が着物きものを着せ置傳吉に難儀なんぎを掛罪におとさんとはかりしやも知難し首をかくす程なれば着類きものをも剥取はぎとるべきに夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
製作形状せいさくけいじやう等に付ては土器の事を言ふりに細説さいせつすべけれど、大概たいがいを述ぶれば其全体ぜんたいは大なる算盤玉そろばんだまの如くにしてよこ卷煙草まきたばこのパイプをみぢかくせし如き形のぎ出し口付きたり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
そんなみちみち私の出遇であうのは、ごくまれには散歩中の西洋人たちもいたが、大概たいがい、枯枝を背負せおってくる老人だとかわらびとりの帰りらしいかごうでにぶらさげた娘たちばかりだった。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
大概たいがい野狐禅やこぜんでは傍へ寄り付けません。大衆は威圧いあつされて思わずたじたじとなります。
鯉魚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
其処そこに附属した印度インドの博物館を観ては、一面に欧洲美術と交渉し、一面に日本支那の美術と連絡を保つ印度インド美術の大概たいがいを窺ふ事が出来るやうに想はれるのであつた(六月三十日)
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
押釦というものは便利なもので、それを指で押すだけで、大概たいがいの用は足りてしまう。
しか大概たいがい蛇窪へびくぼ踏切ふみきりだい二のせんして、ぐと土手どてのぼつてくのである。
雪の奇状きじやう奇事きじ大概たいがいは初編にいだせり。なほ軼事てつじあるを以此二編にしるす。すでに初編にのせたるも事のことなるは不舎すてずしてこれろくす。けだし刊本かんほん流伝りうでんひろきものゆゑ、初編をよまざるものためにするのあり。
大概たいがい君にも、話の筋が分っただろう……つまり、その松の木に猫が飛びついた拍子ひょうしに、偶然枝の上にのっかっていたあるものにふれて、それが親父の頭の上へ落ちたのではないかということだ
疑惑 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
此頃このごろでは大概たいがい左翼レフトほうまはしてるが、先生せんせい其處そこからウンとちからめて熱球ダイレクトげると、そのたまがブーンとうなごゑはなつてんで有樣ありさま、イヤそのたまあたまへでもあたつたら、此世このよ見收みをさめだとおもふと
尤も修学旅行に来て大概たいがいのところはもう見ている。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
常談も大概たいがいにするものなりと知るべし。
八宝飯 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
まぐれも大概たいがいになさいなね
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「まア、宜い。與吉兄哥あにいの前だが、岡つ引を相手に大きな口を叩く人間は、大概たいがい馬鹿か底拔けの正直者にきまつたものだ。ね、御坊」
兵粮は嫌でも他から仰がなければならぬのであるから、大概たいがいの者は頭と腕だけが膨大ぼうだいになつて、胃の腑が萎縮ゐしゆくする。從つて顏の色がくすむ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
藤「成程、それは御親切な、千万かたじけない、わしも心掛けてるが、大概たいがいの婦人が来ても気に入らぬ、能く心掛けてくれました、どういう女で」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
つれかたみんな通過とほりすぎてしまつたやうでござりますで、大概たいがい大丈夫だいぢやうぶでござりませう。徐々そろ/\曳出ひきだしてませうで。いや、うもの、あれでござりますよ。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
精神の鍛錬が出来ている者は法術を会得えとくすることもいと早い。私の持っている大概たいがい法術じゅつを彼はことごとく会得えとくした。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
主人の方も事務所ひまやのんですさかい、何時になろうと大概たいがい待っててくれまして、阪神電車で梅田まで一緒に行き
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)