ぺん)” の例文
あなたが一ぺんゆるすってったのなら、今日は私だけでひとつむぐらをいじめますから、あなたはだまって見ておいでなさい。いいでしょう
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
始めとして富澤町の實父じつぷにも兄にも先立さきだつ不幸ふかうの罪おゆるなされて下されよ是皆前世の定業と斷念あきらめられて逆樣さかさまながら只一ぺんの御回向を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
らそれから五百匁ひやくめぐれえ軍鷄雜種しやもおとしくゝつて一ぺんつちまつたな、さうしたらねつた」かれにはかこゑひくくしたが、さら以前いぜんかへつて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
とりや、」とそのおとこった。「なんこえうたうんだ! おれにも、はじめからかしてくれ。もう一ぺんうたってくれ。」
「どうもこの頃、昭沙弥は、生飯をやると言っちゃ日に五六ぺんも、そわそわ川へ行く。あんまり鯉に馴染なじみがつき過ぎて鯉にせられたのではないか」
鯉魚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
何時間なんじかんかじっとすわって様子ようすていましたが、それからあたりを丁寧ていねいにもう一ぺん見廻みまわしたのちやっとあがって、今度こんど非常ひじょうはやさでしました。
「もう組分けは、すみましたかな? すんだら一ぺん勢ぞろいをして、顔を見おぼえておかんことにはつごうが悪いテ」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
れにもかゝはらず、自分の母親のおとよはあまりくは思つてゐない様子やうすで、盆暮ぼんくれ挨拶あいさつもほんの義理一ぺんらしい事をかまはず素振そぶりあらはしてゐた事さへあつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
馬鹿だから、よくこんな真似をします。此所こゝしてからまだ一ぺんかないものだから、今日けふの日曜にはると思つて待つてゞもゐたのでせう、それで
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
こんないい景色けしきァ、毎朝まいあさられるじゃァねえッて。——ごらんなせえやし。おまえさんの姿すがたえたら、つぼんでいたはなが、あのとおり一ぺんきやしたぜ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
一日に十ぺんも人に尋ね、愛していると聴いてニコニコし、冗談にもしろ愛していないと言われると
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
なあ父樣とゝさんぺんいさむさんにふて十ぶんあぶらつたら御座ござりましよとはゝたけつて前後ぜんごもかへりず。
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
漢名かんめい(中国名のこと)の淫羊藿いんようかくき、中国の説では、羊がこの葉(かく)を食えば、一日の間に百ぺん雌雄しゆう相通あいつうずることができる効力を持っていると信ぜられている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
何十ぺんでもくりかえしてやる。——登るのは行心ぎょうしん、飛び降りるのは破心、闘いの生活だと思って、倒れるまでやってごらん。若い暗鬱なんてものは、汗の塩になってしまう
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いらざる取り越し苦労ばかりすると思うかもしれんが、あれほどの用意をしても世の中の事は水が漏れたがるものでな。そこはお前のような理屈一ぺんではとてもわかるまいが
親子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
聞くとあいかわらず朝湯に行っている、帰って筆を握っては見るのだが、どうもねという。もう八十日余りになりますと、八十ぺんも空しい用意をしながら奥さんも平気なものだ。
九谷焼 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
グラッドストーンが二十ぺんんだという如く、また近頃はスレッチャレーションという事がはやッて、スレッチャーという人が何でも噛まなくてはいかぬといッてこれをやッたというが
人格の養成 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
その文句をもう一ぺんいってごらん、みんなが聴いとくとためになるからさ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
しかしその水車の道はそのへんの別荘の人たちが割合にき来するので、彼女のまわりにはすぐ人だかりがして困るらしかったが、私は一ぺんもその絵を描いている場所へ近づこうとはしないでいた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
この穂打ち藁打ちがいかに苦しい労働であったかは、庭の上を五六ぺん棒で打ってみればすぐに想像がつく。持つ手に反動がくるばかりでなく、いつも中腰になって働き続けなければならぬから苦しい。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
エヘ/\、なんだか忘れさうだな、もう一ぺんつてんねえな。
八百屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「私、その積りでもう一ぺん能く見て行きとうございますわ」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「話せねえな、一ぺん見たまえ、ぼくがおごるから」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
到底たうてい單純たんじゆん理屈りくつぺんりつすることが出來できない。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
亡者乙 一ぺん死殿またゐん天下狼狽居士らうばいこじ
ぺんに眼があいた。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
チュンセ童子がだまって傷口から六ぺんほど毒のある血を吸ってはき出しました。すると大烏がやっと気がついて、うすく目を開いて申しました。
双子の星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
貝原は夏中七八ぺんも小初を踊りに連れ出したことがあるので、ちょっとした小初の好きな喰べものぐらい心得ていた。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
したりしと空頼そらだのみに心をなぐさめ終に娘お文が孝心を立る事に兩親ふたおやとも得心なせばお文はよろこび一まづ安堵あんどはしたものゝ元より堅氣かたぎぺんの十兵衞なれば子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
冬至とうじといふと俄商人にはかあきうどがぞく/\と出來できるのでいそいで一ぺんあるかないと、その俄商人にはかあきうどせんされてしまふのでおしなはどうしても凝然ぢつとしてはられなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それをもう一ぺん云いえると、この三者を自由にけ楽しむためには、その三つのものの背後にあるべき人格の支配を受ける必要が起って来るというのです。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「もう一ぺんってごらん。」とおかあさんがった。「そして返事へんじをしなかったら、横面よこッつらっておやり。」
無骨ぶこつぺん律義りつぎをとこわすれての介抱かいほうひとにあやしく、しのびやかのさゝややが無沙汰ぶさたるぞかし、かくれのかたの六でうをばひと奧樣おくさましやく部屋べや名付なづけて、亂行らんげうあさましきやうにとりなせば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ぺんに重荷が下りた心地がして、彼は、初めてのびのびと腰を立てて、雨戸のすきが四、五寸ほど障子になっている高窓の口を見上げたが、背が足らないので隙見をすることができない。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「馬鹿を申せ。貴様こそ夢を見ているのじゃろう。喬之助はこっちにおる。ほらほら、彦十郎を相手に刃を合わせておる。みんなこっちへ来いッ! 一ぺんに掛って遣っつけてしまおう」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「一ぺんの弁当は一番安いので二十五銭だろうね」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「どうしてッて。それァわかるさ。お前、バアへ稼ぎに行くといっているのに、一ぺんも酔って来たことがないし、着物にも酒のにおいが移っていない。それから足袋たびがちっとも汚れていない。だからバアやカフェーじゃないと思ったんだ。」
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
勘次かんじふりかへつたときかれ打棄うつちやつたふねしづんだきりへだてられてえなかつた。かれ蜀黍もろこしからうて足趾あしあとしたがつてはるか土手どて往來わうらいた。きりが一ぺんれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
賣代うりしろなし其金をもち藤八樣へ相談申て何方なりと再び縁をもとめよや其後自然しぜん我事を思ひ出せし日もあらば只一ぺん回向ゑかうをと云ばお節はうらめしげに九助のかほ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
何かの拍子で眠れなかった時、病人のうなるような声をかすかに聞いたと思い誤ったわたくしは、一ぺん半夜よなかに床を抜け出して、念のため父の枕元まくらもとまで行ってみた事があった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ホモイはごはんがすんでから、玉へ百ぺんいきをふきかけ、それから百ぺん紅雀べにすずめの毛でみがきました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「いいとも、」とほかものった。「もう一ぺんうたうなら、やってもいいよ。」
今の姿——と、いう日吉のことばに、乙若はもう一ぺん、彼の身装みなりを見直した。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは大丈夫だいじょうぶですよ。ぼくけっしてなくしませんよ。そんなようなことは、ひばりもっていました。ぼくは毎日百ぺんずついきをふきかけて百ぺんずつ紅雀べにすずめの毛でみがいてやりましょう
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
余はもう一ぺん丁寧にで廻わしたのち、とうとうこれをうやうやしく禅師ぜんじに返却した。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「なんだ、そんなことなら、おいらが一日に百ぺんもいってら」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うです一ぺんつて御覽ごらんになつちや、わざ/\毛皮けがはいただぶ/\したものなんかて、一寸ちよつと面白おもしろいですよ。なんなら御紹介ごせうかいしませう。丁度ちやうど明後日あさつてばんんでめしはせることになつてゐるから。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
代助はくるしいので、何返なんべんせきつて、うしろの廊下へて、せまそらを仰いだ。あにたら、あによめと縫子を引きわたしてはやく帰りたい位に思つた。一ぺんは縫子をれて、其所等そこいらをぐる/\運動してあるいた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
小六ころく其通そのとほりを通知つうちして、御前おまへさへそれで差支さしつかへなければ、おれがもう一ぺん佐伯さへきつて掛合かけあつてるがと、手紙てがみあはせると、小六ころく郵便いうびんいたばん、すぐあめなかを、からかさおとてゝつて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)