かい)” の例文
寶鼎はうてい金虎きんこそんし、芝田しでん白鴉はくあやしなふ。一瓢いつぺう造化ざうくわざうし、三尺さんじやく妖邪えうじやり、逡巡しゆんじゆんさけつくることをかいし、また頃刻けいこくはなひらかしむ。
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そのためか、往生要集のかいも、無事にすんで、範宴は、翌年の夏までを一乗院の奥に送っていたが、やがて秋の静かな跫音あしおとを聞くと
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで衆人みんな心持こゝろもちは、せめてでなりと志村しむらだい一として、岡本をかもと鼻柱はなばしらくだいてやれといふつもりであつた。自分じぶんはよくこの消息せうそくかいしてた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
江戸の開城かいじょうその事はなはにして当局者の心事しんじかいすべからずといえども、かくその出来上できあがりたる結果けっかを見れば大成功だいせいこうと認めざるを得ず。
そのうえに、博士の書いてある説明は現代において、普通に知られている理学りがく範囲はんいをかなりとび出していて、かいすることがむずかしい。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
純一は何を笑ったともかいせぬながら、行儀好く笑い交した。そして人に押されるのが可笑しいのだろうと、跡から解釈した。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
今夜の、明智の態度口吻こうふんには何となくかいし難い所があった。日頃の明智なれば、他人の手がけている犯罪事件に口出しをするさえ好まぬ筈だ。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
唯儂一個人としては、六年の田舎住居いなかずまいの後、いさゝかたものは、土に対する執着の意味をやゝかいしはじめた事である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
かいしてすませるのは月並つきなみであって、そんな職業ができたのはずっとのちの話、最初凡人ぼんじん大衆の群を面白がらせ、是を何でもかでも土地のものとして
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
仁義礼智じんぎれいちなどとは斯道しどうの人にあらざればかいあたわぬ倫理りんりとして、素人しろうとのあえて関せざる道理のごとくみなすふうがある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
められたのか、くさされたのか分らない。気楽か気楽でないか知らない。気楽がいいものか、わるいものかかいしにくい。ただ甲野さんを信じている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かれはおつぎの意中いちうかいしてるので吸殼すひがらけつしてにつくところへはてないでこまかにんでそとついで他人たにん垣根かきねなかなどへ放棄ほうつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
お政が心底しんそこをしんにかいした人は、お政の父ひとりくらいであったろうけれど、それでもだれいうとなく、お政さんはかしこい女だという評判ひょうばんが立った。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
と橋口夫人は諧謔をかいさない。先刻さっきお米のお礼を言った時も士族の商法と仰有ったように安子夫人は思い出した。
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
さすがに、ひとのいうことを、まっすぐにしかかいしなかったおたけも、底意地そこいじのわるい、おくさまのいいかたがわかって、もうなにもいうことができませんでした。
だまされた娘とちょうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いまこの岩窟がんくつ説明せつめいするに、もつとかいやすからしめるには、諸君しよくん腦裡のうりに、洋式ようしき犬小屋いぬごやゑがいてもらふのが一ばんだ。
うぬア化物かッ? 化物にしろ、人語をかいしたら、よッくおれのいうところを聞けッ! いいか、その二つの刀とこの娘はナ、去年の秋の大試合におれが一の勝を
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
丁度この話の出来事のあった時、いつも女に追い掛けられているポルジイが、珍らしく自分の方から女に懸想けそうしていた。女色じょしょくの趣味は生来かいしている。これは遺伝である。
「それは、よく存じておる。越前が、判官として、そう申すのは、重々、信祝もかいせる。しかし天一坊の事は、重大で、時としては、司政の都合にて、法をげる事も——」
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
もちろん彼には何んのために、獣達がしたしみを見せるのか、かいすることが出来なかった。しかしそれらの獣達に、害心のないことは見て取られた。彼は憤然と飛び上がった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
むかしひと言葉ことばりていふならば、大地震だいぢしんいへつぶれるのは、みなもどしにるのである。もしこのもどしを餘震よしんだとかいしたならば餘震よしんもつとおそろしいものでなければならぬ。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
往時わうじかへりみて感慨かんがいもよふすのとき換骨脱體くわんこつだつたいなる意味いみはじめてかいしたるのおもひあり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
南洲はいんかいせず、ひて之をつくす、たちま酩酊めいていして嘔吐おうどせきけがす。東湖は南洲の朴率ぼくそつにしてかざるところなきを見てはなはだ之をあいす。嘗て曰ふ、他日我が志をぐ者は獨此の少年子のみと。
乳母うばとピーターとのきたるを見附みつけての評語ひゃうごとも、マーキューシオーとベンヺーリオーの猥雜わいざつ問答もんだふ反語的はんごてきひゃうしたるものとかいせらる。こゝには後者こうしゃたゞしとて、其義そのぎやくしておきたり。
また私は草木の栄枯盛衰えいこせいすいて、人生なるものをかいし得たと自信している。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
こう思って見れば、これまで一自分の胸の上にかぶさっていた冷やかさ、何日も続いていた無情がかいせられないもののようになって来る。それでも今はまだ男が生きている。息もしている。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
(姉は弟の詞をかいし兼ねたるごとく、顔を見る。)僕のいったのは、あの娘の心も顔のような風かも知れないというのです。(間。突然。)そうそう。あのロイトホルド君が今に来るのですがね。
老子らうし隱君子いんくんしなり。老子らうしそうそうしやうり、段干だんかんほうぜらる。そうちうちうきうきう玄孫げんそんかん孝文帝かうぶんていつかふ。しかうしてかい膠西王卬かうせいわうかう(一六)太傅たいふる。
これ畢竟ひつきやう地震ぢしんたいする災害さいがい輕減けいげんするがためであるとかいしてくれた。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
奨励とがあったゆえであろうとかいする人さえ少なくない。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
おのれ臆断おくだんを以て理についいにしへの氷室をかいするなり。
「何かとおもったらおやすいことだよ。いいとも、いいともよ! だがのかいの兄弟、まだ外は暗い、そこでお茶でものんで話していなよ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先達せんだつての歌舞伎座は如何いかゞでした」と梅子がいた時、令嬢は何とも答へなかつた。代助にはそれが劇をかいしないと云ふより、劇を軽蔑してゐる様に取れた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
が、此處こゝ成程なるほどおもつた。石碑せきひおもてかいするには、だう閻魔えんまのござるが、女體によたいよりも頼母たのもしい。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「おかあちゃん、……おかあちゃん。」と、自分じぶんつきゆびさして、にっこりしました。——これは、しょうちゃんが、はじめて、このなかあわれをかいしたときであったのであります。
遠方の母 (新字新仮名) / 小川未明(著)
またある時はどこかの二等線路を一手に引き受けられる程のすうの機関車を所有していた。またある時は、平生活人画かつじんが以上の面白味はかいせないくせに、歴代の名作のある画廊を経営していた。
しるしてあるばかり、さすがの博士も、その意味をかいねたように見えた。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そしてう一つ不思議なことには、その靴跡と入り乱れて山羊の脚跡が有ることで、検事も警視も予審判事も、かいし難いような様子をして、その山羊の脚跡を暫くの間黙って眺めて居りましたが
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すめえな」おつぎはなにかいせぬ容子ようすでいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おのれ臆断おくだんを以て理についいにしへの氷室をかいするなり。
かいせざる様子。)ええ。
いま彼方の牢路次ろうろじかどを、スウと見つけない大女の派手ッぽい姿が消えて行った。それから奥はかい兄弟が入っている大牢があるだけである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それは結構だ」とめた。梅子は、さう云ふ教育の価値を全くかいする事が出来できなかつた。にも拘はらず
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たべものにけては、中華亭ちうくわていむすめはこ新栗しんぐりのきんとんから、町内ちやうない車夫しやふ内職ないしよく駄菓子店だぐわしみせ鐵砲玉てつぱうだままで、おもむきかいしないではかないかただから、おそ朝御飯あさごはん茶漬ちやづけで、さら/\。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
このとき、おとこは、けっして、うまをしからなかったのでした。ひとり人間にんげんだけではなく、うまでも、うしでも、感情かんじょうかいするものは、しかるよりは、やさしくしたほうが、いうことをきくものです。
子供と馬の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
〔註、所謂暹羅シャムの兄弟に類する癒合双体ゆごうそうたいの生存を保ちし例は、間々ままなきにあらねど、この記事の主人公の如きは、医学上甚だかいし難き点あり。賢明なる読者は、已にある秘密を推し給いしならん〕
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
悪庄屋あくしょうやの方に毛家の女婿むすめむこがいたのは運の尽きであったようだが、ここにはかい兄弟の遠縁のひとりが牢番としていたのである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実は行徳の俎と云う語を主人はかいさないのであるが、さすが永年教師をして胡魔化ごまかしつけているものだから、こんな時には教場の経験を社交上にも応用するのである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
女房かゝあめが、風流ふうりうかいしないことおびたゞしい。そばから
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
範宴はうなずいたが、やがて、小止観しょうしかんの講義が終ると、すぐ続いて、往生要集おうじょうようしゅうかいをあたらしく始めた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)