なは)” の例文
新字:
わらちひさなきまつたたばが一大抵たいていせんづゝであつた。の一わらなはにすれば二房半位ばうはんぐらゐで、草鞋わらぢにすれば五そく仕上しあがるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
なんでも、その大女は、あたりまへの人間のせいの三倍も高くて、その髪はふといなはのやうによれて目からはほのほき出してゐる。
虹猫の大女退治 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
懸けければ此方は彌々いよ/\愕然びつくりし急に顏色がんしよく蒼醒あをざめ後の方を振返るにそれ召捕めしとれと云間も有ず數十人の捕手ふすまかげより走り出なんなく高手たかて小手になは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
親王のお首を捨て置いたと傳へられるところは、土牢を去る二十歩のところで、小藪の周圍には、七五三しめなはが繞らしてあつた。
滑川畔にて (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
そこで一同は彼をいたはりながら、彼の腰になはをゆはへつけて、万一の時はそのなはで彼を引上げるつもりで、その端を持つてゐてやりました。
金の猫の鬼 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
作男さくをとこのぢいやに委細を呑込のみこませ、四角よすみに竹を打込むから、よしずをまはり三方と屋根へくごなはで結びつけるまでもしてらひ
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
しかしをとこころすにしても、卑怯ひけふころかたはしたくありません。わたしはをとこなはいたうへ太刀打たちうちをしろとひました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
間もなく蕈も大ていなくなり理助は炭俵一ぱいに詰めたのをゆるく両手で押すやうにしてそれから羊歯しだの葉を五六枚のせてなはで上をからげました。
(新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
よしありましても、直線ちよくせんなどをほそんだもので、まへべた土器どきのように、曲線きよくせんだとかなはだとかむしろだとかのかたちしたものは見當みあたりません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
その綱は有合せの短かいなはを三本も結び合せたもので、結び目が一寸見ると男結びに似たはた結びだつたことなどが、咄嗟とつさの間に平次の注意をひきます。
与兵衛は顔色を変へて一生懸命に川岸へ走り降りましたが、その猿を縛つたなはは、堅く右の手に握つてゐました。
山さち川さち (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
またゝに、かり炭燒すみやきほふられたが、民子たみこ微傷かすりきずけないで、まつたたまやすらかにゆきはだへなはからけた。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
えぬなはにつながれてかれてゆくやうなれをば、あなたはしんところなにともおもふてくれねば、勝手かつてにしろといふふうれのこととてはすこしもさつしてくれる樣子やうすえぬ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのたのし爐邊ろばたには、ながたけつゝとおさかなかたなはとで出來できすゝけた自在鍵じざいかぎるしてありまして、おほきなおなべもの塲所ばしよでもあり家中うちぢうあつまつて御飯ごはんべる塲所ばしよでもありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あるひなはをなつたようなかたちともなり、またさいかはるようにおほきなひだつくることもある。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
なはの浦ゆ背向そがひに見ゆるおきつ島む舟は釣し(釣を)すらしも (巻三・三五七)
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ジロー博士は修道女を呼んで、ジッド夫人の手にある幾つかのレントゲン写真を年代順に並べ、それを白い壁の前に張つたなはつるさせた。言はゞ陰画の万国旗が出来たやうな形になつた。
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
甚公じんこうこのなはつてろ——屋根やね大丈夫だいじやうぶかしら?——そのゆる屋根瓦やねがはらをつけろ——ソラちるぞ!あたまうへへ!(おそろしいひゞき)——オヤだれがそんなことをしたんだ?——甚公じんこうだらう——煙突えんとつ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
彼はその文を再三柱にむちうちて、終になはの如く引捩ひきねぢりぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さらに聞き入ず否々和主達おまへたちが殺したりと云には非ず御知らせ有しは少しの災難さいなん手續てつゞきなればやむを得ず夫ともたつて止まるをいなとならばなは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すこふところ窮屈きうくつでなくなつてからはなが休憇時間きうけいじかんには滅多めつたなはふこともなく風呂ふろつてははなしをしながら出殼でがらちやすゝつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
昔天人が降つて遊んだ松原のあたりに、月のよい夜時々天から大きな釣瓶つるべなはをつけて下ろされる、それは天人が風呂をたてる水を汲むのでした。
子良の昇天 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
そのあをざめたかほうへには、たけまじつたすぎむらのそらから、西日にしびひとすぢちてゐるのです。わたしはこゑみながら、死骸しがいなはてました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
見てゐてもひや/\するやうな冒険でした。でもピチ公は、前に一度猫を置きにいつたところなので、平気でした。その上、腰にはなはがついてゐます。
金の猫の鬼 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
なはを架けられる筈もなく、松の木の下はジメジメで、死骸を取おろした人の足跡は澤山殘つて居りますが、女隱居が跣足はだしでブラ下がつて居たといふのに
大きなならの木の下に、兄さんのなはで編んだ袋が投げ出され、沢山の草たばがあちこちにころがってゐました。
種山ヶ原 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
たれ見張みはつてでもないと、危険けんのんだからつて、ちよい/\なはいてはなしてつたことが幾度いくたびもあつた。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
模樣もようはたいていなはむしろかたしつけそのうへ曲線きよくせん渦卷うづまきだとか、それに類似るいじ模樣もようがつけてありますが、ときには突出とつしゆつしたおびのような裝飾そうしよくをつけたものもあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
わたしもどりましたからは御心配ごしんぱいなくお就蓐やすみくだされと洒然さつぱりといひてとなりつまかへしやり、一人ひとりさびしく洋燈らんぷあかりに烟草たばこひて、忌々いま/\しき土産みやげをりねづみべよとこぐなはのまゝ勝手元かつてもと投出なげいだ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ばうなはが七せんまうで一そく草鞋わらぢが一せんりんといふ相場さうばだからどつちにしても一にち熱心ねつしんうごかせばかれは六七せんまうけるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
話し御油斷ごゆだんあるべからずと云ふにより又七點頭うなづき今宵こよひもし菊が來たらばわれぢきに取ておさなはを掛くべし其時其方は早々さう/\加賀屋長兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そのあと何處どこしづかだつた。いや、まだだれかのこゑがする。おれはなはきながら、ぢつとみみませてた。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
やがて、ゴムの長靴の男は、大きな四手網よつであみをもつてもどつてきました。腰にはふといなはをぶらさげてゐます。
シロ・クロ物語 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
「伜染五郎との仲を割かれた、嫁のお絹といふのが下手人ですよ。この春祝言したばかり、二十歳といふにしては初々しくて、なはを掛け乍らあつしもほろりとしましたがね」
虔十けんじふはいつもなはの帯をしめてわらってもりの中や畑の間をゆっくりあるいてゐるのでした。
虔十公園林 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
釣瓶は勢よく天へ引き上げられ、高く/\上がつたとき、どうしたはずみにかそのなはがきれて、子良は真逆様まつさかさまに地面へち、身体からだは形もないほどメチヤ/\にこはれてしまひました。
子良の昇天 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
南屋みなみや普請ふしんかゝつてるので、ちやうど與吉よきち小屋こや往來わうらいへだてた眞向まむかうに、ちひさな普請小屋ふしんごやが、眞新まあたらしい、節穴ふしあなだらけな、薄板うすいたつてる、三方さんぱうかこつたばかり、むでつないだなは
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それを、手下の者たちは上からおつかぶさつて、なはで縛りあげて、そこの岩かどに縛りつけました。
金の猫の鬼 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
なはを誰がきつたか、そんなことでもやつて見たらわかるだらうといふ思ひつきさ」
「名誉村長だ。けれども仕方ないなはをかけ申せ。」署長はわくわくして云った。
税務署長の冒険 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
わたしおぼえてからも一度いちどたれかが、なはつてやつたことがあつた。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「坊ちゃん、では少し待ってゐて下さいね。いまなはをさがしますから。」
(新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「おい、いゝ加減にしてなはをといて呉れよ。椎蕈はいくらでも高く買ふからさ。おれだってトケイにぁ妻も子供もあるんだ。こゝらへ来て、こんな目にあっちゃかなはねえ。どうか繩をといて呉れよ。」
税務署長の冒険 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
それから胸で両方からなはを結んで言ひました。
(新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)