さい)” の例文
人間のさいがあつたからである。だが、社々では、人形か仮面かを使うた処が多い。遂に人形が主神と考へられる様にもなつた。
その母は、おさいといって、やはり根は廓者さとものであったけれど、いわゆる仲之町なかのちょうの江戸前芸者で、名妓めいぎといわれたひとであったそうな。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
せよと言ひながら腰の一刀引拔ひきぬきつゝ身構みがまへなせばわるものどもは打笑ひ何の小癪こしやくあをさい息杖いきづゑとりのべ打てかゝるを此方はさわがず切拂ひ又打込を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
第一番だいいちばんに、石造皇子いしつくりのみこはずるいほうさいのあつたかたですから、註文ちゆうもんほとけ御石みいしはちりに天竺てんじくつたようにせかけて、三年さんねんばかりたつて
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
「お駒さん、しっかりするんだ。あれは、お前のあねさんのおさいだよ、玉屋小三郎たまやこさぶろうかかえ、一時は全盛をうたわれた玉紫花魁たまむらさきおいらんだ。怖がることはない」
近松ちかまつの書きました女性の中でおたねにおさい小春こはるとおさんなどは女が読んでもうなずかれますが、貞女とか忠義に凝った女などは人形のように思われます。
産屋物語 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
故郷くに靜岡しづをか流石さすが士族出しぞくでだけ人品じんぴん高尚かうしようにて男振をとこぶりぶんなく、さいありがくあり天晴あつぱれの人物じんぶついまこそ内科ないくわ助手しよしゆといへども行末ゆくすゑのぞみは十のさすところなるを
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
林太郎はことし十一さいで、小学校の五年生になっていましたが、弟も妹もなく、まったくの一つぶっ子なのでした。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
寶暦はうれきころ當城たうじやうあるじ眞田伊豆守幸豐公さなだいづのかみゆきとよぎみよはひわづかに十五ながら、さいびんに、とくたかく、聰明そうめい敏達びんたつきこたかかりける。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
與太郎とおさいは、なきながらうちの方へ歩きました。質屋の横町を曲ろうとすると、いきなり真黒まっくろいものにぶつかって、與太郎は泥溝どぶのわきへはね飛ばされました。
たどんの与太さん (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
ぬのぎれに瓦つつみてさいはかる秤器はかりの緒にはのぼされにけり (以下拾弐首さることのありける時)
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
さいの無いのに加へて、運が後足で砂と來てゐる………何うして其の計畫のあたらうはずが無い。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
チッバ あをさいどの、最初さいしょ同伴つれだって足下おぬしぢゃ、冥土あのよくも一しょにおきゃれ。
其女そのをんなさいはたらき、勉強べんきやう出来できすぐれて悧巧りこうたちであつたが、或時あるとき脊負揚しよいあげのなかゝら脱落ぬけおちたをとこふみで、其保護者そのほごしや親類しんるゐ細君さいくんかんづかれ、一学校がくかうめられて、うち禁足きんそくされてゐたが
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
紐解ひもときの賀のすんだ頃より、父親の望みで小学校へ通い、母親の好みで清元きよもと稽古けいこ生得うまれえさいはじけの一徳には生覚なまおぼえながら飲込みも早く、学問、遊芸、ふたつながら出来のよいように思われるから
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
もつと段々だん/″\話合はなしあつて見ると、五六さい時分じぶんにはおな長屋ながや一軒いつけんいた隣同士となりどうしで、なんでも一緒いつしよに遊んだ事も有つたらしいので、那様そんな事から一層いつそう親密しんみつつて、帰路かへりみちも同じでありましたから連立つれだつても帰る
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さいに身をあやまちし人のこと
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ましてまたさいある身には。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「曹操の心根には、なにがひそんでいるか知れたものではない。さいけた奸雄かんゆうの兇門へは、こっちから求めて近づかぬほうが賢明でしょう」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もっとも、このお駒というのは、妹の方で、姉はおさいといって、大変に良い縹緻きりょうだったが、一年ばかり前に死んでしまった——とこれも佐吉の話。
たう開元年中かいげんねんちうこととぞ。戸部郡こぶぐん令史れいし妻室さいしつにしてさいあり。たま/\鬼魅きみところとなりて、疾病やまひきやうせるがごとく、醫療いれうつくすといへどもこれ如何いかんともすべからず。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
したはせ今に至るまでも名奉行と言る時は只に忠相ぬし一にんとゞまるが如く思ひ大岡越前守の名は三歳の小兒といへども之をしりしきり明斷めいだんたゝへるこそ人傑じんけつさい稀世きせいの人といふ可し是等を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そのころ赤間あかませきに、法一ほういちというびわ法師ほうしがいました。この法師は生まれつきめくらでしたので、子どものときから、びわをならい、十二、三さいのころには師匠ししょうけないようになりました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
おもみちは一すぢなれと夏引なつびきの手引てびきのいとみだれぐるしきはこひなるかや優子ゆうこ元來もとよりさいはじけならず柔和をとなしけれど悧發りはつにてもの道理ことはりあきらかに分別わきまへながららきはれぬむねくもにうつ/\として
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
與太郎は妹のおさいに、デンマルクのお伽噺とぎばなしをよんできかせました。
たどんの与太さん (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
さいなさけ似ざるあまたの少女見むわれをためしに引くと聞くゆゑ
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
あめさいここににほひの美しき春をゆふべにしふゆるさずや
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
さいあまりある男なりしが
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
番頭の次ぎに呼んだのは、手代の與三松、これは二十七八の小意氣な男で、さい走つたところが妙に人を警戒させます。
「あの子供たちには、さい取りをする大人が居て、網小屋の中で、手の音をききながら加減をするんですッて」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おとなは自転車じてんしゃで一日に往復おうふくしましたが、やっと十一さいの林太郎が、それも小さな足でぽつぽつ歩いて、まだ一度も歩いたことのない道をいこうというのですから、それはずいぶんの冒険ぼうけんでした。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
小町こまちいろらふ島田髷しまだまげ寫眞鏡しやしんきやう式部しきぶさいにほこる英文和譯ゑいぶんわやく、つんで机上きじようにうづたかけれども此男このおとこなんののぞりてからずか、仲人なかうどもヽさへづりきヽながしにしてれなりけりとは不審いぶかしからずや
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
古語こごに曰く君子はあざむくべししゆべからずとはむべなるかなすべ奸佞かんねいの者に欺かるゝはおのれが心の正直しやうぢきより欺かさるゝものなりじつに其人にしてなす而已のみ其のあざむく者は論ずべからず其さい不才ふさいに依るにあらざるか爰に伊勢屋五兵衞の養子千太郎は父の病中を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さいの終りを予知するか
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
人並ひとなみさいに過ぎざる
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「番頭のさい八はちよいと男つ振りの好い三十男で、遊び好きで如才じよさいがなくて、金さへありや、新宿の大門を一と晩でも閉めて見たいといふ、のぼせた野郎で」
「だまれ、青二さいなんじらごとき者の手にかかる呂宋兵衛ではない。うかと、わが身にちかよると、このいただきから蹴落けおとして、微塵みじんにしてくれるぞ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さいあるはおほのうあるもすくなからず、容姿ようし學藝がくげいすぐれたればとて、大事だいじしやうたくすにひと見渡みわたしたる世上せじやうりやしやれたものならず、幸福かうふく生涯しやうがいおくたまみち、そもなにとせばからんかと
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
汝は、いとけなき頃より兵書を読んで、さいひいで、よく戦策を暗誦そらんじ、もまた、教うるにやぶさかでなかった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから、その從妹いとこのおさいさん、良いきりやうだけれど、あまり賢こくてよく出來て居るので、選り好みがひどくて、二十三にもなるのに、嫁の口もきまらない、白齒の娘。
久秀は六十八歳にもなっていたが、むかしから貨殖かしょくさいけ、老いても物質に、執着のつよい人だった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
阿倍川町のお母さんが、風邪かぜを引いて來られないとわかつて、從妹いとこのおさいさんがその役目を
「ふうていもかわっている、そまか、野武士のぶしか、百姓ひゃくしょうか、見当けんとうのつかぬようなあおさいだ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平次の手に捕へられた怪しの女は、踊りの師匠のおさいだつたのです。
一を聞いて十を知るというさいけた天性はその頃から見えていた。光圀が知っていたくその才を愛し、のち老女の藤井の養子にさせて小姓として側におき、順次士分しぶんに取りたてて来たものであった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、さいけた好青年でもある。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)