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ふりがな文庫
“
却
(
かへ
)” の例文
前
(
まへ
)
の
講釈
(
かうしやく
)
のと
読較
(
よみくら
)
べると、
彼
(
か
)
の
按摩
(
あんま
)
が
後
(
のち
)
に
侍
(
さむらひ
)
に
取立
(
とりたて
)
られたと
云
(
い
)
ふ
話
(
はなし
)
より、
此天狗
(
このてんぐ
)
か
化物
(
ばけもの
)
らしい
方
(
はう
)
が、
却
(
かへ
)
つて
事実
(
じゝつ
)
に
見
(
み
)
えるのが
面白
(
おもしろ
)
い。
怪力
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
だが、あんまり細工が過ぎて
却
(
かへ
)
つて傳七郎の疑ひが薄くなつたのさ。小器用な惡黨は、
大概
(
たいがい
)
しなくても宜いことをして尻尾を
掴
(
つか
)
まれる
銭形平次捕物控:154 凧の詭計
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
すべて敵に遭って
却
(
かへ
)
ってそれをなつかしむ、これがおれのこの
頃
(
ごろ
)
の病気だと私はひとりでつぶやいた。そして
哂
(
わら
)
った。考へて又哂った。
花椰菜
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
更
(
さら
)
に
猛進
(
もうしん
)
したが、
如何
(
どう
)
も
思
(
おも
)
はしくなく、
却
(
かへ
)
つて
玄子
(
げんし
)
の
方
(
はう
)
が
成功
(
せいかう
)
して、
鍋形
(
なべがた
)
の
側面
(
そくめん
)
に
小
(
せう
)
なる
紐通
(
ひもとほ
)
しのある
大土器
(
だいどき
)
が、
殆
(
ほとん
)
ど
完全
(
くわんぜん
)
で
出
(
で
)
た。
探検実記 地中の秘密:04 馬籠と根方
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
細君
(
さいくん
)
は
宗助
(
そうすけ
)
を
見
(
み
)
るや
否
(
いな
)
や、
例
(
れい
)
の
柔
(
やはら
)
かい
舌
(
した
)
で
慇懃
(
いんぎん
)
な
挨拶
(
あいさつ
)
を
述
(
の
)
べた
後
(
のち
)
、
此方
(
こつち
)
から
聞
(
き
)
かうと
思
(
おも
)
つて
來
(
き
)
た
安井
(
やすゐ
)
の
消息
(
せうそく
)
を、
却
(
かへ
)
つて
向
(
むか
)
ふから
尋
(
たづ
)
ねた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
自殺は自ら殺すものにして人に害を与ふるものならず、人は之を
尚
(
たふと
)
ぶべきに、
却
(
かへ
)
つて人を害したる後に自ら殺すを快とす、奇怪なるかな。
復讐・戦争・自殺
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
將軍家のお聲懸りの利章を、忠之はどうすることも出來ぬが、
豫
(
かね
)
て
懷
(
いだ
)
いてゐた惡感情は消えぬのみか、
却
(
かへ
)
つて募るばかりである。
栗山大膳
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
たゞ
宿酔
(
しゆくすゐ
)
猶
(
なほ
)
残つて眼の中がむづゝく人もあらば、羅山が詩にした大河の水ほど淡いものだから、
却
(
かへ
)
つて胃熱を洗ふぐらゐのことはあらうか。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼
(
あ
)
の
可愛
(
かあい
)
らしい手を出して
膝
(
ひざ
)
の
下
(
した
)
を
撫
(
なで
)
て
遣
(
や
)
つて
居
(
ゐ
)
る、あゝ/\
可愛
(
かあい
)
い
児
(
こ
)
だ、
今
(
いま
)
のう
良
(
よ
)
い
薬
(
くすり
)
を
遣
(
や
)
るよ、……
煙草
(
たばこ
)
の
粉末
(
こな
)
ぢやア
却
(
かへ
)
つて
可
(
い
)
けない
大仏餅。袴着の祝。新まへの盲目乞食
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
(le samourai)されどその絹の白と漆と
金
(
きん
)
とに
彩
(
いろど
)
られたる世界は、
却
(
かへ
)
つて是
縹渺
(
へうべう
)
たるパルナシアンの夢幻境のみ。
骨董羹:―寿陵余子の仮名のもとに筆を執れる戯文―
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
因つて
疑
(
うたが
)
ふ、孔子
泰山
(
たいざん
)
の歌、後人
假託
(
かたく
)
之を
爲
(
つく
)
れるならん。
檀弓
(
だんぐう
)
の信じ
叵
(
がた
)
きこと此の類多し。聖人を尊ばんと欲して、
却
(
かへ
)
つて之が
累
(
るゐ
)
を爲せり。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
それも、かれが深く恋したやさしい涙を含んだ眼の方を思ひ出さずに、
却
(
かへ
)
つてそれを思ひ出したといふことが不思議であつた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
ば
却
(
かへ
)
つて我等に
塗付
(
ぬりつけ
)
んと
當途
(
あてど
)
もなき
事
(
こと
)
言散し若年ながらも
不屆至極
(
ふとゞきしごく
)
重
(
かさ
)
ねて口を
愼
(
つゝし
)
み給へ若き時より氣を付て惡き
了簡
(
れうけん
)
出さるゝな
親々達
(
おや/\たち
)
に氣を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
旧
(
むかし
)
に返し得べき未練の吾に在りとや想へる、愚なる精衛の
来
(
きた
)
りて
大海
(
だいかい
)
を
填
(
うづ
)
めんとするやと、
却
(
かへ
)
りて
頑
(
かたくな
)
に自ら守らんとも為なり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
が、かうして、忘れよう/\と努力して、それを忘れて
了
(
しま
)
つたら、
却
(
かへ
)
つてどうにも出来ない空虚が、
俺
(
おれ
)
の心に出来て了つた。
良友悪友
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
⦅大抵な人は一度斯ういふ目に會ふと
懲
(
こ
)
りるものだが、梅龍は一向平氣なものである。これから
却
(
かへ
)
つて水が好きになつたと言ふのだから驚く。
梅龍の話
(旧字旧仮名)
/
小山内薫
(著)
初期微動
(
しよきびどう
)
は
主要動
(
しゆようどう
)
に
比較
(
ひかく
)
して
大
(
だい
)
なる
速
(
はや
)
さを
持
(
も
)
つてゐるが、
然
(
しか
)
しながら
振動
(
しんどう
)
の
大
(
おほ
)
いさは、
反對
(
はんたい
)
に
主要動
(
しゆようどう
)
の
方
(
ほう
)
が
却
(
かへ
)
つて
大
(
だい
)
である。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
通りがゝりの橋の上から眺めやると、雨あがりの晴れた空と日光の
下
(
もと
)
に、或時は
却
(
かへ
)
つて一種の壮観を呈してゐる事がある。
水 附渡船
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
ちやんと大きな計算に合つた特別サービスで、
却
(
かへ
)
つて日常サービスの通俗小説の粗悪さを裏書きしてゐるやうなものだ。
百万人のそして唯一人の文学
(新字旧仮名)
/
青野季吉
(著)
彼
(
かれ
)
は
微笑
(
びせう
)
を
以
(
もつ
)
て
苦
(
くるしみ
)
に
對
(
むか
)
はなかつた、
死
(
し
)
を
輕蔑
(
けいべつ
)
しませんでした、
却
(
かへ
)
つて「
此
(
こ
)
の
杯
(
さかづき
)
を
我
(
われ
)
より
去
(
さ
)
らしめよ」と
云
(
い
)
ふて、ゲフシマニヤの
園
(
その
)
で
祈祷
(
きたう
)
しました。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
されば真の宗教家は
是等
(
これら
)
のものに於て神の矛盾を見ずして
却
(
かへ
)
つて深き恩寵を感ずるのである。(善の研究——四の四)
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
あまり平凡のもののやうに、番頭に云はれて私は
却
(
かへ
)
つて
面喰
(
めんくら
)
つたが、買ふ段になると、どんな風な計算で買ふものか、私にはまるきり観念がなかつた。
イボタの虫
(新字旧仮名)
/
中戸川吉二
(著)
此頃
(
このごろ
)
の
巴里
(
パリイ
)
はよく深い霧が降る。
倫敦
(
ロンドン
)
の霧は陰鬱だと聞くが、
冬曇
(
ふゆぐもり
)
の続く
巴里
(
パリイ
)
では
却
(
かへ
)
つて
此
(
この
)
霧が変化を添へて好い。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
『でも、あの
樣
(
やう
)
に
澤山
(
たくさん
)
乘
(
の
)
つては
端艇
(
たんてい
)
も
沈
(
しづ
)
みませうに。』といふ、
我身
(
わがみ
)
の
危急
(
あやうき
)
をも
忘
(
わす
)
れて、
却
(
かへ
)
つて
仇
(
あだ
)
し
人
(
ひと
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
氣遣
(
きづか
)
ふ
心
(
こゝろ
)
の
優
(
やさ
)
しさ、
私
(
わたくし
)
は
聲
(
こゑ
)
を
勵
(
はげ
)
まして
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
獨り
小尼公
(
アベヂツサ
)
に至りては、我友情を催すこと極て深きに、われは
却
(
かへ
)
りて又我慾念のこれが爲めに抑へらるゝを覺えき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
下町の物価の高い事、風俗の派手になつた事、三軒が三軒見て来た芝居の木戸留であつた事、
秩父縞
(
ちゝぶじま
)
の月賦売が
却
(
かへ
)
つて格安の事や何かを話して聞かせる。
茗荷畠
(新字旧仮名)
/
真山青果
(著)
そして、それをまた
實
(
まこと
)
と
思
(
おも
)
はう。でも
誓言
(
せいごん
)
などなされると(
却
(
かへ
)
って)
心元
(
こゝろもと
)
ない、
戀人
(
こひゞと
)
が
誓言
(
せいごん
)
を
破
(
やぶ
)
るのはヂョーヴ
神
(
じん
)
も
只
(
たゞ
)
笑
(
わら
)
うてお
濟
(
す
)
ましなさるといふゆゑ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
早熱早冷の大に
誡
(
いま
)
しむべきは
寧
(
むし
)
ろ戦呼に勇む今の時に非ずして、
却
(
かへ
)
りて戦後国民の覚悟の上にあるべくと存候。
渋民村より
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「晴ちやんがさう思ふなら、別れきりでなしに、当分別れてみるのも、
却
(
かへ
)
つて緑さんのためかも知れないよ。」
のらもの
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
事
(
こと
)
に
依
(
よ
)
つたら、
主
(
しゆ
)
の
君
(
きみ
)
も、それをお
知
(
し
)
りにならうとなさらないのだらう。
時
(
とき
)
に、あの
子供
(
こども
)
たちも
名
(
な
)
が
無
(
な
)
いやうだ。
主
(
しゆ
)
の
君
(
きみ
)
は
却
(
かへ
)
つて
其方
(
そのはう
)
が
好
(
い
)
いと
仰有
(
おつしや
)
るだらう。
浮浪学生の話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
成程
(
なるほど
)
さう
言
(
い
)
へば
何處
(
どこ
)
か
固拗
(
かたくな
)
のところもあるが、
僕
(
ぼく
)
の
思
(
おも
)
ふには
最初
(
さいしよ
)
は
頑固
(
ぐわんこ
)
で
行
(
や
)
つたのながら
後
(
のち
)
には
却
(
かへ
)
つて
孤獨
(
こどく
)
のわび
住
(
ずま
)
ひが
氣樂
(
きらく
)
になつて
來
(
き
)
たのではあるまいか。
都の友へ、B生より
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
「どう
仕
(
つかまつ
)
りまして。」『日本近世史』上巻の著者は記録の一杯に詰まつた頭を叮嚀に下げた。「
甚
(
はなは
)
だ軽少で
却
(
かへ
)
つて失礼ですが、どうかお納め下さいまして。」
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
エミリアンはじろじろ三人の様子を
眺
(
なが
)
めました。そして盗賊だとわかつてしまふと、
却
(
かへ
)
つて
落付
(
おちつ
)
きました。
エミリアンの旅
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
「
耶蘇教
(
ヤソけう
)
で葬式をすると、
却
(
かへ
)
つて輕便で神聖でえゝがな。勝はお經も嫌ひだし
黒住
(
くろずみ
)
のお
祓
(
はら
)
ひも嫌ぢや。」
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
「私は今は、云ふ事が澤山ありすぎて、
却
(
かへ
)
つて云はれません。何れ手紙で云ひます。あとからすぐ。」
計画
(旧字旧仮名)
/
平出修
(著)
生命
(
いのち
)
綱を
曳
(
ひ
)
いてゐて、大へん自由が妨げられてゐますから、下手に走つたりなぞすると、管が切れたり、綱が何かにからみついたりして、
却
(
かへ
)
つて生命が危ないのです。
動く海底
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
私
(
わたし
)
のやうな
表
(
おもて
)
むきの
負
(
ま
)
けるぎらひは
見
(
み
)
る
人
(
ひと
)
の
目
(
め
)
からは
淺
(
あさ
)
ましくもありましやう、つまらぬ
妻
(
つま
)
を
持
(
も
)
つたものだといふ
感
(
かん
)
は
良人
(
をつと
)
の
方
(
はう
)
に
却
(
かへ
)
つて
多
(
おほ
)
くあつたので
御座
(
ござ
)
りましやう
この子
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「僕と秋子さんの間のゴタ/\なぞは……さう周囲で考へるほどの大した事ではなかつたのです。
却
(
かへ
)
つて周囲で——僕の両親もですが、——大きくした形だと思ふのです」
愚かな父
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
洋々
(
やう/\
)
たるナイル
河
(
かは
)
、
荒漠
(
くわうばく
)
たるサハラの
沙漠
(
さばく
)
、
是等
(
これら
)
は
大
(
おほい
)
に
化物思想
(
ばけものしさう
)
の
發達
(
はつたつ
)
を
促
(
うなが
)
した。
埃及
(
えじぷと
)
の
神樣
(
かみさま
)
には
化物
(
ばけもの
)
が
澤山
(
たくさん
)
ある。
併
(
しか
)
し
之
(
これ
)
が
希臘
(
ぎりしや
)
へ
行
(
い
)
くと
餘程
(
よほど
)
異
(
ことな
)
り、
却
(
かへ
)
つて
日本
(
にほん
)
と
似
(
に
)
て
來
(
く
)
る。
妖怪研究
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
明治の文学史は我所謂才子に負ふ所多くして彼の学者先生は
却
(
かへ
)
つて為す所なきは之が為なり。
明治文学史
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
却
(
かへ
)
つて旋頭歌の上に移つて来て「57・7・57・7」又は「57・7・577」或は「57・75・77」となり、遂には「5・77・577」と言つた句法まで出来て行つた。
短歌本質成立の時代:万葉集以後の歌風の見わたし
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
「うんにや、家にをらんでも
好
(
え
)
え、僕がよそへ行けば家では
却
(
かへ
)
つて都合が好えのさ。」
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
私の空想力は
却
(
かへ
)
つて敏活に働くものの如く、実に次のやうな断定へと急いで行つた——
アリア人の孤独
(新字旧仮名)
/
松永延造
(著)
此の家
賤
(
あや
)
しけれど、おのれが親の
五〇
目かくる男なり。
五一
心ゆりて雨
休
(
や
)
め給へ。そもいづ
地
(
ち
)
旅の御
宿
(
やど
)
りとはし給ふ。御見送りせんも
却
(
かへ
)
りて
無礼
(
なめげ
)
なれば、此の
傘
(
かさ
)
もて出で給へといふ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
(をかしいな?)と思つて、主人に小松さんのことをきいてみると、なんのことはない、小松さんは御褒美をもらつたどころか、
却
(
かへ
)
つて御褒美を出させられてかへつたといふのである。
駒台の発案者
(新字旧仮名)
/
関根金次郎
(著)
その落着き払つたやうな、ちつとも情味の
籠
(
こも
)
らないやうな、冷静な妻の態度が
却
(
かへ
)
つて怒りを募らして、彼は妻の眼の前で子供をつるし切りにして見せてやりたい程
荒
(
すさ
)
んだ気分になつた。
An Incident
(新字旧仮名)
/
有島武郎
(著)
まあせめて毎日の
物費
(
ものい
)
りでも少くなるやうにと思つて、自分の事のやうにつましくやつて来たつもりですが、どうもそれが
却
(
かへ
)
つて青木さんのお気に入らないやうな場合がありましてね。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
それは、その頃まで道助の周囲を取り
捲
(
ま
)
いてゐた空気の明暗をよく呑込んだ言葉だつた。然しそれを聞くと、道助は
却
(
かへ
)
つて自分の気持ちが妙に
硬
(
こは
)
ばるのを感じた。で彼は窓の外へ眼をやつた。
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
暗い
瞑想
(
めいさう
)
に
耽
(
ふけ
)
つてぐづ/\と日を送つてゐる彼には、最初この家の陰気で静かなのが
却
(
かへ
)
つて気安く感じられたのであつたが、それもだん/\と暗い、なやましい圧迫に変つてゐるのであつた。
哀しき父
(新字旧仮名)
/
葛西善蔵
(著)
その草屋根を焦点としての視野は、実際、何処ででも見出されさうな、平凡な
田舎
(
ゐなか
)
の横顔であつた。
而
(
しか
)
も、それが
却
(
かへ
)
つて今の彼の心をひきつけた。今の彼の憧れがそんなところにあつたからである。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
却
常用漢字
中学
部首:⼙
7画
“却”を含む語句
却説
退却
忘却
冷却
返却
困却
滅却
売却
却々
閑却
脱却
破却
却而
却歩
却下
沒却
没却
擲却
砍却
却〻
...