まで)” の例文
そんな、苦心談でもって人を圧倒してまで、お義理の喝采かっさいを得ようとは思わない。芸術は、そんなに、人に強いるものではないと思う。
自作を語る (新字新仮名) / 太宰治(著)
「御公儀御政道を誹謗する不届者は言うまでもない、いささかたりとも御趣意に背く奴等は用捨ようしゃはならぬぞ、片っ端から搦め捕ってしまえ」
礫心中 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
しかし上流階級はいうまでもなく中流階級までも支那を日本よりも格段に文化国であり強大国であると思い込んでいたこの時代に於て
日本上古の硬外交 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
までそれを知りながら放って置いたのは自分の手ぬかりであったように貞之助は感じたが、何を云うにも最近に始まったことなので
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ましてや石は君が代の国歌にもある通り、さざれ石のいわおとなるまでには、非常に永い年数のかかるものと考えられていたのであります。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
しばらくのあひだまつた法廷ほふていうへしたへの大騷おほさわぎでした。福鼠ふくねずみしてしまひ、みんながふたゝ落着おちついたときまでに、料理人クツク行方ゆきがたれずなりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
東京から銚子までにさえ相当距離がある上に、銚子で汽車を降りてから屏風浦付近の小さな町迄の間がこれ又案外の交通不便と来ている。
花束の虫 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
所は奈良で、物寂ものさびた春の宿にの音が聞えると云う光景が眼前に浮んでまでこれにふけり得るだけの趣味を持って居ないと面白くない。
高浜虚子著『鶏頭』序 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かゝるおそろしい現象げんしようはこれまでみぎのプレー噴火ふんか經驗けいけんせられたのみであつて、其他そのた火山かざんおいてはいまだかつて經驗けいけんされたことがない。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
真鶴まなづるから湯河原までの軽便の汽車の中でも、駅から湯の宿までの、田舎馬車の中でも、信一郎の頭は混乱と興奮とで、一杯になっていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
もうこれまでです。男の血は槍や鳶口とびぐちや棒やすきくわを染めて、からだは雪に埋められました。検視の来る頃には男はもう死んでいました。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これまでは自宅で療養していたが、この時は父が死亡して落魄らくはくの折だから三等患者として入院し、更に又公費患者に移されていた。
(新字新仮名) / 坂口安吾(著)
落ちる場処ばしょはだんだん遠方になり、例えば日本から打ち出したものが支那しなまでとどき、もっと強ければ支那しなを超えてヨーロッパまでもゆき
ニュートン (新字新仮名) / 石原純(著)
文字通りの熱狂ねっきょう的な歓送のなか、名も知られぬぼくなどにまで、サインをたのみにくるおじょうさん、チョコレェトや花束はなたばなどをくれる女学生達。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
勿論もちろん今日こんにちおいても潜水器せんすいき發明はつめいいま充分じゆうぶん完全くわんぜんにはすゝんでらぬから、この手段しゆだんとて絶對的ぜつたいてき應用おうようすること出來できぬのはまでもない。
以て此段申上奉り候明日は吉日に付御親子しんし對顏たいがんの御規式ぎしきを御取計ひ仕り候もつと重役ぢうやく伊豆守越前役宅まで參られ天一坊樣へ御元服げんぷく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
もう是処こゝ沢山たくさんだ——わざ/\是処まで来て呉れたんだから、それでもう僕には沢山だ。何卒どうか、君、生徒を是処こゝで返して呉れ給へ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
達二はどこまでも夢中で追ひかけました。そのうちに、足が何だか硬張こはばって来て、自分で走ってゐるのかどうかわからなくなってしまひました。
種山ヶ原 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
妻はこれまで園遊会や何ぞで磯貝に引き合はせて置いたのであるから、妻の附いて行つた方が、好都合であらうと思つて、さうしたのである。
魔睡 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
およ本年ほんねんの一ぐわつすぎには解禁後かいきんご推定相場すゐていさうばである四十九ドルぶんの一乃至ないし四十九ドルぶんの三まで騰貴とうきすることはたしか算定さんてい出來できたのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
だが、笑うと今まで彼のなかに張りつめていたものがかすかにほぐされた。だが、ほぐされたものはたちまち彼からすべり墜ちていた。
死のなかの風景 (新字新仮名) / 原民喜(著)
四六ばんから四六ばいの雑誌にうつまでには大分だいぶ沿革えんかくが有るのですが、今はく覚えません、印刷所いんさつじよ飯田町いひだまち中坂なかさか同益社どうえきしやふのにへて
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
下女下男までも胸が悪くて御飯ごはんべられないと訴える。れの中でヤット妙な物が出来たは出来たが、のような物ばかりで結晶しない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「外の涼しい風に当つたら気がつくから、今のうちに外に出してくれ。」と、院長の蜂は尺取虫に命令して、今までもじ/\と立つてゐた芋虫に
こほろぎの死 (新字旧仮名) / 村山籌子(著)
までほゞ千回の連絡をとったうち、(それが全部街頭ばかりだったが)自分から遅れたのはたった二回という同志だった。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
しかるに醫學博士いがくはかせにして、外科げくわ專門家せんもんかなるかれちゝは、斷乎だんことしてかれ志望しばうこばみ、かれにして司祭しさいとなつたあかつきは、とはみとめぬとまで云張いひはつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
神の台前に出ることに何の関係もないことです、教会の皆様を思ふ私の愛情は、すこしも変はることが出来ないです、老女おばさんは何時いつまでも老女さんです
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「一詩箋しせん後便までに社中の者どもに書かせ差上げ申す可く候。よろづ後便に申しもらし候。頓首とんしゅ。春道様。四月二十日。藍。」
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
途中とちゆう一晩ひとばんとまつたといふやうなことをいつて勘次かんじこゝろせはしくまで理由わけをいはなかつた。勘次かんじやうやくおしなたのまれてたのだといふことをつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
邸内の見廻りは、無駄骨折と分ったので、止してしまい、ただ福田氏の気休めに、泊っているというまでの事である。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「ぢや御客様にはえらい失礼だが、わしあ馬を起しに行つて来るだあから、お前は御客様を奥に通して、行輔が帰つて来るまでゆつくり御休ませ申して置け」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
弟はめぐり合せがわるく、これまで転々と職業を変えて、この節はそれでも千住のゴム会社に勤めているが、衣川は去年から職を失って、ぶらぶらしていた。
秘められたる挿話 (新字新仮名) / 松本泰(著)
この長旅ながたびのはてに、君がわが胸に達し給ひしか。わが身の内にある代々の人々よりこの我に至るまで、一齊に呼ばはりて、君を祝福されたる者と仰ぎ奉る。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
までのゆきがかりで、広海屋とどこまでも同体せねばならず、また二人心を合わせた方が、望みを果すに便利だとは思うものの、この場合、何とかして
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
それがひどくなると、武道伝来記に出て来る乙見滝之進のやうな、雷の畏怖から悲劇にまで発展することがあり
雷談義 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
青山小町とまでうたわれた娘を、こんなむごい目にわしやがった奴を、おめおめ生かしておくもんじゃねえ。
たいてい午後かられじぶんまでなのでお紋とはかけ違うことが多かった、老人はすっかり気が合ったとみえ、足の痛風がやむとか腰が痛いとか云っては仕事を休み
野分 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
大正六年十月十五日 帰省中風早かざはや柳原西のに遊ぶ。風早西の下は、余が一歳より八歳まで郷居せし地なり。家むなしく大川の堤の大師堂のみ存す。其堂の傍に老松あり。
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
つかねてまでことで、醫者いしやびますにも、はぬとふので、大層たいそうあはてました。
だう書附かきつけには故将堂こしやうだうとあり、おほきわづか二間四方許にけんしはうばかり小堂せうだうなり、本尊ほんぞんだにみぎごとくなれば、此小堂このせうだう破損はそんはいふまでもなし、やう/\にえんにあがりるに、うちほとけとてもなく
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
唯その特色は、それがはつきりした形をとるまでは、それ自身になり切らないと云ふ点でせう。でせうではない。正にさうです。この点だけはほかの精神活動に見られません。
五彩で美々びびしかきじどんがよかろ。そいでん、狩人かりうどどんに見つかってしまえば、それまでの命じゃ
南方郵信 (新字新仮名) / 中村地平(著)
後の、近所の噂は尾鰭おひれが付いて、テンヤワンヤだ。足袋屋の主人あるじは、其長屋の家主なので、一応調べの上、留め置かれた。辰公の参考人として取調べられたのは申すまでも無い。
越後獅子 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
アヽ是を見ればこそ浮世話も思いの種となって寝られざれ、明日は馬籠峠まごめとうげ越えて中津川なかつがわまで行かんとするに、く休まではかなわじと行燈あんどん吹き消しを静むるに、又してもその美形
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
こんな男にいつまでついて居るでもあるまいと思つて、ていよく此方こつちからお暇を貰つて来た。
「それで、よしと言って、お前に隠れ蓑を返してしまったら、それ切りお前がげてしまって、帰って来なければそれまでじゃないか? そんなことで俺をだまそうとしたって……」
蕗の下の神様 (新字新仮名) / 宇野浩二(著)
源「どうかお手打のところは御勘弁を願います、へい又何者にかだまされましたか知れませんから、とくと源助が取調べ御挨拶を申上げまするまでお手打の処はお日延ひのべを願いとう存じます」
基督きりすと兵卒へいそつなり、兵卒は其時そのとききたまでなにをなすべきかを知らず、しゆめいならん乎、高壇かうだんつ事もあるべし、官海くわんかいたうずるやもはかられず、基督信者は目的もくてきなき者なり
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
ブーロウニュの森の一処ひとところをそっくり運んで来たようなショーウインドウを見る。枯れてまでどこまでもデリカを失わないの葉のなかへ、スマートな男女散策さんさくの人形を置いたりしている。
巴里の秋 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
かかる深山に入りてみやびたるわざに心をこらす少女の心のうちを思うにいとなつかしく今までただいとわしき者にのみ思いし外国人の中にかかるやさしきもありけるよと心にくき事限りなし。
滝見の旅 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)