かんがへ)” の例文
草花さうくわも蝶に化する事本草ほんざうにも見えたり。蝶の和訓わくんをかはひらこといふは新撰字鏡しんせんじきやうにも見えたれど、さかべつたうといふ名義みやうぎいまだかんがへず。
氣樂きらくかんがへで、參禪さんぜんしてゐるひともあるとおもふと、宗助そうすけ多少たせうくつろいだ。けれども三にんわかれ/\に自分じぶんへやはひとき宜道ぎだう
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たとへばすみ別室べつしつ藥局やくきよくてやうとふには、わたくしかんがへでは、少額せうがく見積みつもつても五百ゑんりませう、しかあま不生産的ふせいさんてき費用ひようです。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
一同いちどう詮方せんかたなく海岸かいがんいへかへつたが、まつたえたあとのやうに、さびしく心細こゝろぼそ光景くわうけい櫻木大佐さくらぎたいさ默然もくねんとしてふかかんがへしづんだ。
此意味における専用語の意味を説明すると共に、発展の路において、経て来た異なる意味の用ゐ方をも、示したいかんがへである。
和歌批判の範疇 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
さてまた此大したお金を何ぞいことにつかたいと思ふにつけ、さき/\のかんがへが胸のうちに浮んで来ましたが、いづれも夢か幻のやうくうな考へでした。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
人々は平八郎にせまつて所存しよぞんを問うたが、たゞ「いづれまぬかれぬ身ながら、少しかんがへがある」とばかり云つて、打ち明けない。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
我が家に歸り熟々つく/″\かんがへけるにもし返濟へんさいせぬならば明日又々明長屋へ入れらるべし如何致したれば宜しからんとこまり居るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私たちは、そんなきたないかんがへから出立したのではありません、金なぞは一さいもらはない条件ならばおひきうけしますと、二人はふりかへつて言ひました。
パナマ運河を開いた話 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
(中略)向ふ三四年間は或程度までの金を作る為め雇人として働き、その間は多少読書もし、至つて平静(今までは余りに落付かなかつた)な生活を送るかんがへに候。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
第九期まで有つて十期の無いのははなは勘定かんじやうが悪いから、是非ぜひ第十期をつくりたいとかんがへも有るので
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ふところねむつた與吉よきちさわがすまいとしてはあししびれるので幾度いくど身體からだをもぢ/\うごかした。やうや風呂ふろいたときはおしな待遠まちどほであつたので前後ぜんごかんがへもなくいそいで衣物きものをとつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
けられるならばけるがよろしいとかんがへからして、短期期限附たんききげんつき金解禁きんかいきん發表はつぺうしたのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
おもひなしか一ツ一ツ伸縮のびちゞみをするやうなのをるからとほくなつて、其時そのとき不思議ふしぎかんがへきた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたくしかんがへでは今日こんにち學生がくせいものをしゆるにしても、一をしへてわすれたところがあれば、再度さいどをしへる、またわすれたところがあればまたをしへるといふやうな教授法けうじゆはふでは中々なか/\成効せいかう覺束おぼつかないとおもひます。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
外国語で自分のかんがへをのべたとか、創作をしたとかいふのは随分西洋にもあるが、私は寡聞にして、まだ自国のものを他国語に訳したといふ例を、外国の文学上で耳にした事がない。
翻訳製造株式会社 (新字旧仮名) / 戸川秋骨(著)
肥つた男はたゞころげるだけで、怪我けがもしないで、得ばかりしてゐるんです。こんどは何かよい工夫はないものかと、いろいろ相談しました。がどうも、うまいかんがへがうかびません。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
こんな宿命的なかんがへにも誘はれた。私は急に老人としよりじみた心持をいだくやうになつた。
愛は、力は土より (新字旧仮名) / 中沢臨川(著)
『自然らしさを持つてゐない人は、芸術家になるといふやうなかんがへを持つな』と。
小説新論 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
「しかし、その時わたしは自分のかんがへが、あやまつてゐるのが解りました。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
左樣さういふてれねばうれしうい、流石さすがをとこぴき、そのくらゐかんがへつてれるであらう、るほどるほどと面白おもしろくも默頭うなづきやうをくさ、美尾みをかゝさんそのやうなことふてくださりますな
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今からかんがへればよくもあんな事が出来たものだ。
学生時代の久米正雄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
しかるにはうとのぞみは、つひえずたちまちにしてすべてかんがへ壓去あつしさつて、此度こんどおも存分ぞんぶん熱切ねつせつに、夢中むちゆう有樣ありさまで、ことばほとばしる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
着物きものやすさんのふるいのや、貴方あなたのをなほしてげたら、うかなるでせう」と御米およねへた。じつ宗助そうすけにもんなかんがへが、多少たせうあたまかんでた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此處こゝ地球上ちきゆうじやういづれのへんあたつてるだらうと、二人ふたりくびひねつてたがすこしもわからない。武村兵曹たけむらへいそうかんがへでは。
いや先刻せんこくかんがへがあるとは云つたが、別にかうとまつた事ではない。お前方二人は格別の間柄だから話して聞かせる。おれは今暫く世の成行なりゆきを見てゐようと思ふ。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
私は始めてホツト息をつき、下駄げたはいづれ其中そのうちに買はうと自分ながら気安めなかんがへをして居り升た。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
あのあたりへ、夕暮ゆふぐれかねひゞいたら、姿すがたちかもどるのだらう、——とふともなく自分じぶん安心あんしんして、益々ます/\以前もとかんがへふけつてると、ほだくか、すみくか、谷間たにまに、彼方此方かなたこなた、ひら/\
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かね硯友社けんいうしや年代記ねんだいきを作つて見やうとかんがへつてるのでありますが、書いた物は散佚さんゐつしてしまふし、あるひ記憶きおくから消え去つてしまつた事実などが多いために、とても自分一人ひとりふでるのでは
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
到底徹底したかんがへを持つことは出来ないものである。
スケツチ (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
つてつてらうかといふ一寸ちよつとおこるやいなや、そりや五六年前ねんぜんことだとかんがへあとからて、折角せつかく心持こゝろもちおもつきをすぐして仕舞しまつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
くまでも昨日きのふしき懊惱なやみ自分じぶんからはなれぬとしてれば、なにわけがあるのである、さなくていまはしいかんがへ這麼こんな執念しふね自分じぶん着纒つきまとふてゐるわけいと。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しかし一歩々々危険な境に向つて進むのだと云ふかんがへが念頭を去らぬので、先に立つて行く養父の背を望んで、驚異の情の次第に加はるのを禁ずることが出来ない。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
はて艇舷ふなべり材木ざいもくでも打碎うちくだいて、にしてまんかとまで、馬鹿ばかかんがへおこつたほどで、つひれ、船底ふなぞこまくらよこたはつたが、その空腹くうふくため終夜しうやねむこと出來できなかつた。
母は思ひがけなくはいつた邪魔ものを、どうかして放りださうと思ふよりほかかんがへもなく
鼻で鱒を釣つた話(実事) (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
取留とりとめのないかんがへうかんだのもひと知死期ちしごちかづいたからだといた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
三千代みちよさん。どうです、わたしかんがへは。随分呑気のんきいでせう。賛成しませんか」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)