にく)” の例文
新字:
色は君子のにくむところにして、佛も五戒のはじめに置くといへども、流石に捨てがたき情のあやにくに哀なるかた/″\も多かるべし。
芭蕉 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
アポロン琴を彈じ歌をうたひてこれに勝ち、その僭上をにくむのあまりこれが身の皮を剥ぐ(『メタモルフォセス』六・三八二以下參照)
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
平常つね美登利みどりならば信如しんによ難義なんぎていゆびさして、あれ/\意久地いくぢなしとわらふてわらふてわらいて、ひたいまゝのにくまれぐち
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ここに天皇悔い恨みたまひて、玉作りし人どもをにくまして、そのところをみなりたまひき。かれことわざに、ところ得ぬ玉作りといふなり。
縱令よしや色は衰ふとも、才情はむかしのまゝなるべし。かへす/″\もにくむべきはベルナルドオが忍びて彼ざえ彼情を棄てつるなる哉。
目の見えにくい祖母は、變な方に向いてしよんぼりと坐つてゐる。自分が耳に口を寄せて物をいふまでは自分が來た事が別らないのであつた。
胡瓜の種 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
醉へば醉ふ程おしやべりになるおつさんは、長すぎてあつかひにくい舌で上下うへしたの唇をなめながら、くどくど繰返して自慢をする。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
手振り身振りのあざやかさと、眼鼻立めはなだちのキリヽとして調とゝのつたのとは、町中の人々を感心さして、一種のそねみとにくしみとを起すものをすら生じた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
此事このことをつぎのようにもいふ。すなはきゆう振動しんどうは、其勢力そのせいりよく中間ちゆうかん媒介物ばいかいぶつ吸收きゆうしゆうされやすく、ゆるやかなものはそれが吸收きゆうしゆうされにくい。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
彼れは努めてもとの冷靜にかへらうとしてゐたが手の震へをとゞめる事が出來なかつた。夫れを人々に知られるのをにくんだ。
実験室 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
「お半。——お前は言ひにくからう。——人殺しよりもつと恥かしい事をしたんだから、——だが、それぢや濟むまいぜ」
諸外國しよぐわいこく事情じじやうこと/″\あたまなかれてかんがへなければならぬのであつて、もつと見通みとほしのにくいものである。それでつね商賣人しやうばいにんるゐきたすものである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
我輩固より此亂臣賊子の罪をゆるすに非ず、之をにくみ之を責めて止まずと雖ども、は唯我々臣子の分に於て然るのみ。
帝室論 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
亞尼アンニーは、いまは、眞如しんによ月影つきかげきよき、ウルピノ山中さんちうくさいほりに、つみもけがれもなく、此世このよおくつてことでせうが、あのにくむべき息子むすこ海賊かいぞくは、矢張やはり印度洋インドやうなみまくら
〔譯〕匿情とくじやう愼密しんみつる。柔媚じうび恭順きようじゆんに似る。剛愎がうふく自信じしんに似る。故に君子はなる者をにくむ。
夫婦ふうふになつてるのがにくらしいつて、いしあたまられるおそれは、まあいですからね。しかも双方さうはうともに二十ねんも三十ねん安全あんぜんなら、まつた御目出おめでたいにちがひありませんよ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
忍びたる不忠ふちう不義ふぎ曲者くせものなり又汝等が兄喜内は善惡ぜんあく邪正じやしやうわかちなくしたしきを愛しうときをにくまことに國をみだすの奸臣かんしんなる故我うち取て立退たちのきしを汝等は愚昧ぐまいなれば是をさとらず我を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そばにゐたものぐに院長ゐんちやう人間にんげん紹介せうかいした、猶且やはりドクトルで、なんだとかとふポーランドのにくまちから三十ヴエルスタばかへだゝつてゐる、育馬所いくばしよもの
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
俄羅斯オロシアの人ツルゲニエフ小説喧嘩買けんくわがひ、Bretojór をあらはす。獨逸の人ヰルヘルム・ランゲ其文を讀みて作者が喧嘩買をにくみながらもあへて一貶辭へんじさしはさまざるを稱へて止まず。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
少年こどもながらも自分じぶん人氣にんきといふものをにくんでた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ヘルマー けれども編物となると、どうも見にくい。
人形の家 (旧字旧仮名) / ヘンリック・イプセン(著)
何をにくしと追ひらむ。
北村透谷詩集 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
この對話の間、女あるじは我等に酒をすゝめて、ジエンナロの慣々なれ/\しきをもにくむ色なく、尚暫く無邪氣なる應答をなし居たり。
「申上げにくいことだが、——一人は奧方の御憎しみを受けて自害じがいし、一人は不義の疑ひがあつて、御成敗を受けたよ」
支店長にその事を話して、途中で買つて穿きかへる方がいゝかしらとも思つたが、何となくいひ出しにくくて、新地の茶屋に着くまで愚※々々になつてしまつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
なに親父おやぢだいから贔屓ひいきにしてつてるものですから、時々とき/″\なんだつてつてるんです。ところかないくせに、たゞよくばりたがつてね、まことに取扱とりあつかにく代物しろものです。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
にくみて種々折檻せつかんなしあまつさへ藤三郎の乳母お安と言女をも永のいとまを遣したり其わけは此乳母先代平助の時より奉公ほうこうに來り譜代ふだい同樣のきめにて藤三郎の乳母となせしかば藤三郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『それにけても、にくきは海賊船かいぞくせん振舞ふるまひ、かゝる惡逆無道あくぎやくむだうふねは、早晩はやかれおそかれ木葉微塵こつぱみぢんにしてれん。』と、明眸めいぼう凛乎りんこたるひかりはなつと、日出雄少年ひでをせうねんは、プイと躍立とびたつて。
手許てもとから切先きつさきまで澄み切つたかたはがねの光は見るものを寒くおびやかした。兄は眼をそばたてゝ、例へば死體にしろ、妻の肉に加ふべき刃を磨ぎすます彼れの心をにくむやうに見えた。
実験室 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
米國べいこくおいては日本生糸にほんきいと買値かひね騰貴とうきするわけであるから商賣しやうばいはしにくくなることになる。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
田舍物いなかものいなかもの町内てうないむすめどもにわらはれしを口惜くやしがりて、三きつゞけしことありしが、いまれより人々ひと/″\あざけりて、野暮やぼ姿すがたうちつけのにくまれぐちを、かへすものもりぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
感覺かんかくうちおい人生じんせい全體ぜんたいふくまつてゐるのです。これにすることにくこと出來できます。が、これ輕蔑けいべつすること出來できんです。でるから、ストア哲學者てつがくしや未來みらいこと出來できんのです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
こいつは奧方のお口から申上げにくいでせうから、動かぬ證據を揃へて、あつしから殿樣へ申上げませう
三田は愈々口がきゝにくくなるのだつたが、女の方は三田の意氣地の無いのを見透したやうに、ぢいつと顏を見ながら、口元に皮肉な微笑を漂はせてゐるのであつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
つて、折角せつかく保養ほやうつた轉地先てんちさきからいまかへつてたばかりのをつとに、かないまへよりかへつて健康けんかうわるくなつたらしいとは、どく露骨ろこつはなにくかつた。わざと活溌くわつぱつ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
えず其邊そのへん航路かうろ徘徊はいくわいし、ときにはとほ大西洋たいせいやう沿岸えんがんまでもふね乘出のりだして、非常ひじやう貴重きちやう貨物くわぶつ搭載とうさいしたふねると、たちまこれ撃沈げきちんして、にくよくたくましうしてるとのはなし
にくからず思ひ毎夜まいよ此處へかよひお竹が手引にてあはせしが此隣このとなりに兩替屋の伊勢屋三郎兵衞と云者有り或夜子刻頃こゝのつどきごろに表の戸を叩きて旅僧たびそうなるが一夜の宿を貸給かしたまへと云ふを番頭ばんとうさまし旅人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
また反對はんたい爲替相場かはせさうば騰貴とうき道程だうていにある場合ばあひには日本品にほんひん賣値うりねげずにどう一としておくには輸入國ゆにふこく貨幣買値くわへいかひね段々だん/\引上ひきあげてたかはすことになるのであるから商賣しやうばいがしにくくなることは事實じじつである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
換言すれば人と人との關係が、長い時間を經過して發展して來るのとは反對に、瞬間的に披瀝されるところが、それを畫面では表現しにくいものにしてゐるといふのである。
「申上げにくいことですが、いづれは知れずに濟まないことと存じます。加州の支藩、とだけ申しませう。私の配偶つれあひは江戸御留守居、谷口樣と矢並樣御先代は御倉屋敷の係りで」
親の前ではさすがに言ひにくいこともあらうかと、利右衞門は氣輕に座を外します。
主人の弟分彌之助といふのは、二十三四の若い男ですが、青瓢箪べうたんでヒヨロ長くて、ちよいと好い男ではあるにしても、皮肉で、高慢で、虚無的で、メフイスト風で、まことに扱ひにくい男でした。
幸七はいかにも言ひにくさうです。