)” の例文
八五薄酒うすきさけ一杯ひとつぎすすめ奉らんとて、八六高坏たかつき平坏ひらつきの清らなるに、海の物山の物りならべて、八七瓶子へいじ土器かわらけささげて、まろや酌まゐる。
わたしの光は、古いプラタナスの葉が、ちょうどカメのこうのようにりあがって、しげっている生垣いけがきの中に、さしこもうとしていました。
限られたと思うた野は、また森の蔭からはるかにつゞいて、また二人の希望は、草のり上つたやうに見える、彼方の野につながれた。
幸福への道 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
テーブルのうえには、カーネーションや、リリーや、らんのはななどがられて、それらの草花くさばな香気こうきじって、なんともいえない
煙突と柳 (新字新仮名) / 小川未明(著)
今日なら、もうほんとうに立派りっぱな雲のみねが、東でむくむくりあがり、みみずくの頭の形をした鳥ヶ森ちょうがもりも、ぎらぎら青く光って見えた。
さいかち淵 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
三つとも揃って大物であることが判って、そのりだくさんなのにいくらか興味を感じたので、つい一桝ひとますおごることにしたのであった。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
きっかり八時に、わたしはフロックコートを一着におよび、頭のかみを小高くり上げて、公爵夫人こうしゃくふじん住家すみかなる傍屋はなれへ入って行った。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
番所の警板けいばんが急をつげると、たちまち無数のかんこ船、捕手のかざす御用提灯の火をって、ほたるをブチまけたように海上へ散らかった。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
毒をしたところだけ、きれいにさきてて、毒のない部分をさんざん食いあらしていたのです。一ぷくろうたってあいつにゃ駄目だめです。
全部がかねで出来ていたにも拘らず、小川を流れていくどんぐりの皿よりももっと軽々かるがると、り上がって来る磯波の上に浮かんでいました。
そこで将来も偉い詩人が生まれ、その詩人の感情をるのに短歌の形式を用ふるとすれば、やはりとり残されぬのに相違さうゐない。
又一説? (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
汁をる椀も惣菜の皿小鉢も大ぶりのが一個ひとつしか載せられてゐないのを見て、味噌汁は交る/″\一ツの椀から吸ふのではないかと思つた。
人妻 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
女はたちまち帰り来りしが、前掛まえかけの下より現われて膳にのぼせし小鉢こばちには蜜漬みつづけ辣薑らっきょう少しられて、その臭気においはげしくわたれり。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
おどろいてあと見送みおくつてゐるりよ周圍しうゐには、めしさいしるつてゐたそうが、ぞろ/\とてたかつた。道翹だうげう眞蒼まつさをかほをしてすくんでゐた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
二疊敷より五十疊敷位の大さにてふかきは人の丈位たけぐらひなるが、周壁の上端は地面よりも高くがりてつつみの形を成し居るもの故
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
料理は、可成りり澤山で、一人々々に分けられた。私は食べられるだけ食べた。毎日の御飯がこんなのかしら? と心の中で案じられた。
さりとて、わしはこの通りの所労じゃ。頼長が兄に代って何かの切りりをするも是非があるまい。余の公家くげばらは彼の鼻息を
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「落ちないように絡ませるには何うしても本人をり潰す必要がある。それに早目に帰ったんじゃ嫌疑がかゝらないからね」
髪の毛 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
勘次かんじもおつぎもみそはぎちひさな花束はなたばさき茶碗ちやわんみづひたしてみづをはらりといもつた茄子なすかけけた。勘次かんじ雨戸あまどを一ぱいけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
私は私で相變あひかはらず貧乏世帶びんばふじよたいりになやまされてゐます。けれど私達はしてそれをいることはなかつたと思ひます。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
とうもろこしをる大きい瓶、香炉、水差し、水道の水を引く水管、それを受ける水盤、その他庭園で用いる農具の類までもすべてそうである。
鎖国:日本の悲劇 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
テーブルの上には、この塾堂にしてはめずらしい、豪華ごうかな洋なまなどをった菓子鉢かしばちがおいてあったが、それも朝倉先生が一つつまんだきりだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
床の中の夢は常のごとく安らかであった。寒い割に風も吹かず、半鐘はんしょうの音も耳にこたえなかった。熟睡が時の世界をつぶしたように正体を失った。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ハワイの火山かざんのように海底かいていからあがつて出來できたものは、鎔融状態ようゆうじようたいおい比較的ひかくてき流動りゆうどうやす性質せいしつつてゐることは、まへにもべたところであるが
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
さらにまた諧謔かいぎゃくにあふれたもの、あるいは苦悩くのうにみちたものもあり、人生の一断面のスケッチもある。小さい本ながら、まことにりだくさんである。
絵のない絵本:02 解説 (新字新仮名) / 矢崎源九郎(著)
しかもその最後から、涼しい色合いのインバネスを羽織はおった木部が続くのを感づいて、葉子の心臓は思わずはっと処女の血をったようにときめいた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
はれてり上って、詰め物をしたようなその四肢は、いたるところで不恰好に境目もなくつらなり合っている。
神の剣 (新字新仮名) / パウル・トーマス・マン(著)
そういいながら、指先ゆびさき器用きよううごかした春重はるしげは、糠袋ぬかぶくろくちくと、まるできんこなでもあけるように、まつろうてのひらへ、三つばかりを、勿体もったいらしくげた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
とうさんは表庭おもてにはなし椿つばきしたあたりへちひさなかはのかたちをこしらへました。あつめたすなつち二列ふたれつりまして、そのなかみづながしてはあそびました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
皇后はそれらの女たちへ、お手ずから、お酒をるかしわの葉をおくだしになりました。みんなはかわるがわる御前ごぜんへ出て、それをいただいてさがりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
りあがるりあがる國民の意志と感動とを以て、盛りあがる盛りあがる民族の血と肉とを以て、今だ今だ今こそは三唱しよう。聖壽の萬歳を、皇國の萬歳を。
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
この「ジエィン・エア」にられたイプセン的な精神と熱意、及び、それを表現する嵐のやうな筆觸は、たしかに、尚、現代の讀者の胸に、何物かを與へると信じる。
なんぞかへつてみづかいろまよふことをなして、女子ぢよし愛戀あいれんし、あまつさ關帝くわんていひげべにる。言語道斷ごんごだうだんぢやと。すでたけかごつくらしめ、これにりてなかしづめんとす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ところが間もなく、ヷーシャの死は当り前の死に様ではない、あれはマーシェンカがり殺したのだという評判が、界隈かいわいにぱっと立ちました。それがおかみの耳にはいる。
女房ども (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
炭取すみとりをさしいだしてれは中皿ちうざらもゝつた姿すがた、これはわたし蕩樂だうらくさとおくさますみつぎにかゝられぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
瀧口入道、横笛が墓に來て見れば、墓とは名のみ、小高くりし土饅頭どまんぢゆうの上に一片の卒塔婆を立てしのみ。里人の手向けしにや、なかばれし野菊のぎくの花の仆れあるも哀れなり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
草むらや土のりあがったところをさがして、かくれようとするわけでもなく、かまわずまっすぐに、歩いていきます。ちっとも用心をしないのは、まことにふしぎです。
『真空技術』に書いてある真空の技術は、いわば、女学校でならう家計のとり方のようなもので、生きてどんどん生長しつつある家庭は、その知識だけでは切りり出来ない。
実験室の記憶 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
両唇の角をちょっと上へ反らせるとひとをらすような唇が生き生きとついていた。胸から肩へ女になりかけの豊麗ほうれいな肉付きがり上り手足は引締ひきしまってのびのびとびていた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
あきれたような顔をしてことばをきった大石先生を、いつのまにか外から帰ってきたお母さんは、くだものなどったぼんをさし出しながら、むすめのぶえんりょさに気が気でなく
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
一人になった客は、さも満足げに、殆んど天井につかえそうなほどうずたかくりあがった寝床を見やった。この通りフェチニヤは、羽根蒲団を敲くことにかけての名人であった。
白壁の並んだ肥料倉庫の広場には針のように光った干魚が山のようにり上げてあった。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
リ上ッテイル部分カラ土蹈マズニ移ル部分ノ、継ギ目ガナカ/\ムズカシカッタ。予ハ左手ノ運動ガ不自由ノタメ、手ヲ思ウヨウニ使ウコトガ出来ナイノデ一層困難ヲ極メタ。
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
すると母親ははおやは、おおきな、おおきな、おさらくろいスープをって、はこんでました。マリちゃんはまだかなしくって、あたまもあげずに、おいおいいていました。すると父親ちちおやは、もう一
いへにあればいひ草枕くさまくらたびにしあればしひる 〔巻二・一四二〕 有間皇子
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「そうか、それでは」と桂は女中に向かって二三品命じたが、その名は符牒ふちょうのようで僕には解らなかった。しばらくすると、刺身さしみ煮肴にざかな煮〆にしめ、汁などが出て飯をった茶碗に香物こうのもの
非凡なる凡人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
上って二十四丁目の黒門、ここへ来ると鼻の先に本山のいただきが円くえて、一帯に真黒な大杉をかぶり、その間から青葉若葉が威勢よくり上って、その下蔭ではうぐいすの鳴く音が聞えます。
ところが今彼は、パリー人の方がすぐれた食欲をもってることを認めた。パリーでは実にりだくさんだった、二つの交響曲シンフォニー、一つの協奏曲コンセルト、一つもしくは二つの序曲、叙情劇一幕。
もしわたしがければ、この着物きものをぬいでおまえげよう、そしてわたしのせいたかさだけの大きなかめにさけをなみなみって、海山うみやまのごちそうを一通ひととおりそろえて、おきゃくんでやろう。
春山秋山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
いつたいまるつかは、どこのくにでもむかしからあるのでありまして、人間にんげん死體したいをまづ地上ちじよういたうへつちりかけると、自然しぜんまるつかかたち出來できるのでありますから、どこのくに人間にんげんでも
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)