おい)” の例文
もとよりまとまった話の筋を読ませる普通の小説ではないから、どこで切って一冊としても興味の上においしたる影響のあろうはずがない。
悪妻に一般的な型などあるべきものではなく、いな、男女関係のすべてにおいて型はない。個性と個性の相対的な加減乗除があるだけだ。
悪妻論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
それは傾かんよりは平らかに、私有らんよりは公に、貧富を択むの念に住せずして平等に化度したが宜しいという意においてであった。
貧富幸不幸 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かく果敢なく、解くを得ない運命を歩まなくてはならない人々は又この世において何を楽しみ、何を苦しんで生きているのであろうか。
現代語訳 方丈記 (新字新仮名) / 鴨長明(著)
この不思議な退化をなしつつある少女は一つのまれな才能を示すやうに見えた。それは彼女の素描にあらはれる特殊な線の感じにおいて。
青いポアン (新字旧仮名) / 神西清(著)
ぱう貿易外ぼうえきぐわい受取超過額うけとりてうくわがく毎年まいとしおく六七千萬圓まんゑんあるから大體だいたいおい昨年さくねん海外支拂勘定かいぐわいしはらひかんぢやう受取勘定うけとりかんぢやうつぐなることとなつたのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
ここにおいて楊博士の復讐ふくしゅうは、ようやく成ったようであるが、その後、この広い上海シャンハイのなかに博士の姿を見た者は只の一人もなかった。
見えざる敵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
近代の仏詩は高踏派の名篇において発展の極に達し、彫心鏤骨るこつの技巧実に燦爛さんらんの美をほしいままにす、今ここに一転機を生ぜずむばあらざるなり。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
ここおいせいぐんものをして、(五三)萬弩ばんどみちはさんでふくせしめ、(五四)していはく、『くれがるをともはつせよ』
自ら不良少女と名乘なのることによつてわずかになぐさんでゐる心のそこに、良心りやうしん貞操ていさうとを大切にいたわつているのを、人々は(こと男子だんしおいて)
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
たとへば相模平野さがみへいやおこ地震ぢしんおいては、其地方そのちほう北西方ほくせいほうおい氣壓きあつたかく、南東方なんとうほうおいてそれがひくいと其地方そのちほう地震ぢしん誘發ゆうはつされやすい。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
『真人の出現』の条下において、数十年前に予言されたことが、現在においていよいよ地上に出現しつつあることは驚歎すべきである。
併しながら、一方においては、其頃から、これまで少しも予期しなかった、ある恐怖に似た感情が、彼の心の片隅に湧き出していました。
屋根裏の散歩者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あの人は、これからの永い人生においても、その先天的なもののために、幾度か人に指さされ、かげ口を言われ、敬遠せられる事だろう。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
サンスクリットの両音相類似する所から軽卒けいそつにもあのような誤りを見たのである。茲においてか私は前論士の結論を以て前論士にこたえる。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
大体だいたいおいもうしますと、天狗てんぐ正体しょうたい人間にんげんよりはすこおおきく、そして人間にんげんよりはむしけものり、普通ふつう全身ぜんしんだらけでございます。
後にその松木が寺島宗則てらしまむねのりとなって、参議さんぎとか外務卿がいむきょうとかう実際の国事に当たのは、実は本人のがらおいて商売ちがいであったと思います。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
二月二十日の総選挙において、国民の多数が、ファッシズムへの反対と、ファッシズムに対する防波堤としての岡田内閣の擁護とを主張し
二・二六事件に就て (新字新仮名) / 河合栄治郎(著)
尖端せんたんうへけてゐるくぎと、へい、さてはまた別室べつしつ、こは露西亞ロシアおいて、たゞ病院びやうゐんと、監獄かんごくとにのみる、はかなき、あはれな、さびしい建物たてもの
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
朕ハ我カ臣民ノ権利及財産ノ安全ヲ貴重きちょうシ及之ヲ保護シ此ノ憲法及法律ノ範囲内ニおい享有きょうゆうヲ完全ナラシムヘキコトヲ宣言ス
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
ここにおいて甲斐守はあらたに静岡の藩主となった徳川氏のもとに赴きみずから赦免を請うたのち白髪はくはつ孤身こしん飄然ひょうぜんとして東京にさまよいきたったと云う。
枇杷の花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
唐獅子の画に註していわく。「現今民国有識階級ニおいテハ華国ハ眠レル獅子ナリト言ヒナサレ覚醒又ハ警世ノ意アリテもっとモ喜バル」
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
それは平常対人関係において、握手とか抱擁とか云つたやうな、接触に少しも馴れてゐない日本人としては、誰しも無理のない事であらう。
私の社交ダンス (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
あらためてこゝふ。意味いみおいての大怪窟だいくわいくつが、學術がくじゆつひかり如何どうらされるであらうか。ふか興味きようみもつ此大發掘このだいはつくつむかへざるをない。
その後幾年月かは至極楽しそうだ、真に楽しそうだ、恐らくたのしみという字の全意義はかかる女子にょしの境遇において尽されているだろう。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
当地では石炭の出入しゆつにふに桟橋費一とんにつき三十五銭取られる如き費用を要するのをかれおいては一切省略しようとするのださうである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
勿論もちろん今日こんにちおいても潜水器せんすいき發明はつめいいま充分じゆうぶん完全くわんぜんにはすゝんでらぬから、この手段しゆだんとて絶對的ぜつたいてき應用おうようすること出來できぬのはまでもない。
一面からえば氏はあまり女性に哀惜あいせきを感ぜず、男女間の痴情ちじょうをひどく面倒めんどうがることにおいて、まったくめずらしいほどの性格だと云えましょう。
しかし、このままでは、第一流の作品となるのには、何処どこか(非常に微妙な点において)欠けるところがあるのではないか、と。
山月記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
生活上の種々なことにおいて、人に譲歩する寛い心を持っているので、些末さまつなことで人と争ったり、人をへこましたりすることを好みません。
わが師への書 (新字新仮名) / 小山清(著)
すべてあるものは神においてあり、神なくして何物もあることもできず、理解することもできないということができるのである。
デカルト哲学について (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
しかし今はそれが固有の意味にまで引き上げられなければならない。ベルグソンはこの言葉をその正しき意味において用い始めた。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
燃焼のような物化学的変化に際してそれにあずかる物質の重さは全体としてはその前後において少しも変らないとうことが確かめられた点です。
ラヴォアジエ (新字新仮名) / 石原純(著)
如何いかなる場合においてもそれは好かない。そんなことを云ふと随分笑ふ人もあるだらうけれど、我輩の手はのろはれた手なんだ。
椎の若葉 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
当院たうゐん屋根普請やねふしん勧化くわんけため本堂ほんだうおい晴天せいてん七日の間芝居興行こうぎやうせしむるものなり、名題なだい仮名手本かなでほん忠臣蔵役人替名とありて役者やくしやの名おほくは変名へんみやうなり。
文「えー……それは知らねど……どうも思い掛けない、何時いつのことで……フーン後月あとげつ二十七日のに桜の馬場において何者に」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
が、勝平の肉体に勝った如く、彼の精神にも勝ち得ただろうか。勝平は、その瀕死ひんし刹那せつなおいて、精神的にも瑠璃子に破られていただろうか。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
し逃げ隠れするにおいては、この旨日本六十余州の津々浦々に伝え、百代の後までも、其方を卑怯者の見本として、物笑いの種にするであろう。
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
こゝおいかくおほすべきにあらざるをつて、ひざいて、前夫ぜんぷ飛脚ひきやくつて曳出ひきだすとともに、をつと足許あしもとひざまづいて、哀求あいきうす。いは
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
従つてその時代の社会状態と云ふやうなものも、自然の感じを満足させる程度において幾分とり入れられる事になつて来る。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
愛とは創造であり、創造とは対象において自己を見出すことである。愛する者は自己において自己を否定して対象において自己を生かすのである。
人生論ノート (新字新仮名) / 三木清(著)
議長浦和はおもむろに其席に起てり「松本君の動議は実に驚くべき問題でありまして、自分においてはおほいに心をくるしめて居りますが、きましては——」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
健脳な読者の中には、ずっと昔、自分と室生犀星むろうさいせい等が結束した詩の雑誌「感情」の予告において、本書の近刊広告が出ていたことを知ってるだろう。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
痴人ちじんゆめく、されどゆめみづかさとるはかならずしも痴人ちじんにあらざるし。現今げんこんおいても、未來みらいおいても、七福しちふくきたきをしんずるあたはず。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
そういう明らかな定った考があれば前に既に二度までも近寄って来た機会をつかむにおいあえ躊躇ちゅうちょするところは無いはずだ。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
試みに第一解に従はば如何いかん。之れを描写せよと要求するまでもなく此の意味においての国民性は皆多少描きつゝありと言はざるべからざるにあらずや。
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
理において彼は恩愛の情に切なる者あり。「処女たる事」(Jungfräulichkeit)をおもんずべきものなり。
舞姫 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
第二例においては此部に布目ぬのめの痕を付けたり是等の遮光器は左右兩端さいうりやうはしに在る紐を以て頭にむすび付けられたるものの如し。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
ナリン太子殿下横浜御出航以来御不例かねテ船医ニおいテ流行性脳脊髄膜炎のうせきずいまくえんト診断船中ニ於テ御加療中ノ処病勢御険悪発熱三十九度五分囈言げいごアラセラレ
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
ただ、心配なのは今度の戦績で、今後日本人がボオトにおいて、果してどれだけの活躍かつやくが出来るかと危ぶまれることです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)