家庭かてい)” の例文
とその家庭かてい苦痛くつう白状はくじやうし、ついにこのしよ主人公しゆじんこうのち殺人さつじん罪人ざいにんなるカ……イ……をともなひてその僑居けうきよかへるにいた一節いつせつきはめて面白おもしろし。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
然うだ、其だから僕等の生涯は永久えいきゆうに暗黒だと云ふのだ!家庭かてい人生じんせい活動くわつどうみなもとである、と、人にツてはこんなことを云ふものもある。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
はなしそれからまへうちはなれて、家主やぬしはううつつた。これは、本多ほんだとはまる反對はんたいで、夫婦ふうふからると、此上このうへもないにぎやかさうな家庭かていおもはれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
みせは耶蘇教主義であるが、角谷は夜毎の家庭かてい祈祷会きとうかいなどに出るのをいやがって居た。彼の本箱には、梅暦うめごよみや日本訳のマウパッサン短篇集たんぺんしゅうが入って居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ですから、諭吉ゆきちどものわるいところをとがめると、どものほうも、諭吉ゆきちのわるいところをいうというありさまで、ほんとうにあかるい家庭かていでした。
その時分じぶんには、すくない品数しなかずは、ますますすくなくなって、完全かんぜんなものとては、だれか、利助りすけ作品さくひんあいしていたごく少数しょうすうひと家庭かていのこされたものか、また
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
祖母おばあさんもなく、かあさんもなく、だれってかせるもののないような家庭かていで、まれてはじめて袖子そでこ経験けいけんするようなことが、おもいがけないときにやってた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そもそも竜宮りゅうぐうもうすのは、あれは神々かみがみのおくつろぎあそばすところ……わば人間界にんげんかい家庭かていごときものじゃ。
また李白りはくしゆくするいはく、揚杯祝願無他語さかづきをあげてしゆくすねがふにたにごなく謹勿頑愚似汝爺矣つゝしんでぐわんぐなるなんぢのちゝににることなかれ家庭かてい先生せんせいもつ如何いかんとなす?
聞きたるまゝ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あたたかい家庭かていをつくって楽しく暮らすことも、友だちとゆかいに話しあうことも、永久えいきゅうにできなくなったのだ。ぼくはたったひとりぽっちで暮らすほかはなくなったのだ。
こはかんずるものでなければ食事しよくじから食事しよくじまでのあひだたもあたはぬほどたちまちに空腹くうふくかんじてしまふからである。したがつていづれの家庭かていつても老者らうしや壯者さうしやとのあひだにはてん調和てうわ難事なんじである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
針仕事はりしごと煮炊にたきもよくは出来できない道子みちこ手馴てなれない家庭かてい雑用ざつようはれる。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
かれ天性てんせいやさしいのと、ひと親切しんせつなのと、禮儀れいぎるのと、品行ひんかう方正はうせいなのと、着古きぶるしたフロツクコート、病人びやうにんらしい樣子やうす家庭かてい不遇ふぐう是等これらみなすべ人々ひと/″\あたゝか同情どうじやう引起ひきおこさしめたのであつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
家庭かてい養鶏ようけい 冬 第三百三十二 家庭の養鶏
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
不用ふようのものを廉價れんかつて便宜べんぎいうしてゐることなどにうつつて、仕舞しまひその家庭かてい如何いかにも陽氣やうきで、にぎやかな模樣もやうちてつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
当日とうじつは、学校がっこう教師きょうしや、また家庭かてい父兄ふけいたちが、参観さんかんにやってきました。ちょうどひるごろのことです。参観者さんかんしゃ一人ひとりきゅう卒倒そっとうして、おおさわぎとなりました。
天女とお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
ずそのころ私達わたくしたちけた教育しつけにつきて申上もうしあげてみましょうか——時代じだい時代じだいゆえ、教育しつけはもういたって簡単かんたんなもので、学問がくもん読書よみかき習字てならいまた歌道かどうとおり、すべて家庭かていおさめました。
かれ天性てんせいやさしいのと、ひと親切しんせつなのと、礼儀れいぎのあるのと、品行ひんこう方正ほうせいなのと、着古きぶるしたフロックコート、病人びょうにんらしい様子ようす家庭かてい不遇ふぐう、これらはみなすべ人々ひとびとあたたか同情どうじょう引起ひきおこさしめたのであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
もとより一時の出來心や、不圖ふとした氣紛きまぐれでは無かツたのであるから、さて是れが容易よういに解決される問題で無い。第一つまとしてむかへ取るには餘りに身分の懸隔けんかくがある。家庭かていは斷じて此の結婚けつこん峻拒しゆんきよする。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
つぎ週間しうかんには、小六ころくず、佐伯さへきからの音信たよりもなく、宗助そうすけ家庭かていまた平日へいじつ無事ぶじかへつた。夫婦ふうふ毎朝まいあさつゆひかころきて、うつくしいひさしうへた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まだしゃでは、それでもいいが、おとこは、ときどき上役うわやく家庭かていへも、ごきげんをうかがいになければなりません。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
まちへささやかな教会堂きょうかいどうがたてられました。ちかくの子供こどもたちや、めぐまれない家庭かていおんなたちが、日曜日にちようびごとに、おいのりにあつまって、牧師ぼくしのお説教せっきょうをきいたのであります。
天女とお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
かごからして、自由じゆうとなったのは、たまたま一だけであって、あの鳥屋とりやに、またおおくの家庭かていに、たくさんのとりが、せまいかごのなかにいれられているけれど、そして
自由 (新字新仮名) / 小川未明(著)
また来年らいねんこそは、もう一きた海岸かいがんへゆこうなどとおもったのも、そのときになると家庭かてい用事ようじができたり、もしくは、ほかへゆくようなことになって、少年しょうねんは、ただはるかに
北の少女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
高等科こうとうか卒業そつぎょうするころには、たがいに家庭かてい状態じょうたいことなって、りょう一は、電気でんき興味きょうみをもつところから、そのほうの学校がっこうへいったし、友吉ともきちは、農業のうぎょう学校がっこうはいることになりました。
僕が大きくなるまで (新字新仮名) / 小川未明(著)
あかるい燈火ともしびしたで、エーは、細君さいくんはなしをしていました。二人ふたり家庭かていは、むつまじく、そして、平和へいわでありました。それにつけて、エーともだちのは、いっそう、かんがえさせられたのです。
死と話した人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
学校がっこうにきても、勉強べんきょうにまったく興味きょうみがないくらいなら、そして、先生せんせいかおばかりているようでは、なんのえきにもならないことだから、いっそ学校がっこうをやめて、奉公ほうこうにいくなり、家庭かてい
天女とお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
戦争後せんそうご、わたくしどもの家庭かていは、たいていびんぼうとなりました。いままでっているものもりはらって、くるしい生活せいかつのたしにしたのは、ひとり、このおんなひとだけではありません。
ひすいの玉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いつしか、このあわれな父親ちちおや子供こどもだけを、そのままのこして、人々ひとびとは、みんなどこへかえてしまいました。おそらく、めいめいのあかるい家庭かていへ、幸福こうふくなすみかへかえったのでありましょう。
街の幸福 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さよは、この世間せけんにも、たのしいうつくしい家庭かていがあるものだとおもいました。
青い時計台 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのひとは、むずかしく、家庭かていでは、なにかにいらぬことでもあれば、つみのない細君さいくんをしかり、子供こどもをなぐったりしたのに、出社しゅっしゃして、上役うわやくまえでは、まったく別人べつじんのごとく、あたまをぺこぺこして
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)