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夕日
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ゆふひ
平常の
部屋に
倚りかゝる
文机の
湖月抄こてふの
卷の
果敢なく
覺めて
又思ひそふ
一睡の
夢夕日かたぶく
窓の
簾風にあほれる
音も
淋し。
夕日は低く惱ましく、わかれの光悲しげに、
河岸を
左右のセエヌ
川、
川一杯を
抱きしめて、
咽んで
搖る
漣に熱い
動悸を見せてゐる。
残暑の
夕日が一しきり夏の
盛よりも
烈しく、ひろ/″\した
河面一帯に燃え立ち、
殊更に大学の
艇庫の
真白なペンキ
塗の
板目に反映してゐたが
煙は
靜に、
燃ゆる
火の
火先も
宿さぬ。が、
南天の
實の
溢れたやうに、ちら/\と
其の
底に
映るのは、
雲の
茜が、
峰裏に
夕日の
影を
投げたのである。
然し
其の
※さんは
愛ちやんが
行つて
了つても、
頬杖ついて
沈みゆく
夕日を
見ながら、
可愛い
愛ちやんの
事から、
又その
種々不思議な
冐險談を
考へながら
銃架よ、お
前はおれの
心臓に
異様な
戦慄を
与へる——
血のやうな
夕日を
浴びてお
前が
黙々と
進むとき
空が
夕日の
消え
行く
光を
西の
底深く
鎖して
畢つて、
薄い
宵が
地を
低く
掩うて
夜が
到つた
時女は
井戸端で
愉快に
唄ひながら一
種の
調子を
持つた
手の
動かし
樣をして
米を
研ぐ。
網代の笠に
夕日を
負うて立ち去る瀧口入道が
後姿、
頭陀の袋に
麻衣、鐵鉢を
掌に
捧げて、八つ目のわらんづ踏みにじる、形は
枯木の如くなれども、
息ある間は血もあり涙もあり。
その四
角な
彼女が
向いてる
硝子窓からは、
黄色い
落葉松の
林や、
紫色の
藻岩山が
見えて、いつもまち
子が
腰をおろして
涙ぐむ
時は、
黄昏の
夕日のおちる
時で
硝子窓が
赤くそまつてゐた。
横に
照り付ける日を
半分脊中に受けて、三四郎は左りの森の
中へ這入つた。其森も同じ
夕日を半分
脊中に受けて
入る。黒ずんだ蒼い葉と葉の
間は染めた様に赤い。
太い欅の幹で日暮しが鳴いてゐる。
磨硝子、あるは
窓枠、
濡れ
濡れて
夕日さしそふ。
風入れの
此の
窓も、
正西を
受けて、
夕日のほとぼりは
激しくとも、
波にも
氷にも
成れとて
觸ると、
爪下の
廂屋根は、さすがに
夜露に
冷いのであつた。
世にたのまれぬを
男心といふ、それよ
秋の
空の
夕日にはかに
掻きくもりて、
傘なき
野道に
横しぶきの
難義さ、
出あひし
物はみな
其樣に
申せども
是れみな
時のはづみぞかし
長吉は
先刻から一人ぼんやりして、
或時は
今戸橋の
欄干に
凭れたり、
或時は岸の
石垣から
渡場の
桟橋へ
下りて見たりして、
夕日から
黄昏、
黄昏から夜になる
河の
景色を
眺めて
居た。
格子の
外に
射す
夕日をしばらく
眺めてゐた。
縁さへあらばまたの
夕日にチレチレ
槍の
穗に
夕日宿れり
曙は
知らず、
黄昏に
此の
森の
中辿ることありしが、
幹に
葉に
茜さす
夕日三筋四筋、
梢には
羅の
靄を
籠めて、
茄子畑の
根は
暗く、
其の
花も
小さき
實となりつ。
鮒やたなごは
宜い
迷惑な、
釣るほどに
釣るほどに、
夕日が
西へ
落ちても
歸るが
惜しく、
其子出て
來よ
殘り
無くお
魚を
遣つて、
喜ぶ
顏を
見たいとでも
思ふたので
御座りましよ
あゝ
其れが今の身になつては、朝早く
今戸の橋の白い
霜を踏むのがいかにも
辛くまた昼過ぎにはいつも
木枯の
騒ぐ
待乳山の
老樹に、早くも傾く
夕日の色がいかにも悲しく見えてならない。
雲はあかるし、
夕日は
寒し
船のある
事……
帆柱に
卷着いた
赤い
雲は、
夕日の
餘波で、
鰐の
口へ
血の
晩御飯を
注込むんだわね。
あやしき
形に
紙を
切りなして、
胡粉ぬりくり
彩色のある
田樂みるやう、
裏にはりたる
串のさまもをかし、一
軒ならず二
軒ならず、
朝日に
干して
夕日に
仕舞ふ
手當こと/″\しく
萩暮れて
薄まばゆき
夕日かな