夕日ゆふひ)” の例文
平常つね部屋へやりかゝる文机ふづくゑ湖月抄こげつせうこてふのまき果敢はかなくめてまたおもひそふ一睡いつすゐゆめ夕日ゆふひかたぶくまどすだれかぜにあほれるおとさびし。
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
夕日ゆふひは低く惱ましく、わかれの光悲しげに、河岸かし左右さいうのセエヌがはかは一杯いつぱいきしめて、むせんでそゝさゞなみに熱い動悸どうきを見せてゐる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
残暑ざんしよ夕日ゆふひが一しきり夏のさかりよりもはげしく、ひろ/″\した河面かはづら一帯に燃え立ち、殊更ことさらに大学の艇庫ていこ真白まつしろなペンキぬり板目はめに反映してゐたが
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
けむりしづかに、ゆる火先ほさき宿やどさぬ。が、南天なんてんこぼれたやうに、ちら/\とそこうつるのは、くもあかねが、峰裏みねうら夕日ゆふひかげげたのである。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかねえさんはあいちやんがつてしまつても、頬杖ほゝづゑついてしづみゆく夕日ゆふひながら、可愛かあいあいちやんのことから、またその種々しゆ/″\不思議ふしぎ冐險談ばうけんだんかんがへながら
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
銃架じうかよ、おまへはおれの心臓しんざう異様いやう戦慄せんりつあたへる——のやうな夕日ゆふひびておまへ黙々もく/\すゝむとき
そら夕日ゆふひひかり西にしそこふかとざしてしまつて、うすよひひくおほうていたつたときをんな井戸端ゐどばた愉快ゆくわいうたひながら一しゆ調子てうしつたうごかしやうをしてこめぐ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
網代あじろの笠に夕日ゆふひうて立ち去る瀧口入道が後姿うしろすがた頭陀づだの袋に麻衣あさごろも、鐵鉢をたなごゝろさゝげて、八つ目のわらんづ踏みにじる、形は枯木こぼくの如くなれども、いきある間は血もあり涙もあり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
その四かく彼女かれいてる硝子窓がらすまどからは、黄色きいろ落葉松からまつはやしや、紫色むらさきいろ藻岩山さうがんざんえて、いつもまちこしをおろしてなみだぐむときは、黄昏たそがれ夕日ゆふひのおちるとき硝子窓がらすまどあかくそまつてゐた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
夕日ゆふひしづころ櫻木大佐さくらぎたいさ武村兵曹たけむらへいそうも、いたつかれてかへつてたが、終日しうじつ延氣のんきあそんだ吾等われら兩人りやうにんかほの、昨日きのふよりは餘程よほどすぐれてへるとて、大笑おほわらひであつた。この夜更よふけまで色々いろ/\快談くわいだん
横にり付ける日を半分はんぶん脊中せなかに受けて、三四郎は左りの森のなかへ這入つた。其森も同じ夕日ゆふひを半分脊中せなかに受けてる。黒ずんだ蒼い葉と葉のあひだは染めた様に赤い。ふとい欅の幹で日暮しが鳴いてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
磨硝子すりがらす、あるは窓枠まどわくれて夕日ゆふひさしそふ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
つるとゆる夕日ゆふひかな
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
夕日ゆふひがくれにつる
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
風入かぜいれのまども、正西まにしけて、夕日ゆふひのほとぼりははげしくとも、なみにもこほりにもれとてさはると、爪下つました廂屋根ひさしやねは、さすがに夜露よつゆつめたいのであつた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
にたのまれぬを男心をとこごゝろといふ、それよあきそら夕日ゆふひにはかにきくもりて、かさなき野道のみちよこしぶきの難義なんぎさ、あひしものはみな其樣そのやうまをせどもれみなときのはづみぞかし
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
長吉ちやうきち先刻さつきから一人ぼんやりして、或時あるとき今戸橋いまどばし欄干らんかんもたれたり、或時あるときは岸の石垣いしがきから渡場わたしば桟橋さんばしりて見たりして、夕日ゆふひから黄昏たそがれ黄昏たそがれから夜になるかは景色けしきながめてた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
格子かうしそと夕日ゆふひをしばらくながめてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
えんさへあらばまたの夕日ゆふひにチレチレ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
夕日ゆふひがくれにいきづきし
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
やり夕日ゆふひ宿やどれり
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
あけぼのらず、黄昏たそがれもりなか辿たどることありしが、みきあかねさす夕日ゆふひ三筋みすぢ四筋よすぢこずゑにはうすものもやめて、茄子畑なすばたけくらく、はなちひさきとなりつ。
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ふなやたなごは迷惑めいわくな、るほどにるほどに、夕日ゆふひ西にしちてもかへるがしく、其子そのこのこくおさかなつて、よろこかほたいとでもおもふたので御座ござりましよ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あゝれが今の身になつては、朝早く今戸いまどの橋の白いしもを踏むのがいかにもつらくまた昼過ぎにはいつも木枯こがらしさわ待乳山まつちやま老樹らうじゆに、早くも傾く夕日ゆふひの色がいかにも悲しく見えてならない。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
くもはあかるし、夕日ゆふひさむ
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
玉冠たまかぶりする夕日ゆふひ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
ふねのあること……帆柱ほばしら卷着まきついたあかくもは、夕日ゆふひ餘波なごりで、わにくち晩御飯ばんごはん注込つぎこむんだわね。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あやしきなりかみりなして、胡粉ごふんぬりくり彩色さいしきのある田樂でんがくみるやう、うらにはりたるくしのさまもをかし、一けんならず二けんならず、朝日あさひして夕日ゆふひ仕舞しま手當てあてこと/″\しく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
夕日ゆふひさす白琺瑯はくはふらうの石のはし
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
はぎれてすゝきまばゆき夕日ゆふひかな
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ふと思ふ、かかる夕日ゆふひ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あか夕日ゆふひ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)