ゆう)” の例文
ゆうちゃんは、それから毎晩まいばんのように物干ものほだいがって、あおよるそらをながめながら、たかやまや、少年しょうねんのことをおもしていました。
銀のペンセル (新字新仮名) / 小川未明(著)
ゆうすなわちとくとくすなわちゆうと考えられていた。かかる時代にはよしや動物性が混じ、匹夫ひっぷゆう以上にのぼらずとも、それがとうとかった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しかし、いち自動車じどうしや手負ておひごときは、もののかずでもない、たゝかへば驕將けうしやうは、張中ちやうちうせつれなかつた。ゆうなり、またけんなるかな。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ただちに特別捜査隊を編成して、それに秘策ひさくさずけて出発させた。そして彼はゆうして、単身、青竜王の探偵事務所を訪ねた。——
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
近所きんじよ子供こどもなかで、あそんでけないのは、問屋とんやの三らうさんに、おとなりのおゆうさんでした。この人達ひとたちとうさんとおなどしでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
若し更に蘭軒の次年戊子元旦の詩註を取つて合せ看るときは、榛軒の妻ゆう来嫁らいかの後未だいくばくならずして懐胎したことが知られるであらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
みづか其斷そのだんゆうとせば、すなは(八七)其敵そのてきもつこれいからすかれ。みづか其力そのちからとせば、すなは(八八)其難そのなんもつこれ(八九)がいするかれ。
けれど、伊那丸も龍太郎も、けっして、匹夫ひっぷゆうにはやる者ではない。どんな場合にも、うろたえないだけの修養はある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
〔譯〕果斷くわだんは、より來るもの有り。より來るもの有り。ゆうより來るもの有り。義と智とをあはせて來るもの有り、じやうなり。たゞゆうのみなるはあやふし。
若者はいかに若気ていても、武士じゃほどにゆうに勇ましい捨身の言葉を吐くかと思っていたが、右衛門は低い声で
三浦右衛門の最後 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
聞ば藤澤第一番の旅籠屋はたごやにて大津屋の後家ごけゆうと云者なりとのことに重四郎は彼お勇を能々よく/\みれとし三十歳みそじ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
中には越中次郎兵衞盛次ゑつちゆうのじらうびやうゑもりつぐ、上總五郎兵衞忠光、惡七兵衞景清あくしちびやうゑかげきよなんど、名だたる剛者がうのものなきにあらねど、言はば之れ匹夫ひつぷゆうにして、大勢たいせいに於てもとよりえきする所なし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
狐の人をばかす事、伝通院でんつういん裏の沢蔵稲荷たくぞういなり霊験れいげんなぞ、こまごまと話して聞かせるので、私は其頃よく人の云うこっくり様の占いなぞ思合せて、なかばは田崎のゆうくみして
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
武村兵曹たけむらへいそう、おまへ鬼神きじんゆうがあればとて、あの澤山たくさん猛獸まうじうたゝかつてなにになる。』と矢庭やにわかれ肩先かたさきつかんでうしろ引戻ひきもどした。此時このとき猛犬稻妻まうけんいなづまは、一聲いつせいするどうなつて立上たちあがつた。
「殿様は六十五におなり遊ばす、御病気で一年越しお床に就いたっきりだ。若殿時之助ときのすけ様は二十五でまだお一人、よく出来た方だがお弱い。奥方はおゆう様とおっしゃって四十」
あるいは皇太孫の大位に登らざらんことを欲する者あり、太孫の年わかゆう乏しき、自ら謙譲して諸王のうちの材雄に略大なる者に位をゆずらんことを欲する者ありしがごときをもすいせしむ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ゆうして、そこを下れば、地底の闇に、魑魅魍魎ちみもうりょううごめく地獄巡り、水族館。不気味さに、岐道えだみちを取ってけわしい坂を山越しすれば、その山の頂上から、魂も消しとぶ逆落さかおとしの下り道。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ゆうして皆曰く、たとひるるとも其小屋に到達とうたつし、酒樽しあらば之を傾け尽し、戸倉村にかへりて其代価をはらはんのみと、議たちまち一决して沼岸をわたふかももぼつ泥濘でいねいすねうづ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
「実はな」と、新之助が、声を落して、「金さん、お前、ドスを、仰山、集めちょったろうが? それを、ゆうさんが貸して貰いたいというとるんじゃ。いんや、譲って欲しい、ちゅうて、……」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
いや、恐らく其は不可能のことゝ謂はなければならぬ。と謂つて周三は、人權を蹂躪じうりんして、お房を日蔭者ひかげものにして圍ツて置くだけのゆう氣も無かツた。これがまたあたらしい煩悶となツて、彼を惱ませる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
もとより雲州うんしうは佐々木の持国もちぐににて、塩冶は三一守護代しゆごだいなれば、三二三沢みざは三刀屋みとやを助けて、経久をほろぼし給へと、すすむれども、氏綱はほかゆうにして内おびえたる愚将なれば果さず。かへりて吾を国にとどむ。
やうゆう逸氣はやりぎは、たゞいち早く悔いぬらむ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ゆう拔群ばつくん小兒こせがれなり、尋常なみ/\なる鬼胎おにのはらより
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しゆをかばふちゆうゆう
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
次郎じろうさんは、往来おうらいちどまってていました。やはりゆうちゃんでした。もちぼうをち、片手かたてにとんぼのかごをぶらさげていました。
きれいなきれいな町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
晏子あんし莊公さうこうし、これこくしてれいしかのちるにあたつて、所謂いはゆる(七二)さざるはゆうもの
それに、おとなりのてつさんでも、そのいもうとのおゆうさんでも、祖父おぢいさんのお弟子でしとしてとうさんのおうちかよつてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あわれや山路殿には、武勇にかけては、伊勢随一の聞えもあるが、惜しいかな、匹夫ひっぷゆうとみゆる。——死ぬばかりが勇者なりと心得ておらるるとみゆる」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
若し榛軒の先妻ゆうしゆつなるれんよりして順位を論ずれば、刀自は第二女である。わたくしの此よりしもに記する所は、刀自の記憶に負ふ所のものが極て多い。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
〔譯〕君につかへて忠ならざるは孝に非ざるなり、戰陳せんじんゆう無きは孝に非ざるなりと。曾子そうしは孝子なり、其の言かくの如し。彼の忠孝兩全りやうぜんせずと謂ふは、世俗せぞくの見なり。
しかして男子としてむべきはこの種のゆうを有したからで、国がやや進歩し、法律をもって善悪曲直きょくちょく判別はんべつする時代にいたっても、依然としてなお匹夫ひっぷゆうとうとばれ
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
この頃の子供はすべての野蛮人に共通しているように、げんきょにしてこうゆうなるものであった。いざ喧嘩だとなると身構えが違ってくる。さそりのように少年に飛びついた。
三浦右衛門の最後 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
離縁りえんして昌次郎へつかは見返みかへらざるはしんなり罪なくして牢屋につながれ薄命はくめい覺悟かくごして怨言ゑんげんなきはれいなり薄命はくめいたんじて死を定めしはゆうなり五常ごじやうの道にかなふ事かくの如く之に依て其徳行とくかう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかりと雖も前途ぜんとけんます/\けんにして、人跡なほ未到のはたして予定にちがはざるなきや、之をおもへば一喜一憂交々こも/\いたる、万艱をはいして前進ぜんしんし野猪のゆうを之れたつとぶのみと、一行又熊笹くまささ叢中さうちうに頭をぼつして
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
中国の大藩の浪人者で相当の貯蓄たくわえを持っているらしく、手習いを教えるでもなく、剣術を指南するでもなく、碁と、謡曲と、学問にって、心静かに日を送っている、梶四郎兵衛の娘おゆうの美しさは
よう無きゆう逸気はやりぎは、たゞいち早く悔いぬらむ。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
ゆうさん、……勇さん、……」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「やはりほたるは、だめなのかなあ。」と、ゆうちゃんはおもいました。のこった一ぴきをどうしたらいいかとおかあさんに相談そうだんしました。
少年の日二景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
是に於て榛軒の新家庭には妻ゆう、弟柏軒、妹ちやうの三人があつて、主人を併せて四人をなしてゐた筈である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
〔譯〕れ無ければ則ち其身をず、即ち是れなり。物無ければ則ち其人を見ず、即ち是れゆうなり。
伯父をぢさんにいて東京とうきやうとうさんの道連みちづれには、きちさんといふ少年せうねんもありました。きちさんはおとなりの大黒屋だいこくや子息むすこさんで、てつさんやおゆうさんのにいさんにあたひとでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
承知致さぬうちと敵の名前は申されぬ善惡共ぜんあくとも御承知下されたる言御挨拶あいさつの上御話申べしといふに重四郎成程御道理もつともの儀武士たる者は義を見てざるはゆうきなりと云詞をたうと拙者それがし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
はなやかならぬ、またゆうにのみはやれぬ、軍師ぐんしのつらい立場たちばはそこにあるのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じゅうごうを制す、赤子せきしうて賁育ほんいくそのゆううしなう」と。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
おもひはこれに養はれ、心はためにゆうをえむ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
唐人とうじんゆうという大変な女ですよ」
一行皆なゆうして壮快さうくわいさけぶ。
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
なるほど、いつかないということが、ゆうちゃんにもわかったから、このうえ無理むりにおとうさんにおねがいしても、むだだとさとったのでした。
青い石とメダル (新字新仮名) / 小川未明(著)
猛然もうぜんゆうして、じゃまになるのどうでをふりほどいた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おもひはこれに養はれ、心はためにゆうをえむ。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)