全体ぜんたい)” の例文
旧字:全體
ことに去年きょねんからのここら全体ぜんたい旱魃かんばつでいま外へあそんで歩くなんてことはとなりやみんなへわるくてどうもいけないということを云った。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
しかし外面おもてからたのとはちがって、内部なかはちっともくらいことはなく、ほんのりといかにも落付おちついたひかりが、へや全体ぜんたいみなぎってりました。
はるになると、はなきました。ちょうどそのくに全体ぜんたいはなかざられるようにみえました。なつになると、青葉あおばでこんもりとしました。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
坊主ばうずめうな事をふて、人の見てまいでは物がはれないなんて、全体ぜんたいアノ坊主ばうず大変たいへんけちかねためやつだとふ事を聞いてるが
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
この感覚かんかくうちにおいて人生じんせい全体ぜんたいふくまっているのです。これをにすること、にくむことは出来できます。が、これを軽蔑けいべつすることは出来できんです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
やま全体ぜんたいうごいたやうだつた。きふ四辺あたり薄暗うすくらくなり、けるやうなつめたかぜうなりがおこつてきたので、おどろいたラランは宙返ちうがへりしてしまつた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
製作せいさくに付きては内部の充實じうじつしたる物と空虚くうきよなる物との二種有り形式けいしきに付きては全体ぜんたいふとりたる物と前後よりし平めたるが如き物との二種有り。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
地気天に上騰のぼりかたちなして雨○雪○あられみぞれひようとなれども、温気あたゝかなるきをうくれば水となる。水は地の全体ぜんたいなればもとの地にかへるなり。
「ああ、」とおとうさんがった。「それは本当ほんとうこまったね。全体ぜんたい、おれにだまってくなんてことはありやしない。」
全体ぜんたい誰に頼まれた訳でもなく、誰めてくれる訳でもなく、何を苦しんで斯様こんなことをするのか、と内々愚痴ぐちをこぼしつゝ、必要に迫られては渋面じゅうめん作って朝々通う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
全体ぜんたい箱根はこねでも、塩原しほばらでも、あるひ木曾きそ桟橋かけはしでも、実際じつさいにしろ、にせよ、瑠璃るりそゝぎ、水銀すゐぎんなが渓流けいりうを、駕籠かごくるまくのは、樵路せうろ桟道さんだうたかところ
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
全体ぜんたいだれに頼まれた訳でもなく、たれめてくれる訳でもなく、何を苦しんで斯様こんな事をするのか、と内々ない/\愚痴ぐちをこぼしつゝ、必要に迫られては渋面じふめんつくつて朝々あさ/\かよふ。
水汲み (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
學士がくしまゆしはめてれはこまつたもの、全体ぜんたい健康じようぶといふたちでなければ時候じこうかはなどはことさら注意ちういせねばるし、おたみどの不養生ふやうじようをさせ給ふな、さてとれもきう白羽しらはちて
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
全体ぜんたい綜合そうがふしたところで、わたしあたまのこつた印象いんしやうふのは——はじめての出会であひ小川町をがはちやうあたりの人込ひとごみのなかであつたらしく、をんなそで名刺めいしでも投込なげこんだのがそもそもの発端はじまりで、二度目どめおなとほりつたとき
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
というひびきが、列車れっしゃ全体ぜんたいをつつむようにとどろきわたった。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
「おおむぞやな。な。何ぼがいだがな。さあさあ団子だんごたべろ。食べろ。な。今こっちを焼ぐがらな。全体ぜんたい何処どこまで行ってだった。」
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
へーえ、それうまい事を考へたが、全体ぜんたい幾許いくら置いてたんだ。レ「ア、かね勘定かんぢやうずにた……それではなんにもなりませぬ。 ...
失敬しっけいな!』と、一言ひとことさけぶなりドクトルはまどほう退け。『全体ぜんたい貴方々あなたがたはこんな失敬しっけいなことをっていて、自分じぶんではかんのですか。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ただうみに一そう漁船ぎょせんもなく、またおかに一けん人家じんかえないのが現世げんせちがっているてんで、それがめになにやら全体ぜんたい景色けしき夢幻ゆめまぼろしちかかんじをあたえました。
石錐 石鏃せきぞく類品るゐひんにして、全体ぜんたいぼうの形を成せる物有り、又一方のみ棒の形を成し一端は杓子しやくしの如くにふくらみたる物有り。是等これらきりの用を爲せしものなるべし。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
食物しょくもつこまるときは、美代子みよこうちけんばかりのことでなく、まち全体ぜんたい人々ひとびとこまることですから、いつまでも食物しょくもつがこなくて、すまされるわけはありませんでした。
ごみだらけの豆 (新字新仮名) / 小川未明(著)
西蔵チベット世界せかい屋根やねといはれてゐるほどで、くに全体ぜんたいたか山々やまやまつらなりだ。その山々やまやまなかでもぐんいてたかく、西蔵チベット屋根やねともいはれるのが、印度インドとの国境こくきやうまたがるヱヴェレストざんである。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
全体ぜんたい少しもくさらず、かたち今の船にことなるのみならず、金具かなぐを用うべき処みなくぢらひげを用ひて寸鉄すんでつをもほどこしたる処なし。木もまた何の木なるをべんずる者なく、おそらくは異国いこくの船ならんといへりとぞ。
如何いかんとなれば、人間にんげん全体ぜんたいは、うえだとか、さむさだとか、凌辱はずかしめだとか、損失そんしつだとか、たいするハムレットてき恐怖おそれなどの感覚かんかくから成立なりたっているのです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
第三の土偶どぐうは面の上下共凹みたるせんにて界されたれど、全体ぜんたいの形状境界の位置共ゐちとも他の土偶とひとしくして、示す所は同じく頭巾のへりにて面の上下をひたる形と思はる。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
また、なみは、このしま全体ぜんたいかくしてしまおうとするように、そして、なにもかもいっさいをくろおおきなうみくちへ、のみんでしまおうとするようにみられたのでした。
小さな金色の翼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
(私は全体ぜんたい何をたずねてこんな気圏きけんの上の方、きんきんいたむ空気の中をあるいているのか。)
インドラの網 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
全体ぜんたい少しもくさらず、かたち今の船にことなるのみならず、金具かなぐを用うべき処みなくぢらひげを用ひて寸鉄すんでつをもほどこしたる処なし。木もまた何の木なるをべんずる者なく、おそらくは異国いこくの船ならんといへりとぞ。
須利耶さまはおくさまとご相談そうだんで、何と名前をつけようか、三、四日お考えでございましたが、そのうち、話はもう沙車さしゃ全体ぜんたいにひろがり、みんなは子供を雁の童子とびましたので
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「あのえだはなくのは、いつのことか。」と、ちらちらとゆきに、そとをながめながらおもったのが、はや、くっきりとえだ全体ぜんたいにうす紅色べにいろびて、さんごじゅるようながするのです。
汽車は走る (新字新仮名) / 小川未明(著)
「まあそうですね。しかしひばりのことなどはまあどうなろうとかまわないではありませんか。全体ぜんたいひばりというものは小さなもので、空をチーチクチーチクぶだけのもんです。」
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
からだは全体ぜんたいが、ほそくろかったけれど、だけは、ひかっていました。
雪だるま (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうかと思うと水色のほのおが玉の全体ぜんたいをパッと占領せんりょうして、今度こんどはひなげしの花や、黄色のチュウリップ、薔薇ばらやほたるかずらなどが、一面いちめん風にゆらいだりしているように見えるのです。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
今日もをパチパチやらかしてますよ、僕のあなたに物を言ってるのはわかっていても、何を言ってるのか風でいっこう聞こえないんですよ、けれども全体ぜんたい、あなたに聞こえてるんですか
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
全体ぜんたい、竜というものはねむるあいだは形がへびのようになるのです。
手紙 一 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
全体ぜんたい駄目だめです。どいつも満足まんぞくの手のあるやつはありません。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
全体ぜんたいどごさ行ぐのだべ。」
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
全体ぜんたいだれがたべるのだ
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)