両方りょうほう)” の例文
旧字:兩方
みこはどんどん土をかけられて、こしまでお埋められになったとき両方りょうほうのお目の玉が飛び出して、それなり死んでおしまいになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
両方りょうほう軽業師かるわざしのするのをたものは、あたまをかしげました。それほど、この二人ふたりげいは、人間にんげんばなれがしているといってよかったのです。
二人の軽業師 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とさけびましたが、もうっつきませんでした。両方りょうほうのほおへ二つこぶをぶらげて、おいおいきながら、山をくだって行きました。
瘤とり (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ペッ、ペッ、口のつばきをきちらして、こんどは、あらいかけていた焔硝えんしょういぶりの顔のしずくを両方りょうほうそできまわしている……。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのへんは、単線たんせんで、一筋ひとすじ線路せんろきりありませんでした。両方りょうほうから汽車が走ってくれば、ましょうめんから衝突しょうとつするばかりです。
ばかな汽車 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そしてそのなみだが、王子おうじはいると、たちま両方りょうほういて、まえとおり、よくえるようになりました。
シューラはいそいでポケットの中から、この年頃としごろの男の子につきものになっている他愛たあいのない品々しなじなを、すっかり出して見せた——それから両方りょうほうのポケットもひっくりかえした。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
ジョバンニはまだあつちちびん両方りょうほうのてのひらでつつむようにもって牧場ぼくじょうさくを出ました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
評判娘ひょうばんむすめのおせんちゃんだ。両方りょうほうげてわるかったら、かたぽうだけでもようがしょう」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
あるとき、となりくに戦争せんそうをしました。それは、いままでにないおおきな戦争せんそうでありました。そして両方りょうほうくに兵隊へいたいが、たくさんにました。
強い大将の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
私の汽車から、火夫かふが一人おりていきました。見ると、むこうの汽車からも火夫かふが一人おりてきます。両方りょうほうからやっていきました。
ばかな汽車 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
どちらもけずおとらぬえらいちからでしたから、えいやえいや、両方りょうほうあたまりこをしているうちに、けかかって、にわとりきました。
雷のさずけもの (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そうほうのなか板挟いたばさみとなって、ややしばらく、うでをくんでしまったが、やがて、大久保おおくぼがたの者と忍剣にんけんたちの両方りょうほうたいして
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんともえずさびしい気がして、ぼんやりそっちを見ていましたら、こうの河岸かわぎしに二本の電信でんしんばしらが、ちょうど両方りょうほうからうでを組んだように赤い腕木うでぎをつらねて立っていました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そういって、旅人たびびとは、おもしたように、両方りょうほうのたもとをさぐり、また、ふところなどをさがしてこまったなというようなかおつきをしたのです。
その日から正直になった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
といいながらうりをりますと、中にはあんじょう小蛇こへびが一ぴきはいっていました。ると忠明ただあきらのうったはりが、ちゃんと両方りょうほうの目にささっていました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
両方りょうほうからぶっつからないうちにとめる、そのわずかなかねあいです。私たちはもう生きた心地ここちもしませんでした。
ばかな汽車 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
両方りょうほうのあいだに立って、かれがとうわくのうでぐみをかたくむすんだ時
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蟻の子供らが両方りょうほうから帰ってきました。
ありときのこ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
しかし、そのときのさむさというものは一通ひととおりでなくて、からなみだは、すぐにこおって両方りょうほうはふさがってしまいました。
春になる前夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それだけでもふしぎなのに、そのちゃがまのもの両方りょうほう唐傘からかさをさしておうぎひらいて、つなの上に両足りょうあしをかけました。
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
すずめはあしをあげてをぬぐおうとしましたが、このときは、はや両方りょうほうあしえだうえしばりつけられたように、こおりついてはなれませんでした。
春になる前夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
むすめのふたおやは、もうとてもたすかる見込みこみがないとあきらめて、両方りょうほうきはらしていました。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そして、それでがきえてしまうのだ。なぜって、両方りょうほうからので、空気くうきがあつくなって、まんなか空気くうきがなくなるからだ。
赤土へくる子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
両方りょうほう西にしひがしかれてにらみって、いまにもびかかろう、いかかろうと、すきをねらっているところへ、ひょっこりおてら和尚おしょうさんが、はなしいて仲裁ちゅうさいにやってました。
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「おじいさんか……。」といって、若者わかものは、かおをのぞくと、いつのまにかひどくおいぼれて、両方りょうほうくさっていました。
なつかしまれた人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
大工だいくきゅうにこわくなって、そっと両方りょうほうの目をおさえました。
鬼六 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
さびしいやまあいだで、両方りょうほうにはまつや、いろいろな雑木ぞうきのしげったやまかさなりっていました。そして、ただ一筋ひとすじほそみちたにあいだについていました。
子供の時分の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは、もうふゆちかい、あさのことでした。一ぴきのとんぼは、つめたいつちうえちて、じっとしていました。両方りょうほうはね夜露よつゆにぬれてしっとりとしている。
寒い日のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
はきはきはなしをしていたひでちゃんは、きゅうくちをつぐんで、両方りょうほうのほおをあかくしながら、たっちゃんのかおました。そして、わらって、さすがにだまっていました。
二少年の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、おばあさんもまたしあわせなひとではありませんでした。ふとわずらって、それがだんだんわるくなって、ついに両方りょうほうともえなくなってしまったのです。
おばあさんと黒ねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしたちのたのは、しろちいさなおじいさんでした。」と、両方りょうほう運転手うんてんしゅは、はっきりとこたえました。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ここはみやこからとおい、国境こっきょうであります。そこには両方りょうほうくにから、ただ一人ひとりずつの兵隊へいたい派遣はけんされて、国境こっきょうさだめた石碑せきひまもっていました。おおきなくに兵士へいし老人ろうじんでありました。
野ばら (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるのことです。りっぱな、おじょうさまの馬車ばしゃもんまえまると、おじょうさまは、黒髪くろかみ両方りょうほうのふくよかなかたみだした、半裸体はんらたいわかおんなをつれて、おうちなかへはいられました。
初夏の空で笑う女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あくるばんは、あまり両方りょうほうとも、前夜ぜんやのようにはよくひかりませんでした。自然しぜんいえとして、かわうえや、そらんでいるものを、せまいかごのなかにいれたせいでもありましょう。
海ぼたる (新字新仮名) / 小川未明(著)
同時どうじに、かれは、戦時せんじ日本にっぽん勇敢ゆうかん少年工しょうねんこうであったのです。きゅうに、かれあしにはちからはいったし、両方りょうほううでは、かたくなりました。まちはいると、ラジオの愛馬進軍歌あいばしんぐんかがきこえてきました。
夕焼けがうすれて (新字新仮名) / 小川未明(著)
かおもはっきりとわからなかったが、どうやらおんな両方りょうほうともえなかったようです。
ある冬の晩のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひろ野原のはらはしんとして、だれ一人ひとりとおるものもなかったのです。くろ常磐木ときわぎもりこうにだまってきでています。かぜ中空なかぞらをかすめて、両方りょうほうみみれるようにさむかったのであります。
酔っぱらい星 (新字新仮名) / 小川未明(著)
信吉しんきちは、手紙てがみふところにしまって、両方りょうほうあかくしながら、しばたいていました。
風雨の晩の小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
いまえたのでは、両方りょうほうそんがゆく。かねさえたくさんつけてもらえば、えないこともないが、このふゆ、うんとまぐさをわしてやすませておやんなさい。そうすれば、まだ来年らいねんはたらかされる。
百姓の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
小僧こぞうは、主人しゅじんにいいつかって、両方りょうほうのかごにいくつかのすいかをけていれました。それをかついで、まちなかってあるきました。また、さびしい屋敷町やしきまちほうへと、はいっていったのであります。
初夏の不思議 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とくちゃんは、なかなかのひょうきんもので、両方りょうほう親指おやゆびくちなかれ、二ほんのくすりゆびで、あかんべいをして、ひょっとこのめんをしたり、はんにゃの似顔にがおをしてせて、よくひとわらわせました。
春の日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はたけには、はないていましたから、そのはなたずねて、やまから小鳥ことりんできたのだろうとおもって、いいなきごえのするほう見向みむきますと、おじいさんが、たくさんのとりかごをさおの両方りょうほうにぶらさげて
酔っぱらい星 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おっと病気びょうきをしてんでしまいました。まもなくわたしわずらって、両方りょうほうともえなくなってしまいました。わたしは、二人ふたり子供こども親類しんるいにあずけました。その親類しんるいは、しんせつではありませんでした。
塩を載せた船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おとうとは、だまっていました。両方りょうほうからなみだひかってながれました。
村の兄弟 (新字新仮名) / 小川未明(著)
女乞食おんなこじきは、たちまち、両方りょうほういっぱいに、なみだをためて
奥さまと女乞食 (新字新仮名) / 小川未明(著)
両方りょうほうはねは、暴風あらしにあったとみえてつかれていました。
小さな赤い花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
図画ずが先生せんせいは、両方りょうほうぶんをきいていられたが
眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)