すこし)” の例文
お前が居無いなくなッた時の様に怒ッたゞろう、私まで叩き出すッて、チイ/\パア/\言たがネ、腹立はらたった時やアすこしも分らんネ、いうことが
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
独逸風どいつふうにしますと白ソースの中へケッバスといって小さい木の実とホンのすこしの酢を加えますが、下手にこしらえると乳が寄っていけません。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
お島は夜を待つまもなく、小僧の順吉に脊負しょいださせた蒲団ふとんに替えた、すこしばかりの金のうちから、いくらか取出してそれを渡した。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
案内も無くかかる内証の席に立入りて、彼等のおのおの心得顔なるは、必ず子細あるべしと思ひつつ、彼はすこしく座をゆるぎてかたちを改めたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
これではいかぬと思うて、すこしく頭を後へ引くと、視線が変ったと共にガラスのきずの具合も変ったので、火の影は細長いかぎのような者になった。
ランプの影 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
真昼の緋桃ひももも、その娘の姿に露の濡色を見せて、髪にも、もとどりにも影さす中に、その瓜実顔をすこしく傾けて、陽炎を透かして、峰の松を仰いでいた。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれどもぼく大島小學校おほしませうがくかう出身しゆつしんなることを、諸君しよくんごと立派りつぱ肩書かたがきもつらるるうち公言こうげんしてすこしはぢず、むしほこつて吹聽ふいちやうしたくなるのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
聞くに今日商賣の出先でさき神田紺屋町のうらにて職人衆が酒を飮て居ながら斯樣々々申されしが私にはすこしわからず何の事なるやととふに長兵衞は少し笑ひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
吾は弱い、弱いけれどもこんな事が出来なくてどうする? これからすこし強くなろう。よし今度はぜひ戸を叩こう。
愛か (新字新仮名) / 李光洙(著)
サラバすこしく道をまげても当路へ出、国家のために力を尽し名をも後世にあげまほしきにて、みずから進んでもとむる人もあるべし、この二人は跡同じうして志異なりというべし
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
余が眼目をさへくらませし程のやつ、汝等なむぢらが欺かれたるはもつとものことなり、すこし咎申付とがめまうしつくる所存なし、しかし汝は格別世話にもなりたる者なれば、汝が菩提所ぼだいしよへなりとも
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
ハバトフはこのときすこしばかりけて室内しつないのぞいた。イワン、デミトリチは頭巾ずきんかぶって、みょう眼付めつきをしたり、ふるえあがったり、神経的しんけいてき病院服びょういんふくまえわしたりしている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
問ひくるものとては梢を傳ふ猨猴ましらなれば、すこしとゞまることなくかへるさ急ぐ恨みなる哉。
其後はすこしく硬きもの黍飯等を用うる時は、必ず胃痛下痢等を発する事となりたり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
まだ仕合しあわせに足腰も達者だから、五十と声がかかっちゃあ身体からだ太義たいぎだが、こうして挊いで山林方やまかたを働いている、これもみんなすこしでも延ばしておいて、源三めにって喜ばせようと思うからさ。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
女尊男卑の風俗に驚一寸ちょっとした事でも右の通りの始末で、社会上の習慣風俗はすこしも分らない。る時にメールアイランドの近処きんじょにバレーフォーとう処があって、其処そこ和蘭オランダの医者が居る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
長評定ながひょうじょうこらした結果、止むを得ないから、見付出した一方口を硫黄でえぶし、田崎はうちにある鉄砲を準備し、父は大弓だいきゅうに矢をつがい、喜助は天秤棒てんびんぼう、鳶の清五郎は鳶口とびぐち、折から、すこしおくれて
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
つたへていふ、白髪はくはつ老翁らうをうへいをもちてなだれにくだるといふ。また此なだれ須川村の方へ二十町余の処真直まつすぐつき下す年は豊作ほうさく也、菖蒲村の方へなゝめにくだす年は凶作きやうさく也。其験そのしるしすこしたがふ事なし。
人は宇宙の創造に参与せずして少しもこの事を知らない。そして今いたずらにその貧弱なる智嚢ちのうを絞りつくして宇宙と造化の秘義について知らんとし、すこしばかりの推測の上に蝶々ちょうちょう喃々なんなんする。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
「つもりでなければ、もうすこしいろよ」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すこしく待ちて相催すなかれ
阿英 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
例のその日はたびめぐりて今日しもきたりぬ。晴れたりし空は午後より曇りてすこし吹出ふきいでたる風のいと寒く、ただならずゆる日なり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
冷した珈琲はやっぱり平日いつもの通り小匙二杯の珈琲へホンのすこしの水と玉子のからを二つぶり細かく砕いて入れて火の上でき廻しながらせんじます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
女が今の男に落籍ひかされてから、彼はすこしばかりの資本もとでをもらって、夤縁つてのあったこのS——町へ来て、植木に身を入れることになったのであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
女房にわたすこしだが單物ひとへものでもかはれよと無理むりふところへ入れ此事は決して沙汰さたなしにたのむなりと言捨いひすてて立歸りしが途中には穀平の丁稚でつち音吉に行合けるに重四郎聲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
れいなるかなこの石、てんあめふらんとするや、白雲はくうん油然ゆぜんとして孔々こう/\より湧出わきいたにみねする其おもむきは、恰度ちやうどまどつてはるかに自然しぜん大景たいけいながむるとすこしことならないのである。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
何、竹にして売る方がおあしになるから、竹の子は掘らないのだと……すこしく幻滅を感じましたが。
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もうるのだろうか、イヤそうではない、今ヤット九時をすこし過ぎたばかりである。それに試験中だから未だ寐ないのにはきまっている。多分淋しい処だから早くから戸締とじまりをしたのだろう。
愛か (新字新仮名) / 李光洙(著)
橋の上下すこしの間は両岸とも材木問屋多ければ、いかだの岸に繋がれぬ日もなし。
水の東京 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
すこしく眠るが如くにして、漸く本心に復したるを待って、或は湯を呑み薯を食するに其あじわいの言うべからざるの美を覚えて、且つ元気つきて、れより採りたる蕨蓬を選びわけて煮るには半日はんじつを費す。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
すこしして行て見ればグウ/″\いびきをして居る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
宮が前非を悟つた為に、僕が失つた者を再び得られる訳ぢやない、さうして見れば、僕の今日こんにちはそれにつてすこしも慰められるところは無いのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
長崎でも同じ角煮といいながらうちによってすこしずつ料理方りょうりかたが違う。僕の家のは支那人直伝の東坡肉とうばにくというのだ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
何者にか聞れし一向蹤跡あとかたなき事なり拙者毛頭もうとう左樣さやうの事存じ申さずと虚嘯そらうそぶにも不束ふつつかなる挨拶なるにぞ六郎右衞門はむつとし彼奴きやつ多分の金子を掘り出しながらすこしの配分を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
炭を買うからすこしばかり貸せといったら一俵位なら俺家おれんとこの酒屋で取って往けとおおきなこと言うから直ぐ其家そこうちで初公の名前で持て来たのだ。それだけあれば四五日はるだろう
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
小野田の話によると、父親の財産として、すこしばかりの山が、それでもまだ残っていると云うのであった。その山を売りさえすれば、多少いくらかの金が手につくというのであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
牛込築土前うしごめつくどまへの、大勝棟梁だいかつとうりやうのうちへ出入でいりをする、一寸ちよつと使つかへる、岩次いはじつて、女房持にようばうもち小兒こども二人ふたりあるのがた。む、ふ、つ、道樂だうらくすこしもないが、たゞ性來しやうらい釣好つりずきであつた。
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
彼が主人の止めるのも聞かないでここを出たのは、十時をすこし過ぎた頃であった。
愛か (新字新仮名) / 李光洙(著)
さもないと施術の時臓腑ぞうふが膨脹して非常に困難だし、それに血管の動作が激烈だから出血しやすい。出血は施術に大禁物だいきんもつすこしでも出血したらモー施術が出来ん。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
五年目ごねんめには田地でんち取返とりかへし、はたけ以前いぜんよりえ、山懷やまふところ荒地あれち美事みごと桑園さうゑんへんじ、村内そんないでも屈指ゆびをり有富いうふう百姓ひやくしやうおはせたのです。しかもかれ勞働辛苦らうどうしんくはじめすこしかはらないのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
牛込築土うしごめつくど前の、此の大勝棟梁のうちへ出入りをする、一寸ちょっと使へる、岩次いわじと云つて、女房持、小児こどもの二人あるのが居た。飲む、買ふ、つ、道楽はすこしもないが、たゞ性来の釣好きであつた。
夜釣 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
何処どこから現われたのかすこしも気がつかなかったので、あだかも地の底から湧出わきでたかのように思われ、自分は驚いてく見ると年輩としは三十ばかり、面長おもながの鼻の高い男、背はすらりとした膄形やさがた
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
『イヤ私だって不動様を信じないとは限りません。だから母上おっかさんまアその理由いわれを話て下さいな。如何どんなことか知りませんが、親子の間だからすこしあかされないようなことは無いでしょう。』
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
自分は彼の差したさかずきを受け、すこしずつすすりながら彼の言うところきいて居たが、聞くに連れて自分は彼を怪しむ念の益々ますますたかまるを禁じ得なかった。けれども決して彼の秘密に立入たちいろうとは思なかった。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
半時間はんじかん以上いじやうたねば人車じんしやないといて茶屋ちやゝあが今度こんどおほぴらで一ぽんめいじて空腹くうふく刺身さしみすこしばかりれてたが、惡酒わるざけなるがゆゑのみならず元來ぐわんらい以上いじやうねつある病人びやうにん甘味うまからうはずがない。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
そして可憐かれんで正直で怜悧れいりな女であるが不思議と関係のない者からはいやしい人間のやうに思はれる女で実に何者にかのろはれて居るのではないかと思つた。しかし銀之助には以前もとの恋のこゝろすこしもなかつた。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)