たま)” の例文
先年せんねん自分じぶんに下されしなり大切の品なれども其方そのはうねがひ點止もだし難ければつかはすなりと御墨付おんすみつきを添てくだんの短刀をぞたまはりける其お墨付すみつきには
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
もっとも些少さしょう東西ものなれども、こたびの路用をたすくるのみ。わがわたくし餞別はなむけならず、里見殿さとみどのたまものなるに、いろわで納め給えと言う。
海のほとり (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
待給まちたま諸共もろともにのこヽろなりけん、しのたまはりしひめがしごきの緋縮緬ひぢりめんを、最期さいごむね幾重いくへまきて、大川おほかわなみかへらずぞりし。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
メシは本来「きこしめす」また「めしあがる」のメスから出た語であって、ちょうど「たまわる」から出たタベルに相対する敬語であった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
またその後まもなく、天平元年四月百官にたまわれるみことのりには「有習異端、蓄積幻術厭魅えんみ咒咀じゅそ、害傷百物、首斬従流」
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
十月二十九日朝御暇乞おんいとまごいに参り、御振舞おんふるまいに預り、御手おんてずから御茶を下され、引出物ひきでものとして九曜のもん赤裏の小袖二襲ふたかさねたまわり候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
古志こし長岡魚沼ながをかうをぬまの川口あたりにて漁したる一番の初鮏はつさけ漁師れふし長岡ながをかへたてまつれば、れいとしてさけひきに(一頭を一尺といふ)米七俵のあたひたまふ。
とおりおききしたいことをおききしてから、お暇乞いとまごいをいたしますと『また是非ぜひうぞちかうちに……。』という有難ありがたいお言葉ことばたまわりました。
たまわった院宣は、そちも拝読しておくがよい。そしてすぐ全軍の船へつたえろ。終ったらすぐともづないて、筑紫へくだるぞ」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのため貴殿にも何事も洩らさず同婦人に自由行動をらせ候段、何卒なにとぞ不悪あしからず御諒恕ごりょうじょたまわりたく、貴殿の御骨折に対しては警察当局も感謝致居候いたしおりそうろう
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
アア彼もしわれらに親善ならんには彼の成功はなかりしならん、彼の成功は、全く自分の主義をて、意気を失いしより得たるたまものなりけり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
極寒極暑ごっかんごくしょの世界に居るものの知らないところで、温帯ことに我が日本に特に恵まれた自然のたまものではないでしょうか。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
其の病の原因もとはと、かれく知る友だちがひそかに言ふ、仔細あつて世をはようした恋なりし人の、其の姉君あねぎみなる貴夫人より、一挺いっちょう最新式の猟銃をたまはつた。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一日、聖上せいじやう親臨しんりんして負傷者をし、恩言おんげんたまふ、此より兵士負傷者とならんことを願ふ。是に由つて之を觀れば、兵をぎよするも亦情に外ならざるなり。
すると癇癪持かんしゃくもちきみは真二つに斬りさげんと刀のつかに手をかけたのを、最愛のおんなかたわらから止めたので、命だけはたまわって、国外に追放の身となったのである。
森の妖姫 (新字新仮名) / 小川未明(著)
御手紙ありがたく拝見つかまつりました。結構なる御見舞品までたまわり御厚情の程感謝申し上げます。早速いただきましたが風味もよく非常に結構でございます。
菜摘邨来由なつみむららいゆ」と題する巻物が一巻、義経公より拝領の太刀たち脇差わきざし数口、およびその目録、つばうつぼ陶器とうき瓶子へいし、それから静御前よりたまわった初音はつねつづみ等の品々。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「お供のうち、しかるべき名あるお方を、一両人たまわりたく、さすれば、そのお方を、武家の手に渡し……」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかれども多く謀画ぼうかくを致すのみにして、ついに兵に将として戦うをがえんぜす、兵器をたまうもまた受けず。けだし中年以後、書を読んで得るあるにる。又一種の人なり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「なにそんな事があるものか。あの人たちは大変正直な人だ」といいますと、老婆は本気になりまして「南無三宝クンジョスム、もしこの事がいつわりであるならば私に死をたまえ」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
草深い山里の破寺やれでらでなにも知らさずに朽ちさせてしまうという約束で、その子をお沢にたまわった。
顎十郎捕物帳:01 捨公方 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
さりとて聖母の天上の飯をたまふまでは、此世の飯をもらふすべなくては叶はず。手にもあれ、足にもあれ、人の目に立つべき創つけて、我等が群に入れよといふ。をぢ。
時にみことのりあって酒をたま肆宴とよのあかりをなした。また、「汝諸王卿等いささか此の雪をしておのおのその歌を奏せよ」という詔があったので、それにこたえ奉った、左大臣橘諸兄の歌である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
先生すみやか肯諾こうだくせられ、わずか一日にして左のごとくの高序こうじょたまわりたるは、実に予の望外ぼうがいなり。
時々は酒をたまはり缶詰を賜はりなどす。それさへ人には頼まで自ら持て来て自ら賜はりぬ。
従軍紀事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
教授は有望だと云う。下宿では小野さん小野さんと云う。小野さんは考えずに進んで行く。進んで行ったら陛下から銀時計をたまわった。浮かび出したは水面で白い花をもつ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ざんうこと、死をたまうことに対してなら、彼にはもとより平生から覚悟ができている。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
さりながらたとえ今にても、なんじが神に求むるところのものは、神なんじにたまうと知る
さざなみや志賀の浦曲うらわの、花も、もみじも、月も、雪も、隅々まで心得て候、あわれ一杯の般若湯はんにゃとうと、五十文がほどの鳥目ちょうもくをめぐみたまわり候わば、名所名蹟、故事因縁の来歴まで
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
所領は下總しもふさ、そこには小さいながら陣屋があり、東照權現——と神樣扱ひにされてゐる徳川家康からたまはつた所領永代安堵の御墨附は、何物にも換へ難い家寶になつてゐるのですが
僕は無上によろこばしくなって、つかつかとその店へ入って、僕自身の理髪日を繰上げてまでも、店主坂下君を煩わし、壁間に掲げてある、東京美髪協会総裁×爵大××麿閣下よりたまわりし
青バスの女 (新字新仮名) / 辰野九紫(著)
一五五かうかうの人ののはかなくてあるが、後見うしろみしてよとてたまへるなり。
憶出おもいだせばこの琴はまだわたしが先生の塾にった時分何時いつぞや大阪おおさかに催された演奏会に、師の君につれられて行く時、父君ちちぎみわたしの初舞台のいわいにと買いたまわれたものだ、数千すせん人の聴客をもって満たされた
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
「右大臣師房卿もろふさきょう——後一条天皇ごいちじょうてんのうのときはじめて源朝臣みなもとあそんせいたまわる」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
たまひ、なんちこれもつ桃奴もゝめ腰骨こしぼね微塵みぢんくたけよとありければ
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
いざさらばわれらにたまへ、幻惑げんわく伴天連ばてれん尊者そんじや
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いいがたいさきわいのたまものである。
とありがたいお言葉をたまわった。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ただたまへ、眞夏まなつ麻耶姫まやひめ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
花を摘みてたまへば。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
格別かくべつに惜まれけれども主税之助は至て愚智ぐち短才たんさいに在ながら其心は大惡の生付うまれつきゆゑさらに取處もなくせめ半知はんぢも殘したまはる樣にと大岡殿肺肝はいかん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「——お取次ぎをたまわれ。遥々はるばる奥州みちのくより駈け下って参った弟の九郎です。兄頼朝へ、九郎が参ったと、お伝え下されませ」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
密訴みつそをした平山と父吉見とは取高とりだかまゝ譜代席小普請入ふだいせきこぶしんいりになり、吉見英太郎、河合八十次郎やそじらうおの/\銀五十枚をたまはつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
がいむらさきしやべて四十里しじふり歩障ほしやうつくれば、そうにしきへてこれ五十里ごじふりる。武帝ぶていしうとちからへて、まけるなとて、珊瑚樹さんごじゆたか二尺にしやくなるをたまふ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
〔評〕南洲、顯職けんしよくに居り勳功くんこうふと雖、身極めて質素しつそなり。朝廷たまふ所の賞典しやうてん二千石は、こと/″\く私學校のつ。貧困ひんこんなる者あれば、のうかたぶけて之をすくふ。
ただうえ神界しんかい真心まごころこめて祈願きがんするだけで、その祈願きがんかなえば神界しんかいからあめたまわることのようでございます。
他に新姻ありし家あれば又いた式前しきまへのごとし。此神使はかの花水をたまふ事を神より氏子へのり給ふの使つかひ也。
にとりつあさからぬおこゝろかたじけなしとて三らうよろこびしとたへたまほかならぬひと取次とりつぎことさらうれしければ此文このふみたまはりて歸宅きたくすべしとて懷中ふところおしいれつゝまたこそと
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「菜摘川のほとりにて、いずくともなく女のきたそうらいて、———」と、謡曲ではそこへ静の亡霊ぼうれいが現じて、「あまりに罪業ざいごうのほど悲しく候えば、一日経書いてたまわれ」
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
孝孺の学徳ようやく高くして、太祖の第十一子蜀王しょくおう椿ちん、孝孺をへいして世子のとなし、尊ぶに殊礼しゅれいもってす。王の孝孺にたまうの書に、余一日見ざれば三秋の如き有りの語あり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)