せい)” の例文
是は稲種いねだねの「実翻みこぼせい」とも名づくべきものと関係があり、いずれの地の農業もかつて一度はそういう方法を行ったとも考えにくい。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
單純たんじゆんなレウマチスせい頭痛づつうではあつたが、りよ平生へいぜいからすこ神經質しんけいしつであつたので、かりつけ醫者いしやくすりんでもなか/\なほらない。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
この時代の代表的剣客けんかくで、せい恬淡てんたん磊落らいらくであり、仕官を嫌って生涯仕えず、市井遊侠の徒と多く交わり、無拘束をもって終始したという。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
時頼の時年二十三、せい濶達にして身のたけ六尺に近く、筋骨飽くまでたくましく、早く母に別れ、武骨一邊の父の膝下ひざもとに養はれしかば
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
まさ秋霜しうさうとなるとも檻羊かんやうとなる勿れと此言や男子だんしたる者の本意ほんいと思ふはかへつて其方向をあやまるのもとにしてせいは善なる孩兒がいじも生立にしたがひ其質を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかし、せいうへ共通きようつうといふことが、たして、思想しさう感情かんじやう共通きようつうといふことよりも、重大ぢうだい影響えいきやうがあるかどうか疑問ぎもんである。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
雪は深夜しんやにしたがひてます/\こほり、かれがちからには穴をやぶる事もならず、いでん/\としてつひにはせいつからす。
物の弊あるは物のせいなり。聖人といえどもあらかじめこれがそなえをなすあたわざるなり。羅瑪ローマくにを復するや教門の力により、その敗るるやまた教門によれり。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
ひとあれほどにてひとせいをば名告なのらずともとそしりしもありけれど、心安こゝろやすこゝろざすみちはしつて、うちかへりみるやましさのきは、これみな養父やうふ賜物たまものぞかし
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これを思えば道すなわち道徳はそのせい高くしてそのよう低く、その来たるところ遠くして、その及ぼすところ広く、田夫野人でんぷやじんも守りるものであるらしい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
〔譯〕せいは同じうして而てしつことなる。質異るはをしへの由つてまうけらるゝ所なり。性同じきは教の由つて立つ所なり。
地上ちじゃうそんするものたるかぎり、如何いかしいしな何等なにらかのえききょうせざるはく、また如何いかいものも用法ようはふたゞしからざればそのせいもとり、はからざるへいしゃうずるならひ。
酒井に蔵人ありといわれる化顕かけん流の居合の名人だが、狷介固陋けんかいころうせいで、人にはあまり好かれないほうである。
無惨やな (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
渡瀬は奥さんの手のさわったところをさすりながら、情けなくなって、そのあでやかな、そのくせせいというものばかりででき上っているような顔を見上げた。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そのとき、まひせいのエーテルガスがどこからか出て来て二人の肺臓はいぞうへはいっていった。それで、まもなく二人とも知覚ちかくをうしなって、動かなくなってしまった。
宇宙の迷子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
のみ、せい疎狂そきょうなりと申しますから、ほかに取柄はない人間ですが、ただ幼にして、神童の聞えがありました
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それがならせいとなり遂には煮ても焼ても食えぬ人物となったのである、であるから老先生の心底しんていには常に二個ふたりの人が相戦っておる、その一人は本来自然の富岡うじ
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
おいしいから止められないのではなく、たいていは習いせいになっていて止められないひとが多い。
材料か料理か (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
そこに持って生れた人間のわがままと嫉妬しっとがあった。そこに調和にも衝突にも発展し得ない、中心を欠いた興味があった。要するにそこにはせいの争いがあったのである。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
容姿ようしすぐれて美しく才気あり万事にさとせいなりければ、誘工ゆうこうの事すべてお政ならでは目がかぬとまでにたたえられ、永年の誘工者、伝告者として衆囚よりうやまかしずかれけるが
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
そして本くわ二三年の時分には百五十てんにまでせりのぼつて、球突塲たまつきば常連ぜうれんでも大關格せきかくぐらゐになつたが、何としてもそのをり々の分に左右され勝ちな分の本せいあらそへなかつた。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
せいとして奇怪なる事とし謂へば、見たさ、聞きたさにへざれども、もとより頼む腕力ありて、妖怪えうくわいを退治せむとにはあらず、胸にたくはふる学識ありて、怪異を研究せむとにもあらず。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ず第一に私の悪い事を申せば、生来せいらい酒をたしなむと云うのが一大欠点、成長したのちにはみずからその悪い事をしっても、悪習すでせいを成してみずから禁ずることの出来なかったと云うことも
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
又想ふに、彼は決して自らとがむるところなど有るに非ずして、だそのせい多羞シャイなるが故のみか、未だ知るべからず。この二者ふたつさきのをも取り難く、さすがに後のにもうなづきかねて、彼は又あらた打惑うちまどへり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
身をすりよする異母妹いぼまいせい恐怖おそれよりのがれんとし
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
人間の樹の中央まんなかにつけたせいこのみおほふのは
南洋館 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
そのたよりないせい質が
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
〔譯〕えきは是れせいの字の註脚ちゆうきやくなり。は是れ情の字の註脚なり。しよは是れ心の字の註脚なり。
鄰家りんか道術だうじゆつあり。童顏どうがん白髮はくはつにしてとしひさしくむ。或時あるときだんことおよべば、道士だうしわらうていはく、それうまは、くこと百里ひやくりにしてなほつかるゝをせいとす。いはんいまよるくこと千里せんりあまる。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しらべて見ると「せいこれをせいとなせば心其中そのうちにあり、どうこれを心となせば性其中にあり、心しょうずれば性めっし、心滅すれば性生ず」というようなむずかしい漢文が曲がりくねりに半頁はんページばかりを
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
聞時はしきりににくく思はれ他人ひとの事にても何分なにぶんすて置れぬ性質せいしつなり是犬はやうにして正直なるけものゆゑねこたぬき其外そのほか魔性ましやう陰獸いんじうを見る時は忽地たちまち噛殺かみころすが如しおのれせいはんして陰惡いんあくたくむものは陽正やうせいの者是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
よしや深山みやまがくれでも天眞てんしんはないろ都人みやこびとゆかしがらする道理だうりなれば、このうへは優美ゆうびせいをやしなつてとくをみがくやうをしへ給へ、此地このちたりとてからさつぱり談合だんかうひざにもるまじきが
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こころよすさみゆくせいの秘密にや笑ふらん。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
息子むすこせいぜんにして、鬼神きじん横道わうだうなしといへども、二合半こなからかたむけると殊勝しゆしようでなくる。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ただ世の中に生れて来た賦税ふぜいとして、時々交際のために涙を流して見たり、気の毒な顔を作って見せたりするばかりである。云わばごまかしせい表情で、実を云うと大分だいぶ骨が折れる芸術である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かなしみの種、せいの種、黒稗くろひえの種。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かたちおほいなるふくろふながら、せいものとしてある。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)