トップ
>
徒
>
いたづ
ふりがな文庫
“
徒
(
いたづ
)” の例文
馬琴を論ずるもの、
徒
(
いたづ
)
らに勧善懲悪を以て彼を責むるを知つて、彼の哲学的観念の酬報説に論入せざる、評家の為に惜まざるを得ず。
処女の純潔を論ず:(富山洞伏姫の一例の観察)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
徒
(
いたづ
)
らに喰ひ盡しむしり取り名は美しく毛だらけにてヂイ/\と
濁聲
(
だみごゑ
)
に得意を鳴らすもの嗚呼なきにはあらざりけり枯るゝ松こそ哀なれ
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
私の
徒
(
いたづ
)
らに願ひてえ果さず、その人の幸ありて成し遂げ給ふなる、君が偕老の
契
(
ちぎり
)
の上とに在るのみなることを、御承知下され度存※。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
いかに、わが世の、あだなるや、
空
(
くう
)
なるや、うつろなるや。げに、人間のあとかたの
覺束
(
おぼつか
)
なくて、數少なき。
徒
(
いたづ
)
らなるは月日なり。
あすは、明日は、
(旧字旧仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
すると、これも
亦
(
また
)
徒
(
いたづ
)
らに粗雑な文句ばかりが、
糅然
(
じうぜん
)
としてちらかつてゐる。彼は更にその前を読んだ。さうして又その前の前を読んだ。
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
然
(
しか
)
るを何者の偏視眼者流ぞ、
徒
(
いたづ
)
らに学風を
煩瑣
(
はんさ
)
にし、究理と云ひ、探求と称して、貴とき生命を空しく無用の努力に費やし去る。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
今は薄日も漏れない暗い納屋の中に寢そべつて
徒
(
いたづ
)
らに死を待つやうにして餘生を送つてゐる老年の運命にも、圭一郎は
不愍
(
ふびん
)
な思ひを寄せた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
私は雑誌や小説本などを見せて貰つたが、只
徒
(
いたづ
)
らに頁をはぐりながら、全く落ち着かぬ心持で、三十分余りも居て暇を告げた。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
見て、ただ
徒
(
いたづ
)
らに笑つてをるとは何のことです?——失敬ぢやないか?——無情といふものではないか?——諸君は實にあさましい人々だ!
泡鳴五部作:05 憑き物
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
地震
(
ぢしん
)
に
出會
(
であ
)
つた
一瞬間
(
いつしゆんかん
)
、
心
(
こゝろ
)
の
落着
(
おちつき
)
を
失
(
うしな
)
つて
狼狽
(
ろうばい
)
もすれば、
徒
(
いたづ
)
らに
逃
(
に
)
げ
惑
(
まど
)
ふ
一方
(
いつぽう
)
のみに
走
(
はし
)
るものもある。
平日
(
へいじつ
)
の
心得
(
こゝろえ
)
の
足
(
た
)
りない
人
(
ひと
)
にこれが
多
(
おほ
)
い。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
だが事実はもう余程酔つてゐたので、嘘でもそんな言葉を吐いて見ると、心もそれに
伴
(
つ
)
れて、もつと何か
徒
(
いたづ
)
らなことでも云つて見たい気がした。
熱海へ
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
而して今にして知りぬ、古人が自家見証につきて語る所の、
毎々
(
つね/″\
)
徒
(
いたづ
)
らに人をして五里霧中に
彷徨
(
はうくわう
)
せしむるの感ある
所以
(
ゆゑん
)
を。
予が見神の実験
(新字旧仮名)
/
綱島梁川
(著)
正月
(
しやうぐわつ
)
を
眼
(
め
)
の
前
(
まへ
)
へ
控
(
ひか
)
えた
彼
(
かれ
)
は、
實際
(
じつさい
)
是
(
これ
)
といふ
新
(
あた
)
らしい
希望
(
きばう
)
もないのに、
徒
(
いたづ
)
らに
周圍
(
しうゐ
)
から
誘
(
さそ
)
はれて、
何
(
なん
)
だかざわ/\した
心持
(
こゝろもち
)
を
抱
(
いだ
)
いてゐたのである。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
然れども又
徒
(
いたづ
)
らに
晦渋
(
かいじゆう
)
と奇怪とを以て象徴派を攻むる者に同ぜず。幽婉
奇聳
(
きしよう
)
の新声、今人胸奥の絃に触るるにあらずや。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
以て
徒
(
いたづ
)
ら者これなきやう仰付られ下し置れ度願ひ奉るとぞ
訴
(
うつた
)
へおけるが大岡越前守是を聞給ひもつともの願ひなり御成門の
儀
(
ぎ
)
は大切にかきりなし夫を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
徒
(
いたづ
)
らに事業を賤しみ、之を俗人の事となし、超然として物外に
徜徉
(
しやうやう
)
せんとするに至つては
抑
(
そもそ
)
も亦名教の賊に非ずや。
唯心的、凡神的傾向に就て(承前)
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
それから
墓石
(
はかいし
)
に
乘
(
の
)
つて
推
(
お
)
して
見
(
み
)
たが、
原
(
もと
)
より
然
(
さ
)
うすれば
開
(
あ
)
くであらうといふ
望
(
のぞみ
)
があつたのではなく、
唯
(
たゞ
)
居
(
ゐ
)
るよりもと、
徒
(
いたづ
)
らに
試
(
こゝろ
)
みたばかりなのであつた。
星あかり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
また何等の目的を持ツて生まれなかツた。
徒
(
いたづ
)
らに出來た子は、何處までも徒らに出來た子になツてゐたからと謂ツて、誰からも
不足
(
ふそく
)
を聞く譯は無い筈だ。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
それを
引分
(
ひきわ
)
けうとて
拔劍
(
ぬ
)
きましたる
途端
(
とたん
)
に、
彼
(
あ
)
のチッバルトの
我武者
(
がむしゃ
)
めが
劍
(
けん
)
を
拔
(
ぬ
)
いて
駈付
(
かけつ
)
け、
鬪戰
(
たゝかひ
)
を
挑
(
いど
)
み、
白刃
(
しらは
)
を
揮𢌞
(
ふりまは
)
し、
徒
(
いたづ
)
らに
虚空
(
こくう
)
をば
斫
(
き
)
りまする
程
(
ほど
)
に
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
彼
(
かれ
)
が
什麽
(
どんな
)
に
惜
(
をし
)
んでも
叺
(
かます
)
の
中
(
なか
)
の
減
(
へ
)
つて
行
(
ゆ
)
くのを
防
(
ふせ
)
ぐことは
出來
(
でき
)
ない。
然
(
しか
)
も
寡言
(
むくち
)
な
彼
(
かれ
)
は
徒
(
いたづ
)
らに
自分
(
じぶん
)
獨
(
ひとり
)
が
噛
(
か
)
みしめて、
絶
(
た
)
えず
只
(
たゞ
)
憔悴
(
せうすゐ
)
しつゝ
沈鬱
(
ちんうつ
)
の
状態
(
じやうたい
)
を
持續
(
ぢぞく
)
した。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
『たゞ
無用
(
むよう
)
なる
吾等
(
われら
)
が、
徒
(
いたづ
)
らに
貴下等
(
きから
)
を
煩
(
わずら
)
はすのを
憂
(
うれ
)
ふるのみです。』と
語
(
かた
)
ると、
大佐
(
たいさ
)
は
急
(
いそ
)
ぎ
其
(
その
)
言
(
げん
)
を
遮
(
さへぎ
)
り
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
欣之介の傷ついた心には、その後の曇天が以前にも増して一層暗欝に一層
厭
(
いと
)
はしいものに感じられた。彼は、世に
容
(
い
)
れられない不遇の詩人のやうに
徒
(
いたづ
)
らに
苛々
(
いら/\
)
した。
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
そこでは焼いたり切つたりするのは、
徒
(
いたづ
)
らに
目蓋
(
まぶた
)
を傷つけるばかり、
反
(
かへ
)
つて
目容
(
めつき
)
を醜くするし、気永に療治した方がいゝといふので、其の通りにしてゐるのであつた。
チビの魂
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
夫 (それにかまはず)「が、そこに
佇
(
たゝず
)
むものとては
他
(
ほか
)
にないから、男ごころをときめかす香りも、伊太郎以外には、たゞ
徒
(
いたづ
)
らに暗きにたゞよひ、吹き消されるばかり」
世帯休業
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
西洋の婦人と自在に會話を取りかはしてゐる得意な有樣に胸を轟かせたりして
徒
(
いたづ
)
らに時を過した。
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
長順 ふむ、何を隠さう——
徒
(
いたづ
)
らに俗世間の義理人情に囚へられ、新しき教の心もえ
覚
(
さと
)
らぬ俗人
原
(
ばら
)
、あの老耄の痩首
丁切
(
ちよんぎ
)
り、吉利支丹宗へわが入門の
手土産
(
てみやげ
)
にな致さむ所存。
南蛮寺門前
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
自分は
伯林
(
ベルリン
)
の
garçon
(
ガルソン
)
logis
(
ロジイ
)
の寐られない夜なかに、幾度も此苦痛を
嘗
(
な
)
めた。さういふ時は自分の生れてから今までした事が、
上辺
(
うはべ
)
の
徒
(
いたづ
)
ら
事
(
ごと
)
のやうに思はれる。
妄想
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
唯
(
ただ
)
冒進
(
ぼうしん
)
の一事あるのみと、
独
(
ひと
)
り身を
挺
(
ぬき
)
んで水流を
溯
(
さかのぼ
)
り衆を
棄
(
す
)
てて又顧みず、余等
次
(
つゐ
)
で是に
従
(
したが
)
ふ、人夫等之を見て皆曰く、
豈
(
あに
)
坐視
(
ざし
)
して以て
徒
(
いたづ
)
らに吉田署長以下の
死
(
し
)
を
待
(
ま
)
たんやと
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
日蔭になつて、五月になつても、八月の半頃になつても青い葉一枚とてはなく、ただ茎ばかりが蔓草のやうに
徒
(
いたづ
)
らによろめいて延びて居た、この家の井戸端のあの薔薇の木の生活だ。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
僕は実に失望落胆の為め
殆
(
ほとん
)
ど発狂するばかりに精神を痛めたです——
乍併
(
しかしながら
)
更に
退
(
しりぞい
)
て考へると、
是
(
こ
)
れは
徒
(
いたづ
)
らに
愁歎
(
しうたん
)
して居るべき時でない、僕の篠田を崇拝したのは其の主義に在るのだ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「若菜集」
一度
(
ひとたび
)
出でて島崎氏の歌を模倣するもの幾多
相踵
(
あひつ
)
いであらはれたが、
徒
(
いたづ
)
らに島崎氏の後塵を拜するに過ぎなかつたことは、「若菜集」の價値を事實に高めたものとも言へやう。
新しき声
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
陪審官等
(
ばいしんくわんら
)
は
些
(
や
)
や
身體
(
からだ
)
の
顫
(
ふる
)
えが
止
(
とま
)
るや
否
(
いな
)
や、
再
(
ふたゝ
)
び
石盤
(
せきばん
)
と
鉛筆
(
えんぴつ
)
とを
渡
(
わた
)
されたので、
皆
(
みん
)
な一
心
(
しん
)
に
事
(
こと
)
の
始末
(
しまつ
)
を
書
(
か
)
き
出
(
だ
)
しました、
獨
(
ひと
)
り
蜥蜴
(
とかげ
)
のみは
其口
(
そのくち
)
を
開
(
あ
)
いたまゝ、
徒
(
いたづ
)
らに
法廷
(
はふてい
)
の
屋根
(
やね
)
を
見上
(
みあ
)
げて
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
「智は
畢竟
(
つまり
)
狐で、
徒
(
いたづ
)
らに疑ひが多くて、
却
(
かへ
)
つて事業の妨げとなつたんである。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
左
(
さ
)
りながら
折
(
をり
)
ふし
地方遊説
(
ちはうゆうぜい
)
などゝて三
月
(
つき
)
半年
(
はんとし
)
のお
留守
(
るす
)
もあり、
湯治塲
(
たうぢば
)
あるきの
夫
(
そ
)
れと
異
(
こと
)
なれば、
此時
(
このとき
)
には
甘
(
あま
)
ゆる
事
(
こと
)
もならで、
唯
(
たゞ
)
徒
(
いたづ
)
らの
御文通
(
ごぶんつう
)
、
互
(
たが
)
ひの
封
(
ふう
)
のうち
人
(
ひと
)
には
見
(
み
)
せられぬ
事
(
こと
)
多
(
おほ
)
かるべし。
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
汽船では乗客を皆な別の船に移して、荷を軽くして船員
総
(
そう
)
がゝりで、長い
竿棹
(
さを
)
を五本も六本も浅い州に
突張
(
つつぱ
)
つて居た。しかも汽船は容易に動かなかつた。煙突からは白い薄い
煙
(
けぶり
)
が
徒
(
いたづ
)
らに立つて居た。
朝
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
自分は一生
結局
(
つまり
)
之と云ふ何の仕事もせず、
徒
(
いたづ
)
らに生の悪夢にひたつて平凡に死んで行く運命の者ではなからうか。併しその事は案外此頃の彼には簡単に諦められる事のやうな気もしてゐたのだつた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
正月は
唯
(
た
)
だ
徒
(
いたづ
)
らに
経
(
た
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
徒
(
いたづ
)
らに説き、徒らに談じ、徒らに行ひ、徒らに思ひ、第一の門までは蹈入らしめて第二の門を堅く鎖すもの、比々皆是れなるにあらずや。
各人心宮内の秘宮
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
そは世間幾多の人の具ふる所にして、又能くする所なり。これに惑ひて
徒
(
いたづ
)
らに思ひ上がりなどせば、生涯の不幸となるべきものぞといふ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
徒
(
いたづ
)
らに愉快な、もしくは徒らに快濶な、つまり樂天的な男とし、女の絶えない苦勞を忘れようとするばかりに、一時惚れ込まれたのであつたにせよ
泡鳴五部作:04 断橋
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
と冬子は、自分の冗談めかした独り決めを笑ひながら、厭にぼんやりしてゐる小樽の両手を執つて
徒
(
いたづ
)
ら気に振つた。
黄昏の堤
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
斯
(
こ
)
の千載一遇の好機会に当り、同胞にして
若
(
も
)
し悠久の光栄を計らず、
徒
(
いたづ
)
らに一時の
旗鼓
(
きこ
)
の勝利と浮薄なる外人の称讃に幻惑するが如き挙に出でしめば
渋民村より
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
九助と
配偶
(
めあはせ
)
たき由申により私し養女に仕つり同人方へ
遣
(
つかは
)
せし儀に御座れば何も
不義
(
ふぎ
)
の
徒
(
いたづ
)
ら者のと私養女に
難曲
(
なんくせ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
従つて彼は艇長としての報告を作らんがために、
凡
(
すべ
)
ての苦悶を忍んだので、
他
(
ひと
)
によく思はれるがために、
徒
(
いたづ
)
らな
言句
(
げんく
)
を連ねたのでないと云ふ結論に帰着する。
艇長の遺書と中佐の詩
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
遠慮
(
ゑんりよ
)
の
無
(
な
)
い
女房等
(
にようばうら
)
にお
品
(
しな
)
の
噺
(
はなし
)
をされるのは
徒
(
いたづ
)
らに
哀愁
(
あいしう
)
を
催
(
もよほ
)
すに
過
(
す
)
ぎないのであるが、
又
(
また
)
一
方
(
ぼう
)
には
噺
(
はなし
)
をして
見
(
み
)
て
貰
(
もら
)
ひたいやうな
心持
(
こゝろもち
)
もしてならぬことがあつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
英雄の事業一成し一敗す、維新の大立者たる西郷隆盛は城山の露と消え残るは
傷夷
(
しやうい
)
と国債とのみ。松菊、甲東
空
(
むな
)
しく墓中に眠りて、而して門下の故吏
徒
(
いたづ
)
らに栄ふ。
明治文学史
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
だが、今度のことだつて考へてみれば——、僕は思ふんです——あなたにとつては全く何の損失でもありませんよ。たゞ、
徒
(
いたづ
)
らに悩ましい青春が去つただけです。ほんとに事を
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
儕輩
(
さいはい
)
の詩人皆多少憂愁の思想を
具
(
そな
)
へたれど、厭世観の理義彼に於ける如く整然たるは
罕
(
まれ
)
なり。衆人
徒
(
いたづ
)
らに虚無を讃す。彼は明かにその事実なるを示せり。その詩は智の詩なり。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
讀書
(
どくしよ
)
は
徒
(
いたづ
)
らに人の
憂患
(
わづらひ
)
を
増
(
ま
)
すのみの
歎
(
なげき
)
は、
一世
(
いつせい
)
の
碩學
(
せきがく
)
にさへあることだから、
單
(
たん
)
に
安樂
(
あんらく
)
といふ意味から云ツたら其も
可
(
よ
)
からうけれど、僕等は
迚
(
とて
)
も其ぢや滿足出來ないぢやないか。
虚弱
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
今の作家が
徒
(
いたづ
)
らに人生の暗処、弱処、悲惨事をのみ描きて時に詩的正義の大道をだに逸し去らんとするの観あるに対して、国民性を描けといふか、真意は更に人生の美所、高所
国民性と文学
(新字旧仮名)
/
綱島梁川
(著)
“徒”の意味
《名詞》
(かち)徒歩。
(かち)江戸時代、騎乗を許されなかった下級の武士。
(ただ)普通。凡庸。ありきたり。
(ただ)何事も無いこと。
(むだ)役に立たない、効果の無い又は不要に贅沢なもの。
(ト)仲間。同類の人。
(ズ)五刑の一つ。懲役刑。一年から三年まで半年毎に五段階設けられた。
(出典:Wiktionary)
徒
常用漢字
小4
部首:⼻
10画
“徒”を含む語句
徒歩
徒然
徒事
基督教徒
聖徒
徒爾
徒輩
徒労
清教徒
悪徒
徒為
徒士
徒渉
博徒
徒弟
徒跣
徒党
兇徒
耶蘇教徒
徒手
...