はたけ)” の例文
おたがいに達者たっしゃで、はたらくことはできるし、それに毎年まいねん気候きこうのぐあいもよくて、はたけのものもたくさんれて、こんな幸福こうふくなことはない。
自分で困った百姓 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と誰に云ったのだか分らないことばを出しながら、いかにも蓮葉はすははたけから出離れて、そして振り返って手招てまねぎをして
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
蜂はまだ巣の頂上ができあがらないのに、一斗ほども集まって来た。竇はその蜂がどこから来たかと思って、来た所をしらべてみるとそれは隣のはたけからであった。
蓮花公主 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
ただ庭つづきの猫の額ほどのはたけを幾度か往き戻りしながら、あたりをじつと見まもるまでのことだ。
春の賦 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
彼はあたかも遠征を思い立ちし最初の日の夕のごとくはたけの人の帰るを測りて表の戸より立ち出でたり、彼が推測はあやまらず、圃の人は皆帰り尽し、鳥さえねぐらに還りてありし
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
きんという植物は元来がんらいはたけに作る蔬菜そさいの名であって、また菫菜きんさいとも、旱菫かんきんとも、旱芹かんきんともいわれている。中国でも作っていれば、また朝鮮にも栽培せられて食用にしている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
聖彼得サン、ピエトロ寺の塔の湧出したる、橄欖の林、葡萄のはたけの緑いろ濃く山腹を覆ひたる、瀑布幾條かみなぎりつる巖の上にチヲリの人家のむらがりたるなど、皆かつがつ我筆に上りしなり。
おじいさんのうちまちはしになっていまして、そのへんはたけや、にわひろうございまして、なんとなく田舎いなかへいったようなおもむきがありました。
おじいさんの家 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして皆さんの思召おぼしめしむくいる、というような巧なる事はうまく出来ませぬので、已むを得ず自分の方のはたけのものをば、取りつくろいもしませんで無造作に持出しまして
夫の留守中何事もおこたりがちなりければ、裏のはたけ大葱おおねぎの三四茎日に蒸されてえたるほか、饗応きょうおうすべきものとては二葉ばかりの菜蔬さいそもなかりき、法事をせずば仏にも近所にも済まず
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
またこのオニユリは往々おうおうはたけに作ってあるが、なお諸処に野生やせいもある。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
そのとき丈人がはたけに水をやるのに、御苦労さまにも坑道をつけた井のなかに降りて往き、そこから水甕を抱いて出て来るのを見て、子貢がひどく気の毒がって、そんなまだるっこいことをするよりも
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
屋敷やしき周囲まわりには広々ひろびろとしたはたけがありました。そして、そこにはばらのはなや、けしのはなが、いまをさかりにみだれているのであります。
けしの圃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
雜草が今まで茂つてのみ居たはたけを、これではならぬから新に良好な菜蔬を仕立てようとする場合であれば、それは即ち矢張り敢て新にするので有つて、若し其の地が新にされ了れば
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
その薄き光線をきつつ西方の峰を越えしより早や一時間余も過ぎぬ、遠寺に打ちたる入相いりあいの鐘のも今は絶えて久しくなりぬ、ゆうべの雲は峰より峰をつらね、夜の影もトップリとはたけきぬ
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
見渡す限りはたはたけは黄金色に色づいて、家の裏表にうわっている柿や、栗の樹の葉は黄色になって、ひらひらと秋風に揺れています。
嵐の夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれど小太郎こたろうは、こんなときにでも、はたけなかっているうめあいだから、あおい、あおうめがのぞいているのを見逃みのがしませんでした。
けしの圃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「いまごろ、ゆみなんかったかがしなんてあるものでない。どこのや、はたけでも、鉄砲てっぽうった、いさましいかがしをてている。」
からすとかがし (新字新仮名) / 小川未明(著)
太郎たろうは、はたけなかって、しょんぼりとして、少年しょうねん行方ゆくえ見送みおくりました。いつしかその姿すがたは、しろみちのかなたにえてしまったのです。
金の輪 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこは、人通ひとどおりのない、いえまえはたけなかでありました。うめも、かきのも、すでに二、三じゃくもとのほうはゆきにうずもれていました。
雪だるま (新字新仮名) / 小川未明(著)
二郎じろうは、さっそくはたけへといさんでゆきました。そして、はさみをにぎって、葉蔭はかげをのぞきますと、そこにおおきなきゅうりがぶらさがっています。
遠くで鳴る雷 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、いきころしていました。翌日よくじつきてからそとてみますと、はたけなかには、昨日きのうつくったゆきだるまが、そのままになっていました。
雪だるま (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのばんには、さむ木枯こがらしがきすさびました。翌日よくじつきてみると、屋根やねも、はたけも、のこずえも、しもしろでありました。
山へ帰ったやまがら (新字新仮名) / 小川未明(著)
にわとりはたけさがしてあるいていたり、はとが地面じめんりてむらがってあそんでいたりしまして、まことにのどかな景色けしきでありました。
おじいさんの家 (新字新仮名) / 小川未明(著)
野原のはらにははたけがありました。はないています。また、むぎがしげっています。そのほか、えんどうのはなや、いろいろのはないていました。
ちょうと怒濤 (新字新仮名) / 小川未明(著)
また、あつ日盛ひざかりには、らくらしているような人々ひとびとは、みんな昼寝ひるねをしている時分じぶんにも、はたけこえをかけてやりました。
大根とダイヤモンドの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「もう、三十にちあめらない。まだこのうえ、ひでりがつづいたら、や、はたけ乾割ひわれてしまうだろう。」といって、一人ひとりは、歎息たんそくをしますと
娘と大きな鐘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はたけのものも黄ばんでしまった。なんだかう、彼女の面影が目に見えて来る。そういえばこの道を去る秋、共に通ったことがあったのである。
そのあとのこったあには、はたけてくわをってはたらいていましたが、もとからはたらくことがきでありませんから、たいていはなまけてうちにいました。
くわの怒った話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうおつはたけへゆき、おつはときどきこうはたけへきて、たがいに野菜やさい穀類こくるいびたのをながめあって、ほめあったのであります。
自分で困った百姓 (新字新仮名) / 小川未明(著)
くる午後こご太郎たろうはまたはたけなかてみました。すると、ちょうど昨日きのうおな時刻じこくに、おとこえてきました。
金の輪 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただみちうえには、なにかちいさないしらされてひかっていました。そして、とんぼが、かなたのはたけうえんでいるのがえたばかりです。
子供の時分の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あめチョコの天使てんしは、このはなしによって、このへんには、まだところどころや、はたけに、ゆきのこっているということをりました。
飴チョコの天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるところに、性質せいしつのちがったあにおとうとがありました。父親ちちおやぬときに、自分じぶんっているはたけ二人ふたりけてやりました。
くわの怒った話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二郎じろうは、まえはたけにまいた、いろいろの野菜やさい種子たねが、あめったあとで、かわいらしい黒土くろつちおもてしたのをました。
遠くで鳴る雷 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、ゆきもたいていえてしまって、ただおおきなてらうらや、はたけのすみのところなどに、幾分いくぶんえずにのこっているくらいのものでありました。
金の輪 (新字新仮名) / 小川未明(著)
私の家と、お繁さんの家とはわずかにはたけを一つへだてているばかりで、その家の屋根が見える。窓にともっている燈火ともしびが見える。
夜の喜び (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうすれば、おれは、もう一このむらかえって、みんなうちはたけって、後始末あとしまつをつけて出直でなおすつもりだ。そして、たびで一しょうおくることにしよう。
おかしいまちがい (新字新仮名) / 小川未明(著)
また、金持かねもちから時間じかん見方みかたおそわって、かれらは、はたけにいっても、やまにいっても、ると時計とけいはなしをしたのであります。
時計のない村 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そとると、ふゆは、あたたかそうにくさらしていました。あるいえよことおると、まえはたけにさくがしてあって、にわとりがたくさんあそんでいました。
僕は兄さんだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ねんは、こうしてめぐってきた。はたけにも、にわにも、去年きょねんのそのころにいたはなが、またに、むらさきいていたのでした。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、どのみちあるいていっても、そのほうには、くろもりがあり、青々あおあおとしたはたけがあり、とお地平線ちへいせんには、しろくもがただよってえるのでありました。
石をのせた車 (新字新仮名) / 小川未明(著)
どちらをまわしても、広々ひろびろとしたはたけでありましたので、ありにとっては、おおきなくにであったにちがいありません。
三匹のあり (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは、にも、やまにも、はたけにも、はなというはなはあったし、やんわりとした空気くうきには、あまかおりがただよっていた。
冬のちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あっちへ、んでいけ。」といって、棒切ぼうきれへありのついたみみずをっかけて、はたけほうげてしまいました。
木の上と下の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おじいさんは、としったから、もうこうしてあるくのは難儀なんぎとなって、しずかに、故郷こきょうはたけでばらのはなつくってらしたいとおもっていたからであります。
金魚売り (新字新仮名) / 小川未明(著)
いまにも、だれかきて、わたしたちをっていってしまうかもしれない。なんとわたしたちは、はかない運命うんめいでしょう。わたしは、あのくろい、ひろい、はたけがなつかしい。
花と人の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あのくわなら、だいじょうぶだ。」と、おじいさんは、百しょう毎日まいにちちからをいれて、はたけで、くわをげるようすをおもって、ひとごとをしました。
おじいさんとくわ (新字新仮名) / 小川未明(著)
いよいよ、あにっている土地とちたかれることにきまると、あには、その最後さいごとしてはたけをみまいました。
くわの怒った話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
近所きんじょ人々ひとびとは、とりのためにはたけや、にわらされるのをおもいましたけれど、いえや、地所じしょ金持かねもちの所有しょゆうであるために、なにもいわずにしのんでいました。
金持ちと鶏 (新字新仮名) / 小川未明(著)