御覧ごらん)” の例文
旧字:御覽
とほりかゝるホーカイぶしの男女が二人、「まア御覧ごらんよ。お月様。」とつてしばら立止たちどまつたのち山谷堀さんやぼり岸辺きしべまがるがいな当付あてつけがましく
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
御覧ごらんのとおりわたくしなどはべつにこれともうしてすぐれた器量きりょう女性おんなでもなく、また修行しゅぎょうったところで、多寡たかれてるのでございます。
「あら八っちゃんどうしたんです。口をあけて御覧ごらんなさい。口をですよ。こっちを、あかるい方を向いて……ああ碁石を呑んだじゃないの」
碁石を呑んだ八っちゃん (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「これを御覧ごらん!」とたもとからわらじの先を示して、「ね、このとおり生れ故郷の江戸でさえあたしゃ旅にいるんだ。江戸お構え兇状持きょうじょうもち。 ...
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「いや、まだほかにもお詫びを致すことがある。昨夜は甚だお恥かしいところを御覧ごらんに入れました。どうぞ幾重にも御内分にねがいます」
それはわたし権内けんないいことなのです。まあ、かんがえて御覧ごらんなさい、わたしかり貴方あなたをここからだしたとして、どんな利益りえきがありますか。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
細工さいく流々りゅうりゅう仕上しあげ御覧ごらん」というが、物件ぶっけんならば、できた仕事で用にたつが、人間はそうはいかぬ。細工さいくする間の心持ちが大切たいせつである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「明けても駄目です。或る仕掛がしてあるので、今夜九時にならないと、文字が出て来ません。今御覧ごらんになっても白紙はくしですよ」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「あなたは地獄にお越しになったそうですがどういう方が地獄の中で、最も重い苦しみをして居りましたか。定めし御覧ごらんになりましたろう」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
光子さんは「なあ、柿内さん、あの観音さんの絵エもっと私に似るようにいて御覧ごらん。そしたらどないにいやはるかしらん」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
なよたけ みんな御覧ごらん! ほら! 竹のこずえに、陽炎かげろうがゆらゆら揺れている。……この竹の林は、何でもかでも、お天道様のお恵みで一杯だわ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
「おやおや」と、ジナイーダは口真似くちまねをして、「生きることが、そんなに面白おもしろいかしら? ぐるりを見回して御覧ごらんなさい。 ...
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
おれかはりにくんだ。弥「ハヽヽそれぢやアわたし身上しんしやうもらふのだ。女房「御覧ごらんなさい、馬鹿ばかでも慾張よくばつてますよ。 ...
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
義兄にいさんのうたほんをおみなさるのと、うつくしい友染いうぜん掛物かけもののやうに取換とりかへて、衣桁いかうけて、ながら御覧ごらんなさるのがなによりたのしみなんですつて。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そだちのいい家鴨あひるはそのおとうさんやおかあさんみたいに、ほら、こうあしひろくはなしてひろげるもんなのだ。さ、くびげて、グワッってって御覧ごらん
家にばかり夫がいて困るのでしたら、散歩や活動に妻が誘って御覧ごらんなさい。嫌だと云ったら妻一人、夫を家へうっちゃって出て寂しがらせて御覧なさい。
良人教育十四種 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
この天皇てんのうがまだ皇太子こうたいしでおいでになった時分じぶん、おきさき穴太部あなとべ真人まひと皇女おうじょというかたが、あるばん御覧ごらんになったおゆめに、からだじゅうからきらきら金色こんじきひかりはなって
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ことつたら御覧ごらんになつたかもれないが、幼児をさなごのことゆゑ、けてやらねばなるまい。真昼時まひるどきおもくなる。ものみなこと/″\しろつぽい。しかあれかし、亜孟アメン
「フン、女のくせに二合もけりや豪儀がうぎだゼ。」とお房はひやゝかに謂ツて、些と傍を向き、「だツて、一月ひとつき儉約けんやくして御覧ごらんなさいな、チヤンと反物たんものが一たんへますとさ。」
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ドウも榎本えのもとは大変な騒ぎをした男であるが、命だけは取らぬようにした方が得じゃないか、何しろこの写真を進上するから御覧ごらんなさいと云て、こまやかに話したこともある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これでは国語調査会こくごてうさくわいが小説家や新聞記者を度外視どぐわししするのも無理はないと思ふ。萬朝報よろづてうはうに限らず当分たうぶん此類このるゐのがに触れたら退屈たいくつよけにひろひ上げて御覧ごらんきようさう。(十五日)
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
「はははは。邪間じゃまだてするわけじゃござんせんが、御覧ごらんなせえやし。おせんちゃんは、こんなにいやだといってるじゃござんせんか。若旦那わかだんな色男いろおとこかおがつぶれやすぜ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
まずもって、その青毛が、どのように、良くなったか、御酒興までに、御覧ごらんぜられたい
やがて先生ふくされ、予、近日の飲食いんしょく御起居ごききょ如何いかんと問えば、先生、左右さゆうの手をりょうそでのうちに入れ、御覧ごらんの通りきものはこの通り何んでもかまいませぬ、食物はさかなならび肉類にくるいは一切用いず
神樣かみさまがそれを御覧ごらんになりました。これは、なんといふやつれた寢顏ねがほだらう。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
不思議に怪我けがも何もしなかったのを、御祖母おばあさんが大層喜んで、全く御地蔵様が御前の身代りに立って下さった御蔭おかげだこれ御覧ごらんと云って、馬のつないであったそばにある石地蔵の前に連れて行くと
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
活動写真くわつどうしやしんたいなキラキラが、あのやうに、あれ、御覧ごらんな。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「きつとふる手紙てがみ御覧ごらんなすつたでせう。」
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「お客様だから、玄関へ往って御覧ごらん
母の変死 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
... よくあらためて御覧ごらん」胃吉
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
御覧ごらんなさい
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
おもたまふぞとさしのぞかれ君様きみさまゆゑと口元くちもとまでうつゝをりこゝろならひにいひもでずしてうつむけばかくたまふはへだてがまし大方おほかたりぬれゆゑのこひぞうらやましとくやらずがほのかこちごとひとふるほどならばおもひにせもせじ御覧ごらんぜよやとさし
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
問『ではいままでただお姿すがたせないというだけで、あなたさまわたくし狂乱きょうらん状態じょうたいかげからすっかり御覧ごらんになってはられましたので……。』
御覧ごらんなさい、世界せかいはじめから、今日こんにちいたるまで、ますます進歩しんぽしてくものは生存競争せいぞんきょうそう疼痛とうつう感覚かんかく刺戟しげきたいする反応はんのうちからなどでしょう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
この通り御覧ごらんなさい。これから幾里の間どこにもテントの張ってある所は見えない位だから、とても案内者を見付けて上げることは出来ません
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
天守てんしゆうへから御覧ごらんなされ、太夫たいふほんの前芸まへげいにござります、ヘツヘツヘツ』とチヨンとかしらげて揉手もみでふ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「丹さんは唐琴屋からことや丹次郎たんじろうさ。わからねえのか。今時いまどきの娘はだから野暮で仕様がねえ。おかみさんに聞いて御覧ごらん。おかみさんは知らなくってどうするものか。」
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
竹取翁 (合唱にかぶせて)おう、今日もまた夕日が西のかたに沈んで行く。……(静かに西の方を仰ぎ)御覧ごらんなされ。今日もまた夕日が西の方に沈んで行くのじゃ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
「これ、御覧ごらん。お前さんに貰った花は、あたしの方でも大事にして、の通りに花を咲かしてあるよ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのためにかえっていま自分じぶんとりかこんでいる幸福こうふくひとばいたのしむこと出来できるからです。御覧ごらんなさい。
成程なるほど、へえゝ。婆「パノラマをつて御覧ごらんなさいまし。岩「地獄ぢごくへパノラマが……。婆「大層たいそう立派りつぱ出来できましたよ。岩「矢張やつぱりあの浅草あさくさの公園にるやうな戦争のかえ。 ...
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
その蓮花れんげくるあさ天子てんしさまが御覧ごらんになって、そこに橘寺たちばなでらというおてらをおてになりました。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しげさん。もし、しげさんは留守るすかい。——おやッ、天道様てんとうさまへそしわまで御覧ごらんなさろうッて昼間ぴるま、あかりをつけッぱなしにしてるなんざ、ひどぎるぜ。——ているのかい。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「もうすぐです。ちょっと、御覧ごらんに入れたいところへ出ますから、そのおつもりで」
地底戦車の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と僕の方を御覧ごらんになった。婆やはそれを聞くと立上ったが、僕は婆やが八っちゃんをそんなにしたように思ったし、用は僕がいいつかったのだから、婆やの走るのをつきぬけて台所に駈けつけた。
碁石を呑んだ八っちゃん (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「あれ、御覧ごらんなさいよ。誰か此方を見てゐますよ。」と囁くやうにいふ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
御覧ごらんよ、まだあの小父おぢさんがるよと小守娘こもりむすめの指を差しそろによればその時の小生せうせい小父おぢさんにそろなほこゝに附記ふきすべき要件えうけん有之これありあにさんの帰りは必ずよそのいへに飲めもせぬ一抔の熱燗あつかんを呼びそろへども。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
わたくしは今その弟子を呼び出して、魔術にかけて御覧ごらんに入れますが、若しもあなたがたのうちで、弟子を信用なさらない方がありましたら、誰方どなたでも御遠慮なく、舞台へ上ってお試し下さる事を望みます。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
神樣かみさまはのんべえ のなみだ御覧ごらんになりました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「小川さん。里見さんのを見て御覧ごらん
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)