きゃく)” の例文
いまどき、めずらしいきゃくである。こんな冬の季節きせつに、しかもこんなへんぴな土地に、たび商人しょうにんだってめったにきたことはないのだ。
なつは、水草みずくさはいいものだ。あれを一鉢ひとはちってもわるくないな。」と、わらいながら、おきゃくはなしとはまったく関係かんけいなしにかんがえていたのでした。
ガラス窓の河骨 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ねる時間になりますと、おきゃくはこしかけの上に長ながとねころんで、ふくろをまくらのかわりにして、頭の下にあてがいました。
ほかのこととはわけちがい、あたしゃかずあるおきゃくのうちでも、いの一ばんきらいなおひと、たとえうそでも冗談じょうだんでも、まないことはいやでござんす
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
こんなことをって袖子そでこ庇護かばうようにする婦人ふじんきゃくなぞがないでもなかったが、しかしとうさんはれなかった。むすめ風俗なりはなるべく清楚せいそに。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一つフロックコートで患者かんじゃけ、食事しょくじもし、きゃくにもく。しかしそれはかれ吝嗇りんしょくなるのではなく、扮装なりなどにはまった無頓着むとんじゃくなのにるのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
おくにはきゃくがきているのだ。昼間ひるま飯屋めしやでぶつかった地蔵行者じぞうぎょうじゃ菊村宮内きくむらくないを引っぱってきて、ひさしぶりにけるのをわすれて話しているあんばい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのあいだにも花前はすこしでも、わが行為こうい緊張きんちょうをゆるめない。やがて主人はおくきゃくがあるというので牛舎ぎゅうしゃをでた。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
人力曳じんりきひきたちは、おきゃくっているあいだ、することがないので、つい、駄菓子箱だがしばこのふたをあけて、油菓子あぶらがしや、げんこつや、ぺこしゃんというあめ
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
廿四日、天気てんきし。となりきゃくつとめて声高こわだか物語ものがたりするに打驚うちおどろきてめぬ。何事なにごとかと聞けば、衛生えいせい虎列拉これらとの事なり。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
きゃくさまがえたときに、こちらの世界せかいなにが一ばん物足ものたりないかといえば、それは食物たべもののないことでございます。
きゃくさまがあるとったらもっとたくさんっておけばよかったものを、のつかないことをしました。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
うしろの方につづいてる車では、もうってるおきゃくたちもたいていうとうととねむってるころで、あたりはしいんとした山の中の夜で、ただ私たちだけがおきていて、かまに石炭せきたんの火をたき
ばかな汽車 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
かつては寒夜客来茶当竹罏湯沸火初メテナリ寒夜かんやきゃくきたりて茶を酒につ 竹罏ちくろきてはじめくれないなり〕といへる杜小山としょうざん絶句ぜっくなぞ口ずさみて殊更煎茶せんちゃのにがきを
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「こんなめずらしいおきゃくさんは、はじめてです。」と、牝牛めうしは言いました。
一同いちどう次第しだいはひる。ヂュリエットと乳母うばのこりて、出行いでゆきゃく見送みおくる。
(まあ、ひとつおつき合いなさい。ここらは今日ぼんの十六日でこうしてあそんでいるんです。かかあもせっかくこさえたのおきゃくさんに食べていただかなぃとはじかきますから。)(おあがんな※え。)おみちもひくく云った。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
夕立ゆうだちきゃく
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
一方、おかみさんは、主人しゅじんにむかっては、きっぱりと強がりを言ったものの、内心ないしんはやはり、きゃくのことが気になってしかたがなかった。
このみなとから、南洋なんようほうへゆくふねは、今夜こんやてゆくのが今年ことしじゅうの最終さいしゅうでありましたが、あまりそれにはってゆくきゃくもなかったのです。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「このあめだ。いくらんでも、おきゃくほうは、になるほどきもしまい。それともだれぞ、約束やくそくでもしたひとがおりかの」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
仕立屋さんはこういって、よびもしないのにやってきたおきゃくさんたちをっぱらいました。けれども、ハエたちには、ドイツなんかわかりません。
うららかな春のそこここを歩いている参詣人や遊山ゆさんきゃくとは、およそ遠い夢を武蔵はそこで描いているのだった。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから飲料いんりょうとしてはさくら花漬はなづけ、それを湯呑ゆのみにれて白湯さゆをさしてきゃくなどにすすめました。
こう一言さけんだお政は、きゃくのこした徳利とくりを右手にとって、ちゃわんを左手に、二はい飲み三ばい飲み、なお四はいをついだ。お政の顔は皮膚ひふがひきつって目がすわった。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
もしわたしがければ、この着物きものをぬいでおまえげよう、そしてわたしのせいたかさだけの大きなかめにさけをなみなみって、海山うみやまのごちそうを一通ひととおりそろえて、おきゃくんでやろう。
春山秋山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
つぎ大野おおのまちきゃくおくってきた海蔵かいぞうさんが、むら茶店ちゃみせにはいっていきました。そこは、むら人力曳じんりきひきたちが一仕事ひとしごとしてると、つぎのおきゃくちながら、やすんでいる場所ばしょになっていたのでした。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
きゃくをへやに案内あんないすると、暖炉だんろに火をもやしてたきぎをくべ、台所だいどころでお手伝いにてつだわせて、おかみさんはせっせと食事しょくじのしたくをした。
やがて、わずかがたつとお正月しょうがつになりました。けれどひともの幸作こうさくのところへは、あまりたずねてくるきゃくもなかったのです。
金銀小判 (新字新仮名) / 小川未明(著)
主人はかんかんにおこって、ゆうべあんなにおそくきたおきゃくたちがあやしいぞ、と思いました。そこで、すぐさま立っていって、さがしてみました。
がんにかけておせんの茶屋ちゃやかよきゃく山程やまほどあっても、つめるおせんのかたちを、一だっておとこは、おそらく一人ひとりもなかろうじゃねえか。——そこからうまれたこのつめ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ぐさ小屋ごやの中の高いびきは、さだめし心地ここちよい熟睡うまいにおちているだろう。お長屋ながやもみんなえて、卜斎ぼくさいの家のなかも、あるじのこえなく、きゃくわらいもたえて、シンとしてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのときちょうど奈良ならからはつもののうりを献上けんじょうしてました。めずらしい大きなうりだからというので、そのままおぼんにのせて四にんのおきゃくまえしました。するとまず安倍晴明あべのせいめいがそのうりを手にのせて
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
はやく、おきゃくがくればいいのになあ、と海蔵かいぞうさんはをほそめてあかるいみちほうていました。しかしおきゃくよりさきに、茶店ちゃみせのおかみさんが、きたてのほかほかの大餡巻おおあんまきをつくってあらわれました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「このごろ、みなとにはいってきた、あかふねのおきゃくさまだよ。」と、まち女房にょうぼうたちが、うわさしているのをきいたのであります。
赤い船のお客 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうして、うちにかえるとちゅう、日がくれましたので、とある宿屋やどやにとまりました。宿屋はおきゃくでいっぱいでした。
乾坤堂けんこんどうきゃく
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで、そのみせは、子供こどもあたまを八せん値下ねさげしました。すると、はたして、主人しゅじんかんがえたように、おきゃくは、みんなそのやすみせへやってきました。
五銭のあたま (新字新仮名) / 小川未明(著)
それに、このれんちゅうが、たいしたおきゃくではなさそうにも思われたのです。けれども、そのうちにみんなが
桐壺きりつぼきゃく
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
煖房装置だんぼうそうちもあれば、かべにはオゾン発生機はっせいきそなえてあって、たくさんのテーブルには、それぞれきゃくむかっていました。
世の中へ出る子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
そいつらはこのたびきゃくを殺して、もっているものをうばいとろうというのです。けれども、しごとにかかるまえに、人殺しどもは、まず食卓しょくたくにつきました。
殺地さっちきゃく
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここには、ただひとり、おじいさんがんでいました。おとこながら、きれいにそうじをして、よくきゃくをもてなしました。
とうげの茶屋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
きゃく勘定かんじょうをはらって、ねにいきました。ところが主人は、夜のうちに、馬屋うまやへしのびこんで、この金貨をうむロバをつれだして、そのかわりにべつのロバをつないでおいたのです。
はるきゃく
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのひるごろ、おじいさんは、会社かいしゃ応接室おうせつしつで、テーブルにかい、おおきなはらかかえて、パイプをすぱすぱいながら、おきゃくはなしをしていました。
ガラス窓の河骨 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なにしろ、きょうは聖母せいぼさまの日だろう、聖母さまが幼子おさなごキリストさまの肌着はだぎをせんたくして、かわかそうという日だからね。ところが、あしたの日曜にちようには、おきゃくさんがおおぜいくる。
ひなきゃく
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしどもは貧乏びんぼうで、おきゃくさまにおきせする夜具やぐもふとんもないのでございますが、せがれが猟師りょうしなもので、今夜こんやは、どこかやま小舎こやまりますから
宝石商 (新字新仮名) / 小川未明(著)